遊戯王Connect   作:ハシン

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Ep4 - 小さき力と大きな力 後編

 

繋吾 LP400 手札2

ーーーーー

ーモーーー

 リ シ 

ーーーーー

ーーー罠ー

ヘルメットの男 LP3100 手札0

 

 

攻撃力3000の【魔王龍ベエルゼ】……。あのモンスターをなんとかして突破しなければ俺に勝利はない。

その攻撃力を超えるというのなら……いくらでもやりようがある!

 

ふらつく足を制し、視界に倒すべき相手を見据える。

 

大丈夫だ。この手札、場の状況ならばまだ俺に勝機はある。

俺はそう言い聞かせながら自分自身を鼓舞すると、震える手をデッキの上へと乗せ、力を振り絞るようにしてカードを1枚引いた。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

恐る恐るドローしたカードを眺める。

 

そこには見覚えのある可愛らしい見た目をしたカードがあった。

 

そう、これは今朝ごみ箱から拾ったカード、【虹クリボー】である。

こいつも今日から俺のデッキの仲間だったな……よろしく頼むぜ。

 

だけど、このカードではあの【魔王龍ベエルゼ】は倒せない。

でも大丈夫だ、既に倒す手段は用意できている。

 

「どうした? 何も手がないならターンエンドしろよ!」

 

「黙れ! 俺は、【セカンド・ブースター】を召喚! このカードをリリースすることで、場のモンスター1体の攻撃力をエンドフェイズ時まで1500ポイントアップさせる……! 【コード・トーカー】を対象に発動!」

 

【コード・トーカー】

ATK/1800→3300

 

今度は赤き炎のようなオーラが【コード・トーカー】の全身を纏う。

これで攻撃力は【魔王龍 ベエルゼ】を上回った。奴の切り札とやらを蹴散らしてやる!

 

「ちぃ……【魔王龍ベエルゼ】の攻撃力を上回るか」

 

「バトルだ! 【コード・トーカー】で【魔王龍ベエルゼ】を攻撃! "イノセント・スラッシュ"!」

 

【コード・トーカー】

ATK/3300

【魔王龍 ベエルゼ】

ATK/3000

 

真っ赤燃える炎を纏った剣を構え、その剣は【魔王龍 ベエルゼ】を切り裂いた。

 

「くぅ!」

 

ヘルメットの男 LP3100→LP2800

 

だが、切り裂いたはずの【魔王龍 ベエルゼ】はその場に残り続けていた。

戦闘ダメージは相手に通じたはず。なのになぜだ……?

 

「なに……? 【魔王龍 ベエルゼ】は破壊されたはずじゃ……」

 

「甘えなあ、こいつは戦闘でもカードの効果でも一切破壊されない効果を持っている。そう、お前の【コード・トーカー】みたいに群がらなくてもな、同じ効果を使えるんだよ! 

 これがカードの……"格の差"というやつだ!」

 

「ふざけやがって……」

 

「言っただろう。そんな寄せ集めのカードを束ねたところで、強い力には勝てっこねえ。それは人だって同じだ」

 

「なに……?」

 

「お前みたいな生意気なガキはな……俺には勝てっこねぇってことだよ!」

 

確かに俺は路上生活をしているし、馬鹿にされたって仕方がないことだろう。

だが、俺が大事に使ってきているカードを卑下することは許せない。

 

しかし、言い返すにも状況が状況だ。

奴の言うとおり、俺のカード達ではあの【魔王龍 ベエルゼ】には歯が立たない……。

 

くそ……どうしたら……。

悔しいが今のままでは【魔王龍ベエルゼ】を倒す打開策が見当たらない。

 

「それだけじゃねえ。 【魔王龍 ベエルゼ】がいるときに受けたダメージはな、【魔王龍 ベエルゼ】の攻撃力へと追加できるんだ。へへっ、もう勝負はついたなこりゃあ」

 

【魔王龍 ベエルゼ】

ATK/3000→3300

 

言い返せない俺に対して、追い打ちをかけるようにヘルメットの男は高笑いをし始める。

結果的にこのターン俺が行った戦闘には、ほとんど意味がなかったということだ。

 

「俺は……」

 

手札を見ながら声を詰まらせる。

こんなところで諦めたくはない。だが、このターンもう俺の手札に使えるカードはなかった。

つまり……俺に残された選択肢はターンを終了することしかない。

 

「ターンをーー」

「ちょっと待ちなさい!」

 

ターンの終了を宣言をしようとした時、聞き覚えのある女性の声が聞こえ、俺の言葉は遮られる。

 

「そのデュエルウェポン……。間違いなく左近さんのもの……。でもあなたは国防軍の人じゃない……?」

 

その声に思わず振り向くと、そこには黄金色に煌めいた長髪に透き通る青色の瞳をした女性が立っていた。

綺麗に整った輪郭をした顔であり、お嬢様のような雰囲気と言ったらいいだろうか。非常に育ちのよさそうな印象を受ける。

しかし、そんな外見ながら胸元には"SFS"と刻まれている軍服を身につけており、その左腕にはデュエルウェポンが装着されていた。

 

「お前は……先ほど"コレ"越しに話しかけてきた女か?」

 

「えぇ……。そうですけども……。あなたはなんなのですか? そんなボロボロの格好をして……」

 

金髪の女は俺の服装を見ながら呆れたような声をあげる。

近場の公園で水洗いをしているとはいえ、しばらくの間着続けている俺の服はあちこちが破れたりしており、見るからにボロボロだ。

路上生活しているから仕方がないだろう。

 

だが、彼女の反応こそが一般的な人から得られる反応だろう。

この国にとって俺のような存在は、生きるべき権利を失っているに違いないのだからな。

 

「見てわかるだろう。俺はこの街の住民で……路上生活をしている」

 

「はぁ。住民というのは本当みたいですね……。それなら早く避難してください。ここは危険です」

 

そんなことは百も承知だ。こっちは死ぬ気で戦っているんだ。

例え不利な状況であろうと決してあきらめるつもりはないし、テロリストに背を向けるつもりは毛頭ない。

 

「おいおい、デュエルのジャマしないでいただこうか。そこのねぇちゃんよお?」

 

ヘルメットの男がデュエルウェポンをかざすと、金髪の女に向けて光線のようなものが放たれる。

 

「くっ!」

 

金髪の女は咄嗟にデュエルウェポンを構え、バリアのようなものを展開すると、その光線から身を守る。

 

「なんだ? 今のは!?」

 

「デュエルウェポンによるデュエルが一度始まれば第三者は一切介入ができません……デュエル中はデュエルモンスターズの力を最大限引き出されます。一度こうなってしまえば下手に介入すれば過剰な反発現象が発生するんです。

 それが今の現象の正体。それを私はカードを使って身を守ったまでです。理解できましたか?」

 

「なるほど……そうなのか」

 

先ほどの光線はデュエルモンスターズの反発現象……。

それほどまでに強力な力があるのか……ますます恐ろしい代物だな。このデュエルウェポンというものは。

デュエルモンスターズの力に対してはデュエルモンスターズの力でしか対抗できない。その意味が改めて分かった気がする。

 

「そんなことも知らずにデュエルなんて……あなたはふざけているのですか? それよりもデュエル中だったのなら早く言ってください。状況は……っと」

 

金髪の女はデュエルウェポンを眺めながら残念そうな声をあげる。

 

「ちょっと……。負けそうじゃないですか」

 

余計なお世話だ。

お前に言われなくても劣勢な状況であることは俺が一番よくわかっている。

 

「まぁ……そうだな」

 

「そうだな、じゃないですよ! はぁ、仕方がありません。ならさっさとデュエルに負けてください。サレンダーでもいいですから」

 

「はあ?」

 

こいつは何を言っているんだ。正真正銘の馬鹿なのか。

サレンダーとは、自ら負けを認め敗北をすることを指している。

デッキの上に手を置き、サレンダーと宣言すれば、デュエルを放棄し、自身の敗北扱いでデュエルが終了するのだ。

 

すなわちそれは、デュエルウェポンを用いてる現在のデュエルから考えると自殺行為にほかならない。

俺に死ねと言っているようなものだ。

 

「何を言ってるんだお前は」

 

俺の発言を聞くと、金髪の女は呆れたようにため息をついた。

 

「どうやらデュエルウェポンの仕組みについて本当に何も知らないようですね」

 

「知るわけがないだろう。そもそもこれは一般人は持てない代物だろう」

 

「いちいちうるさい人ですね。いいですか。デュエルウェポンにおけるライフポイントは言わばデュエルウェポンの耐久値のようなものです。

 デュエルで負けてライフポイントがなくなればもうデュエルモンスターズの力を具現化することができなくなります。

 つまり、デュエルウェポンが軽減してくれていた攻撃を防ぐことができず、痛みを軽減することもできなくなる……。

 力が失われた直後に軽減されていた痛みに襲われることにはなりますが、無防備になるだけですぐに"死ぬことはありません」

 

なるほど……どうやら無防備になるだけでライフが0になったからといって死に至るわけではないということか。

ということは……勝ち目のないデュエルに無駄に時間を割かないでくれということを言いたいのだろうか。

 

かなり厳しい状況ではあるが、俺はまだこのデュエルを諦めたわけじゃない。ふざけやがって。

 

「つまり、デュエルを続行することが時間の無駄だってことか?」

 

「わかっているのなら早くサレンダーしてください。すぐにわたしがあの男を始末しますから。しばらく体が痛むかと思いますが、あなたの命は助かりますよ。」

 

冷ややかな目で俺のことを見ながらも、落ち着いたトーン話す女。

助ける気はあるんだろうが、あまりいい印象は持たれてないんだろう。

 

しかし、すぐには死なないとはいえ、俺としては負けと決まったわけでもないデュエルを放棄したくはない。

それにこいつがもしヘルメットの男に負けたらどうするんだ。

それこそ俺はこいつの言うことを聞いたせいで死ぬことになる。

俺は死ぬ覚悟で自らテロリストと戦う道を選んだんだ。こいつの話を聞く必要はない。

 

「なんで俺があんたの言うことを聞かなきゃいかないんだよ。口出し無用だ」

 

呆れた俺はデュエルを続行するべく、再びヘルメットの男へと視線を移す。

 

さてと……しかし、このままでは本当に負ける。

手札をもう一度確認してみるか……。

 

ーーー

【虹クリボー】

【炎竜星ーシュンゲイ】

ーーー

 

もうモンスターは召喚してしまった。

こいつらを守備表示で出すこともできない。

そういえば今朝拾った"コイツ"って効果なんだったっけ……。

 

俺は改めて【虹クリボー】のカードテキストを確認する。

待てよ……。こいつの効果があればまだ俺にチャンスが残されているかもしれない。

こいつの可能性にかけるか……!

 

「俺はターンエンドだ」

 

繋吾 LP400 手札2

ーーーーー

ーモーーー

 リ シ 

ーーーーー

ーーー罠ー

ヘルメットの男 LP2800 手札0

 

「なにもしないでターンエンドするくらいならサレンダーしてくださいよ。本当に物分りの悪い人ですね。馬鹿なんですか?」

 

俺の行動にイラついたのか女が怒り気味に突っかかってくる。

 

「頼むから黙っていてくれ。これは俺が望んで仕掛けたデュエルなんだ」

 

「はぁ……わかりましたよ。本当に手間がかかりますね……仕方がありません。班長に連絡だけしておこうかしら……」

 

金髪の女はそう言うと、自らのデュエルウェポンを操作し始めた。

 

「班長、こちら佐倉です。信じ難いとは思いますが、住民がテロリストとデュエルをしている現場に遭遇しました。このままでは敗北する可能性が高いです。救助の手配をお願いします」

 

救助……? その言葉を聞くと少しながら安堵する。

少なくともこの女は俺を見殺しにするつもりはないようだ。

 

しばらく様子を見ていると女は近くの建物に寄りかかり、こちらの様子を覗っていた。

どうやらデュエルを止めることは諦めてくれたらしい。これならデュエルに集中できるだろう。

 

「ヘッ……。このままあのガキを潰して、そこの女も仕留めれば一日で3人の手柄だ! これなら昇進も間違いねぇ! いくぞ俺のターン! ドロー!」

 

ヘルメットの男はご機嫌そうにカードを引いた。

 

「さぁて、くたばる覚悟はできたか?」

 

「ここでくたばるのはお前の方だ」

 

「へっ、まだそんなこと言う余裕があるか。いい加減くたばりやがれ! バトル、【魔王龍 ベエルゼ】で【コード・トーカー】を攻撃! "マリシャス・ストリーム"!」

 

もはや見慣れた黒き光線が再び【コート・トーカー】を襲った。

俺は目を瞑り、静かにその攻撃を待ち受けていた。

 

「はぁ、まったく……。頭の悪い人はこれだから……」

 

金髪の女の残念そうに呟く声が聞こえる。

大きな音が鳴ると同時に爆風が広がり、あたりは煙が立ち込めていた。

 

繋吾 LP400

 

「なにィ! なぜライフポイントが残っている!」

 

俺は攻撃を受ける直前に咄嗟に手札のカードを一枚魔法・罠ゾーンへセットしていた。

 

「お前の【魔王龍 ベエルゼ】をよく見てみるんだな」

 

「ん……? なっ!」

 

【魔王龍 ベエルゼ】には白き縄のようなものが巻きつけられ、その頭上には白い妖精が浮いている。

そう、【虹クリボー】の姿だ。

 

「俺は【魔王龍 ベエルゼ】が攻撃してきた時、手札から【虹クリボー】のモンスター効果を発動した。このカードは相手が攻撃してきた時、そのモンスターに手札から装備カードとして装備でき、装備されたカードは一切攻撃することができなくなる」

 

「くぅ……姑息な真似しやがってぇ……!」

 

助かったぜ、虹クリボー。お前を今日拾っていなければ俺はここで負けていた。

これで俺には次のターンというチャンスが残された。

せっかく紡いでくれた勝利のチャンス。無駄にはしない。

 

「なんだ……まだ諦めてなかったのですね。」

 

「おい、誰も諦めるなんて一言も言ってないだろ……」

 

相変わらず冷ややかな目線を向ける女に俺は思わずため息をつきながら答えた。

 

「だがなァ、【魔王龍ベエルゼ】が倒されたわけじゃねぇ。こいつを倒せなければお前が負けるのは変わらねぇんだよ。俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

繋吾 LP400 手札1

ーーモーー

ーモーーー

 リ シ 

ーーーーー

ーー裏罠ー

ヘルメットの男 LP2800 手札0

 

耐え忍んだのはいいが、あの【魔王龍ベエルゼ】をどう倒す……。

戦闘でも効果でも破壊されないだけでなくその攻撃力は3300。非常に強力なモンスターと言える。

だけど、奴を突破する方法は……ないわけではない!

このドローに全てをかける……!

 

「虹クリボー、お前がくれたチャンス……勝利へ繋いでみせる。俺のターン……!」

 

俺はデッキトップに手を当てると、力強くカードを引いた。

 

「ドローッ!」

 

ドローした直後に俺よりも先にまずヘルメットの男が声をあげる。

 

「へっ、トラップ発動! 【砂塵の大竜巻】! 場の魔法・罠カード1枚を破壊する。消え去れ目障りな【虹クリボー】!」

 

大きな竜巻が発生すると共に、【魔王龍 ベエルゼ】に巻きついていた白き妖精は砕け散ってしまった。

これで俺の守りの一手は崩されることとなった。

 

「これでは、このターン【魔王龍 ベエルゼ】をなんとかできなければ、確実に負けますね……」

 

冷静に状況を分析をしている金髪の女。

後がないことはよくわかっているさ。

少しは俺の応援をしてくれてもいいと思うのは野暮か。

 

そんなことを考えながら恐る恐る引いたカード確認する。

視界に映るそのカードを見て、俺の中に一つの戦術が浮かび上がる。

 

「その身に今までの罪を刻む覚悟はできたか? お前」

 

「はぁ? 何を言ってんだ?」

 

ヘルメットの男は俺の発言が想定外であったか呆れた声を漏らす。

 

「お前の守りの綱はもうないんだぜ? このターンその少ない手札で俺を倒せるっていうのかよ!」

 

「あぁ、勝利への道は"繋がった"! 俺は魔法カード【死者蘇生】を発動! 墓地からモンスター1体を特殊召喚する! 蘇れ、【光竜星ーリフン】!」

 

「ここで死者蘇生だと!?」

 

ーーー

【光流星ーリフン】✩1 光 幻竜 チューナー ③

ATK/0

ーーー

 

神々しい光を放ちながら、小さき竜が出現する。

 

「せっかくの死者蘇生も出てくんのはそんな雑魚モンスターかよ! それで一体なんになるんだ?」

 

「雑魚なんかじゃない! この小さきカード1枚1枚を結ぶ"繋がり"が大きな力を砕く架橋となる! それが俺の学んできた……俺の信じるデュエルだ!」

 

「ちっ、何をするつもりだ……?」

 

「現れよ! 心を繋ぐサーキット! 俺は【ワンショット・ブースター】1体をリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン! リンク召喚! リンク1【リンクリボー】!」

 

 

ーーー

【リンクリボー】リンク1 闇 サイバース ②

ATK/300 下

ーーー

 

「2体のリンクモンスターが並んだ……? あの人、何をするつもりかしら」

 

俺の場にはEXデッキから特殊召喚されたモンスターが2体。今ここに条件は整った。

父さんが受け取った唯一無二の大切なカード、俺に力を貸してくれ……!

 

「これが俺のモンスターが繋げてくれた希望の架橋! 再び現れよ、心を繋ぐサーキット! 俺は場のリンク2の【コード・トーカー】と【リンクリボー】の2体をリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン!」

 

「リンク召喚! 来い、リンク3! 繋がる心の象徴! 【セフィラ・メタトロン】!」

 

ーーー

【セフィラ・メタトロン】リンク3 光 幻竜 ①

ATK/2500 左下 下 右下

ーーー

 

神々しき黄金の鎧を身に纏い、背中には白き翼を羽ばたかせる騎士のようなモンスターが目の前に出現する。

カードのイラストだけでしか見たことがなかったが、いざ目の前で召喚してみるとなんとも感動するな。

その美しい姿に心が洗われるようだ。

 

「くっ。リンク2のモンスターを素材にしたことで、一気にリンク3まで繋げやがったか……。だが、残念ながらその攻撃力は【魔王龍 ベエルゼ】に及ばねぇな!」

 

リンクモンスターを素材としてリンク召喚する場合、そのリンクの数までリンク素材として使用ができる。

したがって、リンク2の【コード・トーカー】は2体分のモンスターとして取り扱われたわけだ。

 

「こいつは仲間の力を繋ぐカード……その意味をお前に教えてやる……!」

 

「ハッ、くだらねぇ。雑魚モンスターが群れたところで、【魔王龍 ベエルゼ】は戦闘でも効果でも破壊されねぇ。無駄なんだよ」

 

「じゃあ試してみるまでだ。さらに俺は【炎竜星ーシュンゲイ】を召喚!」

 

ーーー

【炎竜星ーシュンゲイ】☆4 炎 幻竜 ④

ATK/1900

ーーー

 

「おいおい、悪あがきもいい加減にしろよ!」

 

ヘルメットの男は少し焦りを感じているのか、余裕なさげな様子で叫んでいる。

だが、容赦するつもりはない。

 

「少しは黙っていろ。俺はレベル4の【炎竜星ーシュンゲイ】にレベル1の【光竜星ーリフン】をチューニング!」

 

「ちっ、シンクロ召喚か……!」

 

「"生誕する意思の力よ! 星々の呼応の下に具象せよ! シンクロ召喚! 来い、【源竜星ーボウテンコウ】!"」

 

ーーー

【源竜星ーボウテンコウ】☆5 光 幻竜 ②

DEF/2800

ーーー

 

続いて神々しき光を纏った神秘的な竜が空より舞い降り、俺の前に佇む。

 

「なんだよ……びびらせやがって……所詮守備表示じゃねえか! それじゃなにもーー」

 

「今ここに準備は整った!」

 

「なに!?」

 

「俺は【セフィラ・メタトロン】の効果発動! 1ターンに1度、自分と相手のEXデッキから特殊召喚されたモンスターを選択し、そのモンスター達をエンドフェイズ時まで除外する! 俺は【源竜星ーボウテンコウ】とお前の【魔王龍 ベエルゼ】を選択! "コネクター・サブリメイション"!」

 

【セフィラ・メタトロン】は手に持つ金色の杖を空へ掲げる。

すると選ばれた2体のモンスターは足元から徐々に消滅し始める。

 

「ば、馬鹿な……! 破壊ではなく除外……だと……!?」

 

ヘルメットの男は驚きのあまり、その場に膝をついて【セフィラ・メタトロン】を見つめていた。

よほど【魔王龍ベエルゼ】に自信があったのかもしれない。それがフィールドから消えていくのにショックを受けているようだ。

 

「完全無敵と思われた【魔王龍ベエルゼ】もあくまで"破壊"がされないだけ。除外を用いるとは考えましたね」

 

金髪の女は腕を組みながら感心そうにデュエルの様子を見ていた。

俺のデッキで思いつく突破方法はそれしかなかったからな……。

 

「それだけじゃない、フィールドを離れたことで【源竜星ーボウテンコウ】の効果発動! デッキから竜星モンスター1体を特殊召喚する。来い、2体目の【炎竜星ーシュンゲイ】!」

 

ーーー

【炎竜星ーシュンゲイ】☆4 炎 幻竜 ④

ATK/1900

ーーー

 

「これでは……攻撃力の合計は4900……!?」

 

繋吾 LP400

ヘルメットの男 LP2800

 

デュエルに敗北することを悟ったのか、奴の声は震え、先ほどまでの勢いは消えていく。

 

「お前には俺が受けた倍の痛みを受けてもらう。いけ、【炎竜星ーシュンゲイ】、ダイレクトアタック! "ボルケーノ・フレイム!"」

 

「がはっ!」

 

ヘルメットの男 LP2800→LP900

 

「ぐ、いてぇ……。くぅ……悪かった……! 俺が悪かったから攻撃をやめるんだ! おい、頼む!」

 

ヘルメットの男は敗北を確信したのか、四つん這いになりながら命乞いを始める。

どこまでどうしようもないやつだなこいつは。

なにを言われようと、ここで攻撃をやめるつもりはない。

左近という男のためにも……何より俺の目的のためにもな。

 

「……なぁ、お前に聞きたいことがある」

 

「ハァ……ハァ……なんでも言うからよ……! だから見逃してくれよ!」

 

「今回の大規模な街の襲撃。5年前にあった襲撃とは何か関係あるのか? ここまでの規模、滅多にあるものじゃない。」

 

「5年前……? 知らねえ。その時俺はまだ……この組織にいなかった」

 

ヘルメットの男は必死に首を横に振りながら答えた。

どうやら嘘はついていなさそうだ。こいつは本当に組織の活動については何も知らない……。

 

「……じゃあ、お前がいる組織の中で【覚醒の魔導剣士】というカードを使うやつはいるか?」

 

「【覚醒の魔導剣士】……? そんなカードは知らねぇ……」

 

どうやらこいつに話をしても何も得られるものはないらしい。

さっさと終わらせるか。こんな下っ端に割いている時間なんてない。

 

「ならばお前に用はない。今日の襲撃の罪をその身に刻むんだな」

 

「お、おい馬鹿……やめろォ……!」

 

「【セフィラ・メタトロン】で、ダイレクトアタック! "ヴェンジェンス・ディバイニング!"」

 

【セフィラ・メタトロン】の両腕から、白く輝く剣が現れるとそれをヘルメットの男の体を目掛けて突き刺した。

 

「ひっ……ぐおあああああ!」

 

ヘルメットの男 LP900→LP0

 

たまらずヘルメットの男はその衝撃で飛ばされ、後ろにあった建物へ衝突すると突っ伏すようにして倒れ込んだ。

 

勝った。

俺はデュエルに勝ったんだ……。

5年前から恨み続けていたテロリストに。

 

だけどなんだ……。全然満たされない。

5年前から俺の記憶に渦巻く後悔の記憶。

そして、テロリストに対して感じていた復讐心。

俺を蝕み続ける感情はまったく晴れることはなかった。

 

それもそのはずだ。結局、こいつを倒したところで何も変わっていない。

5年前の真相もわからないし、父さんを殺したやつの手がかりもつかめていない。

 

「こんなんじゃ意味がない……。この程度じゃなにも変わりゃしない……」

 

もっとだ。もっとデュエルテロ組織の人間を倒しまくって、情報を手に入れないと。

今の俺には5年前と違って力がある。デュエルで戦うことができる。

例え、あの憎き青年が相手だろうと、今の俺なら戦える。

 

俺はデュエルに勝った余韻からか、不思議と自信に満ち溢れていた。

今の俺ならこの心を蝕む負の感情を解消するだけの力がある。

力を得た事実と、デュエルに勝利した慢心で俺から死の恐怖というものが消え去った結果、俺は自分自身の感情をコントロールできなくなりつつあった。

 

そして、俺は無意識のうちにヘルメットの男に近づくと、その胸ぐらを掴み叫んでいた。

 

「おい! とっととお前の仲間を呼べ! お前らを片っ端から全てぶっ倒してやる! おい、聞いてるのか!」

 

そう叫びながら俺は奴の頬を殴る。

 

「うっぐ……」

 

「ふざけてるんじゃねぇぞ……おい!」

 

男の体を揺らしながら怒鳴り続けるが、男は瀕死状態であるのかまともな返事もできないようであった。

さっきまでの威勢はどうしたんだ! クソ!

 

向こうが来ないというのならこっちから出向いて戦うまでだ。

俺は5年間、ずっとこの時を待っていたんだ! テロリストに復讐できる機会をな!

 

あの青年と同じ組織の人間は一人たりとも許すつもりはない。

片っ端から俺がぶっ潰してやるよ……そして、かつての父さんの無念を晴らす。例えこの身がどうなろうとも!

 

「ちょっとあなた! それ以上はやめてください。あなたに何があったのかは知りませんが、このままその人を殺すわけにはいかないんですよ」

 

金髪の女が俺を止めるべくヘルメットの男から引き剝がそうとする。

 

「お前に何がわかる! こいつらがいるせいで俺は……」

 

感情が込み上げ、俺は思わずその女に拳を振り上げようとする。

だが、金髪の女は俺の拳に動じずに鋭い眼差し俺へ向けていた。

 

その様子を目の当たりにして、俺は多少ながら冷静さを取り戻すと、その振り上げた拳を下げた。

 

「だからと言ってこのままだとあなたは人殺しになるんですよ? 今は感情を抑えてください。その人には正当に罪を償っていただきます」

 

警察か何かに突き出すってことか。

どうせあいつには何を聞いても無駄だ。あいつのことはどうだっていい。

俺は軽く舌打ちをすると、仕方なくその男から手を離し突き飛ばした。

 

「あなた……。泣いているのですか」

 

「えっ?」

 

自らの目元に手を当てると涙を流していたことに気が付く。

知らないうちに泣いていたのか俺は。

 

「人前で泣くなんて情けない人ですね」

 

「お前……少しは人の気持ちを考えてくれ」

 

「あいにく、私はあなたを信用しておりませんので。ですが、救助が来るようには手配しておきました。それで十分でしょう」

 

「……はぁ。わかったよ。お前には期待した俺が悪かった」

 

「結衣、遅くなってすまない。怪我をしたのはどこにいる?」

 

結衣と呼ばれた金髪の女の背後には"SFS"と刻まれた制服を着た赤髪の男と銀髪の男が立っていた。

あの女、結衣って名前なのか。性格の割にはかわいらしい名前をしているな。

 

「赤見班長……と上地くん。おつかれさまです」

 

結衣は深々とその二人へ頭を下げる。

 

「なんだ? その結衣ちゃんの後ろにいるきったねぇ格好をしたやつは?」

 

銀髪の男は俺の姿を見ると半笑いしながら言った。

汚くて悪かったな。こっちは生きるので精いっぱいなんだ。

 

「あぁ、この人が左近さんのデュエルウェポンを持っていた住民の方です」

 

「今の状況を見るに……。まさかデュエルに勝ったのか?」

 

今度は赤髪の男が腕を組みながら言った。

やはり一般人で勝利することは難しいものなのだろうか。

 

「ええ。最初はどうなることかと思いましたが、なんとかテロリストを倒しましたよ。ですが……」

 

結衣はそう言うと、俺に視線を見ながら言葉を続ける。

 

「ご覧のとおり、彼もかなり傷を負っています。このテロリストと同様に本部へ搬送した方がよいかと思いますが……。どうでしょう赤見班長?」

 

アドレナリンが効いていたのかさっきまでは大丈夫だった体が徐々に痛み始めてくる。

言われて気づいたが、けっこう体に負担がかかっていたんだな……。

そういえば、残りライフポイントも400しかなかったか。

 

赤見と呼ばれた赤髪の男は、俺の様子を眺め頷くと、結衣へと視線を向け言葉を続けた。

 

「……そうだな。救助護衛班のものに伝えておこう。それはそうと結衣、左近は見つかったのか?」

 

「あっ……それは……」

 

結衣は思い出したかのように言うと、赤見から目を逸らし、俺のことを睨みつけてきた。

おいおい、忘れてたのはお前じゃないか。素直に謝れよ。

 

「……なんだよ?」

 

「この人が居場所を教えてくれなくて困っていたのです」

 

「お、おいお前……」

 

こいつ平気で責任を擦り付けてきやがった……!

デュエルに夢中でまったくその件については触れてこなかったじゃないか!

 

「さて、左近さんをどこへやったのですか。いい加減教えてください」

 

反論しようとしたが、結衣に先手を打たれる。

仕方がない。話がややこしくなるだけだ。ここは素直に従っておこう……。

 

「……あそこの建物の影だ。俺がデュエルウェポンを借りた時には既にデッキがなくて、生きてなさそうだったけどな」

 

「なるほど、デッキがないってことは吸収されていたか……。やはり今回の襲撃事件は"ジェネシス"の仕業らしいな」

 

「"ジェネシス"……?」

 

「あぁ、まぁ……そういうテロ組織があるんだ。さて、結衣と颯は左近の救助を頼む。君はここでわたしと待機だ」

 

「了解しました」「わかりましたよー」

 

結衣と颯と呼ばれた銀髪の男は周辺の建物の残骸をかき分けながら捜索を始めた。

 

「そんな……俺はまだ奴らを……!」

 

まだ俺にはやるべきことがある。

だけど、そんな俺の意思に反して、足がふらつき、徐々に視界がぼやけてきた。

 

踏ん張ろうとしたがそう長くは持たず、俺はその場に倒れ込んでしまった。

 

「無理はするものじゃない。そこでしばらく休むといい……」

 

その言葉を最後に俺の意識は遠のいていった。

 

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