遊戯王Connect   作:ハシン

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Ep29 - 思わぬ増援

ーーー赤見班長と繋吾の二人を見送った結衣と颯の二人は、迫り来るテロリスト達を相手に苦戦を強いられていた。

多くのモンスターを召喚、そして魔法、罠カードを駆使して戦ってはいたものの、立て続けに迫る敵の攻撃に徐々に押され始める。

なんといっても人数的には相手の方が多いため、いくら優秀な戦闘能力を秘めていたとしても、カードの消耗と体の疲弊だけは避けられなかった。

 

「いけ、【ダークネクロフィア】! 奴のモンスターを破壊せよ!」

 

「くっ、【ジェムナイト・パーズ】……!」

 

禍々しき人形のようなモンスターが放つ衝撃波によって、颯の身を守っていた【ジェムナイト・パーズ】が消滅する。

 

「【ヴァンパイア・ロード】。やれ!」

 

続けて更なるテロリストの従えるモンスターの攻撃が結衣に向かって襲いかかる。

しかし、結衣の前には既にモンスターはおらず、無防備な状態であった。

 

「結衣ちゃん!」

 

その存在に気がついた颯が叫ぶが、結衣を庇うべくモンスターを召喚するには間に合いそうもない状況だった。

 

「まだとっておきたかったですが、仕方ありません……。罠カード【聖なるバリアーミラーフォース】!」

 

今にもモンスターの直撃を受けそうな状況であったが、結衣は1枚の罠カードを発動させる。

すると、あたりに急遽眩い光が立ち込める。

 

「結衣ちゃん! それは……!」

 

「緊急時のためにとっておきたかったですが……!」

 

辺りが見えなくなるほど激しい光が放たれると同時に、周囲にいた全てのモンスターは消滅し始めた。

 

「はぁ……はぁ……。これで一時的に危機は去りましたか……」

 

「さすが結衣ちゃん! あとは任せておきな! 来い! 【ジェムナイトマスター・ダイヤ】!」

 

少し息を切らしている様子の結衣の前に立ちはだかるようにして颯は一歩前に出ると、1枚のカードをデュエルウェポンにセットする。

すると、大きな剣を持った騎士モンスターを出現した。

 

「くらえ! "セブンスソード・ブレイカー!"」

 

【聖なるバリアーミラーフォース】の発動によって怯んでいたテロリスト達は、急なモンスターの攻撃に対処できず、その剣を直に受けてしまう。

 

「ぐおあああ!」

 

男達の断末魔が響き渡る。

その後、結衣と颯の前にいた数名のテロリストがその場に倒れ込んだ。

 

「よし! この調子でいくぞ! 結衣ちゃーー」

 

颯がそう言いかけた時、突如地面から大きな亀裂が発生し、颯の前にいた【ジェムナイトマスター・ダイヤ】がその亀裂に飲み込まれ消滅する。

 

「っな! 【ダイヤ】が……」

 

「上地くん! 前を見てください」

 

「なに……!? どうなっちまってんだよ?」

 

ーーー

【レッド・ガジェット】

ATK/1300

【イエロー・ガジェット】

ATK/1200

【グリーン・ガジェット】

ATK/1400

【ゴールド・ガジェット】

ATK/1700

【シルバー・ガジェット】

ATK/1500

ーーー

 

眼前には、いつの間にか大量の歯車状のモンスター達が出現していた。

それもそのはずである。

結衣と颯の連携によって無力化できたのはせいぜい先頭で交戦していたテロリスト数名。

その後方にいるテロリストは臨戦態勢であったのだ。

つまり、すぐにモンスターを召喚し、攻撃する準備はとっくに整っていたということだ。

 

「いい加減くたばれ! 攻撃ィ!」

 

テロリストの叫び声と共に、モンスター達が結衣と颯に迫る。

 

「まだ……カードはあります……! 私を舐めないでください!」

 

結衣は1枚のカードをデュエルウェポンにセットすると、結衣の前に【ゴーストリック・ランタン】が出現し、そのモンスターの攻撃を受けとめる。

だが、あっという間に破壊されてしまった。

 

「ダメだ! 相手のモンスターが多すぎてこのままじゃ受けきれない」

 

「そんな……どうしたら……」

 

二人の表情からは焦っている様子が見受けられた。

まさに絶対絶命という状況だろう。

 

「今度こそトドメよ! 死ねぇ!」

 

再びテロリストの叫び声と共にモンスター達が二人へと接近してくる。

もはやなすすべがなくなってしまった二人はこれから待ち受けるであろう痛みに恐怖し、目をつむる。

 

まもなくして、大きな衝撃音が響き渡った。

 

「あれ……」

 

結衣は衝撃音が響いた後に違和感を覚えたのか目を開く。

そう、その衝撃音は結衣と颯を襲った音ではなかった。

 

「……なに!?」

 

颯が驚きの声を上げると同時に目の前にいたガジェットモンスター達が全て破壊されていた。

 

「お前ら特殊機動班だろう? 大丈夫か?」

 

そこには金髪のショートカットをした人物が立っており、その脇には黄金に輝く鎧を纏った騎士が佇んでいた。

 

「お前は……桂希 楼? なんでお前がここにいるんだ?」

 

「増援……とでも言ったらいいか? 随分と派手にやられているみたいじゃないか」

 

「うるせぇ! ちょっと手加減してやってただけだ!」

 

颯は桂希に対して、少し怒りっぽく言った。

 

「決闘機動班は外での警備任務だったはずです。任務内容を忘れたのですか?」

 

続けて結衣が不審そうに冷たく桂希に対して言う。

 

「まったく。せっかく助けたというのに随分と冷たい対応だな。君たちは」

 

「決闘機動班に救助を頼んだ覚えはありません」

 

「そうか。まぁ色々と事情があってここに来ている。一つだけ聞きたいのだが……遊佐 繋吾はどこにいる?」

 

「なんだお前? 繋吾になんか用があるのか?」

 

そう言い颯は桂希のことを睨みつける。

その様子はなんともピリピリしている様子だった。

 

「安否が確認したいだけだ。特に何もたくらんでなどいない」

 

「本当かよ……繋吾なら赤見班長と一緒にもっと地下に向かってる」

 

「そうか、ありがとう。特殊機動班」

 

桂希はそう言うと地下へ向かう階段目掛けて走り出した。

それを見た颯は桂希を止めるべく叫んだ。

 

「おい、桂希! ここにまだテロリストがいるっての! どうすんだよ?」

 

「先ほどそこの女が救助はいらないと言っていただろう?」

 

「あなた……状況がわかっていないのですか? くだらないこと言ってないでーー」

 

「大丈夫だ。もうすぐ第二部隊とやらがくる。……ではな」

 

桂希は結衣の言葉を遮りそう言うと、再び階段へと駆け抜けていった。

 

「なんて自分勝手なのですか決闘機動班は……。まったく」

 

桂希の様子に呆れながら再度テロリスト達の方を見ると、テロリスト達には先ほどまでの勢いはなく、目線は別のところへと向いていた。

彼らは不思議なことに入口があった方向を見つめ、少し怯えたような表情をしていたのだ。

 

通路の入口方向には、10数名の人たちがこちらに向かって走ってきていた。

 

「あれは……宗像班長たちの第二部隊みたいだな! 結衣ちゃん、ここからが反撃だぜ!」

 

「そうみたいですね。よかった」

 

第二部隊が来ていることを確認した二人は、安堵した様子で再びデュエルウェポンを構えた。

 

 

 

 

ーーーテロリスト達とのデュエルをはじめてからどのくらいの時間が経っただろうか。

俺は、既に3人目のデュエリストとのデュエルを行っていた。

 

繋吾 手札1 LP1200

ーー裏ーー

ーモーーー

 リ ー

ーーモーー

ーーーーー

テロリスト 手札1 LP500

 

【セフィラ・メタトロン】

ATK/2500

【イルミラージュ】

DEF/100

 

【ヴェルズ・オピオン】

ATK/1350

 

場の状況は【イルミラージュ】の効果で相手の【ヴェルズ・オピオン】の攻撃力を下げている状況。

そして、今は俺のバトルフェイズ。

このまま攻撃すれば、俺の勝ちといったところだ。

 

「【セフィラ・メタトロン】で【ヴェルズ・オピオン】を攻撃! "ヴェンジェンス・ディバイニング!"」

 

「く……くそお! なぜこいつに勝てない! なぜだ!」

 

「勘違いしているようだな。お前には元々力がなかった、それだけのことだ」

 

「なにぃ……?」

 

「自らの罪を……その身で償え!」

 

俺が叫ぶと同時に【セフィラ・メタトロン】が水晶の槍を【ヴェルズ・オピオン】の喉元に突き立てた。

 

「ぐおああああ!」

 

テロリスト LP500→LP0

 

その攻撃を受けて、テロリストは吹っ飛び床へ突っ伏した。

なんとか3人目も倒すことができた。やはりデュエルに無事勝利できると少し安心する。

 

今回のデュエル3連戦では、前回の襲撃の時とは違ってデュエル終了後も俺は落ち着いたままでいられた。

連戦という状況が逆に自分自身の冷静さを保っていられたのかもしれない。それにこんな知らないやつ相手に熱くなりすぎてもしょうがない。

俺が本当に憎しみをぶつけるべき相手は他にいる。

あの父さんとデュエルをしていた黒髪の青年。俺が倒すべきはただひとりだ。

 

そのためにはジェネシスの奴らと戦い続けて早く先に進まない行けないところだが、3連戦のデュエルした中で当然自分もダメージを受けている。

まだ任務が終わったわけでもないし、この後のことも考えると少し休憩を入れたいところだった。

 

周囲を見渡してみると、郷田さんと赤見さんもちょうどデュエルを終えたところであり、テロリスト達は全て倒れていた。

どうやら殲滅できたようだ。

 

「お疲れ様だ。郷田、繋吾。怪我とかはしてないか?」

 

「怪我がないと言えば嘘にはなるが、大丈夫だぜ。骨のないやつばっかりだったわ!」

 

郷田さんは愉快そうに笑いながら言った。

 

「まったく。随分追い込まれていたのによく言うよ郷田」

 

「ははっ! 助かったぜえ赤見。繋吾ちゃんもいきなりでこんな連戦大変だったろ?」

 

まさか最初のデュエルでいきなり連戦になるとは思わなかった。

だが、一気に戦場でのデュエルに慣れれたのはある意味よかったのかもしれない。

 

「はい、ですがいい経験になりました。この後はどうされるんですか?」

 

「そうだな。このまま奥に進みたいところだが、結衣と颯とも合流しておきたい。連絡を取ってみるか」

 

すると赤見さんはデュエルウェポンで通信を始めた。

 

「いやあ、それにしてもやられたよ」

 

郷田さんは後ろ髪をかきながら言った。

そういえば、随分と派手に警報が鳴っていたけど何があったんだろう。

 

「郷田さん、一体何があったんですか?」

 

「あぁ。俺はすぐに地下2階まで来て、モンスターを駆使して大暴れしてたんだけどよ。とある部屋に入ったら急に警報が鳴りだしたんだ。すると同時にその部屋から大量のテロリストが出てきてな。戦ってはいたんだが、この部屋に追い詰められてしまってよ……」

 

「その警報が鳴った部屋。なんだか怪しそうですね……」

 

やたらセキュリティが厳重みたいだし、きっとそこに何か大事なものがあるのだろう。

次に攻め込むとしたらそこだろうか。

 

「たぶんそこの部屋が怪しいぜ! 準備を整えたらまずはそこだな!」

 

第二部隊も無事合流さえできればどんなセキュリティがあろうと怖いものはないはずだ。

とりあえず今は3人しかいない以上、下手に動くのは危険だろう。

 

「どうやら進む場所の目星がついたみたいだな? 郷田」

 

デュエルウェポンでの通信を終えた赤見さんが、さっそく郷田さんに聞く。

先ほどの会話はちゃんと聞いていたみたいだ。

 

「おうよ! 結果オーライってやつだな!」

 

「あぁ、おかげさまで今回はうまくいきそうだな」

 

赤見さんは少し笑顔を見せながら言う。

あとはその部屋での戦闘を無事にこなせればいいのだが……。

 

「そういや結衣と颯はどうだった? 無事か?」

 

「無事じゃなかったら今頃駆け出しているところだよ郷田。なんとか第二部隊とも合流し、まもなく敵の殲滅が完了するらしい」

 

どうやら結衣達の方もうまくやったみたいだ。

さすがは特殊機動班の精鋭。この程度の相手じゃ問題ないようだ。

 

「そいつはよかった! 応援にでも行くか?」

 

「いや、今は体を休めてくれ。一樹にここの座標は伝えてある。私たちはここで待機だ」

 

「おう、んじゃあ俺様は休ませてもらうとするかねえ!」

 

郷田さんはそう言うと、そのまま床に横になり寝っ転がった。

 

「まったく、緊張感がないやつだな郷田は。繋吾、真似するなよ?」

 

「まさか……こんなところで寝ませんよ」

 

「ま、そうだよな。ハハハ」

 

そんな会話をしていると、入口から何やら足音が聞こえてきた。

誰かが近づいてきている……?

 

「……待て、私がいく」

 

扉へ向かおうとする俺を止め、赤見さんが扉の方へと向かっていく。

その手にはカードが握られており、戦闘準備万端といった感じだった。

 

俺たちのいる部屋の前でその足音が止まる。

どうやら相手も俺たちの存在に気がついているみたいだ。

 

しばらくの沈黙の後、その扉が開かれる。

それと同時に赤見さんがカードをデュエルウェポンにセットしようとするが、扉の先の人物を確認するとその手を止めた。

 

「桂希……副班長か。なぜお前が?」

 

「赤見班長でしたか、失礼しました。今回の任務、増援という形で私も出撃しています」

 

桂希……。いつのまにこのアジトに侵入していたんだ……?

決闘機動班は近隣住宅街の警備だったはずだが、なぜ決闘機動班の桂希がここにいるのだろう。

 

「決闘機動班は……潜入任務は参加しないと白瀬班長が言ったようだが……。これは一体どういうことだ?」

 

「私もSFS所属の身。テロリストの行いを断じて許すことはできません。私の独断でテロリストへの制裁をしたいがために、班の意向に反して行動しているまでです」

 

班の意向に反して……? 仮にも副班長ともあろう人物がたったひとりでこんな危険な場所に大丈夫なのだろうか。

それに、白瀬班長にバレたら色々とまずいことになるんじゃ……。

 

「まぁ……桂希副班長のような強いデュエリストがいてくれるなら心強い限りだが……大丈夫なのか? 独断で我々と行動を共にすることは決闘機動班にとってよくないことだろう」

 

赤見さんは少し不審そうな目で桂希を見つめる。

確かに第一副班長ともあろう桂希が特殊機動班と行動を共にするということは、決闘機動班内で反感を買うおそれもある。

 

「心配無用です、赤見班長。特殊機動班の方には迷惑をかけるつもりはありません。任務のご同行、許可いただけますか?」

 

「まぁ……状況が状況だ。今ここで帰れなんて言うつもりもない。くれぐれも無茶はするなよ?」

 

「感謝します、赤見班長。遊佐もよろしく頼むな」

 

桂希は赤見さんに続き、俺にも頭を下げてきた。

"あの桂希"に頭を下げられるとなんだか少し戸惑うな……。

 

「あぁ、よろしく頼むよ」

 

俺もそう言いながら思わず頭を下げた。

 

「桂希副班長。来たところ申し訳ないが、今は第二部隊が来るまで待機していたところだ。私が扉前で張っているからゆっくりしていてくれ」

 

「そんな、赤見班長。お疲れでしょうし、それならば私が……」

 

「いや、大丈夫だ。せっかくだし、ゆっくりしていてくれ」

 

桂希は赤見さんに言われ、渋々と床に座り込んだ。

俺も立っているのに疲れてきたため、同じように床へ座り込む。

 

そうして俺たちは第二部隊が到着するまで、しばしの休息を行うのであった。

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