遊戯王Connect   作:ハシン

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Ep60 - 諦めぬ斉場

闇目さんとのデュエルが終わり、お互いにデュエルウェポンを畳む。

闇目さんは少し呆れたような……難しい表情をしていた。

 

今の俺とのデュエルで何か感じたものがあるのかもしれないが、かといって後ろにいる斉場副班長には逆らえない難しい立場ゆえの表情だろう。

 

「繋吾ぉ! さすがこの俺の見込んだデュエリストだぜ!」

 

突如颯のやつが後ろから抱きしめるように突っかかってきた。

まったくこいつは……。

 

「おいおい……気持ち悪いから離れてくれ……」

 

「気持ち悪いとはつれねえなぁ繋吾くん。あの司令直属班に勝ったんだ。すげぇことなんだぜこれ」

 

「そりゃありがとよ。でも確かに決闘機動班の連中とは桁違いの強さのように感じたよ。最上級モンスターを扱うのは難しいしな」

 

俺や颯のようなEXデッキにエースモンスターを入れているデッキならば、下級モンスターを複数使用することで出すことができる。ゆえにデッキ全体が下級モンスターを多めに構築することができ手札事故も少なくなるが、エースモンスターがメインデッキに入る大型モンスターの場合はそうはいかない。

 

手札に来てしまった時の対処や、如何にして場に出すか。

それも自らのメインデッキに含めて構築しなければならない以上、個人的にはうまく回すのが難しいと思う。

 

「感心しているのもいいですけど、あの人まだ諦めてなさそうですよ」

 

「え……」

 

結衣に言われ斉場副班長を見ると、闇目さんに対して何かを言っているようだった。

その言葉を聞くと闇目さんは急に走り出し、デュエル訓練場を出て行った。

何があったのだろうと考えていると、今度は斉場副班長が俺の下へと近づいてくる。

 

「おい斉場! うちの繋吾ちゃんはそっちの班員を倒した。もうこれで手出しはできねえってことでいいよな?」

 

俺を庇うようにして郷田さんが前へと出る。

 

「思ったよりデュエルはできるようね。だけど今日は実力を見に来ただけよ」

 

「負け惜しみかあ? 素直に敗北を認めたらどうだ? 斉場!」

 

「我々司令直属班の一班員に勝った程度で随分の浮かれようね。まぁいいわ。またお会いしましょう。遊佐隊員、そして特殊機動班の皆さん」

 

斉場副班長はそう言うと、訓練場の出口へ向かって歩き出した。

そして去り際に再度口を開く。

 

「最後に一つだけ。あなたたちのせいでこの真跡シティが滅んだとしたら……私はあなたたちを一生恨むから……。覚悟しておくことね」

 

「ちっ……言うだけ言いやがって……もう来るんじゃねえぞ!」

 

郷田さんの罵声に耳を貸すこともなく斉場副班長達はデュエル訓練場を後にした。

 

「……終わりましたね」

 

「まったく、疲れちまったぜ。繋吾ちゃん気にすることはねぇからな? ペンダントがどんなものであろうと俺たち特殊機動班の目的は変わることはねえ。ペンダントは俺たちの力で守るって話だったしな!」

 

「はい。ありがとうございます」

 

斉場副班長の言っていたペンダントにはペンダントの力を持って対抗しなければ勝てないシミュレーション。

正直、ペンダントの力を見てしまっている俺からすると、あり得る話だと感じる。

 

そして、開発司令部へこのペンダントへ渡すことで、俺の目的であるジェネシス殲滅への道は近づくのではないか。そんな思いもないと言えば嘘になる。

 

だけど……俺の父さんはそうはしなかった。

きっとそれには何か理由があって、あえて俺へ渡したのだろう。

 

父さんは俺へのお守りとしてこのペンダントを渡してくれた。

このペンダントは父さんの言うとおり、実際に俺のことや結衣のことまでも守ってくれた。

 

俺に与えられた力……だからこそ……このペンダントは俺自身が守り抜いて行かなければならないんだと思う。

 

それに……研究したって使えるようになる保証はないし、その間にジェネシスに襲撃されようものにはもう特殊機動班は手出しのしようがない。

司令直属班を信用していないってわけじゃないけど……。ジェネシスとろくに交戦したこともない連中にこのペンダントは任せられない。

 

こう頭の中で整理していくと徐々に自分の中での考えもまとまってきた。

 

決めた。このペンダントは俺自身の手で守ってみせる。

そして、真跡シティがもしペンダントの力に襲われて手がつけられなくなってしまったら、俺自身がこのペンダントの力をなんとかして引き出してやるんだ。

 

「どうしたんですか? 考え事して」

 

決意が固まったところで結衣に声をかけられ我へとかえる。

 

「いや、このペンダントについてどうするか考えていたんだ」

 

「あそこまで開発司令部に反発した後で渡すなんて言えたもんじゃありません。今更悩んでも困るのですが」

 

「安心しろ。このペンダントは俺自身で守りぬく。シミュレーションでは敗北する可能性が99%なんて言ってたが、それは俺たち特殊機動班の成長と、俺自身がこのペンダントを操るという可能性を考慮しないでの考えだ。決まったわけじゃない」

 

「繋吾くん……そのペンダントを操るつもりですか?」

 

「ああ。前にお前を守ったように……いざという時に力を発揮できるかもしれない」

 

どうすれば操れるなんてわからないけど、ここぞという時にこいつは力を発揮してくれた。

ならば……今後ジェネシスが何か武力行使してきた時も、きっと助けてくれるはずだと信じたい。

 

「ん? 繋吾ぉ……その結衣ちゃんを守ったって話ちょっと聞かせてくれねえか……」

 

そういえば颯のやつには話してなかったっけ……。

ちょっとめんどくさそうだからざっくりとだけ話しておくか。

 

「結衣がジェネシスの幹部に負けた時、吸収されそうになったんだが、その時にペンダントが結衣を守ってくれてな。おかげでこうして結衣は生き残ることができたってわけだ」

 

「いつの間にそんなおいしいところを……ぐぬぬ……」

 

なんかすごく悔しそうにしているが気にしないでおこう。

この調子の颯も久しぶりに見た気がするしな。

 

「……それよりもさっき繋吾くんが言ってたとおり私たちももっと力をつけなければいけないですね。司令直属班があれだけ負けることを示唆してきたってことは、今のままじゃジェネシスにデュエルでも勝てないということだと思います」

 

「ああ、そうだな。デッキも戦術も見直す必要があるかもしれない」

 

今のところ俺は運が良く勝てたところだが、結衣や颯、そしてあの赤見さんでさえジェネシスの幹部に遅れを取っている。

もっと力をつけなくちゃ到底勝つことなんてできない。ペンダントの話はそれからだ。

 

「……そうだ! よかったら繋吾のデッキ貸してくれねえか?」

 

「ん? 俺のデッキをか?」

 

「ああ! 俺のデッキの可能性をさらに追求するために参考にしたいんだ! いいだろ? 繋吾」

 

デッキはあまり手放したくはないが……まぁ颯ならいいか……。

仲間が強くなってくれるのなら俺としてもありがたいしな。

 

「うーん……俺のが参考になるのならいいよ。くれぐれもなくすなよ?」

 

「心配すんなよ! 明日には返すから!」

 

そういうと颯は若干食い気味に俺のデッキを手に取ると自らのポケットへとしまい込む。

 

「んじゃ、俺は先に帰ってデッキの研究と行くぜ、じゃあな!」

 

「あ、あぁ……」

 

気合が入っているのはいいんだろうが、こう自らのデッキを持っていかれるとなんとも喪失感があるな。

まぁ仕方がない。

 

「相変わらず張り切り方だけは一人前ですね。上地くん」

 

「猪突猛進なところがあいつのいいところかもしれないな」

 

「それにしてもデッキを渡してしまったよかったのですか? 繋吾くんにとっては魂みたいなものでしょう?」

 

「まぁ確かにそうだけど、今後のことを考えると少しでもみんなの力になるのならって思ってな。それに颯だったら信頼してるし」

 

「決闘機動班の連中に比べればそうですね。くれぐれも気をつけてください。仮に今、テロリストに襲われたとしたらあなたは無防備なのですから」

 

言われてみればそうだな。手持ちのカードで護身用サブデッキでも作るか。

っても明日には帰ってくるわけだし、大丈夫だろう。

 

「もし何かあったら連絡ください。……あなたの盾になるくらいは……できますから」

 

「いや、そんな気を使わなくて大丈夫だよ結衣。自分の身は自分でーー」

 

「わ、私が心配してあげてるんですから、素直に受け取ってください! ……それにこの間の借りを返すってわけじゃないですけど……今度はわたしの番です」

 

結衣は少し照れながらも怒るように叫ぶ。

なんだか気に障る返し方をしてしまったみたいだな。いまだに距離感が掴めないよほんと……。

 

「わかったわかった! いざという時は頼むよ」

 

「……はい。何かあれば絶対連絡してくださいね」

 

興奮気味の結衣をなだめながらこの日の特訓は終了した。

 

 

 

 

ーー翌日、けたたましく鳴るチャイムの音で目を覚ます。

 

こんな朝方から一体誰だろう。

眠い目を擦りながら部屋の扉を開けると、見覚えのある女性とその後方に多くの人たちが並んでいた。

 

斉場副班長だ……。

 

「朝方に失礼。遊佐隊員」

 

「俺の部屋に押しかけて……どういうつもりだ」

 

ペンダントを強引に奪うつもりか……?

そんな汚い手を使ってまで自らの描いたとおりにことを進めたいのかよ。

 

こんな手段を使う奴なんか信用できるわけがない。絶対にペンダントを渡すものか。

 

「あら、勘違いしないで頂戴。何も今日来たのはペンダントを取りに来たのではないわ。あなたを引き抜きにきたの」

 

「引き抜き……だと?!」

 

それってつまり……俺を特殊機動班から司令直属班へと異動させるってことか……?

勘弁してくれ……なんで俺が司令直属班なんかに……。

 

ジェネシスとの戦いで前線に出れなくなるし、信頼できる仲間もいなくなってしまうじゃないか。

俺にとって良い事なんて何一つない。

 

「そう。あなたを司令直属班へ異動させる。既に総務管理班には話をつけてあるわ。近々異動の内示が出るでしょうね」

 

「待ってください。俺は別に異動なんてしたくない! 勝手に決めないでくれ」

 

「あなたの意思なんて関係ないの。異動の内示が出たらそれには逆らえないわ。それにSFSでは一番トップと呼ばれる司令直属班への異動ほど光栄なことはないわ」

 

「そんなのおかしい……。俺はジェネシスを殲滅するためにSFSに入った。そして、そのために志を共にする特殊機動班の人達と協力してきたんだ。なぜそれを邪魔するんですか!」

 

「おかしいのはあなたの方よ。ペンダントの力を抑止力として扱わなければ真跡シティに未来はない。あなたの行動こそがSFSを敗北へと導いているのよ」

 

「違う! 何のためのこの間の本会議だったんだ! ジェネシスに対する対策は既に決まってるじゃないか。それにいざとなれば俺はこのペンダントの力を操って見せる。あんたたちの力なんて借りなくてもな!」

 

会議で決めた方針を覆そうとでも言うのか……。

でもSFSの中枢である司令直属班なら可能なのかもしれない。現に総務管理班を動かして俺を異動させようとしているのだからな。

 

「ならば……こうしようかしら。確か遊佐隊員はデータによればとんだデュエル馬鹿だと聞いている」

 

「余計なお世話だ」

 

「ふふっ。もしあなたが私にデュエルで勝てれば異動の話は取り消してあげましょう。ですが、もし私が勝てば司令直属班へ異動し、そしてペンダントを我々に引き渡す。既に決まった異動を取り消すのは大変だから、このくらいの条件は飲んでもらわないとね。どうかしら?」

 

要は勝てばいいって話だろ……。

って待てよ……。今俺のデッキって……颯が持ってるじゃないか……。

これじゃ戦えない。颯のやつから返してもらわないとだ。

 

「いいが、少し待ってくれ。今俺のデッキはーー」

 

「待つことはできない。今ここで決断してくれるかしら。下手に部外者に入られては困る」

 

くそ、仲間に声をかける時間も与えないってわけかよ。

一応、昨日サブのデッキを作ったはいいが、使ったこともないデッキでこの斉場副班長に勝てるのか……?

不安しかない以上、素直に状況を話そう。そうすればデッキを取りに行くことだけは認めてくれるかもしれない。

 

「聞いてください。今俺のデッキはうちの班員の上地 颯に渡している。だから、それを返してもらわないとデュエルができないんだ」

 

「そう? もし今すぐにデュエルができないのならこの勝負はなし。あなたの異動もそのままってことよ」

 

そうなるのかよ……。仕方ない。サブのデッキを使うしかないか。

 

「いや、わかった。もう一つのデッキならある。デュエルは可能だ」

 

「いいわよ。ならばデュエル訓練場へ移動しましょうか」

 

俺は司令直属班の人達に囲まれながらデュエル訓練場へと移動した。

まるで囚人みたいだ。

 

ーーやがてデュエル訓練場へ到着すると俺は斉場副班長と対峙するようにして、デュエルリングへと立つ。

 

このサブデッキ。ホームレス時代に拾ったカードの寄せ集めだからなんともまとまりがない。

言わばいつも使っているデッキに入れたり抜いたりしたカード達ってことだ。

正直勝てる自信がないが……だけど、引くわけには……。

 

「さて、覚悟はできたかしら?」

 

対戦相手は斉場副班長。どんなデッキを使うかすらわからない。

少なくともかなり強い実力を持っているとは思う。

対策のしようもないな。もう当たって砕けろか。

 

「……あぁ」

 

「ではいくわよ。デュエルーー」

 

「待ってもらおう!」

 

扉が開く音と共に一人の男性の声がデュエル訓練場へ響き渡る。

ショートカットの金髪に金色目を光らす人物。桂希だ。

 

「斉場副班長。そいつは非常に問題のある隊員でしてね。作戦を無視して独断行動をとったり、敵の幹部に危険を顧みず突っ込んでいったり、はたまたこの間の本会議のような場所でも無礼極まりない態度を見せる等、とても司令直属班に置いておくには難があると思われますがどうです?」

 

ひどい言われようだが……否定はできないな。

ここは様子を見てみよう。

 

「桂希副班長。なぜその話を知っているのですか」

 

「いやあ、たまたま廊下を通りかかったら遊佐の部屋の前に人だかりができていたので、気になって様子を見ていたら会話が聞こえただけですよ。遊佐を司令直属班に異動させていいのか?」

 

「ええ、グリーン・ペンダントを所有しているだけで大きな戦力となりますし、何より司令直属班員を打ち破る実力を持っている。今後のSFSの発展のためには不可欠と判断したまでだわ」

 

「なるほどな……そういうことか。だが、仮にそうでもしたら司令直属班を目指す他の隊員からは大ブーイングだと思うぞ。遊佐が異動することについて、他の隊員への明確な説明ができると判断しての決断でしょうか斉場副班長」

 

桂希は考える素振りを見せながらも、鋭く斉場副班長を睨みながら言った。

 

「もちろんよ。新規隊員ももうすぐ入るこのタイミングに合わせ数名の人事異動を行うこととなった。遊佐隊員の異動のそのうちの一つに過ぎません。口出しは無用よ桂希副班長」

 

俺の異動をごまかすために他の人も動かすってことか。

司令直属班の考えは見え見えなのに……こいつら隠蔽するつもりだ。

 

「そうか。だが一つだけ言わせていただこう斉場副班長」

 

「何かしら……?」

 

「私はあなたの説明では納得していない。ということは決闘機動班員の大半も同様……と思っていただきたい」

 

桂希は低い声で言い立てる。

 

「何度も言わせないでくれるかしら。異動は決定事項。口出し無用だと」

 

「本人が目の前にいるところで言うのもアレだが、こいつは問題児だ! 司令直属班への異動など断じて認めん!」

 

「はぁ、あなたも上昇志向の隊員ってことね。いいわ。ならば黙らせてあげましょうか。仕方がない。遊佐隊員との勝負の前にこちらを片付けないとね」

 

「望むところだ」

 

桂希はそう言い俺の方へと向かってくる。

 

「遊佐はそこらへんで見てろ。お前が司令直属班などありえんわ!」

 

桂希は真剣な表情で怒声をあげた。普段冷静な彼が急に大きな声を出すから少し驚いてしまう。

言われるがまま俺は桂希とすれ違うようにして、デュエルリングから離れる。

 

「任せておけ」

 

桂希はすれ違いざまに俺の耳元で呟くようにして言った。

なるほどな。もしかすると桂希のアレは演技かもしれない。

頼んだぞ桂希……。

 

「さぁ、いくぞ。デュエル!」

 

 

桂希 LP4000

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斉場 LP4000

 

 

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