遊戯王Connect   作:ハシン

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Ep52 - 残虐の魔剣 前編

ーー繋吾は無事逃げ切れただろうか。

私はネロの奴を外へ逃すまいと入口にたちながらデュエルウェポンを構える。

 

あいつはあのSFSでも優秀であった真吾班長を葬ったデュエリストだ。正直勝てるかどうかは未知数。

だが、5年前なら勝てなかったであろう相手だとしても、私はこの5年間特訓をし続けてきた。

こいつを倒し、真吾班長をはじめ5年前に散っていった多くの特殊機動班員の無念を晴らすためにな……。

今こそその成果を見せる時!

 

それに……例え私の身が果てようとも繋吾さえ生きていればネロの思い通りにはならないはず。

ジェネシスの計画さえ阻止できればデュエルに負けたとしても勝負には勝つこととなる。

 

ここで奴とデュエルをすることに大きな意味があるんだ。

絶対に退かんぞ……

 

「はぁまったく。さっさと終わらせるよ! 僕はもう赤見くんには用がないんだ」

 

「悪いが私の方は用があるんでな。しばらくの間付き合ってもらうぞネロ!」

 

「こないだ逃げ腰だった君がね……驚いたよ。覚悟してもらうよ?」

 

「覚悟は既にできている。いくぞ!」

 

「デュエル!」

 

赤見 手札5 LP4000

ーーーーー

ーーーーー

 ー ー

ーーーーー

ーーーーー

ネロ 手札5 LP4000

 

決して悪くはない手札だ。

通常の相手であれば問題なく勝ちを狙っていけるだろう。

 

だが、ネロのデッキは正直そこまで詳しくはない。

前に見たのは5年前だからデッキ内容は変わっているだろうし、そもそも私は彼と交戦したことがなかった。

 

当時、私に命じられた任務は繋吾を安全なところへ運ぶこと。

ゆえに、私の交戦行為は禁じられ、代わりに多くの特殊機動班員がジェネシスに対する盾となってくれた。

いや、多くの……というよりかは、私以外の全員だな。

 

だからといって怖気づく気はない。

見せてやろう。SFSの力を!

 

「先攻はもらう、私のターン。手札から【BF-上弦のピナーカ】を召喚! そして、手札の【BF-白夜のグラディウス】は、場に"BF"モンスター1体のみが存在する時、手札から特殊召喚できる!」

 

ーーー

【BF-上弦のピナーカ】☆3 闇 鳥獣 ③ チューナー

ATK/1200

ーーー

【BF-白夜のグラディウス】☆3 闇 鳥獣 ④

ATK/800

ーーー

 

このままシンクロ召喚をして、攻め込む体制を整えるのもいいが、ここは先を見据えて準備を整えておくか。

 

「現れよ、迸響くサーキット! 私は【ピナーカ】と【グラディウス】の2体をリンクマーカーにセット。サーキット・コンバイン! リンク召喚、リンク2。【彼岸の黒天使ケルビーニ】!」

 

ーーー

【彼岸の黒天使ケルビーニ】リンク2 闇 天使 ①

ATK/500

ーーー

 

「シンクロ……じゃないか。何か企んでるみたいだね?」

 

「……【ケルビーニ】の効果を発動! デッキからレベル3モンスターを墓地へ送り、自身の攻撃力をエンドフェイズ時まで墓地へ送ったモンスターの攻撃力分アップさせる。私は【魔サイの戦士】を墓地へ送り、自身の攻撃力を1400ポイントアップする」

 

【彼岸の黒天使ケルビーニ】

ATK/500→1900

 

「さらに、【魔サイの戦士】の効果、墓地へ送られたことでデッキから悪魔族モンスターである【トリック・デーモン】を墓地へ送り、さらにこの【トリック・デーモン】がカードの効果で墓地へ送られた時、デッキから"デーモン"と名のついたカード1枚を手札に加える。私は【ナイトメア・デーモンズ】を手札に加える。カードを2枚伏せて、ターンエンドだ。エンド時に墓地へ送られている【上弦のピナーカ】の効果でデッキから"BF"モンスターである【BF-蒼炎のシュラ】を手札に加える」

 

赤見 手札3 LP4000

ー裏裏ーー

ーーーーー

 リ ー

ーーーーー

ーーーーー

ネロ 手札5 LP4000

 

「そんな弱いモンスターだけなんて、僕を舐めてるのかな? 僕のターン、ドロー! ふふっ、これはいい挨拶ができそうだ。僕は【召喚僧サモンプリースト】を召喚! このカードは召喚に成功した時、守備表示になる」

 

ーーー

【召喚僧サモンプリースト】☆4 闇 魔法使い ③

DEF/1600

ーーー

 

「さらに【サモンプリースト】の効果発動! 手札の魔法カード1枚を墓地へ送り、デッキからレベル4のモンスター1体を特殊召喚できる。僕が呼ぶのは……こいつだ! 【白翼の魔術師】!」

 

ーーー

【白翼の魔術師】☆4 風 魔法使い ② チューナー

ATK/1600

ーーー

 

2体のモンスターが並んだ。

ということは何かしらのモンスターを呼び出してくるだろう。

奴のエースカードが変わっていないのであれば……シンクロ召喚だ。

 

「赤見くんは覚えてるかな? 僕のエースカード」

 

「忘れるわけがないだろう。脳裏に焼き付いているさ」

 

「それなら話は早いね! なら……今度は君の体を切り刻んであげるよ! 僕はレベル4の【サモンプリースト】にレベル4の【白翼の魔術師】をチューニング! "剛毅なる光を放つ、真実の剣よ!最善たる時を掴み、時空の狭間より来迎せよ! シンクロ召喚! レベル8! 【覚醒の魔導剣士】!」

 

ーーー

【覚醒の魔導剣士】☆8 闇 魔法使い ②

ATK/2500

ーーー

 

銀色に輝く双剣を構え、純白のローブを纏った魔法剣士が出現する。

あれが、奴のエースカード。私の仲間を次々と切り刻んでいったモンスターだ。

 

仲間達の悲鳴と共に、体が切り刻まれる音が鳴り続けた5年前の悲劇は忘れれられない。

あいつは、デュエルで相手を倒した後、わざわざデュエルウェポンを腕から外し、あのモンスターで切り刻んでいったのだ。

目的は私の居場所を吐かせるため。

 

結果、その仲間たちの苦痛によって、私と繋吾の命は助かったのだが。

 

決して忘れない記憶。ジェネシスを討ち滅ぼそうと心に誓ったあの日から私はデュエルの腕を磨き続けた。

全てはあのモンスターと共にネロをたたきつぶすために。

 

「随分怖い顔をしてるね? そんなにこの子が嫌いかな? ふふふ」

 

「お前……あれから人を何人殺した?」

 

「死んだかどうかまで確認してないからわからないや。でもそんなのどうでもいいでしょ。僕に楯突いてくるのが悪いんだから。君もそうだよ赤見くん。僕の言うことを聞かないのなら……わかってるよね?」

 

「いつまでも思い通りになると思うなよ。本物のデュエルってやつを教えてやる……」

 

「あはははは! 本物のデュエル? なにそれ? まあいいや。僕は【覚醒の魔導剣士】の効果発動! "魔術師"と名のついたモンスターを素材としてこのカードをシンクロ召喚した時、墓地から好きな魔法カードを手札に加える。僕はさっき捨てた【ヒュグロの魔導書】を手札に戻し、これをそのまま発動! 場の魔法使い族モンスター1体の攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

 

【覚醒の魔導剣士】

ATK/2500→3500

 

攻撃力3500。あの攻撃が直撃すればとんでもないな。

 

「さてと、くだらない話はいいからさっさと死んでよ。バトル! 僕は【覚醒の魔導剣士】で【彼岸の黒天使ケルビーニ】を攻撃! "リインバース・デュランダル!"」

 

【覚醒の魔導剣士】

ATK/3500

【彼岸の黒天使ケルビーニ】

ATK/500

 

2つの剣を回転させながら【覚醒の魔導剣士】が接近し、【ケルビーニ】を切り刻む。

 

「罠カード【ガード・ブロック】を発動! バトルによるダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする!」

 

「へえー、ダメージを防がれちゃったかー。だけどこれはどうかな! 【覚醒の魔導剣士】の更なる効果! このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える! これはバトルによるダメージじゃないよ? "ペイン・ミラージュ!"」

 

続けて【覚醒の魔導剣士】は剣を交差させると、そこから禍々しい黒い球体が出現し、私めがけて発射される。

私に避ける手段はない。その球体から身を守るように右腕を盾とし、球体を受け止める。

 

赤見 LP4000→LP3500

 

「さらに、【ヒュグロの魔導書】の効果も発動するよ? 効果を受けたモンスターが相手モンスターを破壊したことで、デッキから"魔道書"カードを手札に加える。僕は【グリモの魔導書】を手札に加える」

 

戦闘破壊しただけで多くのカード効果を使われてしまったか……。

【ケルビーニ】は自分の場のカード1枚を墓地へ送り、戦闘破壊を耐える効果もあるが……この伏せカードは奴を一撃で仕留めるコンボのために必要だ。

奴の使うペンデュラムモンスターは何度でもEXデッキから復活してくる。したがって、長期戦でも息切れしにくい。

だからこそできるだけ短期決戦に持ち込まなくてはどんどん不利になっていく……。そのためには仕方がない。

 

「さーて、メインフェイズ2。僕はさらに魔法カード【ペンデュラム・コール】を発動! 手札を1枚捨てて、デッキから異なるカード名の"魔術師"ペンデュラムモンスターを2体手札に加える。僕は【賤竜の魔術師】と【黒牙の魔術師】を手札に加える。そして、魔法カード【グリモの魔導書】も発動。デッキから【魔導書院ラメイソン】を手札に加え、これをそのまま発動するよ! フィールド魔法、【魔導書院ラメイソン】!」

 

私の目の前に大きな山のようなモニュメントが出現し始める。

あたりには色とりどりの球体が漂っていた。あれが魔導の力といったところか。

 

「準備はOK! もう君に勝ち目はないかもね? 僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

赤見 手札4 LP3500

ーー裏ーー

ーーーーー

 ー シ

ーーーーーフ

ーー裏ーー

ネロ 手札3 LP4000

 

「甘く見るな、私のターン。ドロー! 永続魔法【黒い旋風】を発動! 私が"BF”モンスターを通常召喚した時、その召喚したモンスターよりも攻撃力が低い"BF"モンスターをデッキから手札に加えることができる。そして、【BF-蒼炎のシュラ】を通常召喚!」

 

ーーー

【BF-蒼炎のシュラ】☆4 闇 鳥獣 ③

ATK/1800

ーーー

 

「【黒い旋風】の効果でデッキから【BF-黒槍のブラスト】を手札に加える。さらに今加えた【黒槍のブラスト】と手札の【疾風のゲイル】は場に"BF"モンスターがいる時、手札から特殊召喚できる! 来い、【黒槍のブラスト】! 【疾風のゲイル】!」

 

ーーー

【BF-黒槍のブラスト】☆4 闇 鳥獣 ②

ATK/1700

ーーー

【BF-疾風のゲイル】☆3 闇 鳥獣 ④ チューナー

ATK/1300

ーーー

 

「いっぱいモンスターを出してくるね? ふふふ……」

 

相変わらずネロは余裕そうな表情で私の場を見ている。

伏せカードに何があるかは見当もつかないが、今はやれることを全力でやるだけだ。

 

「……その余裕、打ち砕いてやる。まずは【疾風のゲイル】の効果発動! 1ターンに1度、相手モンスターの攻撃力、守備力を半分にする! "ダウンフェザー!"」

 

【疾風のゲイル】が大きく羽ばたき暗黒に染まる渦が現れると、それは【覚醒の魔導剣士】を包み込み始める。

 

【覚醒の魔導剣士】

ATK/2500→1250

 

「あー! 僕の【覚醒の魔導剣士】が! やるじゃん赤見くん……」

 

「くだらない反応だな。さらに私はレベル4の【黒槍のブラスト】にレベル3の【疾風のゲイル】をチューニング! "吹きすさべ、黒き旋風! 金剛不壊なる漆黒纏い、天空を穿て! シンクロ召喚! 【BF-アーマード・ウィング】!"」

 

ーーー

【BF-アーマード・ウィング】☆7 闇 鳥獣 ①

ATK/2500

ーーー

 

黒い丈夫そうな鎧を全身に纏った鳥獣型モンスターが出現する。

こいつは戦闘破壊されない効果を持ちながら、自らへの戦闘ダメージも0にするまさに鉄壁に相応しい効果を持っている。

これなら、どんな伏せカードだとしても反撃を食らうことなく安全に攻撃ができるはずだ。

 

「そして私はーー」

 

「この瞬間! リバースカードオープン、【黒魔族復活の棺】!」

 

「なに……?!」

 

「このカードは、相手がモンスターを召喚した時、僕の場の魔法使い族モンスターと共にそのモンスターをリリースさせる! そして、それを贄とし、新たなる闇属性・魔法使い族モンスターを出現させるのさ!」

 

「くっ……」

 

これでは私の【アーマード・ウィング】は戦う機会を与えられることもなくリリースされてしまうということか……。

 

「僕は【覚醒の魔導剣士】と君の【BF-アーマード・ウィング】をリリースし、デッキから【黒き森のウィッチ】を守備表示で特殊召喚!」

 

ーーー

【黒き森のウィッチ】☆4 闇 魔法使い ③

DEF/1200

ーーー

 

「まだだ! バトル! 私は【蒼炎のシュラ】で【黒き森のウィッチ】を攻撃! "ブルーフレイム・カッター!"」

 

【BF-蒼炎のシュラ】

ATK/1800

【黒き森のウィッチ】

DEF/1200

 

「破壊されるけどこの墓地へ送られたことで【黒き森のウィッチ】の効果発動! デッキから守備力1500以下のモンスター1体を手札に加える。僕は【終末の騎士】を手札に加える」

 

「だが、【蒼炎のシュラ】の効果も発動! 相手モンスターをバトルで破壊した時、デッキから攻撃力1500以下の"BF"モンスターを特殊召喚する! 来い、【BF-上弦のピナーカ】!」

 

ーーー

【BF-上弦のピナーカ】☆3 闇 鳥獣 ②

ATK/1200

ーーー

 

「続けて【上弦のピナーカ】でダイレクトアタック! "ウィング・アロー!"」

 

【上弦のピナーカ】の手に持つ弓から矢が放たれ、ネロの体へと直撃する。

 

【上弦のピナーカ】

ATK/1200

 

ネロ LP4000→LP2800

 

「くぅっ……へへっ、なかなかやるじゃん! これは楽しくなってきたね……」

 

無邪気そうに笑うが、その目は真剣そのものだった。

なんとも不気味なやつだ……ネロは。

 

それはそれとして、ここまでの展開は今のところ私の想定内だ。いい具合にデュエルを進められてはいる。

だが、油断はできない。心してかからなければな。

 

「私はさらにレベル4の【蒼炎のシュラ】にレベル3の【上弦のピナーカ】をチューニング! "舞い上がれ神風! 猛き暴風を解き放ち、己の未来を切り開け!" シンクロ召喚! 漆黒の絆を紡げ! レベル7 【BFT-漆黒のホーク・ジョー】!"」

 

ーーー

【BFT-漆黒のホーク・ジョー】☆7 闇 戦士 ①

ATK/2600

ーーー

 

「へー……。もう1体シンクロ召喚してきたか」

 

「あぁ。お前がさっきのモンスターを墓地へ送ってくれたおかげでEXゾーンが空いて助かったぞ」

 

「言うようになったじゃないか赤見くん……。ふふふ……今日は最高に楽しい日になりそうだよ」

 

「同感だ。私は【BFT-漆黒のホーク・ジョー】の効果発動! 1ターンに1度、墓地からレベル5以上の鳥獣族モンスターを復活させる! 蘇れ、【BF-アーマード・ウィング】!」

 

ーーー

【BF-アーマード・ウィング】☆7 闇 鳥獣 ③

ATK/2500

ーーー

 

「私はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ。再びエンドフェイズ時に【上弦のピナーカ】の効果を発動し、デッキから【BF-南風のアウステル】を手札に加える」

 

赤見 手札1 LP3500

魔裏裏裏ー

ーーシーー

 シ ー

ーーーーーフ

ーーーーー

ネロ 手札4 LP2800

 

奴の場はガラ空き。そして、私の場は着々とトドメを刺す準備が整いつつある。

あいつだけは……今日この場で絶対に倒す……!

 

 

 


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