ゆっくりは書いてますので、気長にお待ちいただければ幸いです……!
これ以上俺のせいで仲間達が傷つくのは見ていられない……。
デントの狙いは俺のはずだ。ならば俺が相手になるまで。
闇目さんは命を張って戦ってくれた。その戦ってくれた思いを無駄にするわけには行かない。
だから俺は逃げずにここで戦うぞ……。闇目さんも絶対に死なすものか!
俺は闇目さんを庇うようにしてデントに向かってデュエルウェポンを構える。
「覚悟を決めやがったか? それとも……その男がやられたのを見て火がついたか?」
デントは俺がデュエルウェポンを構えだしたのを見て鼻で笑いながら言った。
「黙れ……! お前の狙いは俺のペンダントだろう! ならばここで決着をつける!」
「まぁ待てよ。お前もそこの男も血の気が強すぎるったらありゃしねえ。少し話をしようぜ、遊佐」
話だと……? 奴は俺のペンダントが狙いじゃないのか?
一体なんの狙いが……。何か罠だったりするのだろうか。
「ハハッ。何も企んじゃいねえよ。お前を罠にハメるだなんてそんなことできる余裕ないっての。どっちかといえば追い込まれてんのは俺の方だ。もうすぐお前の仲間さんがここに助けにくるしな?」
誰かこっちに向かってきているということなのか?
それならば助かる話だが……本当なのだろうか。
「なに……。それじゃお前は一体なんのために」
「実のところを言えば俺はペンダントを奪うつもりはないんだ。って言えばお前は信じるか?」
ジェネシスの幹部であるデントがペンダントを奪うつもりはない……?
今回ジェネシスがSFS施設を襲った理由はペンダントにあるはずだ。それは本部にきたジェネシスからの要求内容からして明らかだ。
もしこのデントが言っていた内容が真実なのであれば、デントはジェネシスの命令に背いていることとなる。
くそ……どうしたらいいんだ……。
ジェネシス幹部であるデントを今すぐに潰したいという思いと、想定外の発言をされたことでその真意が気になるという思いが混在してしまい、俺はどうしたらいいのかわからなくなってきていた。
「……信用できないな」
「だろうねえ。んじゃ逆にジェネシスはなんでペンダントを集めているのか。気にならねえか?」
気にならないと言ったら嘘になる。あのペンダントには強力な力が宿っているからそれをつかって何かをしようとしているのだろうが……。
SFSでは"破壊活動"を見解としてあげていたが、実際のところはどうなのだろう。
「お前、何が目的だ?」
「少しは俺と話する気になったか遊佐? お前がそのデュエルウェポンを下げてくれれば続きを話してやるよ」
「……わかった」
俺はデントに言われるがままにデュエルウェポンを下げた。
こいつを信用していいかには疑問が残るが……。デントの言っていることが本当なら俺の仲間がここに向かっていることになるし、俺にとっては好都合だしな。
それに何かあったとしたら、デュエルをして潰せばいいだけの話。赤見さんとのデュエル、そして闇目さんのデュエルでこいつの手の内はわかっている。デュエルに遅れを取るはずはない。
「話がわかるやつで助かるよ。まずは……そうだな。ペンダントについてはどこまで知ってる?」
ペンダントといえばデュエルモンスターズのカードおよそ1億枚ほどに相当する力を秘めていること……。
そして、現在判明している中では俺の緑色のペンダント。そして国防軍に保管されていた赤色のペンダントがあること。
時に不思議な力を発揮すること……。俺が知っているのはそんな程度だろうか。
「大きな力を秘めていて……時に不思議な力を発揮する……」
「ほう? 随分とざっくりしたもんだな?」
「やはりお前ら……ジェネシスは……これが何だか知っていて集めてるんだな……?」
「当然だろう。まっ、国のおエライ方々は知ってるかもしれねえが、言うわけがない。それがこの世界のルールってやつだ」
何を言ってるんだこいつは……。ペンダントのことを……国が知っているだと……?
そんなわけがないだろう。そうでもしたらジェネシスの実態や活動目的なんてもっと明らかになっているはずだ。
「ふざけたこと言いやがって……。聞いても時間の無駄だ。俺とデュエルしろ!」
「まぁ待てって! まだ話は終わっちゃいねえ! 俺とデュエルするかはどうかは全部聞いてから判断してくれねえか?」
必死に止めようとしてくるデントに思わず俺は静かに頷いた。
こんなに取り乱しているデントの姿は初めて見たからだ。赤見さんとのデュエルで負けた時もこんなに焦っている様子は見受けられなかった。
一体こいつはどうしたというのだろう……。
「ったく……。まぁペンダントにはとんでもねえ力ある。それで何をするかっていうのはお前らの想像通りかもしれねえな。今の世界をぶっ壊して新しく世界を作り直す。それだけの話だ」
「やはり……お前らの目的は破壊行為なんじゃないか。その犠牲の上に訪れる未来にいいものなんてあるわけがない! 大事なものを失う悲しみが……お前にはわかるっていうのか!」
家族を失うかなしみ……居場所を失うかなしみ……。
生きる意味を見いだせぬ絶望……。俺はそんな中5年という歳月を生き抜いてきた。
そんな思いをする人を……これ以上増やすわけにはいかない。
「そうだな……。わからんでもない。だが、なぜジェネシスがそんなことをするのか。お前は考えたことはあるか?」
「なに……?」
「この国は法やルールによって縛られている。普通に暮らしてる人には別に不自由しない程度のルールだ。だけどな。それは普通じゃない人にとっては生きるのが縛られるってもんなんだよ。"居住権のない人間"……"周りに同調できない人間"……"周囲から妬まれる人間"……。何かしら"普通とは異なる"人間はこの決まったルールのレールから阻害されてしまう……。それはおまえもよくわかってんだろ?」
俺は……今の話で行けば居住権のない人間……だろうか。
家を失い、家族も失い、お金もない。実際のところ俺という存在は5年前の襲撃で死んだことにされているだろうしな。
その証拠に学校には俺の椅子はなかった。
「そういった人たちはこの国のくだらないルールとやらに多くの苦しみや悲しみを受け続けてきた。そのような人たちに手を指し伸ばしたのが"ジェネル"……。ジェネシスのボスってわけだ。全ての人類が平等に暮らせる世の中を作るという大きな目標を掲げてな」
デントの話を聞き、徐々に俺が路上生活をしていた頃の記憶が蘇り出す。
物乞いをしても唾を吐かれ、ゴミ箱と一緒に蹴飛ばされたり、ゲテモノを食わされたり……。色々されたな。
公園で寝泊りしてたら国防軍に追い出されたこともあった。
確かに……"普通"というレールから外れた人間にとってはこの世の中は辛く厳しいのかもしれない。
「視点を変えればジェネシスのやっていることも正義ってワケだ。ま、大多数は反対するだろうがよ」
「そんな……」
俺が怒りの矛先を向けていたジェネシスという組織は……。
どちらかといえば俺の境遇に近い人の集まりだった。
「まぁお前の言う人を犠牲にした上での未来はろくでもねえっていうのはあながち間違いじゃねえな。結局、"普通"の人を取るか、そうでない人を取るか……そういう話だ」
「だが……俺は……。お前らジェネシスのせいでお前の言う"普通"という立場を失った。だからこそ俺にとってはジェネシスを潰すことが生きる意味なんだよ……!」
「そう、お前には自分を突き動かす明確な意志がある。俺からしてみれば羨ましいぜ。だが、多くの人間はそうはいかねえ。だから自分が動く原動力を他人に求めるんだ。俺たちのジェネシスもそう。SFSだって国防軍だってそうさ」
結衣なんかは……まさにそうなんだろうな……。
あいつは生きる目的を見失っていた。それをSFSに入ることで見つけたって言っていたし。
「さて、話を戻すか。ペンダントをジェネシスは集めてるわけだが……これは元々は一つの結晶だったんだ。それが何らかの理由で分離してしまった。その一つがお前の緑色のペンダントってわけだ。ジェネシスはそれを再び結晶に戻そうとしている。大きな力を呼び起こすためにな」
「その結晶ってやつになれば……世界を作り変える力が発生するってことか?」
「おそらくな。それは俺にもわからねえよ。だが、俺にとってはそうなっちゃ困る。だからお前からペンダントを奪うつもりはねえ」
「困る……? なぜだ? お前はジェネシスの考えに賛同してジェネシスに入ったわけじゃないのか?」
「どうなんだろうな。俺にとっちゃ今の生活は不自由してねえ。ジェネシスでそれなりの地位につけたしな。だから世界の変化ってやつをどこかで恐れてる……って言ったらお前は信じるか?」
くそ……こいつの言うことのどこまでが本気なのか、どこからが嘘なのかわかったもんじゃない。
これだけジェネシスの内情を話している癖にその目的は達成できないように動いている……。
なんなんだこいつは……。
「わからないな。だが……お前はジェネシスの内情を俺に話してしまっていいのか?」
「構わねえさ。それをお前らが知ったところで何も変わらねえだろ。それよりも自分達の心配をした方がいいぜ? SFSが今後どうなるか……。お前は決断を迫られることになるだろう」
「どういうことだ……?」
「おっと、そろそろさすがにまずいな。お前らの仲間さんも……あとは援軍も来たみたいだぜ? 長話に付き合ってくれてありがとな遊佐。また会おうぜ」
「おい……どこに行く! デント!」
俺が手を伸ばした先には既にデュエルウェポンに一枚のカードをセットしながら存在が消えかかっているデントの姿があった。
【空間移動】のカードか……!
彼に近づく間もなくその場から消えてしまう。
一体あいつは……何を考えていたんだろう。
結局俺とまったく戦う様子もなく、話すだけ話していなくなってしまった。
先ほどまで話していたことが本心であるのなら……。俺はこれからどうするべきなのだろう。
ジェネシスにいる大半の人は俺と同じ境遇な人物。おそらくは俺と同じ思いで……"復讐"として国防軍や真跡シティへの襲撃を行っているのだろう。
俺だって怒りや苦しみを味わってきた。それをぶつけるのに……俺は苦しみの根源であるジェネシスにぶつけていた。
俺にとって国防軍は罪じゃない。罪なのはネロ……そしてジェネシスなんだ。
だけど、苦しんだもの同士が戦うなんて……この世界は残酷すぎるな……。
くそ、調子が狂う……。俺は怒りの矛先を誰に向ければいいんだよ……!
「繋吾くん!」
俺の名前を呼ぶ声と同時に部屋の扉が開き数十名のSFS隊員が入ってきた。
そこには結衣と桂希の姿があった。
「無事だったか! 遊佐」
「あぁ……結衣に桂希……」
どうやらデントが言っていたことは本当だったみたいだな。
ということは……あいつは嘘はついていない。あの話は全てが本当なのかもしれない。
「先ほど国防軍の援軍が来たみたいだ。それを見たジェネシスは全部隊を撤退させ始めた。さすがに勝算がないって判断したのかもしれないな。つまりは……我々の防衛成功ってことだ。喜べ、遊佐」
「勝ったのか……。SFSは……」
正直戦っていない俺からすればあまり実感はわかない。
だが、勝ったという報告を聞き思わず安堵した。
みんなは無事だろうか。赤見班長、郷田さん、そして颯。安否が気になるところだ……。
「特殊機動班の皆は……無事か?」
「少なくとも上地くんは無事ですよ。赤見班長達はまだ……連絡は取れてませんが……」
確か赤見さんから聞いていた話だと正面口は赤見さんと郷田さん。裏口は結衣と颯だったっけか。
裏口は闇目さんの話だとろくに交戦している様子はなかったみたいだし、あまり危険もなかったんだろう。よかった。
だが、それにしては結衣は随分とくたびれた様子だった。目が真っ赤だし、髪も少しボサボサだ。
「そういう結衣は大丈夫だったのか? 様子を見るに戦ったみたいな感じだけど」
「え? あぁ……その……。もちろん戦いましたよ。余裕で勝ちましたけどね」
さすがは結衣だ。ジェネシスにも遅れを取らずに戦っているみたいだ。
リリィに負けて少し自信なさげなところがあったからな。
「さすがだな。それにしてはまるで泣いたように目元が赤いが……。相当激戦だったみたいだな」
「な、なんでもありません! ちょっとデュエルが長引いただけですから!」
結衣は自らの顔を隠すようにしながら、怒りっぽく答えた。
何かあったんだろうな……。まぁ深くは聞かないようにしよう。
「だが楽観するには早いぞ遊佐。本部はひどい有様だからな……。お前も来てくれ」
「なに……? 本部が」
本部が……どういうことだろう?
俺は桂希に言われるがままSFSの本部である司令室へと向かった。