遊戯王Connect   作:ハシン

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Ep57 - 決闘機動部の意思

桂希の一声でざわついていた会議室は一気に静まる。

会議室にいる皆が桂希の発言に対して注目しているのが目に見えてわかった。

 

だけどなんだか……とても嫌な予感がする。

決闘機動班が素直に特殊機動班の味方をしてくれるとはわからないしな。

 

「桂希副班長、言ってみたまえ」

 

黒沢部長が桂希の発言に対して興味深そうに尋ねた。

 

「国防軍の持っていた危険な代物。"レッド・ペンダント"の脅威については、須藤班長のわかりやすいご説明によりよく理解できたかと思います。ですが、それは一つだけ……というわけではありません」

 

おいおい……。まじかよ。

ここに来て俺のペンダントのことを話すつもりじゃないだろうな。桂希のやつ。

 

というかなぜ桂希のやつが"これ"の存在が"レッド・ペンダント"と似たようなものであることを知っているんだ。

野薔薇か誰かから知れ渡ったか……まぁこの際そんなことはどうでもいい。

 

それを話せば、俺はますますSFSにいられなくなる。というか一つ間違えばテロリスト扱いされて逮捕なんてこともあるんじゃないか?

危険なものと知っていながら密かに保管していた……とかなんだかで。

 

「なに……? それはどういうことかね?」

 

「少なくとも私の知る限りでは2つあります。一つは国防軍から奪われた"レッド・ペンダント"。もう一つは……」

 

そこまで言いかけた桂希はちらっと俺の方へ視線を向ける。

まずい……。もう逃げられないぞ……。

 

「SFSの中にあります」

 

案の定、その発言後あちらこちらで「誰がもっているんだ」だの、「開発司令部で隠しているのか」だの話し声が聞こえ始めた。

どうする……? 素直に言い出すべきか……?

 

「繋吾。流れに身を任せよう。下手な行動はしないほうがいいだろう」

 

「え……?」

 

赤見さんが勘づいたのか声をかけてくれた。

確かにわざわざ言い出しにいくことはないな。

 

「あいつも決闘機動部の人間だ。我々をハメるといったことも考えられるが、何か考えがあってのことだろう……」

 

赤見さんも想定外だったみたいだ。冷や汗をかいている。

ますます特殊機動班の立場が悪くなってきそうだな……。

 

「それは驚いたな。一体誰が持っているのかね? 当然、開発司令部では持っているわけがない。持っているのであれば真っ先に国防軍に送りつけているところだ」

 

「なるほど……やはりですか」

 

「ん……?」

 

「いえ、なんでもありません。そのペンダントは特殊機動班で所有しています。そうですね……せっかくですから"グリーン・ペンダント"と名付けましょうか」

 

くそ……もうだめだ!

隠し通す方向での作戦は諦めたほうがよさそうだ。

持っていることを素直に言うとして……どういう言い訳をするかってところか。

 

「赤見班長、それは本当ですかな?」

 

「……ええ。うちのメンバー、遊佐 繋吾が所有しております」

 

「また遊佐くんかね。出したまえ。そんな危険なもの任せておけるか」

 

「……くっ……」

 

俺は言われ渋々ペンダントを服の中から取り出し机の上へと置く。

その瞬間、会議室のあちらこちらで話し声が聞こえてくる。そりゃそうだろうな……真跡シティを破壊するほどの力を持っているとされるめちゃくちゃな代物が目の前にあるのだから。

そもそも、そんなめちゃくちゃな話信じられないけどな。俺は……その力を間近で見てしまったから信じざるを得ないけども。

 

「黒沢部長、このペンダントをどのようにするお考えですか?」

 

「もちろん国防軍に渡し厳重に保管してもらう。君たち特殊機動班に任せるよりはるかに安全だろう。それに我々が所有していては次の標的がSFSになるだけだろう」

 

「申し訳ございませんが、我々はそうは思いません。国防軍は"レッド・ペンダント"の防衛に失敗しているのですよ? 我々特殊機動班はこのペンダントを先日の襲撃やイースト区の作戦等でもジェネシスの手から守りきったという実績があります」

 

「ジェネシスにボロ負けした分際でよく言うね赤見班長。国防軍は遠方出張から戻ってきたばかりで、少し気が抜けていたところもあったに違いない。同じ失敗は二度は繰り返さないだろう。いずれにしても特殊機動班の廃止に変わりはない以上、そのペンダントの処遇は開発司令部で決めさせていただこう。いいかね? 神久部長」

 

「うーむ……国防軍と……一度協議を行った方が良いとは思うが……」

 

「それでは遅いのですよ神久部長。その間にジェネシスからの襲撃を受けたらどうするのですか?」

 

「すまないが、発言をさせてもらってもよろしいかな?」

 

二人の部長の間に入るように白瀬班長が声を上げる。

とうとう来たか。決闘機動班がどのように考えているのか……それがあきらかになる。

 

「おっと、白瀬班長。どうぞ」

 

「まだうちの桂希が説明途中でしてな。勝手に話を進められては困りますよ黒沢部長。桂希、続きを頼むぞ」

 

「はい、我々としては"グリーン・ペンダントが"このSFSに存在することに対して二つの問題があると考えております。一つはこのペンダントの防衛方法。もう一つはジェネシスへの対抗方法についてです」

 

「そんなものはわかりきっている。ペンダントは国防軍で厳重に保管。そして、ジェネシスに対しては国防軍へ協力する形での殲滅作戦を展開。異論はないだろう? 桂希副班長」

 

「申し訳ござませんが、わたしは同意しかねます。現場にいる立場から言わせていただくとそれはかえってSFSでの作戦行動を取りづらくさせる上に、SFSの被害が増えるだけと考えますね」

 

これは……味方になってくれているということか。

期待してもよさそうだ。

 

「なに……? それはどういうことかね?」

 

「まず、国防軍にペンダントの防衛を委ねれば施設の一箇所に保管することになることが想定されます。その場合、施設に保管されたペンダントの防衛となるため実行できる作戦は限られる。だが、SFSの場合は特殊機動班という"人"が所有している状況。影武者を立てるなり、常に逃げ回るなり臨機応変な対応ができますし、所持者本人が強ければまず奪われることはありません。ただ、この場合は所持者には大きな危険が伴うので、国防軍ではやろうと言う人はまずいないでしょう。ですがSFSにはわざわざその危険な任務を受け持つ特殊機動班がいる。それだけでもSFSで所有していた方が防衛策は多いと考えます」

 

動かない一つの場所を守るより、動ける一人を守る方が楽ってことか。

言われてみれば確かにそうだな。

 

「ふむ……だが結局はSFSの被害が甚大になるし、SFSの戦力は限られている。それを考慮したらさほどメリットにはならんのではないか?」

 

「いえ、今の状況をよくお考えください。先日の国防軍襲撃時に遊佐はジェネシスと接触しています。ペンダントの存在も勘付かれている可能性が高いです。それを考えると国防軍にペンダントを渡したとしても、狙いはSFSから変わらないと思います。SFSにペンダントはない、という情報が彼らに伝わらない限りは」

 

「まったく余計なことを……。一般住民にこの情報を公開してはパニックだ。何かジェネシスにペンダントを持っていないと伝える方法はないものだろうか……」

 

「それは聞き捨てなりませんな黒沢部長。我々はデュエルテロ組織の壊滅を目的に活動している民間軍事組織。ジェネシスが我々を狙っているのなら立ち向かうべきではないかね? なぜ逃げ腰なのだ」

 

黒沢部長の発言を逃すまいと白瀬班長までもが声を上げる。

結局この黒沢部長は自分の命が惜しくてしょうがないんだろう。情けない限りだ。

 

「もちろんそれは理解しているが、とても我々の実力ではジェネシスと対等に戦える自信がないのだよ白瀬班長。私は現実的な視点での話をしている」

 

「黒沢部長は現場にあまり行かなくなりましたからなあ。我々決闘機動部の実力は知らんのでしょう。任務において失敗知らずの決闘精鋭班、そしてジェネシス幹部を打ち破る実力者のいる特殊機動班。そして、我々統率の取れた大規模部隊の決闘機動班。あとは作戦次第でいくらでも勝機は掴める」

 

「相手の数は未知数なんだぞ! 白瀬……お前も自意識過剰だぞ! だからいつまで経っても班長から上がれぬのだよ」

 

「無策で安全策ばかり言う黒沢部長に言われたくはございませんな。もちろん、数的には足りていないと踏んでおるよ。だからこそジェネシスへ対する対抗策として、臨時の部隊増強を執り行おうと考えている。ペンダントの防衛は特殊機動班に任せ、特殊機動班とSFSの防衛は我々決闘機動班が責任を持って行う。いかがかな?」

 

「次の採用試験までまだ半年近くある。隊員を増やせば人件費が……」

 

「そんなこと言ってる場合ではないだろう? この真跡シティが破壊されてしまうかもしれないのですよ黒沢部長」

 

白瀬班長に言われ、黒沢部長は険しい表情をしながら腕を組む。

激しい葛藤があるのか、あるいはどのように反論しようか考えているのか……。

 

「そうだな。少しは覚悟を決めてもらおう黒沢部長。防衛部隊が潤沢となれば、駐屯警備部の負担も減るだろう。斎藤部長はどうかな?」

 

「……うーむ。それはジェネシスに対する戦闘責任を決闘機動部で持つということですか? 神久部長」

 

「ああ。我々で責任を持とう! もちろん、司令直属班が出向くほど攻めこまれる事態はないように尽力しますよ。黒沢部長」

 

「……まったくをもって現実味がない方針だ。どうなのかね。神久部長は可能であるとお考えなのですか?」

 

「特殊機動班のめちゃくちゃな作戦に比べれば遥かに確実性のある防衛体制であると考えている。デュエルでの戦いは数ではない。実力だ。」

 

「……はぁ。わかった。だが、作戦立案時は開発司令部の許可なく作戦行動を取らないこと。それは約束してもらおう」

 

「いいだろう。だが、決闘機動部内の班編成は従来のまま行わせていただく」

 

よかった……。どうやら今回も特殊機動班の存続は決まったようだ。

ジェネシスとの戦いはこれからだって時に余計なことしてくれるぜまったく。

 

だけど、決闘機動部内の増員をしてくれるというのはありがたい話だ。

おかげでジェネシス本拠地へ攻め込む作戦が現実味を帯びていく。特殊機動班の作戦に協力してくれるのであればの話だがな。

 

「結論は出たな。隊員増員については、総務管理班と決闘機動班にて調整を行ってくれ。ジェネシスの同行は見逃さないよう偵察警備班と特殊機動班は情報収集をよろしく頼む。作戦立案については、決闘機動部内で協議の上、開発司令部へ持ち寄り実行の有無を決めていく方向としたい」

 

「承知……しました」

 

生天目社長の一声によって、今回のSFSの方針が打ち立てられることとなった。

俺たちによっては良い方向の結論とはなったが、それとは別に事態は深刻だ。

これからの戦いはもっと厳しくなっていくだろう。気を引き締めていかないとな……。

 

「あとは"グリーン・ペンダント"については内密にしてくれ。赤見班長、そして遊佐くん。この真跡シティの命運は君達の守るそのペンダントにかかっていると言っても過言ではない。くれぐれもよろしく頼むよ」

 

「ええ。必ずや守り抜き、ジェネシスを殲滅してみせます」

 

赤見班長の発言を聞き、ゆっくりと頷いた生天目社長は司会の人へ合図するとそのまま着座した。

これで今回の会議は終了だろうか。

 

「それでは、以上で第32回SFS本会議を終了いたします。お疲れ様でした」

 

司会の人がそう発言すると、会議参加者は各自席を立ち会議室から出て行く。

はぁ。なんだかすっごい長かった気がするな。

 

「今回ばっかりはダメかと思ったな……。よかったな繋吾」

 

「はい。もうおしまいかと思いました……」

 

「白瀬班長には礼を言わないとだな。いくか繋吾」

 

赤見班長に連れられて白瀬班長の下へと向かう。

隣には桂希の姿もあった。

 

「白瀬班長。助け舟をいただきありがとうございました」

 

「おぉ赤見班長か。礼には及ばんよ。私はSFSと真跡シティにとって良い未来へ向かうためをと思ってSFSの決闘機動部の皆を信じたまでだ」

 

「感謝します。あの白瀬班長達の声がなければ我々は戦場から身を引かねばならないところでした」

 

「それよりもだ赤見班長。おかげさまで今後はジェネシスとの全面戦闘となるだろう。その指揮は任せたぞ」

 

「はい、必ずやジェネシスを殲滅してみせますよ。白瀬班長も増員関係についてよろしくおねがいしますよ」

 

「任せたまえはっはっは! まぁ人気のない特殊機動班員については約束はできんがな」

 

白瀬班長と赤見さんは和やかなムードで会話をしている。

少し前の対立した感じからするとまったく想像もつかない様子だ。

 

「では、我々も失礼するよ。遊佐くん。くれぐれも"ペンダント"をよろしく頼むよ」

 

「は……はい!」

 

白瀬班長は目を細めながらそう言うと、桂希達副班長を引き連れて会議室を後にした。

 

「さーて、今後についてどうするか考えないとな。これからさっそく取り掛かるとするよ。またな繋吾」

 

「はい、無理はしないでください赤見さん」

 

「ふっ、むしろ一番気がかりだった本会議が終わったんだ。今はモチベーション上がりまくっているところだよ」

 

すごく嬉しそうに話す赤見さんを見て俺も思わず嬉しくなる。

ひとまずSFS内部的な問題は解消された。ここからは本格的にジェネシスへ対抗していくための準備がはじまるといったところか。

ネロ……絶対にこの俺がデュエルで倒してやる……!

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