遊戯王Connect   作:ハシン

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第四章 国防軍出張
Ep37 - SFS本会議


イースト区のアジト襲撃作戦より1週間後。

俺を含めた負傷者はSFSの治療班にお世話になり、なんとか傷も完治することができた。

だが、当然傷が大きく未だに回復しないものもいれば、ジェネシスの奴らに吸収されてしまって目を覚まさないもの。

そして、命を落としてしまった人もいた。

 

先日の大襲撃ほどではないが、真跡シティイースト区ではかなり大きな被害となり、今回の被害の原因となった特殊機動班立案のイースト区アジト襲撃事件については、ニュース等で話題となっていた。

全てにおいて批判するものではなく、ジェネシスの悪質な行為を叩く記事もあれば、SFSの不手際で作戦が失敗したことを叩く記事もあり、少なくともSFSとしてはあまり良いものではなかった。

 

そんな状況下からSFSでは、この問題についての社内会議をとりおこなうこととなり、今俺たちはその会議室前の椅子に座り、会議が始まるのを待っていた。

 

何はともあれ、今回の作戦立案は特殊機動班。

したがって、この会議には班長の赤見さんのみならず、班員全てが出席とされた。

 

俺の隣には颯と結衣の姿があり、下を向きながらおとなしく椅子に座っていた。

その様子は緊張から来るものなのか、それとも不安から来るものなのか。

それとは逆に怒りから来るものなのか。その表情からはわからなかった。

 

しばらく沈黙が続いていたが、やがて会議室の扉が開き、郷田さんが会議室の中から出てくる。

 

「お前ら、そろそろ今回のイースト区アジト襲撃作戦の話が始まるみたいだぜ」

 

その声を聞き、俺たちは会議室の中へと入る。

 

その会議室はSFSの中でも最も広いとされる会議室であり、4~50人は平気で入れる広さだった。

中にはSFS社長の生天目さんを始め、見たことのない多くの人が座っていた。

それぞれの机に肩書きが書いてあったが、開発司令部長、駐屯警備部長、そして我々の所属する決闘機動部長の神久さんもいるあたり、SFSの上層部の人間の大半は参加しているようだ。

さらに見回してみると、赤見さん、宗像班長、紅谷班長の作戦参加班長達。

そして、決闘機動班の白瀬班長。そして、それぞれの副班長がずらりと並んでいた。

これだけの人がいる場で今回の作戦でのことを議論していくわけだ。

 

だが、その内容は決してジェネシスに対してどうこうしていくという名目の会議ではない。

今回の一番の議題はなんといっても"特殊機動班の存続について"である。

 

今回の被害状況からして、SFSとしての今後の方向性を出そうという話になってしまったのだ。

 

SFS自らが進んでのジェネシスの調査から手を引き、あくまで警備や救助をメインとしていくか。

それともジェネシスの調査を専門の班である"特殊機動班"を用いて国防軍と共に続けていくか。

 

それを今回の作戦参加者の意見と客観的な意見を聞いた上で、生天目社長が判断を下すということとなっている。

 

俺たちは郷田さんの案内についていき、赤見さんが座る少し後ろ側の席へと座る。

まもなく会議が始まるみたいだ。

 

「それでは、第31回SFS本会議を開始します」

 

そう声を上げた中年の男性の胸元には司令直属班のマークがついている。

エリート集団と呼ばれる司令直属班。

やはり、大きな会議ともなると最上位である班の人が取り仕切っているみたいだ。

 

「それでは最初に社長よりご挨拶をお願いいたします」

 

司会の人に言われ生天目社長はゆっくりと立ち上がると、自席のマイクに口を近づける。

 

「SFS隊員の諸君。この度はお忙しいところ集まっていただいて申し訳ない。今回は、先週行われた特殊機動班主体のイースト区アジト襲撃作戦についての議論と合わせ、今後のSFSの方針を決めていきたいと思っているところだ。まず、SFS上層部から今回の事件の問題部分を伝え、特殊機動班からは今回の作戦の成果。それを踏まえて最終的な審議に入ろうと考えている。よろしくお願いします」

 

生天目社長は発言を終えると再び自席へと座った。

そして、再び中年の男性が口を開いた。

 

「ありがとうございます。それではまず最初に開発司令部長より今回の件についてお話願います」

 

「はい」

 

ちょび髭を生やした黒髪の男性が司会の人に言われて返事をしながら手元の書類を開き始めた。

あれが……開発司令部長であり司令直属班長の黒沢さんか……。

 

「今から1週間前、真跡シティイースト区にて中規模クラスのデュエルテロが発生しました。出撃した隊員の話によると相手は国家指定テロ組織のジェネシスであることがわかっております。国防軍が遠方出撃の手薄な中のデュエルテロだったことから、戦力不足が目立ち被害はかなり出ていると聞いております」

 

どうやら決闘機動班の持ち場であった住宅街は相当な被害が出ていたみたいだな……。

完全にジェネシスの奴らにしてやられたってわけか。

 

「事の発端はこのデュエルテロの少し前にあった小規模デュエルテロ。そちらのデュエルテロをきっかけにジェネシスの情報を掴んだことから、特殊機動班を中心にジェネシス襲撃作戦を計画。そして、決闘機動部内で部隊を編成し、作戦を実行したところまではよかったが、そこで奴らの罠にかかる形となりイースト区は甚大な被害が出てしまった。ここまでで間違いはありませんか? 神久部長?」

 

「ああ。その通りだ。作戦実行前に特殊機動班、偵察警備班、救助護衛班より話は聞いている」

 

対して発言を求められたのは決闘機動部長であり、決闘精鋭班長である神久さんだ。

我々の味方をしてくれるのかは……まだわからない。どうなるんだろうか。

 

「今回の問題点は2つあります。まず一つ目は、かの組織ジェネシスの力を見誤っていたこと。奴らの力は未知数。国防軍の力を持ったとしても未だに解明できていない。それに対して民間軍事組織単独での任務を実行したことは浅はかな決断かと思いますがどうですか? 神久部長」

 

「確かに今回の作戦では戦力差に押され敗北という結果だった。だが、当初の作戦計画では、あくまで奇襲であり、相手に気づかれずにアジトを抑えるというものだった。特殊機動班の作戦説明では、SFSが動いていることはジェネシスには気づかれていなかったとの説明を受けている。それでは戦力差など問題にはならないと判断したまでだ。それに外部部隊との連携。決闘機動班の住宅街警備と作戦には抜かりなかったはずだ」

 

確かに当初の計画ではそこまで交戦するつもりではなかった。

結果的にジェネシスが想像以上にこちらの情報を把握していて、俺たちSFSの読みが甘かったのが原因だ。

 

「つまり作戦実行には否はないということですか。では質問を変えましょう。なぜ、奇襲が可能であると判断したのですか? 神久部長がご存知なければ……偵察警備班長。お答え願えますかな?」

 

黒沢部長は変わらずに目を光らせながら、一定のトーンで話を進める。

対して宗像班長は頭を掻きながら自席のマイクへと顔を近づけた。

 

「それは……相手に見つからないように付けていった結果、ジェネシスのアジトを発見したからですよ。それから張り込みを続けていましたけど、一切こちらの正体を怪しまれるようなことはなかった。おまけに、情報を掴んでから我々が作戦実行までに要した期間はたったの2日間だ。気づかれないために即日決行したんですよ。我々は」

 

「なるほど。ということは、最初の小規模デュエルテロ。あれから既にこちらを罠にかけるつもりで起こしたのかもしれませんねえ。その可能性は想定できなかったのですかな? 神久部長」

 

「私は小規模デュエルテロの実態を掴んでいない。あの小規模テロは偵察警備班のみで処理したはずだ。詳細がわからない以上、判断のしようがないだろう」

 

神久部長は赤い眼を光らせながら黒沢部長へと言い返した。

だが、その回答では当然、話が降ってくるのは偵察警備班長だ。

 

「ではどうかな。偵察警備班長」

 

「……確かに、怪しいとは感じてましたよ……。だけども……」

 

宗像班長は言葉に詰まる。

罠かもしれないが、それでもジェネシスの情報を伝えた理由。

それは何よりも宗像班長と赤見さんの関係からだろう。

宗像班長は赤見さんの目標であるジェネシスの殲滅を協力したかったからこそ、その情報を伝えた。

そして、赤見さんはそれが罠である危険もわかった上で実行した。

それは……とてもじゃないがこの場で言ったら私的な理由とされ非難されるに違いないだろう。

 

「黒沢部長。それに対しては私から」

 

そこに助け舟を出す形で赤見さんが声を上げた。

 

「特殊機動班長。今回の議題はあなたの処遇にも関わる。慎重に答えていただきたいものですな」

 

「ええ。承知しております。今回、私が作戦を立案をしていく中で当然相手の罠である可能性は想定していました。それでも私は実行したまでです」

 

赤見さんの発言に対して、会議室内が少しざわつく。

だが、その後に黒沢部長が口を開くとまた静かになった。

 

「危険があることを承知でなぜ実行したのですか。我々SFS隊員が無駄死にすることも考えられたでしょう? 結果、わずかな情報のために甚大な被害が出た。理由をお聞かせいただけますか?」

 

「理由は言うまでもありません。私はSFSの特殊機動班長です。特殊機動班の現在の任務は国家指定テロ組織ジェネシスの情報をいち早く掴み、そして最終的には殲滅すること。そのために活動することについては何ら異論はないはずです。被害が出ることを恐れてジェネシスに立ち向かわなければ我々が存在する意味がない。それに、いつまでたってもデュエルテロはなくなりません。だからこそ作戦を決行しました」

 

「なるほど……」

 

黒沢部長はその発言を聞き、何度か頷いた。

理解してくれたのだろうか……。このまま終わればいいところだが……まだそうもいかないだろう。

 

「では、そろそろ二つ目の問題点に移りましょうかね。そもそもSFSにとって特殊機動班とは必要なのですかね? 随分と任務に真面目な赤見班長。あなたは他の班でも十分任務をこなしていけるでしょう。ですが、一度定員不足で廃止になりそうだった特殊機動班を復活させてまで継続させた。なぜ、そこまで特殊機動班にこだわるのですか? 必要性を伺いたい」

 

必要性って……。SFSはテロ組織を壊滅するために活動しているんじゃなかったのか。

それならば凶悪なテロ組織、ジェネシスに対する部隊として特殊機動班は必要だろう!

 

「SFSの活動目的はデュエルテロ組織を壊滅させ、世の中の住民の皆が……特に我々の身近なところで真跡シティの住人が安全に暮らせるためにテロリスト戦い続けることにあります。ですが、ジェネシスという大きな組織がある限り、この戦いはなくなりません。ジェネシスという組織を壊滅させない真跡シティに平和は訪れないはずです。そのために特殊機動班が存在し、戦っているのですよ」

 

「それは綺麗事だよ。赤見班長」

 

「なに……?」

 

黒沢部長から告げられた一言で赤見班長の目つきが変わる。

 

「確かにそれができればいいだろう。だが、現実を見たまえ。実際問題戦ってみたらボロ負け。よかれと思って行った作戦で実際には真跡シティの住人に被害が出てしまっている結末だ。SFSじゃジェネシスと対等に戦う力なんてないのだよ。それであれば、ジェネシスの調査から手を引き、防衛をメインとした現実的な戦い方をしていった方がいい」

 

「ですが、我々は今回ジェネシスの幹部と思われる人物をデュエルで打ち破り、その人物の情報を得ています。それだけでも今後に繋がる十分な戦果です」

 

「だが、それも結局は決闘機動班をはじめとした多くの隊員の犠牲の上だろう? それに対して特殊機動班は全員揃ってピンピンしているようだが……それ以外にもSFSはかなりの被害を受けているのだ。その程度の情報と釣りあうというのか君は」

 

SFSの中でも命を落としたり、吸収されてしまった人もいると聞いてる。

確かにそれを聞いてしまうと、たかがジェネシスのわずかな情報なんて……というのは思っても仕方がないだろう。

だが、だからといってジェネシスと戦うことをやめたら……誰がジェネシスと戦うんだ……。

 

「決闘機動班、偵察警備班、救助護衛班の皆には大変ご迷惑をおかけしています。ですけど、我々の力が奴らの幹部にも通用したという一つの結果。そうとも捉えられませんか?」

 

「赤見くん。君の言いたいこともよくわかるが、私たち決闘精鋭班、そして駐屯警備班も今回撤退時には出撃しているんだ。これだけ動いていてその程度の成果では、SFSとしては厳しいだろう」

 

ついに神久部長までもが赤見さんに対して厳しい意見を言った。

この現状じゃ決闘機動部長の立場としてはやむを得ないということか……。

 

「我々としても今回の撤退においては、駐屯警備班だけじゃなく運搬班も出している。そして何よりも負傷者増加による治療班の経費が増加傾向にあるのだ。駐屯警備部としても特殊機動班の活動でこれ以上経費が大きくなるのは、あまり好ましくない状況だ」

 

そして、駐屯警備部長である斎藤さんまでもが赤見さんに対し声をあげた。

これではほぼ全班が特殊機動班の撤廃を求めているようなものじゃないか!

こんなところで俺は自らの目的を失ってしまうのか……。

 

「赤見班長。このとおり君たち特殊機動班の活動は我々にとってはデメリットが大きすぎるのだよ。さて……今回、一番被害が大きかったのは決闘機動班ですが……。白瀬班長はどうお思いですかな?」

 

黒沢部長は少し呆れた顔をしながらも白瀬班長へと問う。

白瀬班長は腕を組み、ずっと何かを考えていたようだったが、黒沢部長に話を振られその口を開いた。

 

「確かに我々決闘機動班は非常に大きな被害を受けている。それに、出撃した副班長達からも大きなクレームを受けている状況だ。神久部長や斎藤部長、そして黒沢部長の言うとおりSFSとしてのデメリットは大きく、撤廃した方が我々の身のためというのは頷けますな」

 

大体予測はできていたが、決闘機動班が俺たちの味方になるはずはないか……。

そう諦めていたが、まだ白瀬班長は言葉を続ける。

 

「ですが、このような報告も受けましてね。特殊機動班は任務の失敗こそはしましたが、決闘機動班の救出に駆けつけてくれたようだ。それに対して特殊機動班に感謝する声があがっている。そして何よりもテロリスト幹部をデュエルでうち負かせた2名の隊員がおり、この中規模デュエルテロにおいてひとりも死傷者を出していないのは特殊機動班だけだ。これは一つ評価するところだとは思うがね。このような優秀な部隊を放棄することは、今後テロリストへ対する抑止力を失うとも考えられる」

 

白瀬班長から想定外の発言が出てきて思わず驚く。

今の内容だと、特殊機動班の撤廃には賛同しないというように聞こえたぞ……。

ふと、決闘機動班を見ると野薔薇が俺たちの方を向いてウィンクしているのが見えた。

なるほど。もしかしたら野薔薇が白瀬班長に掛け合ってくれたのか。

 

「ほう。白瀬班長。それは特殊機動班が他の班員をうまく利用して生き残った可能性だってあるのではないか?」

 

「黒沢部長。恐れ入りますが、もう少し報告書に目を通していただきたい。特殊機動班はアジトに先行部隊として潜入しているのだよ。そこから生還しただけでも決闘機動部内では評価するところだと思いますが……。神久部長はどう思いますかな?」

 

「ふむ……そうだな。これだけ被害を出したジェネシスのアジトだ。よほど危険だったのだろう。だが、白瀬班長。それなら特殊機動班のメンバーをそのまま他の班に合併させるというやり方もある」

 

「それは方法としてありますな。ですが、それについては直接赤見班長に聞かれたらどうかな? 神久部長」

 

白瀬班長に言われて神久部長はまっすぐに赤見班長を見る。

そして、軽くため息をつくと、口を開いた。

 

「わかってるよ。赤見くん。君は特殊機動班以外に行く気はさらさらない」

 

「もちろんです神久部長。私には成すべき使命がありますから。そこで皆さんに一つ提案をさせていただきたい」

 

赤見さんは真剣な眼差しで黒沢部長を見つめる。

何か強い意志が宿っているような……。桂希がみたら喜びそうだ。いや、奴も今ここにいたな。

 

「何かな? 赤見班長」

 

「今後は特殊機動班が作戦を実行する時は単独で任務を行います。そうすれば皆さんには迷惑がかからなくなるでしょう。それならば問題はないはずです」

 

単独って……今後は5人でジェネシスと戦うってことか!?

いくらなんでもそれは無理が……だけど、とりあえず特殊機動班を存続させるには一番言いやすい提案かもしれない。

 

「仁く……いや、赤見班長! いくらなんでもこれだけの被害を出したジェネシス相手にその班員だけで戦えるわけ……」

 

「紅谷班長。これは私の意思表示だ。できるかできないかの問題ではない」

 

思わず紅谷班長がツッコミを入れたようだが、赤見さんの表情は真剣そのものだ。

これは何を言っても曲がらないだろう。

 

「はぁ。君の特殊機動班の執着心には驚いたよ赤見班長。SFS全体に迷惑がかからなければいいが、神久部長。決闘機動部としてはどうですか?」

 

「ここまでの覚悟があっての活動ならば問題ないだろう。だが、先ほど白瀬班長の言うとおり貴重な部隊を失うのは決闘機動部としては手痛いことだ。必要に応じて部内でサポートはさせてもらう」

 

「神久部長。それでは結局今までと変わらないではないですか? 必要に応じて他班が特殊機動班に力を貸すってことですよね?」

 

「今回の件で、赤見にも新しい覚悟ができただろう。同じようなことがもう一度でもあれば今度こそ特殊機動班は終わりだ。今回はSFSにとってはマイナスだったかもしれないが、この話を国防軍へ話せば良い反応がもらえると思うぞ? 黒沢部長」

 

神久部長は少し口元をにやけさせながら言った。

確かに、ジェネシスの情報を国防軍に伝えれば壊滅への道が近づくかもしれないな。

 

「それにだ。今回住宅街の被害が大きくなってしまったのはなんといっても国防軍の遠方出撃の影響が大きい。タイミングが悪かったというのもあるはずだ。今回の成果も加味して、今この会議での特殊機動班撤廃は決断はできないと思うぞ」

 

「神久部長……。しかし……」

 

徐々に黒沢部長の勢いが弱まっていく。

今がチャンスを思ったのか、再び赤見さんが口を開いた。

 

「今回の成果の報告次第では、今後国防軍からも強く支援を受けれるかもしれません。そうすれば特殊機動班の活動目的であるジェネシス壊滅に向けては大きな前進だと考えます。それも踏まえた上でご決断いただきたく思います!」

 

赤見さんは言い切ると、生天目社長へと視線を向けた。

生天目社長は会議室をぐるりと見渡し、自らのマイクに顔を近づける。

 

「もう発言や提案はないかな?」

 

その問いに対してしばらくの沈黙が続く。

やがて、誰からの問いもないと判断したのか生天目社長は再び口を開いた。

 

「特殊機動班については、今後可能な限り現実性のある作戦立案を行い、死傷者が出ないように努めること。住民に被害が出そうならば神久部長、そして白瀬班長でストップかける。部内での連携をうまくとって任務にあたっていただきたい。特殊機動班はSFSとしては無駄な要素かもしれないが、デュエルテロについては金やデュエル勝ち負けだけじゃ判断できない。無理のない活動ができるよう適度に監視しながら開発司令部、駐屯警備部共々協力してやってくれ。なんといっても決闘機動部は我々SFSの最前線。顔といっても過言ではないからな」

 

「わかりました」

 

生天目社長に言われ、部長ら3人は頷いた。

ひとまず、特殊機動班撤廃については、なんとかなりそうだ……。よかった。

 

「ジェネシスとの戦いも先が見えてきたな。赤見班長。引き続きよろしく頼むよ」

 

「はい。必ずジェネシスを壊滅してみせます」

 

「頼んだよ。さて、今日はこんなところか。黒沢部長」

 

「はい、生天目社長。田中、閉会の挨拶を」

 

黒沢部長に田中と呼ばれた司会をやっている中年の男性は急ぎ、マイクを手に持った。

 

「それでは以上で第31回SFS本会議を終了いたします。長時間ありがとうございました」

 

その司会の人が言い終えると各々席を立ちはじめる。

とりあえず俺たちは今までどおり活動できるんだよな……?

 

「さすがだな赤見。あの場でよく喋れるわ」

 

「ハハハ、実際頭の中真っ白だったぞ郷田」

 

赤見さんは笑いながら言う。緊張がほぐれてホッとしてそうだ。

 

「赤見さん、ありがとうございます! 俺たちの特殊機動班を守ってくれて」

 

「何を今更言ってるんだ繋吾。せっかくジェネシスの情報を掴んだのにやめるわけがないだろう?」

 

「本当になくなってしまうのかと思って、せっかくこれからの目的を見い出せたというのに不安で……」

 

俺にとってずっと叶わなかった目的。

5年前、俺から全てを奪っていったジェネシスによるデュエルテロ。

それに対する復讐は力がなかった俺一人では到底できることではない。

そんな中、赤見さんとこの特殊機動班は不可能であった復讐を導いてくれている。

もし特殊機動班がなくなったら俺の人生は再び5年前の降り出しに戻されてしまうだけだ。

そう思うと今日の会議ほど終わったあとに安心したものはないだろう。

 

「安心しろ繋吾。例え特殊機動班がなくなったとしても、私はジェネシスと戦い続ける。SFSじゃなくなったとしてもだ」

 

「赤見さん……!」

 

「繋吾ちゃん。特殊機動班のメンバーの思いはみんな一つだぜ。今日仮に特殊機動班が撤廃となっても、おそらくみんな赤見についてくだろうよ。なあ?」

 

郷田さんに問われると、結衣と颯は軽く頷き答える。

 

「当たり前です。赤見班長がいなければ私はここにいませんし、何か大きな使命があるのだとしたら私はその力になります」

 

「俺だってそうだ。そもそも決闘機動班に行くのはもうごめんだしな。それに結衣ちゃんが……」

 

颯は何か言いたげだったが、周りの雰囲気を察したのが言葉を止めた。

まぁやつにとっては結衣がいることがやっぱり大きいんだろうな。

 

「本当に最高の班だなここは。よし! 今日からまた心機一転。頑張っていくぞ!」

 

「はい!」

 

赤見さんの声にあわせて俺たちは拳を突き出しながら大きく返事をした。

俺たち特殊機動班とジェネシスの戦いはまだはじまったばかりだ。

絶対に壊滅してみせる。ジェネシスというデュエルテロ組織を!

そして、その時にはこの5人のメンバーで必ず生還してみせる……!

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