遊戯王Connect   作:ハシン

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第五章 崩壊のSFS
Ep54 - 憂鬱の特殊機動班


ーー国防軍出張での事件から数日。

俺はSFS医療室前の椅子に座り、途方に暮れていた。

 

あの国防軍出張での被害はかなり甚大であったらしい。

国防軍の主力部隊の多くは負傷し、施設も局長室を中心としてかなりの被害を受けたようだ。

最終的には、数によるゴリ押しでジェネシスを迎撃し、撤退へ追い込んだらしい。

 

それに、魁偉さんに任せたあの"赤いペンダント"も報告によるとジェネシスの奴らに奪われてしまったと聞いている。

 

あの包囲状態でリリィの奴は勝ち抜いたと言うのか……。

それともなにかしら離脱の手段があったか。はたまた増援があったのかもしれない。

 

かと言っていくら調べたり聞いたりしても情報としては、奪われたという事実だけしかわからなかった。

 

そして、なんといっても肝心なのは我々特殊機動班のメンバーだ。

結衣はこないだの負傷で治療中だ。

治療班の人からは少しずつ回復に向かっているとは聞いているが、まだデュエルウェポンを用いたデュエルを行うには危険な状態らしい。

それに颯のやつもジェネシスのデュエリストに負けて負傷状態らしい。

負けた直後に賤機の奴が助けてくれたようだ。

デュエルで負けたら助けがない限り死んだも同然だからな。本当によかった……。

 

最後に、赤見さんがネロに負けたとの知らせを聞いた時は驚いたな。

郷田さんがすごい焦りながら赤見さんを運んできてくれて……生きていてくれてよかった。もうそれが一番の心配だった。

俺と結衣の命を助けて死ぬなんて……そんなこと……悔やんでも悔やみきれないからな。

 

それにしてもネロの奴……。あの赤見さんを倒すなんて……よほどのデュエルの腕前を持っているんだろう。

だけど……赤見さんがかなわなかった相手だとしても俺は戦って……絶対に倒さなければいけない。

俺の生きてきた成果が果たせる時がようやく来たんだ。頼んだぜ、【セフィラ・メタトロン】。

 

とまぁ、そんなこんなで今特殊機動班は壊滅状態となっている。

今日も赤見さん達のお見舞いに治療室にきたところだ。

隣には郷田さんが寂しそうに座っている。その姿にはいつものような元気は見られなかった。

 

「残ったのは俺たちだけか……繋吾ちゃん」

 

「そうですね……」

 

「なぁ……繋吾ちゃん。俺たちはジェネシスに本当に勝てるんか」

 

「郷田さん……。確かに今回の国防軍の襲撃で奴らの力を思い知らされた感じがするな……」

 

「あぁ……。特殊機動班に来て数年。任務の度に誰かが負傷したってのは散々あったが、ここまで一気に……ましてや赤見の奴がここまで負傷するなんて初めてだよ。こんな強大な奴ら相手に、たった5人でなんとかできるのかって思ってな」

 

郷田さんが言うのはごもっともな話だ。

なんて言ったって今回はあの国防軍の多くの兵隊を葬る程の力を見せたんだ。

まず正攻法では無理だろう。

 

それに正面から戦わずに、幹部クラスを集中狙いするって言っても、まさに今回全敗している状況だ。

このままではいくら情報を得たところで勝ち目がない。

 

「今のままでは……ダメだと思う。俺たちがもっと強く……変わっていかないとダメなんじゃないですかね」

 

「はあ、繋吾ちゃんはまだ諦めてないって表情してんな? さすが赤見の奴が見込んだだけのことはあるな」

 

「当たり前ですよ。俺はあいつらを倒さなくちゃいけない理由がいっぱいあるからな。それに今回の件でますますネロの奴はどうにかしないといけないと思った」

 

「あー、赤見の報告書にあったネロの話か。人を切り刻んで苦痛を与えるのが趣味……ってか。まったく気味悪い話だよなあ」

 

赤見さんの報告書によると、ネロは喜んで人を切り刻み苦痛を与えていたという。

それに、国防軍……いや、国家に対してかな。なにかしら憎悪を抱いているようにも感じたとも書いてあったな。

 

ジェネシスは一体……なんのために活動しているのだろうか。

仮にネロのように人へ苦痛を与えるためだけに活動しているというのであれば……到底許せるものではない。

それはデュエルウェポンという力を乱用し、好き勝手しているだけに過ぎないからな。

絶対に止めないと……。これ以上、仲間や家族を失う悲劇を起こしてはいけない。

 

「どうぞー」

 

突如、治療室の中から女性の声が聞こえた。

治療班の人だ。

 

「おし、繋吾ちゃん。そろそろ行ってこい。赤見に聞きたいことがいっぱいあるんだろ?」

 

「はい、郷田さん。それではまた」

 

俺は郷田さんへ軽く頭を下げると、治療室の中へと入った。

 

中は広くカーテンで仕切られた空間にベッドが6つ程並んでいた。

その中の一つのカーテンを開けると、そこには清潔感溢れるベッドに横たわる赤見さんの姿があった。

 

「おぉ、繋吾か。まぁそこに座れ」

 

赤見さんに言われ、俺はベッド脇に椅子へと座る。

 

「悪かったな。あれだけ言っといて負けてしまうとは情けない限りだ」

 

「いえ、赤見さんのおかげで今俺は生きることができています。ネロは相当強かったんでしょう」

 

「あぁ……。遊んでいるように見えてその裏で何を考えているのかわからないような奴だ。私も最善を尽くして戦ったが、トドメを刺しきることができなかった。不甲斐ないよ」

 

赤見さんは悲しそうな表情をしながら俯く。

きっと、赤見さんも俺と同じくらいの思いを背負ってネロと対峙したに違いない。

だけど、その思いだけでは届かなかった。それほどまでにネロという存在は大きかったということだ。

 

「まぁネロについては、今後どうしていくかは考えるさ。それよりも今日来たのはあの話だろ?」

 

「はい。赤見さんと合流した直後に話していた5年前の真相についてです」

 

「少し長くなる。聞いてくれるな?」

 

「はい」

 

ーーあれは今から5年前。私はごく普通の特殊機動班員だった。

 

その頃はまだ特殊機動班もいっぱい人員がいてな。今の10倍くらいはいたな。

 

ある日、突然私は生天目社長に呼ばれ社長室に行った。

急だったもんだから班異動の内示か何かかと思い、内心びくびくしながら向かったな。

 

だが、そこには当時の特殊機動班長の遊佐 真吾班長の姿もあった。そう、お前の父親だ。

 

その時、お前の父親から言われた。

お前に一つ、重大な任務を任せたいと。

 

内容を聞いたら緑のペンダントを息子に渡すから、それを誰の手にも渡らないように……特にジェネシスには渡らないよう守り抜いてほしいと。

 

その緑のペンダントはいつも真吾班長が任務中に身につけていたものだったから私もよく知っていた。

 

だけどなぜ誰の手にも渡らないようにする必要があるのか、なぜ息子の手に渡すのか。いきなり言われたものだから正直意味がわからなかった。そこで私は真吾班長に聞いたんだ。

 

そしたら、真吾班長はあのペンダントには不思議な力があって、それを悪用すればとんでもない災いが起きると言い、ジェネシスはその力を求めていると言っていた。

そして、最後に私は近いうちに死ぬかもしれないとも言っていたんだ。

 

その発言に驚いていると今度は生天目社長が衝撃的な発言をしたんだ。近日中に、真跡シティに大規模襲撃テロが起きると。

標的は国防軍真跡支部。そして主犯はジェネシス。ジェネシスが主導となるデュエルテロには当然特殊機動班は急行しなければならない。だからこそ死ぬかもしれないってことだった。

 

それなら出撃をやめて……とも思ったが、ジェネシスに対する特別部隊。それが特殊機動班。行かない手はなかった。

ましてや、班長がいなければ誰が指揮を取る? そこで真吾班長は息子にペンダントを渡すと決意したらしい。

 

でもなぜ、私にその防衛任務を任せたのか。

その時、真吾班長は誰からも息のかかっていない純粋で勇敢な人物にしかこの任務は頼めない。そして、この任務を任命することは次期特殊機動班長を任命することと同義と言ったんだ。それが私であったそうだ。

結局その意味はよくわからなかったけど、私は引き受けることにした。

 

だからこそ、今回の大規模襲撃テロでは、一切の交戦行為を行わずに、ペンダントと繋吾の命を安全な場所へ確保させることだけに専念するように言われた。何があったとしても私を生き残らせるためにな。

 

そして、当日だ。

真吾班長から指示を受けた私は急ぎ繋吾の下へ行き、お前の後頭部を殴り気絶させた後に運び出した。

 

だが……お前も少し覚えているだろうが、既にネロの奴には見つかった後だった。少し実行するのが遅かったんだ。

そう、あの時私は真吾班長の援護に回ろうか最後まで悩んでいた。その結果がこの様だよ。

 

簡単にネロから逃げられるはずはなく……ひたすらジェネシスの部隊から追われ続けた。

 

そこで私以外の特殊機動班員は当初の予定通りに私の盾となり、ネロやその他ジェネシスの敵と戦い続けてくれた。

最終的には路地裏のゴミ箱の中で身を潜め、なんとかジェネシスの目を退けることができたんだ。

 

あたりからは仲間の断末魔が響き渡っていたよ……。あの時程悔しくて苦しい日はなかった。

 

そこから私は繋吾をSFSに連れて行くかも考えたが、SFSにいてはジェネシスに狙われる身になるのは間違いない。

それに、SFSが狙われればジェネシスに対抗できる力があるのかあの時は自信がなかった。

 

やむを得ずお前をゴミ箱の中に放置して私は帰還したんだ。

ジェネシスに対し、ペンダントはこの街にはないと思わせた後であれば、繋吾はずっと安全な環境で暮らしていけると思ったからだ。

しばらくの間はジェネシスは私のことを狙うだろうし、真吾班長の任務を達成するにはそれが最善の方法だと思ったんだ。

 

それが5年前の事の顛末だよ。

 

私がジェネシスから集中的に狙われていた理由もそれだ。ジェネシスは私がペンダントの在り処を知っていると思い込み、SFSをおびき出すような襲撃ばかりを行っていたんだ。

 

そして先日、再度真跡シティに襲撃があった時、ジェネシスに繋吾の存在がバレてしまったかもしれないという思いと、今度こそ私が自らの手で守り抜かなきゃいけないという思いでお前をSFSに迎えた。

だが、お前に事情を伝えなかったのは、お前を戦いに巻き込みたくなかったという私の身勝手な思いだ。それほどまでにジェネシス……いや、ネロは危険な人物だからな。

 

一通り話し終えた赤見さんは、苦笑いしながら天井を見上げていた。

確かにネロの凶悪さは赤見さんの報告書を見て痛いほどにわかった。

ただ、自分自身の復讐心だけでぶつかってもおそらく叩き潰されるだけだと言うこともよくわかる。その凶悪さを赤見さんは知っていたからこそ、俺に事情を伝えなかったということもだ。

 

「隠していて本当に悪かったな。お前にとってそれがわかっていればもう少し良い行動が取れたのかもしれない」

 

「いえ、俺の命を考えての判断、むしろ感謝してます。おそらく……俺は勝てなかったと思いますから」

 

「そうか……。そう言ってくれるのなら救われるよ」

 

「だけど、今回の戦いも無駄じゃないですよ赤見さん。俺たちが今回負けたのは情報が足りなかったから……だと思います。赤見さんもネロと戦うのは初めてだと聞きましたし。俺も今回の件を通じて、無知識で相手にぶつかることはどれほど危険なことか痛感しました。情報を得ることで結果は変わるはずです」

 

その言葉を聞いた赤見さんは、少しだけ口をにやけさせた。

 

「ふっ、さすがはあの班長の息子だな。その通り、今回我々は苦しみを味わうことで大きな進展を得た。ジェネシス壊滅に向けた着実な一歩をな」

 

そう呟く赤見さんは真剣な眼差しで自らの拳を見つめる。

よかった。赤見さんもまだ諦めてはいないようだ。

 

「実はな。ネロのデッキ情報以外にも大きな情報を得てる」

 

「え、それは一体……?」

 

「まぁそれは後ほど話す。それよりもまずは目の前の事柄を片付けないとな。私の怪我もそうだが、案の定また今回の件でSFS本会議が開かれるらしいんだ」

 

本会議……。まさか今回の件で再び特殊機動班の撤廃が議題に上がるんじゃ……。

今回ばっかりは俺たちのせいじゃないっての……。むしろ被害者だ。

 

「それはまた……しんどいですね」

 

「まぁ、今の特殊機動班は常に崖っぷちみたいなもんだ。むしろチャンスと思っているよ」

 

なんというプラス思考。

でも今回は監視の賤機の奴も現場はしっかり見ているわけだし、前回ほどひどい展開にはならないと思いたい。

 

「それよりも結衣達の見舞いは行かなくていいのか? 颯はもう退院したらしいが、結衣の方はまだ厳しいと聞いたぞ」

 

颯はもう治ったのか。さすがお調子者なだけあって回復は早いなあいつ。

それに結衣の方は医療室に運んでその日面倒を見てから会いに行ってないな。顔出しに行くか。

 

「そうですね。向かってみます。赤見さん、絶対にジェネシスを壊滅しましょう」

 

「あぁ。もちろんだ。また何か聞きたいことがあったら聞いてくれ。ではな」

 

俺は軽く挨拶をし、赤見さんのいた治療室を後にすると、結衣がいた治療室へ向かった。

 

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