遊戯王Connect   作:ハシン

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Ep72 - 逃亡劇

ーーSFSの廊下をひたすら走り続ける俺たち。

後ろには俺たちを追いかける多くの人影が見える。国防軍と決闘機動班の連中だろうか。

 

今はなにがなんでも捕まるわけにはいかない……。SFSから脱出してとりあえず逃げないと……。

なんだかまるで自分が犯罪者にでもなった気分だ。いや、間違ってはいないんだろうが……。

なんとも自分が国防軍に追われる立場になるということにまだ実感がわかない。

今の自分の状況がまだ受け入れられないというか……何が起こっているのかわからなくて混乱している感じだ。

 

とりあえず今は赤見さんを信じて走り続けるしかない。

逃げた先にきっと俺たちのやるべきことが見つかるはずだ……。

 

「繋吾、結衣。SFS裏口から外へ出て、西門前へ行くんだ。私は少しだけここで足止めの準備をする」

 

赤見さんが俺たちの前で急に立ち止まり、振り返りながら言った。

俺たちを逃がすために赤見さんが犠牲になるというのか……?

 

「足止めの準備って……それじゃ赤見さんは……」

 

「大丈夫だ。あとで必ず行く。今通ってきた廊下には侵入者防止用のバリケードが搭載されていてな。それを奴らが来た瞬間に起動させれば時間が稼げる」

 

SFSにはそんな警備システムが導入されていたのだな……。そりゃこれだけ大きい施設じゃ当然か。

失敗しなければいいけど……赤見さんならきっと大丈夫だ。

 

「西門前には郷田が車を準備してる。そこで合流しよう。さぁいけ!」

 

「わかりました! 繋吾くん。行きましょう」

 

結衣の声に頷き、俺と結衣の二人は赤見さんを背に裏口へ繋がる廊下を走り出した。

 

 

ーーしばらく走るとやがてSFSの大きな裏口へと辿り着く。

赤見さんが無事成功したか気になるところだが、郷田さんが待つと言っていた西門には逃走用の車がある。

急いで行かなければ……。

 

裏口を抜けて外へ出るとあたりは真っ暗であり、SFS施設から照らされる照明で見える程度の視界しかなかった。

ふとデュエルウェポンを眺めると既に時間帯は深夜だった。真っ暗なのも当然だろう。

 

だが……逃げる身としてはこの暗闇は好都合だ。今のうちに暗闇に紛れれば追手もすぐには見つけられないだろう。

 

「よお、繋吾。結衣ちゃん」

 

聞き慣れた声の主を確認すべく視線を向けるとそこには颯の姿があった。

 

「上地くん。まだ裏口にいたのですね」

 

「あぁ、ジェネシスを一掃した俺の腕前に惚れたか?」

 

颯は相変わらずの調子で結衣に答える。

しかし、いつもとは違い落ち着いたトーンだった。

 

「にしても繋吾に結衣ちゃんどうしたんだ? もうジェネシスは撤退したってのに外出なんて」

 

「あぁ、実はな……俺たちSFSを追放されるかもしれなくて……」

 

俺が答えるべく話かけると颯は笑い始めた。

 

「おっと、わかってるよ。デュエルウェポンによる暴行罪で指名手配。ペンダントを使用したテロ行為を模索中の疑い……。対象は"遊佐 繋吾"に"赤見 仁"。SFS全隊員に通達されてる」

 

「なに……。もう通達されているのか……」

 

白瀬班長め……なんて仕事の早い……。

こうなればもはやSFSの隊員は全員敵だと思ったほうがよさそうだな……。

 

「違うんですよ上地くん! 繋吾くんは……悪いことしていません! 悪いのは無理やりペンダントを奪おうとした国防軍で……」

 

「まぁまぁ、待てよ結衣ちゃん」

 

俺を庇おうと必死になってくれている結衣を颯は相変わらずのトーンでなだめる。

 

「俺はお前たちとは仲間だ。今ここで戦うつもりなんてねえよ。何があったかは知らねえがいいのか? 結衣ちゃん。繋吾を庇おうというのならお前も立派な犯罪者だ」

 

「……悪いことをしていない人を犯罪者呼ばわりする方が私からすれば犯罪者です。私は正しい思っているからこそ繋吾くんと行動しているまで。あなたも繋吾くんを悪く言うのなら……容赦しません」

 

「まぁ待てって。俺は戦うつもりはねえって言ってるだろ。だが、悪いがお前らと一緒に行くわけにもいかねえ」

 

颯のやつ……あくまで犯罪者と一緒には行動できないって線引きするつもりか。

まぁそれが普通だろうな。今の俺は特殊機動班の志は持とうとも国のルールから反した犯罪者なのだから……。

 

「颯……。お前がそういうのなら無理強いはしないさ。だが、信じてほしい。俺はペンダントを悪用するつもりはない」

 

「あぁ、信じるさ。だが、俺は"今"ここで"テロリスト"にはなるわけにはいかねえ。SFSの隊員だからな。俺には俺の考えがある。ジェネシスの殲滅以上に俺が求めてるものがあるんだよ」

 

そうだよな……颯は別にジェネシスに特別恨みを抱いているわけじゃない。俺とは違うんだ。

 

「だけどな、さっきも言ったとおりお前たちと敵になるつもりもない。お前たちは俺にとっては……かけがえのない信用できる人間だからな……」

 

「ありがとうな……。お前の気遣いに感謝するよ」

 

「なーに、友達だろ? 気にすんなよ! だが、ひとつだけ言っておく。この国っていうのはルールがある。そこから外れた人間っていうのは……茨の道を歩むことになるぞ」

 

茨の道……。国の法から逃れた人間は裁きを受けるということか。

それでも俺は……ペンダント持つものとしてやるべきことがある。国の"ルール"に反してでもな。

 

「だとしても……俺は自分の行動を曲げるつもりはない」

 

「さすが繋吾だな……。俺も……いや、まぁせいぜい気をつけてくれよ。この世の中は力と権力が全てだ……」

 

「なに……颯、それはどういう意味だ?」

 

「力あるものに人は従う。権力ってやつは絶対だってことだ。おっと、そろそろ行った方がいいんじゃねえか? 追手が来てるぜ」

 

颯に言われ裏口を見ると国防軍の制服を身につけた人影が見えた。

くそ……捕まるわけにはいかない……!

 

「くっ……颯。今まで世話になったな」

 

「俺こそお前らと過ごした日々は楽しかったぜ。くれぐれも死ぬなよ? 繋吾。結衣ちゃん」

 

「私が死ぬわけ……。いえ、私は生きるために戦うんですから当たり前です。行きましょう、繋吾くん」

 

「あぁ、行こう」

 

まっすぐと出口に視線を向けながら結衣が走り出したのを確認してから俺もそれを追うように走り出す。

 

「ごめんな……。うまくやってくれよ……最後のトリガー……」

 

去り際に颯が何か呟いたような気がしたが、逃げるのに必死な俺には理解するまでには至らなかった。

 

 

ーーSFSのグラウンドを照らす照明をできる限り避けながら暗闇を走っていくとやがて西門近くへと辿り着く。

そこには一台のトラックが停められており、トラックの脇には郷田さんの姿が見えた。

 

「郷田さん!」

 

俺はその姿に安堵し、トラックへと走り出す。

 

「おうおう、繋吾ちゃんに結衣か。無事ここまで来れたみたいだな? 状況はわかってるぜ。早くこの車の荷台に乗りな」

 

トラックの席は2つしかない以上、乗るところは荷台しかない。

トラックの荷台に乗るなんてある意味貴重な体験だな……。まぁ、いまの状況が非現実的なのだから今更か。

 

「はい! だけどまだ赤見さんが……」

 

「それなら大丈夫だ。さっき赤見のやつから連絡が入ってな。予定通り進んでいるそうだからあと数分後には来るだろうよ」

 

よかった……。拘束でもされてたらどうしようかと思ってたところだ。

さすがは赤見さん。ジェネシスと戦い抜いてきた力は伊達じゃない。

 

「さぁ早く乗れや! 赤見が来次第、すぐに出発するぜ! ってどうやら来たみたいだな」

 

トラックの荷台へ乗り終わってあたりを見渡してみると、こちらに向かって走ってきている人影が見えた。

あれが赤見さんだろうか。

 

「すまないな郷田。細かい話は後でする!」

 

「おうよ! 細かい話も勘弁してほしいけどな! ハハハ!」

 

郷田さんは笑いながら運転席のドアを開け赤見さんを乗せるように促す。

運転は赤見さんがするんだな。てっきり郷田さんが運転するのかと思っていた。

国防軍行った時もそうだったっけ……。赤見さんが運転好きなのか……それとも郷田さんが運転できないのか……どちらなのかはわからないが。

 

「よし、すぐに行くぞ! 追手が迫ってきてるからな!」

 

「わかってるぜ赤見! よーし……」

 

郷田さんが助手席に回り込みドアを開けようとした時、突如周囲が光りだしたと同時に爆発音が響き渡る。

思わず腕で顔を塞ぐ。

これは……俺たちに対する攻撃か……?

恐る恐る目を開けてみるとトラックの周囲の地面が焦げており、煙が立ち込めていた。

 

「くっそ……容赦ねえじゃねえか……」

 

郷田さんはすぐさま助手席のドアを閉めるとデュエルウェポンを構えてトラックの前に立ちはだかる。

そして、直後に再び大きく光ったかと思うと今度は大きな爆発音ともに風圧のような衝撃が襲いかかってきた。

 

衝撃の先に視線を向けると、郷田さんの前には【大地の騎士ガイアナイト】が出現しており、二本の槍を交差する形で構え、攻撃を受け止めていた。

 

「悪く思うなよ。これも命令なんだ」

 

暗闇から響き渡る男性の声。

この攻撃の主だろうか。やつは国防軍か……それともSFSか……。

 

「一樹……?! お前……」

 

誰であるのか把握した赤見さんが運転席より声を上げる。

赤見さんが一樹……と呼ぶ相手はひとりしかいない。赤見さんと仲のよかった偵察警備班の宗像班長だ。

 

「赤見、悪いがお前を逃がすわけにはいかない。お前は……テロリストだからな」

 

「あぁ……私は自らの行動を正当化しようとは思わない。だが……私は間違ったことをしたつもりはない!」

 

「ふっ……時々俺はわからなくなるよ赤見。お前はいつも俺たちが考えていることよりも常に先を見ている。それは俺にとっては尊敬できることでもあるが、同時に理解できないことでもあった」

 

「一樹……。私はそんなにお前と変わらない。私……いや、俺とお前はデュエルモンスターズを本来の娯楽である正しい使い方ができる世界にするため……それを目的にSFSに入団し合ったじゃないか。その思いは俺もお前も変わらないはずだ」

 

赤見さんは険しい表情をしながらも宗像班長へと訴えかけている。

仲の良い仲間が敵に回った状況なんだ。それは辛いものだろう。

例え敵に回ったとしても信じたい。それが赤見さんの思いなのだろうか。

 

それに……赤見さんがSFSにいる理由というのもそんな目的があったのだな。

確かに俺もそうだがデュエルモンスターズが好きだ。デュエルウェポンなんてものがなければ、それこそ娯楽としてもっと楽しいものとして認識されていたに違いない。

赤見さんは……デュエルモンスターズのカードが、デュエルウェポンの媒体として……兵器として使われることに異議と唱えたい。そんなところなのかもしれないな。

 

「あぁ、それはもちろん変わっていない。だがな、俺は理解ができない。なぜそこまでしてグリーン・ペンダントを自らで守り続ける必要があるのか」

 

「それは……約束だからだ」

 

「約束? それがどうであれ、客観的に見ればそのペンダントの力を使ってジェネシスと戦い合うようにしかおもえない。それはすなわちお前たちは国を脅かす存在にもなりかねない。国防軍に渡せないってことはそういう疑惑もかかるってことだよ赤見」

 

確かに……。ペンダントの力を行使できるとしたら……ある意味俺たちだって好き勝手破壊行為を行えてしまうことになる。

それだけでテロリスト認定されることは何ら違和感はないだろう。

 

「国防軍はペンダントを守りきれなかった。それに……俺たちは破壊活動を行うつもりは一切ない。信じてくれ……といっても無駄か……」

 

「あぁ。俺は……お前たちがテロリストとなってしまったのならそれを正すまでだ。そして……願わくば危険すぎるペンダントという代物はこの世から抹消すべきと考えている」

 

「宗像……」

 

「覚悟してもらおうか。あえて言わせてもらおう。国防軍指定テロリスト。赤見 仁! 遊佐 繋吾!」

 

宗像班長は俺たちの名前を叫ぶとデュエルウェポンを構えながら走り出してくる。

 

「くそっ! 赤見! 俺がここで時間を稼ぐ! 先に行け!」

 

「郷田……! どうするつもりだ?」

 

「俺が宗像のやつとデュエルして時間を稼ぐ。いまここには奴しかいねえ。それだったら逃げれるだろ」

 

「だが……そうなれば増援が来るのも時間の問題だ。私が仕掛けた罠にも時間の限界がある」

 

「それよりもお前と繋吾ちゃんが捕まったら……何もかも終わりなんだろ? 今しかねえんだ! 俺様に任せとけ!」

 

「くっ……すまない……。郷田! 必ずあとで合流しよう」

 

郷田さんはその声に無言で力強く頷いた。

しばらくして赤見さんは運転席の扉を力強く殴り、歯を食いしばるような仕草を見せると、トラックのエンジンをかけ始めた。

 

「繋吾、結衣。しっかりつかまってろよ……!」

 

赤見さんが発言した直後にトラックは大きくタイヤ痕を残しながら走り始める。

そして、西門のフェンスを突き破ると山道をかなりのスピードで駆け抜け始めた。

 

SFS側へと視線を向けるとデュエルウェポンを構え対峙している郷田さんと宗像班長の姿が見えた。

ありがとう……郷田さん。生きていてくれよ……!

 

こうして俺たち元特殊機動班の3人は無事国防軍とSFSの包囲網を抜け、逃亡に成功したのだった。

 

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