一応ストーリーは考えてあるので、すごい牛歩ペースな更新になるかもしれませんが、よろしくお願いします。
ーー30分ほどした頃だろうか。
部屋の物色も飽き出した頃、俺はソファに座りながら、自分のデッキを眺めていた。
颯のやつは喋り疲れたからか、ソファに横になっている。多分寝てるやつだ。
対して結衣のやつは、俺たちと対抗側にあるソファで本を読んでいる。一体どこから持ってきたのやら。
なんか歴史関係の本みたいだ。勉強熱心なことで……。
のんびりしている俺たちだったが、突如大きな爆音が聞こえソファから立ち上がる。
爆発したような今の音は……。もしかして……。
「遊佐くん。今の音って……」
本を机の上に置き、周りを眺めるように結衣が聞いてくる。
どうやら俺と同じことを察したようだ。
「デュエルテロの可能性がある。デュエルリングとかでの事故とかならまだいいが……」
俺の発言を聞いた結衣はソファから立ち上がり、部屋から出ようとする。
だが、国防軍の施設内がどうなっているかもわからない状態で、一人で出るのは危険だ。
そう思った俺は思わず結衣の腕を掴んだ。
「何をするんですか? 離してください。邪魔ですよ遊佐くん」
「落ち着け結衣。いまここから出るのは危険だ。国防軍の人の指示を待つか、赤見班長達と合流した方がいい」
「まぁ……そうですけど、もしここが襲われたらどうするつもりですか? 退路を絶たれる前に動いた方がマシです」
まぁその考えも一理あるな。
「だったら俺も行く。ひとりは危険だろう」
「ペンダントを持っているあなたが前線に出ては危ないでしょう? やられたらどうするのですか?」
「安心しろ、ペンダントは何があっても自分自身で守りきる」
「どれだけそれが大事なものかわかっているのですか? あなたはここでじっとしているべきです。いざとなったら上地くんがいますし」
肝心な颯のやつは相変わらず寝たままだ。
それはまぁ置いといて……いまの状況ひとりで出歩くのは得策とは思えない。
俺はいいとしても結衣に何かあったらどうするんだ。
「あぁ理解はしているさ。だが、もし結衣に何かあったらと思ってな」
「……! 私はいいんです! これでもSFS4期生の主席ですから。心配無用です」
結衣は俺の発言を聞くと少し照れるような素振りを見せるが、すぐに元の表情へと切り替えると、少しキツめの口調で言った。
「わかったよ。じゃあお前がひとりで行ったとしても俺は黙ってついていく」
「……はぁ、まったく……。ならば足を引っ張らないでくださいね。この間の襲撃みたいに、あなたを守れる保証はありませんから」
「わかってるよ。自分の命は自分で守る。それはそうと颯のやつはどうする? 全然起きないようだが」
少し揺らしてみたが、全然起きる気配がなかった。
まったく、こんだけ大きな音が鳴っているというのに呑気なやつだ……。
「この休憩室が安全だとも限りませんからね……。放っておくわけにもいきませんか……」
颯をどうするか悩んでいると、休憩室の扉が開き数名の男性が部屋へ入り込んできた。
思わず身構えるが、その男性達は国防軍の軍服を着ていた。
どうやら襲撃の主ではなさそうだ。
「君たち、大丈夫か?」
「はい、何やら大きな爆発音が鳴ったみたいですが何かあったんですか?」
「あぁ。国防軍施設に襲撃があったみたいだ。幸い襲撃箇所はここの休憩室の真逆の方角からだからここは安全だろう。君たちはここで避難していてくれ。我々の部隊がここの防衛にあたる」
俺たちは客人という立場だから、きっと防衛に人員を割いてくれたのだろう。
それなら確かに安全だろうが……隣の結衣はそんな様子ではなかった。
「いえ、私達はSFS所属の身です。戦う術は持っています。襲撃があったのであれば私も戦わせていただきます」
「君、その気持ちはわかるが……客人に何かがあったらまずいのだよ。ここはおとなしく避難を……」
「来ていただいたところ申し訳ないですが、長官室に私達の仲間がいます。放ってはおけません」
長官室から休憩室まではかなりの距離があった。
すなわち……襲撃のあった箇所の近くであることが予想できる。
赤見さん達は……大丈夫だろうか。
俺は思わずデュエルウェポンで連絡を取ろうと試みる。
しかし、応答する様子がなかった。もしかして……何か一大事が……。
「今、国防軍が全力を上げて、襲撃箇所の迎撃にあたっている。君たちが行かなくても大丈夫だよ」
「それでも、私は行かなければいけないんです! すみません、失礼します!」
結衣は国防軍の人を避け、部屋の外へと走り出していってしまった。
まったく……あいつの気持ちはわからんでもないが、ひとりで飛び出すのは危険だろう。
「すみません、俺もあいつを追わないと……。そこに寝ている奴の防衛を頼まれてくれませんか?」
俺は颯のことを指差しながら国防軍の人へ言う。
国防軍の人は少し悩んだ表情をしたが、やがて口を開いた。
「おいおい……止めても聞かないんだろう? わかった。だが、我々の指示に従えないのなら、命の保証はできないぞ君」
「承知の上です。それでは失礼します」
俺も結衣を追うように休憩室の扉から外へと出る。
後ろからは国防軍の人たちのため息が聞こえてきたが、結衣のやつを放っておけない。
しかし、結衣のやつ何を焦っているのだろう。普段のあいつらしくないな。
あいつはおそらく……長官室へ向かうはずだ。
先ほど魁偉さんに案内された道を思い出しながら、小走りで廊下を進んでいく。
一応あいつに連絡を取ってみるか……。出るかはわからんけど。
デュエルウェポンで結衣に通信を取ってみる。すると応答する音が聞こえた。
「なんですか遊佐くん。今、忙しいので用件なら後で……」
「おい、今どこにいる? 一人は危険だと言ってるだろう」
「大丈夫です。単独行動は慣れてますし、デュエルに負けるつもりはありませんから」
相変わらず相当な自信を持っているようだな。
だが、正直俺も飛び出してきてしまった以上、誰かしらと合流はしておきたいところだ。
あいつは赤見さんのことを絶大に信用している。つまり今回の行動要因はおそらくそれだと思う。
そっちの方向で攻めてみるか……。
「わかってるよ。だがな、俺は赤見さんのことが心配だ。おそらく襲撃箇所は長官室から近いところだと思う。結衣もそれがわかっていての行動なんだろう?」
「……遊佐くんにしては頭が回りますね。そうです。だからこそ今そちらに向かっているんです。だけど……」
「ん……?」
するとデュエルウェポン越しに大きな爆発音や衝突音が聞こえてきた。
向こうは交戦中なのかもしれない。
「相手はテロリストです。もし遊佐くんやペンダントに何かあって最悪の結末を迎えたとしても私は一切責任を持ちませんから。それでも合流したいというのならデュエルウェポンのGPS機能を駆使して頑張ってください。それでは」
そう言うと結衣との通信は終わった。
まぁあいつが言うとおり結衣は一人でも大丈夫なのかもしれないが、今ここで何が起こっているのかは気になるところだ。
あいつを追いかけていけば、きっと何かわかるだろう。
結衣の現在地を地図機能とリンクさせながら合流すべく廊下を進んでいくと、徐々に爆発音等が大きくなってきて、周辺にも倒れている人の姿が見えてきた。
襲撃箇所にだいぶ近づいてきたか……? 地図上でも結衣の位置とだいぶ近いところまで来たみたいだ。
通路から曲がり際を見ると、案の定結衣の姿があり、その前には【竜血鬼ドラギュラス】と【ゴーストリックの駄天使】の姿があった。
さらに周辺には倒れている襲撃者の数々。順調に敵を無力化しているようだった。
俺の存在に気がついた結衣は俺に向かって攻撃をしようとデュエルウェポンを構えるが、誰であるのか把握したらしくその手を下げた。
「なんだ、遊佐くんですか。危うく攻撃するところでした」
「随分と派手にやってるな」
「ええ。相手が相手ですからね」
こいつらはどこのテロ組織だろう。やはり……ジェネシスだろうか。
「国防軍の人の大半は襲撃があったであろう長官室に向かっているみたいですが……襲撃者を見ていると一部の人はどうやら違うところに向かっているみたいですね」
「違うところ? 狙いは長官室だけではないということか」
「そうみたいですね、私の推測が正しければおそらく……あの部屋だと思います」
「あの部屋……なるほど」
結衣が指差す先には、あの鉄格子の扉で守られていた部屋があった。
先ほど見学した時とは違い、その扉は既に開けられており、侵入を許しているようだった。
「既にやられていますね。おそらく長官室への襲撃は囮です。本命はここ……。襲撃者を追ってきて正解でした」
「お前……乗り込むつもりか?」
「はい、好き勝手されてはまずいものでしょうし」
「まぁ……そうだな。だが、国防軍の人に連絡しなくていいのか?
「既に侵入を許しているのにそんな時間があるわけないじゃないですか」
まぁ……たしかに。
それに中に何があるのか気になっていたところだ。
「危険ですから遊佐くんは避難でもしててください。私がなんとかしてきますから」
「おい、そういうわけには……それに赤見さんたちはどうするんだ?」
「赤見班長なら大丈夫です。それでは」
「大丈夫って……おい!」
結衣のやつはまた俺の言葉を聞く間もなくその部屋に向かって走り出してしまった。
まったく……俺も行くか。
するとデュエルウェポンから着信音が聞こえてきた。
主は赤見さんだ。どうやら無事みたいだ。
「遊佐です。赤見さん大丈夫ですか?」
「ああ。ということは事情はわかっているみたいだな。テロリストによる襲撃があった。時田長官の避難に協力していた関係で連絡が取れなかった。すまない」
「よかった……。無事で安心しました」
「心配無用だよ。こっちは長官室の敵を無力化して、逃げている奴らとの戦闘を始めたところだ。繋吾は大丈夫か?」
「俺は大丈夫ですが……結衣の奴がテロリストに狙われている部屋へ単身突入していて……」
「なに……? 狙われている部屋だと……? なるほどな。こっちに幹部クラスの構成員がいなかったのはそういうことだったか……」
「どういうことですか!? 赤見さん」
「いや、今回の襲撃はどうやらジェネシスのようなんだ。長官の命を狙いに来たのならこっちに戦力を割いてると思ったが、大したことはなかった。つまり、そっちに誰かいるはずだ。このままじゃ結衣が危ない……」
「わかりました。俺が向かいます!」
「……そうだな。気をつけろよ。私もすぐに向かう!」
「はい! 失礼します!」
前の襲撃で会ったデントにオリバー。そしてリリィ。さらには赤見さんと交渉をしていたネロ。
そのいずれか……もしくは全員がいる可能性だってある。そんな場だとしたら結衣一人では太刀打ちできるわけがない。
赤見さんとの通信を終えた俺は結衣を追うべくその部屋へと走り出した。