ーーはぁ。さすがにこれだけの敵を相手にすれば疲れるな。
私の周りには多くの襲撃者達が転がっている。
赤見さんから連絡があったことに安心し、私は自らのカンを信じて厳重なセキュリティによって阻まれていたはずの部屋にはいった。
嫌な予感がしたからもしものことを考えて遊佐くんは置いてきたけど……案の定予想は的中し、部屋の中は既に襲撃者たちによって多くの機器が破壊されていた。
なぜここまでしてここを狙うのか、私はその目的を確かめるべく部屋の奥まで進んだが、当然のようにそこには襲撃者達が待ち受けていた。
そして、しばらくの交戦の末、それなりのダメージは受けたけども全て無力化することに成功したのだ。
ただ……ひとりを除いては。
「あらあら? 国防軍にもこんなに優秀な可愛い子がいたのね」
その人物は茶髪にゴシックな雰囲気のドレスを着たひとりの女性。
この戦場でドレスを着用しているなんて、どう考えてもおかしい。
それと私は国防軍ではないのだけども……。それはどうでもいい話か。
「あなた……何をしているのですか」
その言葉を聞いた女性は、首を傾げると私のことを不思議そうな表情で見つめてきた。
やっぱり変人なのかな。ジェネシスに入る人なんて、まともな人がいるわけないだろうし……。
まだ、遊佐くんとか上地くんとかのがマシに思えてくるくらい。
「あれ、あなた国防軍なのにこの部屋のこと知らないんだ? なるほどー、これの話は一般の人には開示されてないってことね?」
そう言いながら女性は赤く輝くペンダントをちらつかせた。
あれはもしかして……遊佐くんが持っていたペンダントと似たようなもの……?
まさかこの部屋にはあのペンダントが保管されていて、それを悪用されないように国防軍が守っていたってこと?
ジェネシスの人たちは遊佐くんのペンダントを狙っていたし、今回の襲撃もそれが狙いだったのかもしれない。
だけどなんでこのタイミングで……。今ここの近くには遊佐くんもいる。
国防軍に出張に来てたことは奴らが知っているわけないし、本当に運が悪かったってことなのかな。
「なにか色々と考えているみたいだけど、私の用は済んだし、そこどいてくれるかな? 君」
仮にこの女性と遊佐くんが鉢合わせになったら大変なことになるだろうし、あれだけ大事に守られてたペンダントを持っていかれるわけにはいかない。
私がここで止めないと……。ちょっと不安だけど大丈夫。私はSFSの隊員の中でも優秀なんだから。野薔薇さんや賤機さんよりもずっと優秀。
自分を信じるのよ結衣。ここまでの襲撃者だって大した奴はいなかったし、この変な女性だって倒せるはず。
「あいにく退くつもりはありません。そのペンダントを返してもらいましょうか」
私はデュエルウェポンを構えながら、出口を塞ぐように立ち塞がる。
デュエルなら時間も稼げるし、この女性を完全に無力化できる。
「やっぱりそうなっちゃうか。いいよ、やりましょうかデュエル! 後悔しても知らないけどね!」
あのペンダントはきっと重要な何かがあるに違いない。
ここでジェネシスを全て無力化して……そうすれば……監視の賤機さんも黙らせられそうだし、遊佐くんも……いや、そんなことはどうでもいい。
赤見班長に吉報を伝えてみせる!
「望むところです。行きますよ」
「デュエル!」
結衣 手札5 LP4000
ーーーーー
ーーーーー
ー ー
ーーーーー
ーーーーー
茶髪の女性 手札5 LP4000
先攻は私みたいだ。
私は後攻よりも先攻が得意だ。
いくらでも罠を伏せ放題だし、これはいいスタートが切れる気がする。
「先攻はいただきます。私のターン、モンスターをセット、カードを2枚伏せて、ターンエンドです」
万全の体制だ。
これならばよほどのことがない限りは大丈夫だろう。
結衣 手札2 LP4000
ー裏裏ーー
ーー裏ーー
ー ー
ーーーーー
ーーーーー
茶髪の女性 手札5 LP4000
「けっこう固いデュエルするのね? 私のターン、ドロー!」
女性はドローしたカードを見ながら不敵な笑みを浮かべる。
どんな戦術で来ようと、迎え撃つ準備は整ってる。私の力を思い知らせてやる。
「自信満々な様子ね。だけどこれはどうかしら? 魔法カード【ハーピィの羽箒】を発動! 相手の場の魔法、罠カードを全て破壊する。あなたの伏せカードはさよならね?」
「なっ!?」
大きな竜巻が発生すると、その竜巻は私の伏せカードへ襲い掛かり、たちまち木っ端微塵に破壊されていく。
私の伏せカードは【迷い風】と【びっくり箱】。相手のモンスター効果を無力化できるカードと、相手の攻撃を止めつつ、除去することができる優秀な罠カードだ。
だけど、その発動すべき対象がいない状況であるため、発動も許されずに破壊されてしまう。
少し慎重になりすぎたかもしれない……。1ターン目はやはりモンスターをセットしただけの方がよかっただろうか。
後悔しても仕方がない。まだデュエルは始まったばかりだし、いくらでも立て直しは効くはずだ。
「あら? 伏せカードがなくなっただけで随分と焦っているみたいね?」
「焦ってなんかいません……! この程度、想定の範囲内です」
「そう? なら容赦なく行かせてもらうわ。手札から【セイクリッド・ポルクス】を召喚! このカードが召喚した時、手札から"セイクリッド"モンスターを1体召喚できる。よって【セイクリッド・カウスト】を召喚!」
ーーー
【セイクリッド・ポルクス】☆4 光 戦士 ③
ATK/1700
ーーー
【セイクリッド・カウスト】☆4 光 獣戦士 ②
ATK/1800
ーーー
「そして、【セイクリッド・カウスト】の効果を発動するわ。1ターンに2度、場の"セイクリッド"モンスターのレベルを1上げるか下げることができる。私は【ポルクス】と【カウスト】のレベルを1ずつ上げて5にする」
「レベル5のモンスターが2体……」
あの女性も私と同じ……エクシーズ召喚を主体としたデッキみたいだ。
エクシーズ召喚勝負なら尚更負けるわけにいかない。
私の得意分野だからこそ絶対に負けない自信がある。信じてるよ、私のデッキ。
「ふふ……行かせてもらうわ! 私はレベル5の【ポルクス】と【カウスト】をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! "散らばりし星々の残光よ! 聖なる星の名の下に裁きの刃を振りかざせ! エクシーズ召喚! ランク5、【セイクリッド・プレアデス】!"」
ーーー
【セイクリッド・プレアデス】ランク5 光 戦士 ②
ATK/2500
ーーー
純白の鎧に星空のような模様のマントを身につけた聖騎士と呼ぶにふさわしいモンスターが出現し、その剣を私に向ける。
いかにも強力そうな見た目だが、強いモンスター1体ごときに恐れる私じゃない。
「ですが! この瞬間、墓地から【迷い風】の効果を発動します! 相手がEXデッキからモンスターを呼び出したことで、このカードを1度だけ墓地からセットできます」
「それくらいは許してあげる。だけど、これはどうかしら? 【セイクリッド・プレアデス】の効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイユニットをひとつ使うことで、相手の場のカードを手札に戻す。その伏せモンスターには戻ってもらうわ。"コスモ・バニッシュ!"」
「くっ……仕方ありません」
なるほど。もしEXデッキからモンスターを呼び出していれば大損害だったということだ。
次のターンあたりになんとか倒しておきたいところ。
「このままバトル! ふふふ……さっそく受けてもらおうかしら!」
女性がそう叫ぶと、女性の手にもつ赤いペンダントが急に光りだした。
一体何が起きているのだろう……?
「何をするつもりですか……?」
「すぐにその身を持ってわかるわ。【セイクリッド・プレアデス】でダイレクトアタック! "ギャラクシー・スラスター!"」
【セイクリッド・プレアデス】は手に持つ剣を構え、私に向かって突進を始める。
だけど、そう簡単には通すつもりはない。
「相手の攻撃宣言時、手札の【ゴーストリック・ランタン】の効果を発動します。このカードを裏側守備表示で特殊召喚し、攻撃を無効にします」
【ランタン】が【プレアデス】を驚かすかのように一瞬だけ出現し、その後は場に裏側表示のカードとなった。
その影響で【プレアデス】は攻撃を中断し、元の位置へと戻った。
それと同時にあの女性がもつペンダントの光も失われていた。
バトルフェイズにだけ光った……? 何を意味しているのかはわからない。
「お楽しみはお預けってわけね……。まぁいいわ。私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」
結衣 手札2 LP4000
ーーーーー
ーー裏ーー
ー エ
ーーーーー
ーー裏裏ー
茶髪の女性 手札1 LP4000
私にターンが回ってきた。
ちょっと出鼻はくじかれたかもしれないけど、このぐらいで動揺する私じゃない。
このターンですぐに立て直してみせる。
それはそうとして、先ほどあの女性が言っていたお楽しみって一体なんなのだろう。
ペンダントによる力……? 遊佐くんのペンダントの場合は、絶対絶命の時にデッキの一番上のカードが書き変わったとか言っていたっけ。
にわかには信じ難い話だけど、赤見班長もあのペンダントについて何か知っていそうだったあたり、何か大きな力があるのは間違いないのかもしれない。
バトルフェイズにカードが書き変わるとか……? もしそんなことされたら対処のしようがない。
このデュエル、あのペンダントの脅威が来る前に終わらせないと。
「私のターン、ドロー! 【ジェット・シンクロン】を召喚! そして、セットされている【ゴーストリック・ランタン】を反転召喚」
ーーー
【ジェット・シンクロン】☆1 炎 機械 ②
ATK/500
ーーー
【ゴーストリック・ランタン】☆1 闇 悪魔 ③
ATK/800
ーーー
「なるほど、あなたもエクシーズ召喚が狙いね?」
「ええ。いきますよ。2体のレベル1モンスターをオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。"黒曜に煌く漆黒よ! 断罪の剣となりて、闇夜を引き裂け! エクシーズ召喚! ランク1、【ゴーストリック・デュラハン】!"」
ーーー
【ゴーストリック・デュラハン】ランク1 闇 悪魔 ①
ATK/1000→1200
ーーー
このカードの効果なら相手モンスターの攻撃力を半分にできる。そして、【ゴーストリックの駄天使】へランクアップさせることで、あのカードを戦闘破壊できる。
先制ダメージはいただく……!
「私はーー」
「その瞬間、【セイクリッド・プレアデス】の効果発動! "コスモ・バニッシュ!"」
「えっ……?」
私が効果を使おうとした瞬間、先にあの女性がモンスター効果を使ってきた。
エクシーズ召喚時のタイミングなら、先にカードを発動する権利は相手にある。まさか相手ターンにも効果を使えるなんて……。
このタイミングではまだ使いたくなかったけど、やむを得ないか。
「オーバーレイユニットを一つ使い、あなたの【ゴーストリック・デュラハン】を手札に戻す。さて、どうする?」
「くっ……罠カード【迷い風】を発動! 相手モンスターの効果を無効にし、その攻撃力を半分にします」
「わかったわ。これで【プレアデス】の攻撃力は1250までダウンする」
【セイクリッド・プレアデス】
ATK/2500→1250
「私はさらに【ゴーストリック・デュラハン】の効果を発動! オーバーレイユニットを一つ使い、相手モンスターの攻撃力を半分にします。対象は【プレアデス】。"デステニー・オーバー!"」
【ゴーストリック・デュラハン】が黒く煌く剣を空へ掲げるとそこから黒い稲妻のようなものが出現し、【プレアデス】に向かって放たれる。
二重の弱体化を受けた【プレアデス】の体は灰色に腐食しており、覇気が失われていた。
【セイクリッド・プレアデス】
ATK/1250→625
「ごめんなさいね、【プレアデス】」
「……さらに私は【ゴーストリック・デュラハン】1体でオーバーレイネットワークを再構築! "闇夜を羽ばたく嘲笑の翼よ! 悪戯の幻想より舞い降りろ! ランクアップ、エクシーズチェンジ! ランク4、【ゴーストリックの駄天使】!」
ーーー
【ゴーストリックの駄天使】ランク4 闇 天使 ①
ATK/2000
ーーー
手にハートマークを作りながらゴシックな衣装に身を包んだ堕天使のようなモンスターが出現する。
「ランクアップまでしてくるなんて中々やるじゃない? エクシーズの使い手としては思わず嬉しくなっちゃうわ」
「勝手にしてください。【ゴーストリックの駄天使】の効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、デッキから"ゴーストリック"と名のついた魔法・罠カードを手札に加えることができます。私は【ゴーストリック・ロールシフト】を手札に加えます」
「準備が整ってきたってところかしら」
「ええ、あなたを倒す準備ってところですかね」
「それは楽しみね」
ここまでは私の予定どおりに事は進んでいる。
このままいけば勝てる。大丈夫だ。強気でいこう。
「バトル! 【ゴーストリックの駄天使】で【セイクリッド・プレアデス】を攻撃! "ファシネイト・ディザイア!"」
【ゴーストリックの駄天使】
ATK/2000
【セイクリッド・プレアデス】
ATK/625
再び【ゴーストリックの駄天使】は手元でハートマークを作りそれを前へと突き出すと、そこから黒と桃色が混じったような光線を解き放つ。
それを直撃した【セイクリッド・プレアデス】はたちまち破壊された。
「くぅっ……いい攻撃よ……」
茶髪の女性
LP4000→LP2625
茶髪の女性は両手で自らの体を守りながら戦闘の衝撃を受け止める。
少し中腰になりながらも、体勢を立て直すと私の方を見ながら笑みを浮かべていた。
「フフフ……これで終わり?」
まるでまったく効いていないかのようだ。
多少の戦闘ダメージでもけっこうな痛みが発生するはず。
よほど戦闘慣れしているのかあるいはペンダントの力なのか。
わからないけど、ライフを0にすればいいだけの話だ。
「くっ、私はメインフェイズ2に墓地から【ジェット・シンクロン】の効果を発動します。手札の【魔神童】を墓地へ送り、墓地から守備表示で特殊召喚! さらに、手札から墓地へ送られた【魔神童】は墓地から裏側守備表示で特殊召喚できます!」
ーーー
【ジェット・シンクロン】☆1 炎 機械 ③
DEF/0
ーーー
この【魔神童】は最初のターンで伏せていたモンスターだ。
次のターンこそ、効果を使いたいところ。
「私はカードを1枚伏せて、ターンエンドです」
「ならばあなたのエンドフェイズに1枚カードを使わせてもらおうかしら。罠カード【エクシーズ・リボーン】」
「【エクシーズ・リボーン】……!?」
あのカードは墓地からエクシーズモンスターを復活させ、自身をオーバーレイユニットにする罠カード。
【セイクリッド・プレアデス】が呼び出されたら、また私のモンスターが戻されてしまうということだ。
「墓地から【セイクリッド・プレアデス】を特殊召喚し、そのまま効果を発動! 悪いけどあなたの【ゴーストリックの駄天使】ちゃんには退場してもらうわ。"コスモ・バニッシュ!"」
「これは……仕方ありませんね……」
【セイクリッド・プレアデス】は自らの剣で目の前を切り刻むと、そこから紺色に光る亜空間への穴みたいなものが出現し、私の【ゴーストリックの駄天使】はそこへ吸い込まれてしまった。
壁モンスターを展開しておいて正解だったかもしれない。
場合によっては私は次のターン負けていた。
まったく油断できない相手だ。気を引き締めていかないと……。
「さぁて、ではここからが本番よ! 国防軍の君?」
「くっ……ですが、オーバーレイユニットとして墓地へ送られた【ゴーストリック・デュラハン】の効果によって、墓地から"ゴーストリック"と名のついた【ゴーストリック・ランタン】を手札に戻します」
次のターンこそ、あのペンダントの真価が発揮されるかもしれない。
だけど絶対に耐え切ってみせる……!
結衣 手札2 LP4000
ーー裏ーー
ー裏モーー
ー ー
ーーエーー
ーーー裏ー
茶髪の女性 手札1 LP2625