結衣 LP4000 手札5
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莉奈 LP4000 手札5
二人は、すごい気迫に満ちている……。
観客の立場だからいいが、実際に対峙していたらその圧迫感はなかなかのものだろう。
どうやら先攻は結衣のようだ。
果たしてどんなスタートを見せるのだろうか。
「いきます。私のターン」
結衣は自分の手札を眺めしばらく考え込む。
決意が固まったのか結衣は莉奈の方を向くと、衝撃的な発言をした。
「私はターンエンド」
何もしないでターンエンド……!?
手札が事故ってしまっているのか?
デュエルにおいては一番最初の手札が肝心で、噛み合わないカードばかりであったり、大型モンスターばかりを引いてしまった場合、何もできなかったりする。
それを手札事故と呼ぶが、それが起きてしまうと一気に状況は不利になってしまう。
何もしなかったということは、何もできなかったという可能性が高いのだ。
これは本当に勝てるのだろうか。結衣の様子を見てみると真剣な表情のまま一切表情が変わらない。
確か……以前赤見さんが言ってたが、結衣は守りを得意としているようだし、そう簡単に負けるとは思えないが。
「あれ、何もしないでターンエンドなの? もしかして、手札が事故っちゃったとか?」
莉奈はその様子を見て挑発気味に言う。
「勝手に判断しないでください。この手札なら何もする必要がないと判断したまでです」
「だーかーらー! それを手札事故って言うんじゃないの?」
「いいから早く進めてください。私はターンエンドしたのですよ。あなたのターンです」
「まったく……口だけは強がっちゃって……。私、容赦しないからね結衣ちゃん」
莉奈は口元をにやりとしながら、言い放つ。
その表情はどことなく、自信満々な様子であった。
「おいおい! 結衣ちゃん本当に大丈夫なのかよ!」
俺の隣にいた颯が心配に思ったのか、結衣に向かって叫んでいた。
あいつには何を言っても無駄だろうし、あの感じだと仮に事故っていたとしても負ける気はさらさらないように見える。
「あなたも黙っててください。隣のホームレスさんと一緒に指でも加えて見てるといいです」
ちょっと待て、なんで俺まで巻き添えくらってるんだ。
「なぁ、繋吾。あれ本当に大丈夫なのかよ」
まったく心配性だなぁお前は。
「まぁあいつがそう簡単に勝負を諦めるようには思えない。信じてやれよ」
「繋吾……! あぁそうだな! 俺、指を加えながら応援する!」
本当に指を加えるのか……。
そんな会話をしていると莉奈がターンを進め始める。
結衣 LP4000 手札5
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莉奈 LP4000 手札5
「いくよー! 私のターン、ドロー! えっとー……。まずはこれだね、手札から【マスマティシャン】を召喚!」
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【マスマティシャン】✩3 地 魔法使い ③
ATK/1500
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「このカードは召喚した時、デッキからレベル4以下のモンスターを墓地に送れるんだ。私は【にん人】を墓地へ送るよー?」
序盤に引けていると妙に安心する【マスマティシャン】。
準備を整えながら、破壊された時にドローもできる素晴らしいカードである。
莉奈の方は随分といい手札のようだ。
「さらに、墓地の【にん人】は、場か手札から植物モンスターを捨てると、墓地から復活できる! 私は手札の【ダンディライオン】を捨てて……墓地から来て、【にん人】!」
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【にん人】✩4 闇 植物 ⑤
ATK/1900
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「まだまだ! 【ダンディライオン】が墓地へ行った時、場に【綿毛トークン】2体を特殊召喚できるよ!」
ーーー
【綿毛トークン】✩1 風 植物 ②と④
DEF/0
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1ターンで一気に4体ものモンスターを展開するなんて。
さすがは副班長。その肩書きは伊達じゃないようだ。
「どうどう、結衣ちゃん? 私のデッキすごいでしょ!」
「まぁまぁってところですかね。私のデッキほどではありませんけど」
「むー……。そんなに自信があるのなら、せめてモンスター1体くらいでも召喚してから言ってよね!」
莉奈はちょっと顔を膨らませながら、結衣に言う。
しかし、結衣は表情を一切変えずに、静かに莉奈のことを見つめていた。
「いいから、早く進めてください。これでターンエンドってわけではないしょう?」
「あったりまえでしょ! んじゃ行くよ、来て! 華麗なる私のサーキット! 【綿毛トークン】二体をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン! リンク召喚、リンク2、【アロマセラフィージャスミン】!」
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【アロマセラフィージャスミン】リンク2 光 植物 ②
ATK/1800
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ステンドグラスのような華やかな羽を宿した、白き妖精のようなモンスターが出現した。
「可愛いでしょー? だけど、このモンスターすっごい強いんだよ!」
「はぁ、いちいち紹介してこなくてもちゃんと見てますから。子どもですかあなたは」
「子どもじゃないし! 馬鹿にしてー……。私は【アロマセラフィージャスミン】の効果発動! リンク先のモンスターを1体リリースして、デッキから植物族モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。私は【マスマティシャン】をリリースして、【グローアップ・バルブ】を特殊召喚!」
ーーー
【グローアップ・バルブ】✩1 地 植物 チューナー ③
DEF/100
ーーー
チューナーモンスターが呼び出されたってことは、狙いはシンクロ召喚か。
レベルの合計は5。比較的低めではあるがどのようなモンスターが出るのだろうか。
「ここからが本番! 私はレベル4の【にん人】にレベル1の【グローアップ・バルブ】をチューニング! "聖なる加護に導かれし癒しの光! 今ここに希望の未来を照らしなさい! シンクロ召喚! 来て、【マジカル・アンドロイド】!"」
ーーー
【マジカル・アンドロイド】✩5 光 サイキック ③
ATK/2400
ーーー
奇抜な衣装を身にまとった魔術師のような人型モンスターが現れる。
「さーってと! これでダイレクトアタックすればもうデュエルは終わりかな?」
「そう思うのなら攻撃してくればいいじゃないですか」
「では、お言葉に甘えて! 【アロマセラフィージャスミン】でダイレクトアタック! "シャイニング・レイ"!」
【アロマセラフィージャスミン】が手に持つ杖のようなものをひと振りすると、そこから一筋の光線が結衣に向けて発射される。
「手札から【ゴーストリック・ランタン】の効果を発動。私がダイレクトアタックを受ける時、もしくは"ゴーストリック"モンスターが攻撃された時、このカードを裏側守備表示で特殊召喚することで、その攻撃を無効にできる」
手札に攻撃を止めるカードがあったのか。
俺のデッキで言うところの【虹クリボー】みたいなカードだ。
確かに【ゴーストリック・ランタン】の効果なら場にセットするより、効果を使った方が有効的だ。
「なるほどねー……。一応ちゃんと考えてはいたんだ。ならば、【マジカル・アンドロイド】でそのまま【ゴーストリック・ランタン】を破壊するよ! "サイキック・ソーサリー!"」
【マジカル・アンドロイド】は手に持つ杖を両手で握り締め、念じ始めるとその杖より衝撃波のようなものが放たれ、【ゴーストリック・ランタン】を襲った。
「くっ……」
「結局これで結衣ちゃんの場はガラ空きになりました! 私の攻撃を受け流して、場にランタンを残す算段だったのかもだけど、ちょっと考えが甘かったね?」
「心配無用ですよ。この攻撃も私の想定範囲内です」
「……その余裕、いつまで続くかな……。 私はカードを2枚伏せて、ターンエンド! エンド時に【マジカル・アンドロイド】の効果で私は場のサイキック族モンスター1体につき、600ポイントライフを回復するよ」
莉奈 LP4000→4600
「さらに、ライフポイントが回復した時、【アロマセラフィージャスミン】の効果でデッキから植物族モンスター1体を手札に加えることができる! これで【プチトマボー】を手札に加えるよ。あ、ちなみに【アロマセラフィージャスミン】は私のライフが相手より多い時、戦闘によっては破壊されなくなるからね!」
「それは厄介ですね……」
「ふふっ! 私のターンはこれでおしまい、あなたのターンだよ」
モンスター効果の連携で一瞬の隙もない莉奈のデュエル。
あの【アロマセラフィージャスミン】が長くいればいるほど、結衣は不利になっていく一方だ。
次のターンで破壊しておきたいところだが、【アロマセラフィージャスミン】は相手よりライフポイントが多い時、戦闘破壊されない効果を持つ。
【マジカル・アンドロイド】との連携で耐性を得ている今の状況。結衣は何か秘策でもあるのだろうか。
「あの野薔薇ってやつ。なかなか侮れないな。流れるように綺麗なデュエルだ」
「なんだ繋吾。あの子に惚れちまったか?」
颯に言われて俺は思わず吹き出してしまう。
お前はそういうところしか頭にないのか。
「お前……デュエルの内容ちゃんと見てるか?」
「当たり前だろ! ま、俺には及ばないがなかなかいいデュエルをしてるよな!」
本当に颯のやつちゃんとデュエルを見ているのだろうか……。
ちょっと呆れながらも、俺は再び視線をデュエルしている二人に向ける。
結衣 LP4000 手札4
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ーーーーー
ー リ
ーーシーー
ー裏裏ーー
莉奈 LP4600 手札3
「私のターンですね。ドロー! 私は【金華猫】を召喚!」
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【金華猫】✩1 闇 獣 ③
ATK/400
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「【金華猫】の効果で、墓地からレベル1のモンスター1体を特殊召喚できます。来てください、【ゴーストリック・ランタン】」
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【ゴーストリック・ランタン】✩1 闇 悪魔 ②
ATK/800
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「おー、やっとモンスターを召喚してきた。これで少しは楽しめそうだよ!」
「安心してください。楽しむ以前にあなたは私に勝てませんから」
「まだモンスターを召喚しただけなのにそこまで言う? よっぽど自信満々みたいだねー」
「あなたみたいな他人に媚売って生きてるような人に、私が負けるわけありませんから」
「なによそれ! さっきからひどいことばっか言って! いい加減にしてよ!」
結衣のその一言に、莉奈もさすがにちょっとばかり頭にきたようだ。
少しくらいは楽しんでデュエルしてほしいものだ。
「ふふっちょっと言い過ぎましたね。一応謝罪だけはしておきます」
結衣はにやりとしながら得意げに言う。状況的には圧倒的不利に見えるが、どこからこの余裕は来るのだろうか。
「……全然謝ってないんですけど……はぁ。さて、一体何を見せてくれるんでしょーか」
莉奈はちょっと疲れた表情をしながら、結衣の場のモンスターを見つめていた。
「私はレベル1の【金華猫】と【ゴーストリック・ランタン】の2体をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! "黒曜に煌く漆黒よ! 断罪の剣となりて、闇夜を引き裂け! エクシーズ召喚! ランク1、【ゴーストリック・デュラハン】!"」
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【ゴーストリック・デュラハン】ランク1 闇 悪魔 ①
ATK/1000
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小さき白馬に可愛らしい小さな騎士の鎧が跨り、その手に持つ刃を構えた。
結衣が行ったのはエクシーズ召喚。
同じレベルのモンスターを2体以上重ねることで、EXデッキから同じランクを持つモンスターを特殊召喚するものだ。
素材となったモンスターはオーバーレイユニットとなって、そのエクシーズモンスターを支える力となるのが特徴である。
「随分と可愛らしいモンスターを使うんだね」
「見た目で判断すると痛い目を見ますよ。【ゴーストリック・デュラハン】は場の"ゴーストリック"モンスター1体につき、攻撃力を200アップさせます。さらに、オーバーレイユニットを一つ使うことで、1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力を半分にできる。私はオーバーレイユニットの【ゴーストリック・ランタン】を墓地へ送り効果発動! "デステニー・オーバー!" 【マジカル・アンドロイド】の攻撃力を半分に!」
【ゴーストリック・デュラハン】
ATK/1000→1200
【マジカル・アンドロイド】
ATK/2400→1200
【ゴーストリック・デュラハン】が剣を前に突き出すと、【マジカル・アンドロイド】は突如脱力し始める。
「あー! 【マジカル・アンドロイド】が!」
「さらに、私は【ゴーストリック・デュラハン】をオーバーレイユニットとし、オーバーレイネットワークを再構築!」
「なになに? さらにそれを素材にしちゃうんだ」
エクシーズモンスターの中には、ランクアップできるものや、自らを素材に別のエクシーズモンスターへ変化できるものが存在する。
今回結衣が行っているのはその類のものである。
「そう、手軽なランクアップが可能なのが、"ゴーストリック"の強みです! "闇夜を羽ばたく嘲笑の翼よ! 悪戯の幻想より舞い降りて! ランクアップ、エクシーズチェンジ! ランク4、【ゴーストリックの駄天使】!"」
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【ゴーストリックの駄天使】ランク4 闇 天使 ①
ATK/2000
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可愛らしいゴシックな服を身につけた天使が現れ、宙に浮きながら莉奈に向かってウィンクをする。
「あれれ……結衣ちゃん意外と女の子っぽいところあるんだね……」
「意外とはなんですか。失礼ですね」
「その感じだと私、可愛いものとかまったく興味ないと思ってたよ……」
それに関しては俺も同意見だ。
意外と結衣の使うモンスターはマスコットキャラクターのようなものが多い。
「私だって年頃の女です。ば、馬鹿にしないでください……」
結衣はちょっと赤面しながら言う。
そこまで恥ずかしがらなくてもいいのに。
「あ、照れてる! 照れてる結衣ちゃんちょっと可愛いかも……」
「ちょっと! そんなこと言って私の思考を混乱させるつもりでしょうが、その手は乗りませんよ!」
「はぁ、少しは素直に受け止めてほしいなぁ……」
「では……私は【ゴーストリックの駄天使】の効果発動! オーバーレイユニットの【ゴーストリック・デュラハン】を墓地へ送り、デッキから"ゴーストリック"と名のついた魔法か罠カードを手札に加えることができます。私は【ゴーストリック・ロールシフト】を手札に。さらに、墓地へ行った【ゴーストリック・デュラハン】の効果で自身以外の墓地の"ゴーストリック"カードを手札に戻せます。これで【ゴーストリック・ランタン】を再び手札に戻します」
デッキと墓地から1枚ずつカードを手札に加えた。
ようやく結衣の方も本領発揮してきたという感じだろうか。
「へぇー……。また、その【ゴーストリック・ランタン】を使って攻撃を守れるってことかー。なかなか堅実なデュエルするんだね」
「そう簡単に私のデッキの守りは崩せませんよ。では、バトル。【ゴーストリックの駄天使】で【マジカル・アンドロイド】を攻撃! "ファシネイト・ディザイア!"」
【ゴーストリックの駄天使】は、手でハートマークを作り、そこへキスをするジェスチャーを行うと、その手から赤紫色をした波動弾のようなものを放つ。
「甘いよ結衣ちゃん、罠発動! 【幻影翼】! 場のモンスター1体の攻撃力を500ポイントアップさせて、そのモンスターはこのターン1度だけ破壊されない! 私は【マジカル・アンドロイド】に対して使うよ!」
【ゴーストリックの駄天使】
ATK/2000
【マジカル・アンドロイド】
ATK/1200→1700
「仕留めそこないましたか……。ですが、ダメージは受けてください」
「きゃあっ」
莉奈 LP4600→4300
「だけどざんねーん! 【マジカル・アンドロイド】は【幻影翼】の効果で無事だよ!」
「仕方ないですね。私はカードを3枚伏せて、ターンエンド。エンドフェイズ時、【マジカル・アンドロイド】の攻撃力は元に戻る」
【マジカル・アンドロイド】
ATK/1700→2900
結衣 LP4000 手札3
ー裏裏裏ー
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エ リ
ーーシーー
ーー裏ーー
莉奈 LP4300 手札3
結衣はここに来て一気に3枚もカードを伏せてきた。
一枚は先ほどサーチしていた【ゴーストリック・ロールシフト】だろうが、他の2枚が気になるところである。
まだお互いのライフポイントが減ってない現状どちらが勝つかは読めない状況だ。
互いに場に出ているカードが増えてきたことから、次のターンからは本格的にお互いの力が見えてくるだろう。