遊戯王Connect   作:ハシン

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Ep32 - 独眼の紫毒 後編

赤見 手札3 LP700

ーー裏ーー

ーーーーー

 ー 融

ーーモーー

ー罠裏魔ー

デント 手札0 LP3100

 

「私のターン、ドロー!」

 

赤見さんは赤い瞳をそっと引いたカードに向けた。

そして、表情を変えぬままそのカードを既存の手札に加える。

 

「あんたのターン中で悪いが、再び【捕食植物キメラフレシア】の効果を使わせてもらうぜ。俺はデッキから【再融合】を手札に加えさせてもらおう」

 

「【再融合】か……いいだろう。私は魔法カード【闇の誘惑】を発動! デッキからカードを2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。私は手札の【BF-毒風のシムーン】を除外する」

 

先ほど大暴れした【BF-毒風のシムーン】。

あのカードの効果は非常に強力ではあるが、エンドフェイズに1000ポイントのダメージを受けてしまう。

【ブラックフェザー・ドラゴン】を失ってしまい、ライフポイントも700しかない今、さすがにその効果を使うのは危険と判断したのだろう。

 

「いいカードは引けたかい? せっかく1ターンの猶予があるんだ。最後の華ってやつを存分に見せてくれ!」

 

「残念だが、私はお前などに負けるつもりはない! さらに手札から【BF-極北のブリザード】を召喚! 効果で墓地からレベル4以下の"BF"モンスターを守備表示で特殊召喚する。蘇れ、【BF-陽炎のカーム】! そして、場に"BF"モンスターがいる時、手札の【BF-疾風のゲイル】は特殊召喚できる!」

 

ーーー

【BF-極北のブリザード】☆2 闇 鳥獣 チューナー ②

ATK/1300

ーーー

【BF-陽炎のカーム】☆4 闇 鳥獣 ③

DEF/1800

ーーー

【BF-疾風のゲイル】☆3 闇 鳥獣 チューナー ④

DEF/400

ーーー

 

再び赤見さんのフィールドには多くの鳥型モンスターが展開される。

素早くモンスターを場に呼び出すことができるのが、赤見さんの使うデッキの特徴なのだろう。

 

「またわらわらと出てきたか。今度は何を出してくるんだ?」

 

「まぁ待て。まず私は【疾風のゲイル】の効果を発動。相手モンスター1体の攻撃力を半分にできる。対象は【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】だ! "ダウン・フェザー!"」

 

「半分……ほう?」

 

【疾風のゲイル】が小さき翼で竜巻を起こし、それを【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】へと解き放つ。

その竜巻に飲み込まれるともがきながらも抵抗していたが、なり止むとその攻撃力は失われていた。

 

【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】

ATK/3300→ATK/1650

 

「そしてレベル4の【陽炎のカーム】にレベル2の【極北のブリザード】をチューニング! 荘厳なる大地に導かれ、劣勢の下に顕現せよ! シンクロ召喚! いでよ、重力の力【グラヴィティ・ウォリアー】!」

 

ーーー

【グラヴィティ・ウォリアー】☆6 地 戦士 ①

ATK/2100

ーーー

 

蒼い人型をした闘士のようなモンスターが空中から出現し、拳を地面に叩きつけながら赤見さんの前に現れた。

 

「【グラヴィティ・ウォリアー】の効果発動! シンクロ召喚に成功した時、相手の表側表示モンスター1体につき、攻撃力を300ポイントアップする。お前の場には2体のモンスターがいるため、600ポイントアップし、攻撃力は2700となる!」

 

【グラヴィティ・ウォリアー】

ATK/2100→ATK/2700

 

「へっへっへ……攻撃力で超えてきやがったか」

 

「あぁ、覚悟しろ。【グラヴィティ・ウォリアー】で【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】を攻撃! "リバーサル・インパクト!"」

 

【グラヴィティ・ウォリアー】

ATK/2700

【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】

ATK/1650

 

【グラヴィティ・ウォリアー】は大きく拳を振り上げるとそのまま勢いよく跳躍し、【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】へと迫る。

 

「せっかくの反撃もその程度か? 赤見! 罠発動! 【タクティカル・エクスチェンバー】! 場のモンスター1体を破壊し、その後デッキ、墓地から"ヴァレット"モンスターを特殊召喚できる」

 

「なに……? また自らのモンスターを破壊するカードだと」

 

「その通りよ! 俺は【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】を破壊し、墓地から【アネス・ヴァレット・ドラゴン】を守備表示で特殊召喚!」

 

ーーー

【アネス・ヴァレット・ドラゴン】☆1 闇 ドラゴン ④

DEF/2100

ーーー

 

「だが、お前の場にはまだ【マグナ・ヴァレット・ドラゴン】がいる。ダメージは防げーー」

 

「いや、まだなんだなあこれが! 【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】が破壊された時、場のモンスター全てを破壊する! "ヘル・アナイアレイション!"」

 

破壊されたはずの【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】の存在した場所から紫光が解き放たれると、全てのモンスターの足元が禍々しく光り出す。

すると、場に存在していた全てのモンスターが地面に取り込まれるような形で消滅してしまった。

 

「なんだと……!? 私のモンスターが全滅……」

 

「へへへ……ハッハッハ! 無様なもんだぜ赤見? 俺がさっき手札に加えたのは【再融合】。あんたもよく知ってるだろう?」

 

「あぁ……。ライフを犠牲に墓地から融合モンスターを復活させるカード……」

 

「ご名答! さらに、装備魔法【ヴァレル・リロード】の効果で、装備モンスターが破壊された時、カードを1枚ドローできる!」

 

もはや赤見さんを守るものがなくなってしまった現状。

再び【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】を出されてしまえばどうしようもない。

手札も残り2枚。通常召喚権も残されていない中、赤見さんに打つ手はあるのだろうか……。

 

「私は……カードを1枚伏せて、ターンエンドだ……」

 

赤見さんは静かにカードを1枚伏せると、再びデントのことを睨みつける。

あの伏せカードに何か逆転の布石があるのだろうか。

いや、あってくれ。俺はこんなところで赤見さんが負ける姿を見たくない。

赤見さんがいたからこそ俺は特殊機動班に入れて人並みの生活ができている。

そして、こうしてテロリストへ戦う力も与えてくれた。

だけど、俺はまだそんな赤見さんに対して何も恩返しができていない。

 

「赤見さん! あきらめないでください!」

 

俺は思わず大きな声で赤見さんに叫んでいた。

 

「遊佐くん……」

 

「例えジェネシスの奴がどんなに強かったとしても、デュエルモンスターズを悪事に使っている奴らの行為はとうてい許されるものじゃない! 見せてくださいよ……俺たちSFS隊員の……デュエルモンスターズの正しい力を!」

 

隣で結衣が少し悲しそうな目で俺のことを見ていた気がするが、俺は気にせず赤見さんに向けて叫んだ。

赤見さんは俺の声に気づき、こちらへ目を向ける。

そして、少し優しい表情へと変えると口を開いた。

 

「ふっ、心配をかけてすまないな繋吾。だが、私が地面を這いつくばるのは、目的を完遂した後だけだ!」

 

「へへへ……かっこいいことばっかり言っちゃってよお! そんなこと言ってもお前の場にモンスターは何もいないんだぞ?」

 

「それを言うならお前も同じだ」

 

「そこが甘いんだよ赤見……。俺はエンドフェイズ時にこのターン破壊された【アネス・ヴァレット・ドラゴン】と【マグナ・ヴァレット・ドラゴン】の効果を発動! それぞれデッキから自身と異なる"ヴァレット"モンスターを特殊召喚できる効果を持つ! 来い、【シェル・ヴァレット・ドラゴン】。【オート・ヴァレット・ドラゴン】!」

 

ーーー

【シェル・ヴァレット・ドラゴン】☆2 闇 ドラゴン ②

ATK/1100

ーーー

【オート・ヴァレット・ドラゴン】☆3 闇 ドラゴン ④

ATK/1600

ーーー

 

「んな!?」

 

先ほどの【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】の破壊によって消滅した場は別の形となって蘇ってしまった。

さらに【再融合】を使えば、実際破壊されていなかったようなものとなってしまう。

対して赤見さんの場は空のまま。

デントははじめからこうなることを想定していたということか。

 

赤見 手札1 LP700

ーー裏裏ー

ーーーーー

 ー ー

ーモーモー

ー罠ーーー

デント 手札2 LP3100

 

「さぁて、お前のラストターンだ赤見! 俺のターン、ドロー! ライフポイントを800支払い、手札から装備魔法【再融合】を発動! 墓地から蘇れ、【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】!」

 

デント LP3100→LP2300

 

ーーー

【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】☆10 闇 ドラゴン ③

ATK/3300

ーーー

 

デントの前に、再び紫色に光る翼を大きく広げ【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】が出現した。

 

「くっ……」

 

「さらに現れよ。撃鉄を起こすサーキット! 俺は【シェル・ヴァレット・ドラゴン】と【オート・ヴァレット・ドラゴン】の2体をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン! リンク召喚、来い【ブースター・ドラゴン】!」

 

ーーー

【ブースター・ドラゴン】リンク2 闇 ドラゴン ②

ATK/1900

ーーー

 

「【ブースター・ドラゴン】の効果発動。場のモンスター1体の攻撃力を500ポイントアップさせることができる! 【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】の攻撃力を500ポイントアップ!」

 

【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】

ATK/3300→ATK/3800

 

十分すぎる高さの攻撃力がさらに上昇していく……。

ほぼワンターンキルできそうなくらいの攻撃力だ。

 

「さらに【ブースター・ドラゴン】が破壊された時、墓地からドラゴン族を蘇らせることができる。これで例え伏せカードが俺のモンスターを破壊するようなカードだったとしても無意味ということだ!」

 

「なるほどな……。墓地にドラゴン族モンスターは多く存在している……」

 

ライフポイントが700しかない赤見さんにとっては、ただの下級モンスターの攻撃でもやられてしまう。

戦闘ダメージを防ぐカードがなければ負けてしまうということだ。

 

「んじゃ、今度こそトドメだ、赤見! バトルフェイズ、【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】でダイレクトアタック! "インディミネイト・ストリーム!"」

 

再び口元へと凝縮された力が、紫光となって赤見さんを襲いかかる。

お願いだ……赤見さん。なんとか防いでくれ……!

 

「リバースカードオープン! 罠カード、【分断の壁】を発動! 相手の攻撃表示モンスターの攻撃力は、相手モンスター1体につき800ポイントダウンする!」

 

「なに……? 俺の場のモンスターは2体か」

 

デントの場に存在しているモンスターは2体のみ。

したがって、減少する攻撃力は1600ポイントだ。

それでは、デントのモンスターの攻撃力を下げきれない……。

 

「おいおい、笑わせんなよ赤見? それじゃ攻撃力は700以上はある。最後の悪あがきか?」

 

「まぁ慌てるなよ。【分断の壁】にチェーンして、もう1枚の罠カード【おジャマトリオ】を発動! 相手の場に【おジャマトークン】3体を守備表示で特殊召喚する!」

 

「なにぃ!?」

 

ーーー

【おジャマトークン】☆2 光 獣 ①、②、④

DEF/1000

ーーー

 

黄色と緑色と黒色をしたパンツ一丁の奇妙な二頭身ほどのモンスターがデントの場に召喚される。

とても頼りなさそうで、見た感じも気持ち悪そうな感じだが、モンスターとしては間違いなくカウントされる。

すなわち【分断の壁】の適用効果も上昇するということだ。

 

「これでお前の場のモンスターは合計5体、よってお前の攻撃表示モンスターの攻撃力は4000ポイントダウンする!」

 

【グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】

ATK/3800→ATK/0

【ブースター・ドラゴン】

ATK/1900→ATK/0

 

デントの場のモンスターは赤見さんの罠から発された光に取り込まれ、その力を失っていった。

 

「ちぃ……。しぶといじゃないか……。それでこそSFSの生き残りってところか?」

 

「そうだな。今まで私たち特殊機動班は幾度となくジェネシスの奴らと戦い続け、多くの仲間を失ってきた。だからこそ、私は諦めるわけにはいかない。志半ばで倒れた今までの特殊機動班員のためにもな!」

 

「多くの仲間……ねぇ。確かに俺たちジェネシスは欲にまみれた愚かな人間を使い大規模デュエルテロを起こしてきた。一つの目的のためにな」

 

「国家の滅亡か?」

 

「ったく、そんな悪そうな言い方するんじゃない。もっと素晴らしいものさ。まっ、あんた達に教える気はないがな……?」

 

いくらどんなに素晴らしい目的があったとしても、奴らの行為は許されるものではない。

俺たちSFSがジェネシスを殲滅することに変わりはないだろう。

 

「別に聞くつもりはない。お前を拘束できればそれでいい」

 

「やってみろっての。だけど、こうコソコソせずに表舞台で暴れられるってのはやっぱり気分がいいねぇ!」

 

「お前はやはり……」

 

「そう、これでもジェネシスの幹部ってところだ。驚いたか?」

 

やはりこのデントという男はジェネシスでもそれなりの地位にある者のようだ。

こいつを拘束できてしまえば、SFSとしても国防軍としても大きな成果をあげられるんじゃないか……?

今までのSFSの苦労が少しは報われるというのなら、これほど喜ばしいことはない。

 

「今までは国防軍の連中に素性がバレないよう表舞台ではあまり暴れられなかったが、もうその必要もない」

 

「どういうことだ……?」

 

「事情が変わったんだよ。それに……俺たちが出向かなきゃあんたみたいな奴は倒せないだろうしなぁ?」

 

事情が変わった……?

いまいちその意味がわからないが、赤見さん相手に5年間も苦戦して痺れを切らしたってところだろうか。

 

「悪いが、お前でもこの私を倒すことはできない」

 

「おいおい、この状況で冗談は言うもんじゃないぜ? もう頼みの伏せカードもない。これで終いなはずだ。手札から速攻魔法【ライバル・アライバル】を発動! バトルフェイズ中にモンスター1体を召喚できるぜ。来い、【ゲートウェイ・ドラゴン】!」

 

ーーー

【ゲートウェイ・ドラゴン】☆4 闇 ドラゴン ⑤

ATK/1600

ーーー

 

赤見さんの場には伏せカードもなければ壁モンスターもいない。

たかが下級モンスターが召喚されただけだが、その攻撃力でも赤見さんのライフポイントを削りきるには十分すぎる力だった。

 

「なに……!」

 

「ハッ! 想定外か? まぁいくらあんたらが頑張ろうと所詮は真似事に過ぎない。元々デュエルウェポンを作り出したのは我々ジェネシスなんだからなぁ! さぁ、くたばれ赤見ィ!」

 

デントが赤見さんを指差しながら力強く叫ぶと、【ゲートウェイ・ドラゴン】は自らの背中に位置する板状な物にエネルギーを溜め始めそれを赤見さんへ向かって放った。

赤見さんが……負ける……!?

 

「……笑わせるな。元々デュエルモンスターズはデュエルウェポンのために存在しているわけではないだろうが!」

 

「っへ! 知るかよ! なにを言おうとお前は負けなんだよ、赤見!」

 

「それはどうかな。私は墓地から【BF-陽炎のカーム】の効果を発動! 相手のバトルフェイズに自分フィールドにモンスターが存在しない時、自身を除外して墓地からシンクロモンスターを特殊召喚できる! 蘇れ、【グラヴィティ・ウォリアー】!」

 

「なにぃッ!」

 

ーーー

【グラヴィティ・ウォリアー】☆6 地 戦士 ③

ATK/2100

ーーー

 

【ゲートウェイ・ドラゴン】の攻撃が間近に迫っている中、間に入るようにして地面より【グラヴィティ・ウォリアー】が出現し、赤見さんの前に立ちはだかった。

 

「ちぃ……死に損ないが……。だが、メインフェイズ2にお前が大量にくれたこのトークン含めてリンク召喚してしまえば、もはや手札1枚しかないあんたに勝ち目は……」

 

「残念だがデント。もうお前のターンはない」

 

「なんだと?」

 

「【グラヴィティ・ウォリアー】の更なる効果を発動! 相手のバトルフェイズ中に相手の表側守備表示モンスター1体を攻撃表示にし、そのモンスターを強制的に攻撃させる! 起き上がれ、【おジャマトークン】」

 

デントの場にいた【おジャマトークン】が攻撃表示へと変わり、その貧弱そうな右腕を振り上げ、【グラヴィティ・ウォリアー】へと突撃していく。

 

「馬鹿な! おい……なにをしている! クソッ!」

 

【おジャマトークン】

ATK/0

【グラヴィティ・ウォリアー】

ATK/2100

 

「迎え撃て、"リバーサル・インパクト!"」

 

【グラビティ・ウォリアー】は立ち向かってきた【おジャマトークン】に思い切り拳を振り上げ、渾身の一撃を放つ。

たちまち【おジャマトークン】ははじけ飛び、消滅した。

続けて、そのままその衝撃波がデントを襲う。

 

「ぐおわっ!」

 

デント LP2300→LP200

 

「あぶねぇなったく。だが、まだ俺のライフは200残ってるぜ……?」

 

「残念だったな。【おジャマトークン】は破壊された時、そのコントローラーに300ポイントのダメージを与える効果がある」

 

「なにぃ……? んな馬鹿なあ!」

 

消え去ったと思った【おジャマトークン】が再びデントの前に出現し、デントを巻き込むようにして爆発した。

その爆発に飲み込まれ、デントは後方へと吹っ飛んでいく。

 

「ぐおあああああ!」

 

デント LP200→LP0

 

勝った……! 赤見さんが勝ったんだ!

俺は安堵したと共に自然と表情が笑顔となる。

俺たちSFSは、ジェネシス殲滅への道を一つ進むことができたんだ。

 

「赤見さん! さすがです!」

 

「赤見班長!」

 

俺たち特殊機動班のメンバーは赤見さんの元へと集まり、歓喜の声を上げる。

 

「お前ら……はしゃぎすぎだ」

 

赤見さんはその様子を見て苦笑いをしていた。

 

「よくやったぜ赤見。んじゃこいつは任せておきな」

 

気が付くと郷田さんはデントを縄で縛り上げ、その体を背負っていた。

 

「ありがとう郷田。そいつの管理は任せていいか?」

 

「任せろや。普段の筋トレの成果見せてやるぜ!」

 

筋肉質な郷田さんにとって、男一人を背負うくらいはどうということはないようだ。

肝心なデントの様子だが、うめき声を上げながら郷田さんの背中でもがいている。

だが、デュエルでの敗北ダメージでろくに動けない様子だった。

 

「さて、まだ安心はできないぞ。今、外では偵察警備班が戦ってくれている。すぐに援護に向かわなくては」

 

そうだ。外には大量のテロリストが襲いかかっていると言っていた。

俺たちもすぐに増援に入らないとやられてしまうかもしれない。

 

「赤見班長。すぐに向かいましょう! ここでゆっくりしている暇はありません」

 

「あぁそうだな結衣。さっそく向かうとーー」

 

その瞬間、赤見さんのデュエルウェポンから通信音が鳴り出した。

まさか外の宗像班長だろうか……。何か嫌なお知らせでも……。

 

「これは……決闘機動班か……? こちら特殊機動班、赤見だ」

 

「赤見班長! 任務中すみません! 決闘機動第4班の野薔薇です! 今、大丈夫ですか?」

 

野薔薇副班長か……。このタイミングにどうしたというのだ。

決闘機動班だから周辺の警備任務にでもついているのだとは思うが……。

 

「あぁ、大丈夫だが……そんなに慌ててどうした?」

 

「イースト区の周辺警備を行っていたのですが、突如デュエルテロが発生したんです! かなりの規模で私たちだけでは手が回らない状況でして……増援がいただければと。そちらも潜入任務で大変なのは理解していますが、このままではイースト区の住民の命が……」

 

どうやらこのアジトだけでなく、イースト区全体での規模までデュエルテロは発展してしまっているようだ。

外はそれほどまでに大変なことになっているのか……!

 

「こちらは任務が完了したところだから、今すぐにでも向かいたいところだが、あいにくこちらもアジト周辺を襲撃されて、退路がなくなってしまったところでな……。すまないが協力できそうにない……」

 

「そう……でしたか……。わかりました。私たちでなんとかしてみます」

 

その声はどことなく自信なさげな様子であった。

相手の規模がどの程度だかわからないが、あの野薔薇副班長が増援を欲しがる程ということはよほどのことだろう。

 

「いや、待ってください。赤見班長」

 

すると俺の横にいた桂希が赤見さんへと声をかけた。

 

「どうした? 桂希副班長」

 

「一つ提案があります」

 

桂希はそう言うと自らのポケットより2枚のカードを取り出した。

 

「ここに【空間移動】のカードがあります。これを使えばここのアジトから脱出し、外の決闘機動班の援護に行くことも可能かと」

 

「それは……この間機器開発班が発表していた最新カードじゃないか! なぜ君が?」

 

「機器開発班よりいただいたものです。この緊急事態、使わざるを得ないかと」

 

そんな便利なカードがあったのか……。

それを使えば確かにここから脱出し、住宅街の救援に向かえそうだ。

だが、そのカードは2枚しかない。ってことは行けるのは二人だけということだろう。

 

「なるほどな。だがそのカードは2枚しかないようだが……」

 

「ええ。なのでここから二人、決闘機動班の援護に向かうというのはどうかなと思いまして」

 

「いや待てよ! 桂希!」

 

桂希の提案に待ったをかけたのは颯だった。

 

「ただでさえこっちだって外の敵が多すぎて全滅するかもしれねぇって時に、わざわざ決闘機動班の援護なんて行ってる余裕ねぇだろ! お前らの都合で考えてるんじゃねぇ!」

 

「なるほど。確かに一理はあるな。だが、このままでは特殊機動班の作戦によって、決闘機動班が全滅した。なんて情報が本部に流れる可能性があるぞ? さらには援護にも来なかったとなると今後の特殊機動班の立場はどうなるだろうな?」

 

「てめぇ……ふざけやがって……!」

 

颯が怒っているのもわかるが、桂希が言っているのも間違いない話だ。

桂希の言い方に嫌味っぽさは感じられないし、俺たち特殊機動班のことを考えてくれて言ってるんだと思う。

颯も結衣も決闘機動班のことが嫌いだ。それに郷田さんはデントの管理という重荷がある。

また、赤見さんがいなくてはこの作戦の指揮が取れなくなるだろうし、ここは俺が行くべきだろう。

 

「桂希。それなら俺が向かおう」

 

「おい、繋吾……! マジで言ってんのか……!」

 

「あぁ。赤見さん、行っても問題ないですか?」

 

「うーん……」

 

赤見さんは腕を組んで考え込んでいるようだった。

 

「大丈夫ですよ赤見班長。遊佐の命はなんとしてでも守ってみせますから」

 

「桂希……しかし……」

 

「赤見さん。俺なら大丈夫です。信じてください」

 

俺は赤見さんの目を見つめながら力強く言った。

その視線に気づいたように赤見さんは口を開いた。

 

「わかった。繋吾、くれぐれも無茶するんじゃないぞ?」

 

「はい。特殊機動班の力、見せてやりますよ!」

 

俺は力強く頷き、桂希から手渡される1枚のカードを受け取る。

 

「これだ遊佐。これをデュエルウェポンにセットすると指定した場所に空間移動できる。座標の指定は私の方でやるから安心してくれ」

 

「わかった」

 

桂希は俺のデュエルウェポンを操作し、その座標の指定とやらをやっているようだ。

俺にはいまいち何が起きているのかよくわからない。

 

「遊佐くん。気をつけてください。やられでもしたら承知しませんから」

 

「絶対生きて帰ってこいよ繋吾! こっちは俺たちでなんとかするからよ!」

 

「あぁ、任せてくれ。お前たちもテロリストなんかに負けるなよ」

 

「この上地 颯様が負けるわけねぇだろ? ハハハ!」

 

あの調子なら大丈夫そうだな。なんといってもジェネシスの幹部を打ち破った赤見さんがいるんだ。

このアジトに群がるテロリストはなんとかしてくれるはずだろう。

 

「繋吾ちゃん。このデントってのはちゃんと持って帰るからあとで一緒に尋問してやろうぜ!」

 

「あはは……。ぜひお願いしますよ。郷田さん」

 

ちょうどこのデントって奴からは山ほど聞きたいことがあるところだ。

無事に任務か完了した時の楽しみにしておこう。

 

「それでは繋吾。またあとで必ず合流しよう」

 

「はい、赤見さん。行ってきます」

 

俺は特殊機動班のメンバーに挨拶を済ませると桂希の方を向いた。

 

「さて、準備OKだ。それじゃいくぞ遊佐。魔法カード【空間移動】発動!」

 

桂希に合わせて俺も【空間移動】のカードをセットする。

すると俺の体は足元から徐々に消滅し始め、やがて視界が真っ白へと変化した。

 

なんだろう。雲の中にでも入ったようなふわふわした感覚。

このまま寝ていたいような心地よい感じだ。

 

だが、そんな時間も長くは続かず、突然地面に落とされるような落下した感覚とともに、視界が別の景色へと移り変わった。

 

外だ。

既にあたりは真っ暗だが、ところどころの燃えている家屋の光であたりは見渡せるくらいには明るかった。

 

「遊佐。大丈夫か?」

 

隣には桂希がいた。

どうやら無事に空間移動できたみたいだ。

 

「あぁ。にしても随分とひどい有様だなこれは」

 

燃え盛る住宅街と、ところどころで聞こえる悲鳴と爆発音。

先日の襲撃を思い出すかのようだ。

 

「こうしてはいられない。すぐに向かうぞ、遊佐!」

 

「言われなくても!」

 

俺と桂希の二人は、燃え盛る住宅街に向かって駆け抜けていった。

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