ーー食堂で赤見さんと軽く昼食を済ませ、俺は赤見さんと一緒にデュエル訓練場へ来ていた。
SFS内でもいくつかデュエル訓練場があり、今回の場所は前回決闘機動班と遭遇した場所ではなく、少し小さめのデュエル訓練場であった。
それでもデュエルの訓練をするには十分な広さであるが。
「よし、じゃあ繋吾。さっそく始めようか」
赤見さんは自らのデュエルウェポンを操作し始める。
「まず、デュエルウェポンは基本的にカードをセットすれば、そのカードの効果が適用される。魔法や罠も同様だ。伏せカードについては、事前に伏せてある状態でデュエルウェポンのボタンを押すと発動する。つまり、基本的な操作はデュエルで行っている動作と同じだよ」
なるほど。モンスターをセッティングすれば、モンスターが出現するし、魔法カードを発動すれば、その場で具現する。
単純明快でわかりやすいな。
「ただ、デュエルと明確に違うところとしては、ターン制限や召喚制限というものが一切ないところだ。どんな上級モンスターだろうが、EXデッキのモンスターであろうと、デュエルウェポンにセットすれば召喚される。デュエルウェポンが拳銃でカードが弾丸のような感覚で思ってもらえばわかりやすいかな」
例をあげると通常のデュエルでは"EXデッキから出たモンスター2体以上を要求"する【セフィラ・メタトロン】だとしても、そのカード自体をデュエルウェポンにセッティングすれば即座に召喚できるということか。
それなら可能な限り攻撃力の強いモンスターを出した方がよさそうだな。
「しかし、たが強いモンスターを呼べばいいというものでもない。大きなモンスターであれば狭い場所では効力を発揮できないし、カードのステータスがそのまま強さに繋がるというわけではない。あくまでカードに秘められている力が具現化するのであって、デュエルでの力とは違うんだ。デュエルでは活用が難しくても、戦闘においては【ファイヤー・ボール】なんかが手軽で使いやすかったりする」
「なるほど。時と場合に応じて、適切なカードを選択し、使っていく必要があるということですか」
「そういうことだ。では私がこれからさっそく【ファイヤー・ボール】を使用するから、何かしらモンスターを召喚し、防いでみてくれ」
おっとさっそく練習か。
しかし、もし俺が操作に失敗したらどうなってしまうんだろう……。
「赤見さん。この練習失敗したらもしかして怪我とか……?」
「まぁ……多少は痛むかもしれないな。大丈夫だ。そんなに強いカードは使わないようにするからさ」
赤見さんはハハハと笑いながら自らのポケットよりカードをセットし始める。
すると、赤見さんのデュエルウェポンから【ファイヤー・ボール】のカードが出現し、そこから大きな火球が出現すると俺に向かって放たれた。
「さぁ、今だ! 繋吾!」
赤見さんの声を聞き、俺はすぐさまカードをデュエルウェポンへセットする。
「来てくれ! 【セフィラ・メタトロン】!」
デュエルウェポンから光が放たれるとそこから輝く鎧を纏った【セフィラ・メタトロン】が出現し、手に持つ杖を構える。
やがて、その火球が近づくと杖をその火球へ向けて振りかざす。
たちまちその火球はその場から消滅してしまった。
「上出来じゃないか。繋吾」
赤見さんは今の様子を見て拍手をしながら言った。
意外と簡単なものだなこれは。
「実戦ではいつ奴らが仕掛けてくるかはわからない。戦場では常に周りに目を配り、使用カードを準備しておいてくれ」
「わかりました。あと、最後に……デュエルを仕掛けるにはどうしたらいいんですかこれは」
対集団戦闘では今の戦闘機能を使うのかもしれないが、相手も反撃してくるだろうし、確実にテロリストを無力化することは難しい。やはりテロリストを無力化するのにデュエルは欠かせないだろう。
そこで、デュエルの仕方がわからないのでは、今回のメイン任務である幹部の拘束は難しくなってしまう。
「デュエルウェポンのデッキセットする箇所の脇にボタンがあるだろう? それを押すとデュエルウェポンから電波が発信される。その電波が他のデュエルウェポンへ接触すると、強制的にデュエルモードとなって、第三者が乱入できない不可侵空間、つまり一騎打ちができる空間が作られるという仕組みになっているんだ」
どちらかが仕掛ければ相手は逃げることができないという仕様みたいだ。
俺が前回テロリストと戦った時は相手がその機能を使った。といったところか。
「だが、その電波っていうのはそんなに遠くまで飛ばせない。デュエルへ持ち込みたいのであればやはり接近する必要がある。テロリストもデュエルはハイリスクハイリターンなのは重々承知だから、そう簡単にはいかないだろうな」
「どのくらいの距離ならできるものなんですか?」
「そうだなぁ……。大体10mくらいってところか」
けっこう近距離だなぁ。相手が逃げているような状況だと難しそうだ。
「さーて、一通りの説明は終わりだ。今日はしばらくデュエル以外の戦闘練習。カードをセッティングする練習をしてみようか」
「それは助かります。やりましょう」
実戦前にできるだけ練習はしておきたかったから非常に助かる。
ちょっと怪我をしてしまうかもしれないが、それでも本番で失敗してしまうよりかはマシだ。
ーー数時間ほど経っただろうか。
デュエル訓練場では爆発音やモンスターの咆哮。銃声といろいろな物騒な音が響き渡っている。
もちろんSFSのデュエル訓練場はこういった戦闘訓練も想定しているため、作りも丈夫。
多少の爆発物では壊れないような作りとなっていた。
そんな中俺はというと、割と立つのも辛いくらいにダメージを受けていた。
デュエルウェポンのおかげであまり外傷はないのだが、体中から痛みが……刃物で体を切り刻まれるような痛みとでも言えばわかりやすいだろうか。
少し動くだけでも体がふらついてしまう。
だが、赤見さんはそんな俺の様子を気にせずに、ガンガン魔法カードを駆使して、俺への攻撃を続けている。
俺もなんとか反撃を試みるが、それは赤見さんの発動する罠カードによってことごとく防がれてしまっていた。
「繋吾。まだ戦えそうか?」
赤見さんは口では俺を心配するような発言をしているが、手には大きな大砲のようなものが握られていた。
そう、あれは装備魔法【バスター・ランチャー】を発動し、赤見さんが具現化させたものだ。
赤見さんは攻撃力1000以下なんだろうか。
いや、デュエルとはそういった面は異なるといっていたからよくわからない。
それよりもあの代物は馬鹿にならない。
あの大砲からはレーザー光線のようなものが放たれるが、それがけっこうなスピードで飛んでくる。
罠カードを使って避けようにも間に合わず、なかなか難易度が高かった。
モンスターを盾にしていても、そこまで長くは持たない。
今すぐギブアップしてもいいレベルまで体が厳しいところだが、俺は残念ながらその【バスター・ランチャー】の攻撃をまだ一度も防げていない。
せめて……あれを一回は防げるまで今日は頑張りたい……。
そんなことを考えていると、赤見さんが手に持つ【バスター・ランチャー】のトリガーに指をかけるのが見えた。
そうか。このタイミングか! 撃たれてからでは遅い。少し早いタイミング!
俺は咄嗟にデュエルウェポンのボタンを押し込む。
それと同時くらいに【バスター・ランチャー】よりレーザー光線が放たれ俺の足元に向かってきた。
だが、今回は痛みがなかった。
そう、俺が発動した伏せカードが防いでくれたようだった。
俺の目の前には青い渦のようなものが出現し、そのレーザー光線を吸い込んでいた。
「おぉ、【攻撃の無力化】を発動させたか! 回避もだいぶ上達してきたみたいじゃないか」
「ようやく……ですよ……。うっ……」
俺は安堵したとともに気が抜けてその場に倒れ込んでしまった。
「おい、繋吾! 大丈夫か? 今日はこのへんにしておこう。すぐに治療班を呼ぶからな」
「赤見さん……。もうちょっと早いタイミングで行きたかったっす……」
俺は床に寝転びながら赤見さんに愚痴をこぼす。
「だけど、これで相手の攻撃を回避する感覚ってのはなんとなくわかってきただろ?」
確かに、ずっと攻撃を受けっぱなしだった【バスター・ランチャー】のレーザーを避けられたのは大きい成果だ。
デュエルに持ち込む前に相手からの一方的な攻撃でやられては、いくらデュエルが強くても奴らには勝てないこととなる。
「まぁ……そうですね。いてて」
「無理に動くなよ? もっと痛みが増してしまうからな」
しかし、不思議なものだ。
そこまでの外傷がないのに、激しく痛む体。
どこまでくれば死ぬレベルなのか、いまいちよくわからなかった。
この痛みに耐え切れなくなったら、終わりってことなのだろうか。
ただでさえ魔法のような存在であるデュエルウェポンが及ぼす力だ。わからなくて当然だろう。
じっとしていると、やがてデュエル訓練場に数名の人が入ってきた。
きっと治療班の人たちだろう。
「赤見さん……。ここまでなる前にやめときゃいいじゃないですか……」
「ははは、悪いねぇいつも。うちはスパルタなんだ」
「この子新人の子でしょ? 同情しますよほんと……」
治療班の人たちが呆れながら俺を担架へと乗せる。
そして、治療室へと運ばれた。
しばらくし、治療室へ到着すると、俺は2名の医療班の人たちに支えられ、ベッドに体を移された。
ベッドは清潔感溢れるまさに病院のベッドという感じであり、プライバシーが守られるようにしっかりとカーテンで囲まれていた。
なんだか入院する気分だな。
「大丈夫ですか? 遊佐さん?」
医療班の男性に声をかけられる。
大丈夫といえば大丈夫だが、大丈夫じゃないと言われれば大丈夫じゃない感じだ。
「まぁ……体中痛いですが、大丈夫だと思います」
「かわいそうにな……だけど、まだ喋れるレベルってことは今日一日治療しておけば明日には大丈夫だと思いますよ」
そんなにすぐ治るものなのか。
少し安心した。これで任務へは参加できませんとか言われたらどうしようかと思ったぞ。
「疲れてるでしょうし、しばらく寝てて大丈夫ですよ。ではこれを」
医療班の人は1枚のカードを俺のデュエルウェポンへとセットした。
カードの名前には【ダメージ・ヒーリングα】と書かれていた。
「なんですかこれは」
「あぁ、見るのは初めてかな? デュエルモンスターズの具現化機能を駆使して開発した医療用カードだよ。これで体中に治療を促す力を具現化させて、怪我を治していくってものだね。簡易的な治療はこれだけでできるんだ」
便利なカードもあるもんだな。デュエルで使うとどんな効果があるのか少し気になるところだ。
そういえばSFS内には機器開発班なんて部署もあったか。
そこで開発しているのはこういった類のものなのだろうか。
「これで本当に治るんですかね……?」
「安心してくれよ。SFSはこれのおかげで8年もの活動実績があるんだ。ま、しばらくはゆっくりとおやすみ。ではな」
そう言うと治療班の人たちはカーテンを開け出て行ってしまった。
とりあえずまだ痛みは収まらないし、今日は寝るとしよう。
会議からの訓練で疲れていたからかもしれないが、俺はすぐに眠りについたのだった。