結衣とのデュエルを終えた俺は、デュエルリングへ座り込んだ結衣の下へと近づく。
その表情は少し不満そうな様子だった。
「結衣、いいデュエルだった。楽しかったよ」
「……今回ばっかりは……遊佐くんの勝ちということにしておいてあげます。次はこうはいきませんから」
「ははは……」
あれだけ言ってしまった手前、負けてしまったのを恥ずかしいと思っているのか、それとも俺に負けたことが悔しいのか。
結衣の性格を考えるよ両方のような気もするが、まぁとりあえずこれ以上文句は言われないだろう。
「ですけど、私に1回勝ったからっていい気にならないでください」
「わかってるよ。俺は颯みたいなやつじゃない」
「どうだか……それと、今後野薔薇さんとは必要以上に関わらないこと。いいですか?」
「え……」
そこは譲れないのか……。
「ま、まぁ……検討しておくよ」
「なんですか! その曖昧な……」
「デュエルで証明してみせただろう? 俺は決闘機動班にのまれてなんかいないって」
「それはそうですが……。でも……」
結衣が口ごもっていると、突然隣のデュエルリングで怒声のようなものが聞こえてきた。
隣には颯と郷田さんがいたはず……何ごとだろう。
「何か揉めているのか……? 結衣、ちょっと行ってみるぞ」
「え、えぇ……わかりました」
結衣が立ち上がるのを手を引っ張りながら手伝い、俺たちは隣のデュエルリングへと足を運んだ。
そこには颯と言い合う一人の女性と俺たちが近づいてきたのに気がついた郷田さんがいた。
「お、繋吾ちゃんと結衣か」
「郷田さん、一体どうしたんですか?」
「あぁ……ちょっと颯のやつがな……」
そう言われ颯の方を見ると、何か色々と相手に対して主張しているようだった。
あいつが女性相手に叫ぶなんて珍しいな……。大体どんなやつでも、女には目がないやつだと思っていたが……。
対して、颯を言い合っている人は黒髪のロングヘアーに、白色のカチューシャを付けた女性。
一体この人は誰なんだろう。
彼女を眺めていると、俺の存在に気がついたのかこちらに目を向けてきた。
そして、俺のことを一通り眺めた後に口を開いた。
「あなたは……遊佐 繋吾さん、ですね! 先日の作戦でジェネシス幹部を打ち破った隊員。そして、SFSの中では異例の入隊をした人物!」
「お前は誰だ?」
「遊佐さん。いくら良い功績があったとしても少し言葉づかいは改めた方がいいですよ? 私は決闘機動部 決闘精鋭班 副班長を努めております賤機 聖華と申します! 以後お見知りおきください!」
やたらハキハキと喋る真面目そのものなこの女性はどうやら決闘精鋭班の副班長らしい。
なぜそんなエリートさんがこんなところに……。
「悪かったな……。んで颯、一体どうしたんだ? お前にしては珍しい」
「繋吾! 聞いてくれよ! こいつ、特殊機動班の監視で来やがったみたいで、俺たちが悪さをしないかしばらく見張るって言ってやがるんだよ。別に俺たち何も悪いことしてねぇのにふざけてるよな!」
なるほど。この間の会議で色々と特殊機動班について取り上げられてたからな。
動向を見張るという意味で差し向けてきたのかもしれない。
「ですから……あなたにとっては悪いことをしたつもりはなくても、SFSにとっては不利益となる事象が現に起きてしまっていると何度も言っているじゃないですか! なので、私がしばらく行動を監視させていただくと言っているのです。もしかして……何か後ろめたいことでもしているんですか? 上地さん」
「なんもしてねぇって言ってんだろ! 特殊機動班を廃止になんか絶対させねぇからな!」
廃止……? やはり目的はそれなのか?
でもそれは会議の中でしばらくはなくなったはずだ……。
それに精鋭班長でもある神久部長は協力すると言っていたじゃないか。
「あなた方の行動次第では廃止の可能性もある……って言っただけじゃないですか! それにこれは開発司令部と決闘機動部の双方の合意の下決まった話なのですよ!」
開発司令部も絡んでいるってことはおそらく黒沢部長の差金かなにかだろうか。
自らの班ではなく、わざわざ決闘機動部内でやらせるとはなんとも気に入らない手法だな。
「それなら賤機、一つ聞きたい。なぜ決闘精鋭班のお前が監視役なんだ?」
「遊佐さん。ですから言葉づかいを……。私も詳しくは存じませんが、司令直属班は業務が忙しいらしく代わりにということみたいですね……。実際には司令直属班はしばらくデュエルをしていないような隊員ばかりでしょうから、監視にはある程度デュエルの腕がある人物をということだとは思いますけど……」
確かに、決闘精鋭班の副班長ならば、あの桂希や野薔薇よりも上位な立ち位置ということになる。
よほど腕が立つのだろう。
「それに、特殊機動班に無茶な作戦を実行されて全滅なんてことされちゃ困りますので、適正なデュエルの腕前があるのか実際のデュエルデータを取るという目的も兼ねてます。佐倉さんは成績優秀とは聞いていますけども、実際のデュエルは見たことありませんし、郷田さんは先日の作戦で失敗の報告を受けている。それに上地さんは今話している限りでもわかりましたが、頭の出来が……あまり良くなさそうですからね……」
「てめぇ! 言わせておけば! いい気になるんじゃねえぞ!」
「なら、賤機さん。一つデュエルで試してみますか?」
賤機副班長の物言いに対して、颯と結衣の二人が好戦的な反応をする。
郷田さんはその様子を見て、苦笑いをしていた。
いつもなら真っ先に郷田さんが行きそうなものだが、おそらく……この賤機副班長の実力を知っているからなのかちょっと今日は勢いがなかった。
「佐倉さんは先ほど遊佐さんとデュエルしたばかりでですけど……連戦でも大丈夫ですか?」
「その程度余裕です。まさか逃げるつもりですか?」
「やる分には私は一向に構いませんよ! 佐倉さん」
すると結衣と賤機の前に割り込むような形で颯が乱入し、デュエルウェポンを構え始めた。
「結衣ちゃんが出るまでもねぇ! ここは俺が相手してやる賤機! 特殊機動班の意地、見せてやるよ!」
「あはは……元気がいいこと……いいですよ! ちょうど上地さんのデータも取れますし、私としては好都合です!」
「俺は女の子にだけは優しくするのがモットーだが、特殊機動班を馬鹿にするのだけは許せねえ! デュエルだ!」
「特殊機動班は変わり者が多いという噂は本当なのですね……。わかりました、早いところ始めましょう!」
「デュエル!」
賤機 手札5 LP4000
ーーーーー
ーーーーー
ー ー
ーーーーー
ーーーーー
颯 手札5 LP4000
デュエルが始まり、賤機さんと颯の二人が対峙する。
俺たちはデュエルリングの観客席に向かい、二人のデュエルを見届けることにした。
「あの賤機副班長っていうのはやっぱり強いのか?」
気になった俺は二人に聞いてみる。
「私はデュエルしているところを見たことがないのでわかりませんね……郷田さんは知っていますか?」
「噂だけは聞いたことがある。赤見や宗像の奴が賤機にデュエルで負けたって話をな」
「ってことは赤見さん達以上の腕を持っているってことですか?」
「まぁあくまで噂だ。本当かどうかは知らねぇ。赤見のやつに聞いたこともねぇしな」
いずれにしてもかなりの実力を持っているには違いなさそうだな……。
颯のやつ、どう戦うつもりだろう。
「先攻はいただきます! 私のターン、手札から【古代の機械猟犬】を召喚します!」
ーーー
【古代の機械猟犬】☆3 地 機械 ③
ATK/1000
ーーー
「このカードが召喚に成功した時、相手に600ポイントのダメージを与えます。"エクスプロード・バーン!"」
【古代の機械猟犬】の口元より、大きな火球が出現すると、颯へ発射され爆発音が響き渡った。
「いきなりバーンとはやってくれるじゃねぇか……」
颯 LP4000→LP3400
「まだ序の口ですよ。上地さん! さらに私は【古代の機械猟犬】の更なる効果を発動します。このカードを含む、場、手札のモンスターを素材に"アンティーク・ギア"モンスターを融合召喚できます。私は手札の【古代の機械獣】と場の【古代の機械猟犬】を融合!」
融合召喚を扱うデュエリストか。
颯も融合召喚を主軸にしているし、これは融合同士のデュエルになりそうだな……。
「"高貴なる古の歯車よ……ここに重なりて、防壁打ち砕く力となれ!" 融合召喚! 顕現してください! 【古代の機械魔神】!」
ーーー
【古代の機械魔神】☆8 地 機械 ②
DEF/1800
ーーー
黒く煌く漆黒の機械羽を宿し、両腕には戦艦の砲台のようなものが装備された機械仕掛けのモンスターが出現した。
比較的ステータスは低めであり、表示形式も守備表示。
様子見のモンスターってところだろうか。
「へっ、かっこよく出てきた割には守備表示かよ! この上地 颯の前に怖気づいたか?」
「随分と調子の良い方で……。せめて効果を受けてから言ってくださいよ……。このカードは1ターンに1度、相手に1000ポイントのダメージを与えることができます! "デビルズ・キャノン!"」
「げっ、またバーンかよ!」
【古代の機械魔神】の両腕の砲台にエネルギーが充填されると、今度は颯に無数のレーザー砲が発射される。
「ぐっ、ちくしょう! まだ俺のターンすら来てねぇってのに!」
颯 LP3400→LP2400
「まずは挨拶ってところですよ? ちなみにこの【古代の機械魔神】はあらゆるカードの効果を受けない。つまり、戦闘でしか破壊できないってことです! これを破壊しない限りあなたは毎ターン1000ポイントのダメージを受けて終わりです!」
「たかが守備力1800程度すぐに倒してやるよ!」
「まぁ……頑張ってください! 私はカードを2枚伏せてターンエンドです」
賤機 手札1 LP4000
ー裏裏ーー
ーーーーー
ー 融
ーーーーー
ーーーーー
颯 手札5 LP2400
先攻の1ターンで颯のライフポイントを半分ほど削ってきた。
それに対して万全の守りの体勢。
それだけでも俺にとっては驚きだ。
あの桂希ともまた違った強さだろうか。
だが、幸い颯のデッキは融合によって、大型モンスターの召喚スピードは長けている。
あの【古代の機械魔神】くらいならすぐに倒せるだろう。
「よっしゃ、俺のターン。ドロー! いい感じの手札だぜ! まずは永続魔法【ブリリアント・フュージョン】を発動! このカードはデッキのモンスターを素材に融合する! だけど、融合したモンスターの攻撃力は0になるけどな」
「おおー! 融合召喚を使ってきますか! どんなモンスターが出てくるか楽しみにしておきます」
「へっ、俺はデッキの【ジェムナイト・サフィア】と【超電磁タートル】を融合! "飛翔の翼! 聖なる光の身に纏い、進むべき道を照らせ!" 融合召喚! 来い! 【ジェムナイト・セラフィ】!」
ーーー
【ジェムナイト・セラフィ】☆5 地 天使 ①
ATK/2300→0
ーーー
「【ジェムナイト・セラフィ】がいる限り、俺は2回通常召喚ができる! まずは【ジェムレシス】を召喚! 召喚時にデッキから"ジェムナイト"モンスターを手札に加える。俺は【ジェムナイト・オブシディア】を手札に。続けて【ジェムナイト・アレキサンド】を召喚!」
ーーー
【ジェムレシス】☆4 地 岩石 ①
ATK/1700
ーーー
【ジェムナイト・アレキサンド】☆4 地 岩石 ②
ATK/1800
ーーー
「【ジェムナイト・アレキサンド】の効果を使うぜ! このカードをリリースして、デッキから【ジェムナイト・ルマリン】を特殊召喚!」
ーーー
【ジェムナイト・ルマリン】☆4 地 雷 ②
ATK/1600
ーーー
「そして、来い! 輝石を照らすサーキット! 俺は【ジェムナイト・セラフィ】と【ジェムレシス】の2体をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン! リンク召喚! リンク2、【ジェムナイト・ファントムルーツ】!」
ーーー
【ジェムナイト・ファントムルーツ】リンク2 地 岩石 ①
ATK/1450
ーーー
透き通る体に鎧を身につけた騎士モンスターが出現する。
颯の使う"ジェムナイト"モンスターのリンクモンスターだ。
「融合を駆使し、リンク召喚でさらに繋げる展開……。意外とやりますね」
「この程度じゃ終わらねぇよ! この上地 颯のデュエルはな! このカードがリンク召喚にデッキから"ジェムナイト"カードを手札に加える。俺は【ジェムナイト・フュージョン】を加える!」
颯お得意のジェムナイト専用融合魔法が手札に加わった。
ここからが本領発揮ってところだろう。
「リンク先を確保したということは来ますね、融合召喚!」
「当たり前だ! 魔法カード【ジェムナイト・フュージョン】発動! 俺は手札の【ジェムナイト・オブシディア】と場の【ジェムナイト・ルマリン】を融合! "轟く希望! 駆ける稲妻となりて、戦場を切り裂け!" 融合召喚! 【ジェムナイト・パーズ】!」
ーーー
【ジェムナイト・パーズ】☆6 地 雷 ①
ATK/1800
ーーー
黄色に輝く2つの小剣を逆手に持ち、稲妻を纏いながら【ジェムナイト・パーズ】は颯の前へと出現する。
「攻撃力は私の【古代の機械魔神】を超えていないようですが……。何かありそうですね」
「ふっふっふ……。それは後からのお楽しみよ。手札から墓地へ送られた【ジェムナイト・オブシディア】の効果を発動! 墓地から通常モンスター、【ジェムナイト・ルマリン】を特殊召喚するぜ!」
ーーー
【ジェムナイト・ルマリン】☆4 地 雷 ②
ATK/1600
ーーー
「そして、墓地の【ジェムナイト・フュージョン】の効果発動! 墓地から【ジェムナイト・アレキサンド】を除外し、手札に戻した後、再び発動! 【ジェムナイト・フュージョン】!」
「更なる融合! わくわくしますねー!」
「融合の良さがわかるとは、見る目があるじゃねぇか……。手札の【ジェムナイト・エメラル】と場の【ジェムナイト・ルマリン】を融合! "無垢なる輝き!聖なる雷に導かれ、邪悪を砕け!" 融合召喚! 【ジェムナイト・プリズムオーラ】!」
ーーー
【ジェムナイト・プリズムオーラ】☆7 地 雷 ③
ATK/2450
ーーー
続いて現れたのは白銀の鎧を身に纏い、大きな盾を水晶の大きな槍を装備した騎士モンスター。
颯の操る雷融合モンスターの2体が1ターンで一気に揃うとは……。彼もかなり本気みたいだ。
「思ったよりもやるじゃないですか! 上地さん!」
「へへっ。上地 颯のすごさがわかったか? 聖華ちゃん!」
「少しだけわかりました! ですけど、私負けませんけどね!」
すぐに調子に乗るのが颯だが、賤機もそれに乗っているせいか颯のやつはすごい上機嫌のようだ。
まったく……さっきまで怒っていたのはどこのどいつだよ……。
「まったく……本当に馬鹿な人……」
隣にいる結衣もまた呆れたようにその様子を見ていた。
こればっかりは俺も賛同だ。
「よっし! ワンターンキルしてやるぜ! バトル、【ジェムナイト・パーズ】で【古代の機械魔神】を攻撃! "ボルテック・ダガー!"」
【ジェムナイト・パーズ】は跳躍しながら、手に持つダガーを構え、【古代の機械魔神】へと接近し、斬りかかる。
「ですけど、そのモンスターの攻撃力は私のモンスターの守備力と同じですよ? それじゃ倒せませんけど……」
「甘いな聖華ちゃん! 俺は速攻魔法【決闘融合ーバトル・フュージョン】を発動! 場の融合モンスターが戦闘を行う攻撃宣言時に発動でき、その融合モンスターの攻撃力をダメージステップ終了時まで戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする!」
「おお……つまり攻撃力が1000アップってことですね! でも守備表示だから私はダメージを受けません!」
「それも甘いぜ聖華ちゃん! このカードが相手モンスターを戦闘破壊した時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」
「なるほど……やるじゃないですか!」
【ジェムナイト・パーズ】
ATK/1800→2800
【古代の機械魔神】
ATK/1000
DEF/1800
【古代の機械魔神】は強化され稲妻を身に纏う小剣によって切り刻まれ、爆発しながら消滅する。
そして、そこから迸る電撃が賤機に襲いかかった。
「このくらいならへっちゃらです!」
賤機 LP4000→LP3000
「へっ、まだだ! こいつはさらに二回攻撃ができる! 【ジェムナイト・プリズムオーラ】とあわせてダイレクトアタックで俺の勝ち……って……」
颯が続けて攻撃宣言をしようとした瞬間、賤機の場の地面より大きな腕が出現し始める。
「なんだこれは……!」
やがて、その腕から今度は機械仕掛けの頭部が出現し、体、足と徐々にその姿があらわになる。
そこには大きな体をしたまさに巨人と呼ぶに相応しい黒い金属の人型ロボットのようなモンスターが出現した。
体のあちこちには大きな歯車が見え、頭部から光る赤い目のようなものが颯のことを威圧しているように発光していた。
「残念ですけども、【古代の機械魔神】が破壊された時、デッキから"古代の機械"モンスターを召喚条件を無視して特殊召喚できる効果があります! 私は【古代の機械巨人】を特殊召喚してました!」
ーーー
【古代の機械巨人】☆8 地 機械 ③
ATK/3000
ーーー
攻撃力3000……。いきなりかなり強力なモンスターが現れてしまったみたいだ。
これは【決闘融合ーバトル・フュージョン】を使うタイミングを誤ったようだな……。
「くっ……こいつは倒せねえ! 仕方ない、ならばメインフェイズ2に墓地から【ジェムナイト・フュージョン】の効果発動! 墓地から【ジェムナイト・セラフィ】を除外し、手札に戻した後、【ジェムナイト・プリズムオーラ】の効果を発動! 手札の"ジェム"カードを墓地へ送り、相手の表側表示カード1枚を破壊する! そいつには消えてもらうぜ! "サンダー・レイストーム!"」
【ジェムナイト・プリズムオーラ】の槍に電撃が集うと、それは【古代の機械巨人】に向かって放たれる。
「私の高貴なるモンスターには触れさせませんよ! 罠カード【共闘ークロス・ディメンション】を発動します! 場の【古代の機械巨人】を次の私のスタンバイフェイズまで除外させます!」
「ちぃ……離れやがったか……。なかなかやるみたいだがこの程度で勝ったつもりになるなよ聖華ちゃん。俺は再び墓地の【ジェムナイト・フュージョン】の効果で【ジェムナイト・サフィラ】を除外してこのカードを手札に戻し、カードを1枚伏せてターンエンドだ!」
賤機 手札1 LP3000
ー裏ーーー
ーーーーー
リ 融
融ー融ーー
ーー裏ーー
颯 手札1 LP2400
全力で攻めてきた颯に対して、少ないカードでさらっと攻撃を防いだ賤機。
場の状況的には颯の方が有利には見えるが、賤機の表情はまったく揺らいでいなかった。
むしろ、好戦的な表情とでも言おうか。負けそうだという要素はまったく見受けられない。
「さてと、上地さん。色々と面白いもの見せてもらってありがとうございました!」
「え? あ、まぁ……まだまだ切り札は出ちゃいないけど……」
「あれ? そうなんですか。ですけど、もうこのデュエル終わりみたいです」
「終わり……だと……?」
「はい! 私のターンいきますね! ドロー、このスタンバイフェイズ。【共闘ークロス・ディメンション】の効果で除外された【古代の機械巨人】が場に戻ります! 戻って来て! 【古代の機械巨人】!」
ーーー
【古代の機械巨人】☆8 地 機械 ③
ATK/3000
ーーー
「そして、この効果で戻ってきた時、エンドフェイズ時まで攻撃力が2倍になります! さらにこのカードは攻撃する時、相手は魔法、罠カードを発動できない効果を持ってます!」
「なにぃ!?」
【古代の機械巨人】
ATK/3000→6000
攻撃力6000で魔法、罠カードを発動できないって……。いつでも使えるカードがない限り、攻撃を防ぐことができない。
攻撃されれば颯のライフポイントは当然0になってしまう。
「さぁ、これで終わりですよ! 上地さん!」
「ったくびびらせやがって……。ここで終わる上地 颯じゃないぜ! 罠カード【サンダー・ブレイク】発動! 手札を1枚捨て、相手の場のカード1枚を破壊する! その【古代の機械巨人】には消えてもらうぜ!」
颯の場から大きな稲妻が出現し、【古代の機械巨人】へと向かって放たれる。
だが、対して賤機はその様子を見て、口元をにやりとさせた。
「私の大事な【古代の機械巨人】はやらせはしませんよ! 墓地から【共闘ークロス・ディメンション】の更なる効果を発動します! 墓地からこのカードを除外して、場の【古代の機械巨人】の破壊を免れることができます!」
「なん……だと……」
たった1枚のカードで颯の目論見は全て崩れてしまったようだ……。
颯の表情が一気に絶望したような表情へと変わる。
「さーて、私の渾身の一撃、受けてもらいますよ? 【古代の機械巨人】で【ジェムナイト・パーズ】を攻撃! "アルティメット・パウンド!"」
【古代の機械巨人】は大きく鉄の拳を振り上げると、【ジェムナイト・パーズ】に狙いを定め、その腕を突き出した。
【古代の機械巨人】
ATK/6000
【ジェムナイト・パーズ】
ATK/1800
「うわあああああ!」
颯 LP2400→LP0
やがて、その攻撃が直撃し、颯はその場に座り込む。
見ていた限りだと……颯の完敗といったところだろうか。
「ありがとうございました、上地さん! ですけど……ちょっと後先考えずにデュエルし過ぎじゃないですか?
」
「うっ……ちくしょう! 俺の戦術がまったく通用しねぇとは……」
「それに墓地には【超電磁タートル】もいたような……」
「あっ……忘れてたぜ……くそお!」
確かに勝負を焦ってカードを使うタイミングを誤っていたし、墓地のカードを忘れたりと、まだ颯側に改善点はありそうだったな。
「それにしてもやっぱり実際に戦うと細かいデータが取れるのでいいですね! 今日は挨拶に来ただけですけど、これから少しの間お世話になると思うのでよろしくお願いします!」
賤機はそう言うと、颯と続けて俺たちに向かって頭を下げてきた。
見た限りそんなに悪い奴にも見えないし、強い人がいるのなら心強い限りだ。
「あぁ、よろしく頼むよ」
それに対して俺も賤機に向かって頭を下げる。
「余計なことはしないでくださいね。何を企んでるかは知りませんが、例え決闘精鋭班だとしても特殊機動班を踏みにじるようなら私は容赦しませんから」
隣にいる結衣は賤機のことを睨みつけながらそう言った。
相変わらずこいつは、他の班に対しては敵対心むき出しすぎるな……。
「あれ……これは私、あまり歓迎されてない感じですか……?」
「いや、いやいやいや! 聖華ちゃん! いいんだ。俺は今のデュエルで認めたよお……。俺にデュエルを教えてくれえ……」
苦笑いしている賤機に対し、颯が賤機の手を掴みながら叫びだす。
「え? 特訓なら大歓迎ですよ! 特殊機動班の能力が上がるのであればそれに越したことはありません!」
「本当か! 聖華ちゃん! 俺、聖華ちゃんの弟子になるよ!」
どういうわけか今のデュエルでのせいかはわからないが、颯と賤機の二人は意気投合したみたいだ。
そうなると気になる結衣の様子だが、思ったとおりあまりいい顔をしていなかった。
「はぁ……。遊佐くん、あなたは……大丈夫ですよね?」
結衣はそう口元だけ笑顔を見せて言ってきたが、目は鋭く俺のことを睨みつけていた。
「あ、あぁ……。俺は特殊機動班だ。決闘精鋭班に媚びたりなんてしないよ……」
「絶対ですね?」
「大丈夫だよ……まぁ少し落ち着けって結衣」
「特殊機動班を潰そうとしている人が介入してくるって言うのにじっとなんかしてられますか!」
まぁ場合によっては廃止にってことも言ってたし、そう思うのも無理はないが、今の感じからすると特殊機動班の様子を伺いに来た程度な気もするし、そこまで深刻に考える必要もないような気はする……。
「まぁ……だからこそ少し仲良くしてた方がいいんじゃないか?」
「またのんきなことを……野薔薇さん同様にあの人も裏で何考えているかわかったもんじゃないですよ。上地くんなんてさっそく弟子になるとか言っていますし……」
ん……? この感じは……。
まさか結衣のやつ、寂しいのか?
少しづつだが、結衣の性格ってものが掴めてきた気がするな……。
「俺はあいつとは違う。だから安心してくれ結衣」
「ま、まぁ……それならいいですけど……。というか遊佐くんに心配される筋合いはありません!」
「ははは……」
結衣はそう言うと、デュエルリングを後にしてしまった。
「あれ……佐倉さん帰ってしまったのですか? できればちゃんと挨拶したかったのですが……」
その様子を見かけた賤機が俺に声をかけてくる。
「まぁ……。それはまた今度の機会になりそうだな。大変だとは思うけど……」
「大変? よくわかりませんが……またの機会ですね! それでは今日はこれで失礼します!」
再び賤機は俺たちに頭を下げると、訓練場を後にした。
「相変わらず礼儀正しいけど、言葉はストレートなやつだ……あいつは」
その後ろ姿を見ながら郷田さんが呟く。
「確かに……色んな意味でまっすぐな人ですね」
「そうなんだよ繋吾ちゃん。ある意味……非の打ち所がないってところだな。あれでもお前らと同期なんだぜ?」
俺たちと同期……つまり颯や結衣と同じってことか……。
見た感じ若いなぁとは思っていたがまさか同じだったとは。
「でもそうすると……結衣よりかは入隊時は下だったってことですか?」
「そういうことだ。だけど、入隊後にかなり実力を伸ばしたのがあいつだ。よくも悪くも真面目っていうのはいいのかもしれねぇなぁ……」
努力家というべきか、それとも何かあったのか。
いずれにしても今見た彼女の実力は確かなものだった。
そういうところは俺も見習わなければならないな。
それはそうと気になるのは結衣の方だ。
野薔薇だけならず賤機に対しても敵対している状態。
このままだといずれ何かトラブルになるような……。
今日一日だけでも散々結衣に振り回されたしなぁ。
なんとか仲良くできればとは思っているが……それは今後考えることにしよう。