遊戯王Connect   作:ハシン

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Ep38 - エメラルドのペンダント

SFS内の疑惑も過ぎ去った翌日。

俺たち特殊機動班のメンバーは特殊機動班室へ集まってきていた。

 

SFS開発司令部からも目を付けられてしまっている以上。これ以上大きな損害を出すことは特殊機動班の存続に影響が出てしまう。

そんな状況もあって、今後の活動方針を決めていきたいとの赤見さんの意向もあり、一度班内で話し合いをしておこうという話になったのだ。

 

それになんといっても先日のアジト襲撃事件でのテロリスト幹部と思われる人物との交戦。

そして、ペンダントの謎の発光。

これについても報告としてはあげたものの、赤見さん達との細かな話というのはまだできていなかった。

 

対して赤見さん達はデント以外にも幹部と思われる人物と遭遇したらしいが、不思議なことに交戦することはせずに撤退したとの報告内容だった。

いったいなにがあったのか。俺としては気になっているところだ。

 

「さて、みんないるな?」

 

赤見さんが周りを見渡しながら言った。

 

「おう、この間の詳細報告と今後の活動方針を決めるんだったな? 赤見」

 

「あぁ。やはり報告書だけでは書ききれないところもある。それに今回の話はあまり広めたくなくてな。あえて報告書には書いていない部分がある。それを改めて特殊機動班内で共有しておきたい」

 

あまり広めたくない……? 確かに赤見さんの報告内容は、敵の幹部が出現し、デントを解放することで撤退していったと書かれていた。

アジト周辺の交戦はSFS側が不利と聞いていたのにわざわざ撤退するのは変だと感じてはいたが、何か隠していることでもあったのか。

 

「赤見さん。何か……報告書に書けなかったことでも起きたんですか?」

 

「……繋吾。お前のために載せなかったんだよ。赤見班長は」

 

「なに……? 颯、それはどういう……」

 

「遊佐くん、上地くん。静かにしてください。それは今から赤見班長が話してくれますから」

 

結衣に止められ俺はやむなく口を閉ざす。

報告できない内容って俺が関係しているのか……?

 

「すまないな、結衣。繋吾から話を聞く前にまずは私たちの方から話させてもらおう。繋吾と別れた我々は外の部隊の救援に行くために増援として加勢した。だが、その状況は真っ向勝負すれば全滅するほど事態は悪くてな。そんな中でも我々は戦闘を継続しようと戦おうとしたところにネロという一人の幹部が現れた」

 

「それは……報告書にもあった幹部とは思えない小柄な青年だった奴ですね。そいつは何やら拘束したデントを引き渡す代わりに部隊を撤退させるという状況から考えると不自然な交渉をしてきたとか……」

 

「あぁ。確かに交渉内容に違いはない。だが、デントの引渡し以外にももう一つ彼らの要求内容があったんだ」

 

なるほど。それが報告書には書けなかった要求内容か。

 

「一体なにが……?」

 

「エメラルドのペンダントの在り処だ」

 

「エメラルドのペンダント? それってもしかして俺のつけているこれですか?」

 

エメラルド色のペンダントならいくらでもあるだろう。

それにこのペンダントはなんの変哲もない……いや、俺もついこの間まではそう思っていた。

だけど、この間のデュエル中の謎の発光。もしかしたらこのペンダントには何かあるのかもしれない……。

 

「あぁ、奴らジェネシスは……繋吾。お前のペンダントを狙っている」

 

「いや……でもエメラルドのペンダントなんていっぱいあるじゃないですか! これではない可能性も……」

 

「繋吾。お前も身に覚えがあるんじゃないか? お前の報告書を見る限りただのペンダントではないことは自分が一番よく知っているはずだ」

 

もしかして赤見さんはペンダントの存在を前々から知っていたのか……。

そういえば赤見さんと初めてSFSで会話した時、このペンダントに触れてきたっけ……。

 

「……赤見さん。このペンダントについて何か知っているんですか?」

 

「まぁ……。その前に繋吾。お前の報告も改めて確認しておきたい。野薔薇を救出し、オリバーというテロリストと交戦。その時、そのペンダントが光ったんだったな」

 

「はい。このペンダントが光ったと思ったら俺のデッキの一番上のカードが光り出して、そこにはデッキに入れてないはずのカードがありました。俺はそのおかげでオリバーとのデュエルにも勝てて……」

 

「なるほどな。ただのペンダントではないのは間違いないだろう。そして、その後はリリィというテロリストが現れ撤退を余儀なくされた。その後は我々と合流という形か」

 

「報告書のとおりです。それよりも赤見さん、ペンダントのことを知っているんですか? それになぜジェネシスがこれを狙っているんだ……」

 

俺が一番気になっているのはそこだ。

ジェネシスの目的に関連することなのだろうか。

 

「繋吾。お前の父親はどんな仕事をしていた?」

 

「俺の……父さんは、デュエルテロを起こすテロリストと戦う仕事をしていました」

 

「実はお前の父親はな、SFS所属だったんだよ。昔少しだけお前の父さんからペンダントの話を聞いたことがあってな」

 

父さんはSFSにいたのか。まさか赤見さんとも面識があったとは……。

 

「そのペンダントには大きな力が宿っていて、身に付ける者を守る力があるとか。遊佐という苗字、そして胸元のペンダント。それを見た時すぐにあの人の家族であると予想はしていた」

 

「赤見さん……父さんのことを知っているんですか! 5年前の真相は……!」

 

「いや……。私が知っているのは、5年前の作戦の時に戦死したという報告だけだ。すまない」

 

「そうですか……」

 

まぁ同じSFSでも色んな班があるし、同じ班でもなければ細かい状況なんてわかるはずがないか。

 

「あとなぜジェネシスがペンダントを狙っているか……残念ながらそれもわからない。だが、繋吾に起こした不思議な力。それが狙いなのかもしれないな」

 

「確かに……。カードを書き換わるなんて正直驚きました。これを何かに利用するために狙っているのかもしれない……」

 

何か強力な力が宿っていることに間違いはない。

なんといってもデュエルウェポンで様々な悪事を起こしている組織だ。何をしでかすかわかったもんじゃない。

 

「だけど赤見班長。もしジェネシスの奴らがそれを狙っているのならそれを隠しておけばいいんじゃないですか?」

 

「確かに颯の言うとおりどこかに隠せば繋吾は狙われなくはなるだろう。どう思う繋吾?」

 

これは父さんからもらった大事な形見だ。

いくら狙われているからといっても、どこかに置いておくなんてできない。

 

「これは俺にとって大事なものです。それに特殊機動班の任務がジェネシスと戦うことならば狙われることで相手をおびき出せる。好都合じゃないですか?」

 

「そう言うと思ったよ繋吾。自ら攻め込まなくても相手から来てくれるということは今までよりも戦いやすくなるしな」

 

もちろん俺がいることでSFSが狙われたりしたらまたSFS全体に迷惑になることになり兼ねないが……。

だからこそ、赤見さんは報告書からこの記述を抜いたんだろうな……。

 

「そこでだ、今後は繋吾の命が奴らに狙われる可能性もある。今後の作戦においては、繋吾を一人にしないよう注意して行動するようにする」

 

「なるほどなぁ。仮に狙われてもペンダントが奪われることがないようにするってわけか」

 

「その通りだ郷田。今回の一連の騒動での奴らの狙いは、私を狙ってペンダントの情報を聞き出すことにあった。奴らにとってはあの大きなデュエルテロを起こしてまで得たかった情報だ。奪いに来るのなら奴らも本気で来るだろう」

 

だからこそ赤見さんを狙うといっても命を狙うわけじゃなかったのか。

だが、次の標的である俺は、殺してまででもペンダント奪うくらいの勢いで来るだろう。

少し恐ろしい気持ちはあるが、相手はジェネシスだ。全てぶっ倒してやる……。

 

「繋吾ちゃん。俺たちがついてるから安心してくれや。なあ? 結衣、颯」

 

「もちろん! この上地 颯がついてれば余裕だぜ! 繋吾!」

 

「遊佐くん一人じゃすぐに奪われてしまいそうですしね。仕方ありません」

 

「みんな……すまないな」

 

なんというか、いつもどおりというか……。まぁとりあえず俺が負けなければいい話だ。

気を引き締めていかないとな……!

 

「皆、よろしく頼むぞ。そして、これからの活動についてだが、国防軍局長の都合が付き次第特殊機動班全員で国防軍真跡支部へ行き、今回の件の報告をしに行こうと思っている。そこでの国防軍の反応次第だが、先日の敵のアジトの捜査を行い、奴らの情報収集をしながら更なる作戦を立てていく見通しで考えている」

 

もはやもぬけの殻となっているあのマンションのアジトだが、何かしらの痕跡は残されているかもしれない。

すぐにでも調査したいところだが、また襲撃を受ける危険性もあるし、国防軍の軍力を頼りたいのが赤見さんの考えだろうか。

 

「よっしゃ、じゃあ都合がつくまではまたデュエルの特訓でもするか! お前ら!」

 

郷田さんは両手を上に上げながら張り切っている様子だ。

 

「望むところだぜ! 郷田!」

 

対してガッツポーズをしながら颯が叫ぶ。

事態は前より深刻になっているというのに、この二人の元気さは相変わらずだな。

 

「あぁ。それまでまた各自で戦いの準備は整えておいてくれ。国防軍との都合が付き次第皆に連絡する」

 

「わかりました」

 

「繋吾。強大な組織から狙われているということに不安を感じるだろうが、あまり気に病むなよ。しばらくは郷田達と一緒に気晴らしにデュエルでもしておいた方がいいだろう」

 

「大丈夫ですよ。どんな強大な敵が相手だろうとジェネシスと戦うことが俺の目的。むしろ俺を狙っているのであれば好都合です」

 

ここからが本当の戦い。ジェネシスの奴らなんかに負けてたまるかよ。

それに俺は実際幹部と思われるあのオリバーって奴に勝てたんだ。どんな奴が相手になろうと負けるつもりはない。

 

「頼もしい限りだな。それじゃ今日はここまでだ。お疲れ様」

 

赤見さんの声が聞こえるとさっそく郷田さんと颯の二人はデュエル訓練場へと駆け出していった。

 

「遊佐くん。せっかくですし、私たちも特訓しに行きますか」

 

「あぁ、そうだな。今後の戦いに備えておくことに越したことはない」

 

「あなたが負けたらジェネシスが何をしてくるかわかりません。これまで以上に気を引き締めてください」

 

「わかってるよ。ジェネシスにだけは絶対に負けない」

 

俺は右手を強く握り締めながらそう言い、特殊機動班室を後にした。

 

 

ーー場所は変わり、ここは決闘機動班長室。

 

そこには白瀬班長と桂希副班長の姿があった。

 

「なるほどな。状況はよくわかった。ご苦労だったな楼」

 

「いえ……ですが、最終的に遊佐が交戦したテロリストとのデュエル内容については、野薔薇の奴しか……」

 

「それならもうすぐ来るはずだ」

 

白瀬班長がそう言うと、扉のノック音が響き渡る。

 

「入れ」

 

「失礼します。あれ、桂希先輩も来てたんですか」

 

野薔薇は部屋へ入ると桂希を見ながら呟く。

 

「あぁ、私も呼ばれていてな」

 

「なるほどー、それで白瀬班長。もしかして……この間のSFS本会議の話とか……?」

 

「ふむ……そういえばそんな話もあったな。なら、ちょうどいいか」

 

白瀬班長は目を閉じながら何度かと頷くと、野薔薇に顔を向ける。

 

「野薔薇、君の要望した特殊機動班の存続の代わりに、君には一つ任務を任せたい」

 

「……待ってください白瀬班長。野薔薇の要望って……。あの本会議での発言はこいつの……?」

 

「まぁそういうところだ。要望を受ければどんな任務でも一つ引き受けると言っていたからな」

 

「えへへ……。実はそうなんです桂希先輩」

 

「まったく、白瀬班長にそんな要望を出すとは……驚いたな」

 

「でもでも、桂希先輩も特殊機動班はあまり嫌ってないみたいじゃないですか?」

 

「まぁ……。害は受けてないからな」

 

桂希は呆れたように言った。

 

「まぁそういうところだ楼。結果的に特殊機動班は存続することとなったが、悪い話じゃないだろう?」

 

「ええ。なくなれば戦力が減ることになりますしね」

 

「それはそうと、私に任せたい任務ってなんですか? 白瀬班長!」

 

桂希の話を中断するように、野薔薇は元気よさそうにハキハキとしながら白瀬班長へと言った。

 

「お前から聞いた話だと、遊佐が持っていたペンダントがデュエルの途中で光ったらしいな?」

 

「そうですね……。よくわかりませんけど、遊佐くんはあれのおかげで勝ったとかなんか言ってました!」

 

「お前に任せたい任務は遊佐へ接触し、ペンダントについての話を聞くことだ」

 

「え? 別に大丈夫ですけど……白瀬班長あれ、欲しいんですか? 確かに光るペンダントっておしゃれですよね!」

 

「いや、そういうわけじゃなくてだな……。まぁとにかく話を聞いて適宜私に報告してほしい」

 

少し呆れながら答える白瀬班長脇で桂希も笑いをこらえるように震えていた。

 

「ちょっと桂希先輩。なに笑ってるんですか」

 

「いや、何でもない続けてくれ」

 

「もうーなんか私のこと馬鹿にしてません? まぁいいや、とりあえずそれなら任せてください白瀬班長! こないだの作戦で遊佐くんと少しは面識ありますし!」

 

「あぁ。頼んだぞ野薔薇。桂希ももういいぞ。ご苦労だった」

 

「はい、それでは失礼します」

 

桂希と野薔薇の二人は白瀬班長へ頭を下げると部屋を後にした。

 

「さて、赤見の奴はここからどう動いてくるか。楽しみにさせてもらうか」

 

白瀬班長は机の上に置いてある報告書と書かれた書類に目を向けると、口元をにやつかせながらそう呟いたのだった。

 

 

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