デュエルに破れた郷田は最後の攻撃を受け倒れたまま動くことはなかった。
さすがの郷田でもデュエルウェポンによる大ダメージの前にはなすすべはないだろう。
それほどまでにこのデュエルウェポンが体にもたらすダメージは大きい。改めてこの兵器の恐ろしさを痛感する。
それはさておいてこいつには聞きたいことがある。
殺すわけにはいかない。赤見の居場所もこいつは知っている可能性が高いからな。
「郷田。悪いがお前を国防軍へ突き出す。テロリストに加担したんだ。言い訳はできまい」
「……あぁ……。いまさら……言い逃れするつもりは……ねえ……よ」
郷田はこうなることを覚悟していたのかもしれないな。そうでなければ体を張って赤見達を守るわけがないだろう。
車もないし、既に周囲には決闘機動班の連中もいる。
時間稼ぎにしてもこの状況からの逃亡は不可能だ。
「なぁ郷田。お前はなぜ赤見をそこまで信じれる? 命を張ってまで。あいつから何を聞いた?」
「っへへ……。あいつはなんにも教えてくれなかったがよ……。俺様には……わかるんだ。あいつは理由なしには動かねえ……」
やはり……郷田自身は赤見からはなにも聞いていないようだな。
こいつを尋問したところで何も吐きそうにはないか。まぁ仕方あるまい。
「おめえも……赤見と一緒にいたならわかるんじゃねえか? あいつが何をしようとしてるか……なんてよ」
「なに……?」
「おめえはしきりに破壊行為がなんだとか言ってんが……赤見がそれをしてなんになるんだ? 赤見の目的はずっと前からかわらねえはずだ」
目的……デュエルモンスターズを正しい姿へと戻すこと……。
私だったらペンダントの存在を抹消し、脅威を取り除くことしか方法はないと考えるが……赤見にはそれ以上の答えがあるとでも言うのだろうか。
存在を抹消するだけであれば国防軍へ攻撃する理由はない。
「目的は私だってわかる。あいつを信じたい。だが、ここまでの行動がそれを否定している。あいつが何をしようとしているのか……。なぜ国防軍へ反逆行為をとったのか……」
「わりいが俺様をいくら尋問しようと……なんにもしらねえぜ。ただ……おめえのために一つだけ言っとくぜ……人を信じることってのは理屈じゃねえ……。人を思いやる……信頼する……"心"ってやつだぜ……」
郷田はその一言の告げたあと静かに目を閉じた。
やりきったような満足そうな表情をしながら。
人を信じるのは理屈じゃない……か。だが……大人っていうのは理屈を並べなければ自分を納得させることはできない。私はもう……そういう人間なんだ郷田。お前みたいに純粋な心のままはいられないのだよ。
それよりも考え事している場合じゃない。
ここでこいつを殺してはならない。もし殺したとなれば国防軍からはせっかくの情報源を抹消したとされ罰を受ける可能性だってある。
私はすぐさま周辺にいるSFS隊員を呼びつけ医療班まで運ぶよう指示した。
なんとか命は落とさないでいてくれればいいが……。
「宗像班長。お疲れ様です」
私の名を呼ぶ声に振り返るとそこには桂希副班長の姿があった。
彼は確か若手隊員の中でも飛び切り優秀で決闘機動班の中でも中心のような存在だったな。
現にこの状況下にあってもまったく取り乱していないあたりしっかりしている様子が伺える。
「あぁ、桂希副班長か。赤見達を取り逃がしてしまった。すまないな」
「いえ。我々だけではトラップに引っかかっている間に逃げられていたことでしょう。郷田を仕留めただけでもありがたい限りですよ」
「そうか。で、これからどうする? 私は赤見達を追おうと思っているが」
「実は我々決闘機動第1班もその任務を受けております。よければ作戦に同行しますか?」
「それは助かるな。偵察警備班の皆はジェネシス襲撃で既にいっぱいいっぱいで作戦行動が取れる状況ではない。動けるもので固まって動いた方がいいだろう」
決闘機動班の中でも優秀と言われる桂希副班長の率いる部隊とご一緒できるのであればこれほど頼もしいものはない。
仮に赤見達と出くわしたとしてもそのままデュエルで追い込むこともできる。
「わかりました。それでは準備を整えたら車を出しますので出発しましょう」
「わかった。それにしても……たった一日で随分変わったもんだな……SFSは」
「まったくですね。社長と司令直属班が壊滅。特殊機動班がテロリスト認定。にわかには信じられませんよ」
「だが、現実で起きていることだ。私たちの知らないところで何があるか……確かめなければならない。赤見の奴にな」
「それが宗像班長の目的ですか。なにが起きているのかは……私の知る限りではありますがお話しましょうか?」
桂希副班長は今の事態を知り得ているのか……? それならば非常に興味深い話だ。
今回のジェネシス襲撃全体でなにがあったのか。正面口でずっと交戦していた私にはまったく情報が入ってこなかったからな。
赤見が……テロリストになったという知らせ以外は……。
「ありがたい。車の中で道中にでも聞かせてもらえるか?」
「わかりました」
そうして私は桂希副班長率いる決闘機動第1班と共に赤見を追うべく車を走らせた。
ーー郷田さん達と別れて30分くらいたっただろうか。
先程まではここまで起きたことにまだ実感がわかず放心状態であったが、時間が経つとともにようやく冷静さを取り戻すことができた。
俺たちの乗っている車は真夜中の山道を進み続けていたが、ようやく街明かりが見えてきた。あれはおそらく真跡シティだろう。
こんな真夜中でも街灯等の光があるあたりやはり真跡シティは都会だなと改めて再認識させられる。
後ろを振り返ってみるともう追手は来ていなさそうだった。郷田さんが止めてくれているおかげだろうな。無事だといいが……。
にしても国防軍へ反逆して見事テロリストになってしまった俺と赤見さん。そして、それに加担した結衣。
それが意味することは俺たちは犯罪者になったということ。この後一体どうしたらいいんだろう……。
テロリストを殲滅するつもりが自らがテロリスト扱いになってしまったなんて……。笑い話にもならないな。
俺は最後までこのペンダントを自らで守り続けるべきなのか躊躇していた。国防軍に逆らってまで……命を張る必要があるのか……だ。
ペンダントを自分が所有し続けることは父さんとの形見だから……そして、国防軍では守りきれないとの判断だから……?
だが、それも俺にとってのわがままなのかもしれない。
国防軍が新しい防衛体制を整えることで守りきることも可能だろうし、こんな危険な代物を一民間企業であるSFSが持っていればテロリスト判定されてもおかしくはない。
俺としてはあのネロってやつをぶっ殺せればそれでいいからな。
ただ……赤見さんはそうはしなかった。俺が迷っている中、赤見さんは俺の迷いをかき消すように国防軍への反逆をした。
赤見さんはどういう考えなのだろうか。俺を守る使命があるとはいえ、自らが犯罪者になってまで自分達でペンダントを所有し守る道を選んだ。
自分を犠牲にしてまでそんな決断ができるだろうか。なにか裏が……いや、そんなこと考えていても仕方がない。
もう俺は……やってしまったんだ。国防軍への反逆を。
今からではいくら弁明しようと逃れることはできない。つまり一生逃げ回って生活することになるのだろうか……。
それに……結衣のやつを……完全に巻き込んでしまう形になってしまった。結衣は決して反逆行為なんてしてはいないのに。
「結衣。本当によかったのか? 俺たちと一緒にいて」
「……まったく。相変わらず物分りの悪い人ですね。何度も言わせないでください……。私には帰るところなんてないんですから……」
「だが、俺たちも逃亡中の身だ。帰る場所なんてないぞ。まだSFSにいた方が……」
「いいんです。私は今、"一人じゃない"のですから。だから気にしないでください。私は……後悔してません」
俺としては結衣がいてくれれば心強い。
結衣はデュエルは強いし、頭はキレるし、信用できる大事な仲間だからな。
「辛い状況に巻き込んで悪かったな。繋吾、結衣。急な出来事で混乱してるだろ?」
「はい……ですが落ち着きました。赤見さん、助けてくれてありがとうございました」
「いや……繋吾と結衣の意思が再確認できてよかったよ。あそこで国防軍にペンダントを渡すかどうか」
俺がどうするのか赤見さんは見ていた……?
一体どういうことだろう。
「赤見さん……いつから司令室の扉の影に……?」
「白瀬班長があの部屋に入ったくらいからかな」
ということは白瀬班長とのやり取りを赤見さんはずっと見ていたってことか。
乱入のタイミングを伺っていた……といったところだろうか。
「あの状況なら繋吾の立場からすればペンダントを渡すのも仕方がないと思っていた。だけど、お前は最後まで諦めずに粘った。さすがだよ」
「正直悩んでいました。国防軍に楯突いてまで守るべきなのか。だけど……これは父さんとの思い出だし……それに国防軍に渡してしまってはいけない気がして……決断できませんでした」
「それで十分だ。でもよかったよ……。それが"あいつ"の手に渡らなくて。本当に助かった。ありがとう、繋吾」
「え……? あいつって?」
「そうだな。なぜ私が国防軍へ攻撃し法を犯してまで逃げたのか。これからどうするのか。移動しながらでも話そう。気になるだろ?」
確かにペンダントを守るためとは赤見さんはかなり強引な手段を使って逃走を図った。しかも手際よく。
なぜ犯罪者になってまで特殊機動班の役割を遂行しようとしたのか。その理由は一体なんなのだろうか。それがきっと赤見さんを強く突き動かす何かなのだろうな。
「ええ。普段の赤見班長からは考えられないほど強引な行動でしたし……。犯罪を犯してまで私たちを逃がしたのには理由があるんですよね?」
「あぁ。そうでもしなきゃ私も堂々と法は犯せないさ。これからはイチかバチかの大勝負。負ければ死刑ってところだろうな」
「とんでもないですねそれ……赤見さん」
やはり何かあったんだ。俺が知らないうちにあのSFS防衛戦の中で……何かが。
もう俺は表立って活動することができなくなってしまったし、追われる身として一生過ごしていくことにはなるのだろう。
だが……そのリスクを冒してでもやるべきことがあるということだ。
「だが繋吾。おかげさまでジェネシス殲滅への道はぐっと縮まった」
「どういうこと……ですか?」
「それじゃ、話そうか。これから俺たちがどうするべきかを」
そして、赤見さんは車を運転しながら今後についてを話始めた。
ーーSFS大防衛戦開始直後。我々特殊機動班はジェネシスの戦力分散を目的とした影武者作戦を実施した。これは戦線維持のために行ったものだ。繋吾がいると思われる前線に戦力を集中されてしまうと戦線は崩壊し、建物内部への敵の侵入を許してしまい、本物の繋吾が襲われてしまう危険性もあったからな。
もちろん決闘機動班の連中はそんなものは知らない。混乱の中でも我々の作戦だけでなく決闘機動班が計画していた作戦は実行された。
それは特殊機動班が囮になり、決闘機動班にて挟撃する作戦。
だが、想定よりもジェネシスの攻撃は激しく、決闘機動班による両翼の部隊は押されはじめていた。
これでは全滅も有り得ると判断した私は予定よりも早く影武者作戦を実施して決闘機動班の援護を行った。
影武者作戦による戦力の分散は成功した。敵の援軍を阻止できた。
だが……それと同時にわたしのデュエルウェポンにひとつのメッセージが届いた。
それは……生天目社長からだった。
そこには恐るべき内容が書かれていた。今回のジェネシスの狙いは繋吾ではなく、社長だったということが。
そして、しばらくして社長から長文のメッセージが届いた。遺書になるだろうという一文を添えてな。
そこには……今まで社長が私や繋吾にしてきた内容の本当の理由が書かれていた。
私に白瀬班長の情報収集をさせたり、繋吾を司令直属班に異動させたりといった内容のな。
話は生天目社長がSFSを設立した直後あたりまで遡る。
生天目社長のメッセージによると昔、生天目社長は国防軍の研究室出身で、今の国防軍長官である時田長官とはよく交流があったそうだ。そして、SFSの本当の設立目的はジェネシスに対する外部戦闘力の確保。
国防軍のような公的機関では何かしら軍事行動を行うにも国家としての認可がいる。つまり作戦行動の自由度が狭まってしまうと判断し、設立されたのだそうだ。
そして、その研究室では当時からペンダントの存在は知り得ていたそうだ。当時は国防軍で緑と赤のペンダントの二種類が保管されていたらしい。だが、自由に研究が可能とされるSFSへと緑のペンダントのみが設立と同時に移動された。
ジェネシスの破壊活動が行われる中、国防軍とSFSは共同作戦を行っていたが、だんだんその協力関係が怪しいものとなってくる。時田長官がペンダントを研究目的のためと生天目社長に向かって何度も譲れと要望していたそうだ。
生天目社長は当初の目的のとおり、研究の自由さ等で断り続けていたが、そのしつこさに危機感を覚えていた。
ペンダントは強大な力を秘めている。つまり、それを時田長官が私物化してしまったとなれば何か恐ろしいことが起きるのではないか。そう生天目社長は感じていたらしい。
そこでとった行動が、SFSで最も腕が優れる人物にペンダントを託し、国防軍、ジェネシス双方に対する抑止力としてSFSの戦力を維持しようとしたのだ。
その人物が当時の特殊機動班長の遊佐 真吾班長であり、結果的には5年前の襲撃で悲惨な結末を迎えた。
それから居場所不明とされてきた緑のペンダントだが、ここ最近になって繋吾がSFSに入隊し、その存在が明らかになった。
もちろんあの時社長と繋吾は会っていたからペンダントが見つかったことは社長も知っただろう。
だが、社長はペンダントのことは隠し通したかった。ジェネシスの脅威はもちろんのこと国防軍に知られればそれこそ時田長官がどうしてくるかわかったものではないからな。
しかし、結果的に時田長官はペンダントの存在を知り得ていると生天目社長は考えている。それは白瀬班長の存在だ。
繋吾が入隊してから白瀬班長の行動は大きく変わった。今までは特殊機動班への嫌がらせが多かったのに協力する姿勢を見せたり、やたら表に姿を見せないようになったりだ。
裏から桂希副班長を動かして、こちらの同行を探っていたのも全て白瀬班長の思惑だろう。
私が白瀬班長に対して行った尾行で白瀬班長が時田長官と繋がっていることも明らかになった。
つまり、白瀬班長は時田長官の手駒として動いている。なぜ彼が協力しているのかは不明だが、白瀬班長を使って時田長官は何かをしようとしている。
はじめはペンダントを集めることが目的だと思っていた。だが……ジェネシスに赤のペンダントは奪われた。
そうなればせめて緑のペンダントを奪おうと動くものだと思ったが、SFS本会議での白瀬班長の行動は国防軍への引渡しではなく特殊機動班の存続を選択した。
ここから導かれる答えとしては、時田長官はペンダントを集めるつもりはないということだ。
だが……そしたら白瀬班長を動かして時田長官は何をしようとしていたのか。
生天目社長の予想は"ジェネシスにペンダントを集めさせること"だ。
国防軍襲撃の際にジェネシスの幹部であるリリィは国防軍隊員に包囲された状況にありながら脱走に成功した。
リリィがとてつもなく強かった可能性もあるが、もしかすると国防軍があえて奪わせた可能性もある。
そして、今回もSFSにジェネシスが襲撃してきたが、同じようにジェネシスにペンダントを奪わせたかったのかもしれない。
その考えの裏には……国防軍は自ら表立って極秘情報であるペンダントを集めることができない。ならば別の者に集めさせようとした。時田長官はそう思ったのかもしれない。
ということは生天目社長でもジェネシスでもなんでも、あのペンダントは集まることで何かしらの事象をもたらすのかもしれない。
生天目社長はそう考えて繋吾を白瀬班長の目の届かないところへ避難させようとしたのだ。
司令直属班を使ってペンダントを確保し、存在を隠すため。そして、繋吾自体を決闘機動部から離脱させ、繋吾ごと存在を隠すために。
それが生天目社長の狙いだった。
結果的にペンダントは無事で繋吾も生きている。彼らの思惑を外すことには成功したらしい。
だが、今回のSFS襲撃で白瀬がなぜ時田長官に協力したのかは明らかになった。
全てはSFSの社長の座として君臨するため。時田長官は生天目社長が目障りだったのもあり、白瀬班長にそういう話を持ちかけたのかもしれない。白瀬班長は元々出世欲の高い人物で自分より若い神久部長が上に立っていることが気に食わない様子だったからな。
ジェネシスによるSFS襲撃はおそらく彼らが描いた絵。ペンダントをジェネシスへ渡し、その不手際を問わせることで社長に責任を押し付け、白瀬班長が社長の座に着くこと。
そこで白瀬班長はあえて我々特殊機動班の作戦に乗る形をとり、"新規隊員募集"を行った。
そして、今回の新規隊員の実戦への参加は誰もがおかしいと思っただろう。
だが、それは白瀬班長がSFSを乗っ取るための下準備に過ぎない。隊員のうちのほとんどは国防軍からの流れ者だろう。
戦場でも随分と慣れた様子だったからな。野薔薇副班長あたりが困惑していたのを見たよ。
結果的に奴らの当初の目論見はずれた。ペンダントの存在場所がわからなくてはジェネシスに渡す作戦なんてできないからな。
そこで……社長を殺させるという判断に至ったのだろう。SFS内部を支配するために。そのためにおそらく私や神久部長も殺したかったはずだ。
殺すことに関してはどういうやり方をしたのかはわからないが、決闘機動班という大組織を操れば戦場のコントロールはある程度できるはずだ。自らが撤退し、あえて侵入を許させたりな。
考え難いが本当に白瀬がジェネシスと通じてる可能性もある。通じていればSFS内部でこんな回りくどいことしなくていいだろうしな。
そして……当初の目論見が外れたものの、結果的に社長が死んだことで白瀬班長がSFSにトップに座るという目的は果たされたわけだ。
これが生天目社長が伝えてくれたここまでの真実だ。
ーーここまでの出来事には全て裏があったということか……。
赤見さんの話を聞いて改めて頭の中が混乱してくる。
誰が味方で誰が敵なのか……わけがわからなくなりそうだ。
「さて、これからどうするのか……だが、とりあえずペンダントの集結を阻止しないと大変なことが起きる。つまり、いままで通り私たちは繋吾の防衛をしていく」
「ですが……ジェネシスだけじゃなく、これからは国防軍からも狙われるとなるとこれまで以上に辛いですね……」
「それに関しては安心してくれ繋吾。これからとある場所に向かう。生天目社長の遺言を他に受け取った仲間がそこにいるらしい。今後どうしていくかは合流してから考えよう。まずは生き残ってからだ」
そうだな……。追っ手は振り切れたとはいえまだ俺たちの追跡は続いているはずだ。
まずは……安心して身を隠せる場所にたどり着くまでは油断はできない。
「車はここで乗り捨てる。国防軍の目をそらすためにここからは徒歩だ」
「わかりました。夜が明けるまでにはなんとかたどりつきたいところだな……」
「あぁ、それまでは歩みを止めるわけにはいかない。ジェネシスとの戦闘後で疲れているかもしれないが、辛抱してくれ」
俺は実質戦っていないから大丈夫だが、結衣はかなり疲れている表情をしていた。
顔もぐしゃぐしゃだし……。大丈夫だろうか。
「結衣、平気か?」
「えぇ……。少しふらふらしますけど大丈夫です」
結衣は転びそうなほどにフラフラしながら歩いている。これでは途中で倒れてもおかしくないだろう。
俺は咄嗟に結衣の肩を担いだ。
「ごめんなさい……迷惑かけてしまって……」
「気にするな。お前がいてくれるだけで俺は助かってる。もう少しだから頑張ろう」
「はい……」
車から降りた俺たちは赤見さんが導くままに夜の真跡シティを歩き出したのだった。