――大きなSFSの渡り廊下。
長く続く廊下を歩きながら、赤見さんは施設案内を行ってくれた。
救護室、食堂、デュエル訓練場……。いろんな施設がしっかりと整っている。
さすがは大企業といったところだろうか。
「あとは……特殊機動班室だな。行くついでに班員との顔合わせを行おう」
「わかりました。赤見さん、ちなみに特殊機動班って今何名いるんですか?」
「あぁー……。もうすぐ部屋に着くから、すぐわかるさ」
「え?」
すると赤見さんは近くにあった部屋の扉を開ける。
そこには大きめのテーブルと椅子が並べられており、中には既に3名の人物が座っていた。
右から見慣れぬ大柄な男。そして、先日の襲撃で上地と呼ばれていた銀髪の男。最後に結衣と呼ばれていた金髪の女であった。
「……赤見さん。我々含めても150人の中でたった5人しかいないんですか……」
「人手不足だと言っただろ? なぁ?」
赤見さんは少し笑いながら答える。
「えっ、あなたは……!?」
金髪の女……結衣は俺の姿を見ると驚いた声をあげた。
「なに? 結衣ちゃんの知り合い?」
次に声を上げたのは上地と呼ばれる銀髪の男だ。
「いえ、あなたは覚えてないのですか。この間の襲撃でテロリストとデュエルしていた住民の人を」
「あー……。あのぼろぼろのホームレスか。なんでお前がここに?」
ホームレスっていう情報だけはしっかり覚えていやがって。
嫌味のようにしか聞こえないぞ。
「まぁまてお前ら。とりあえず席に座ってくれ。繋吾くんはこちらに」
赤見さんに案内され、俺も椅子へと座った。
「んで、いきなりの招集ってなんの用なんだ赤見?」
大柄の男が赤見へ問う。
「あぁ、ではさっそく本題に入る。先日の襲撃事件で我が班員の左近が意識不明の重体となっている。治療班の話によると回復の見込みがない。おそらくジェネシスの奴らに吸収されたと見ている」
「助けられず申し訳ありません。左近さんに一番近い現場にいたのは私です」
結衣が赤見に対して申し訳なさそうに頭を下げる。
「結衣ちゃんは悪くないよー、左近さんに何があったかは知らないけど、まったく救援連絡なかったんだしさ」
「上地くん……。確かになぜ連絡がなかったのか。ちょっと不思議ですね」
「左近の件については、結衣が悪いわけではないから大丈夫だ。安心してくれ。例のテロリストは残念ながらもう国防軍に引き取られてしまっていて、左近の件については現在確認が取れない状況だ」
「そうでしたか……。失礼しました赤見班長」
「あぁ、気にしないでくれ。この件は近々私の方で国防軍へ赴き、直接テロリストへ尋問を行う予定だ。結果はまた後ほど連絡する」
赤見さんは胸ポケットから手帳を取り出すと、パラパラとページをめくりながら話を続けていた。
それにしても、あの左近って人。もう少し俺が早くあの場に乱入していれば、助けることができたのかもしれない
敵がテロリストなのかどうかわからなくて、なかなか踏み出せなかった自分に少し後悔した。
「それともう一つ報告事項だ。左近氏の穴を埋めるため……というわけではないが、今そこにいる人物、遊佐 繋吾をこの度、特殊機動班員として迎え入れることとなった」
「えぇ!?」
話を聞いていた班員の3人は驚きの声をあげる。
そこまで驚かなくてもいいじゃないか。
「ちょっと待ってください赤見班長! 見ず知らずの人をいきなり特殊機動班になんて、そんな人に任務を任せることなんてできません」
結衣は机を叩きながら立ち上がり叫びだす。
いつも落ち着いたトーンで話す癖に……よっぽど嫌なのかよまったく。
「結衣ちゃんの言うとおりだ班長。一般人が特殊機動班なんて無理があるぜ」
「確かにこいつら二人の言うことは最もだ赤見。何を考えての入隊なのか説明してくれねぇとな?」
3人より怒涛の質問を受けて赤見さんは呆れ気味に口を開く。
「お前らそこまで必死になることはないじゃないか……。わかった。こいつを採用した理由は二つある」
理由か……。それは俺自身も少し興味があるな。
俺と話をしていた限りは、人手不足っていうのが一番の理由なんだろうけど、それ以外にもし採用理由があるのであれば、是非とも聞いてみたい。
「まず、こいつのデュエルの腕はテロリストを倒したほどだ。それは結衣も見てるな?」
「えぇ……まぁ確かにテロリストは倒しましたけど、たまたま運がよくて勝ったのかもしれません」
「しかしだ、なかなか一般人で命を張ってテロリストとデュエルできる人はいるもんじゃない。こいつには、それほどの覚悟と勇気があるってことだ」
「しかし……!」
今思えば、不思議と恐怖感というものはあまりなかった。
死ぬ覚悟なんていうのはとっくにできていたし、内心なんとかなるって思っていたところがあったかもしれない。
だけど、もし本当にデュエルに負けていたら……今考えるとゾッとするな。
「それにこいつはデュエルテロの被害者だ。テロリストに対する憎しみは並大抵の人間とは比べ物にならない。重要な任務が求められる特殊機動班の任務には、どんな苦境でも戦い抜くための固い意志が必要だ。それがこいつには備わっていると判断したまでだ」
固い意志……か。俺にどこまでの意志があるのかはわからないが、俺にとってテロリストは人生を狂わされた要因だ。
あいつらを倒すためなら、例えどんな痛い目にあったとしても、折れない自信はある。
それよりもこの班員の皆さんに歓迎されてなさ具合ををなんとかできないですかね。赤見さん。
「なるほどなぁ……。確かにこいつはいい目をしてるじゃねぇか」
大柄な男が俺のことを見つめながら言う。
そんなあんたも、いい目をしているじゃないか。
この人だけは3人の中で唯一歓迎してくれているような印象だ。
ちょっとぶっきらぼうな感じはあるが、横の結衣とか上地とかいう連中よりかはよっぽどいい人そうに見える。
「だけど、意志だとか覚悟があったとしても、デュエルの腕が保証されたわけじゃないでしょう? そんな危ないやつ入れちゃっていいんですかねぇ?」
上地と呼ばれるやつが少しにやつきながら言った。
言い方は非常に嫌そうな感じではあるが、言ってることは最もか。
重要な任務を受け持つからには、デュエルが強くなければ任務の遂行自体ができない。
実力もしれない街の住民なんて信用できないというのはごもっともだ。
「おう、颯。そこまでデュエルの腕気になるんだったら俺様がこいつ試してやるわ。それでもいいか赤見?」
颯というのは上地のことみたいだ。なんとなくイメージ通りな感じの名前だな。
「あぁ構わない、そこは郷田に任せよう。私も繋吾のデュエルを一度見てみたかったんだ。ちょうどいい」
「おっしゃ決まりだな。これでもしこいつが俺に勝つことができたら特殊機動班への入隊を認める。ダメならこのまま特殊機動班への入隊はなし。それでいいか?」
えっ。負けたら入隊がなかったことになるのか。
せめて、研修期間を設けるとか……。
「赤見班長が良いということであれば、問題ありません」
「ま、まぁ……勝てたらの話だがな」
結衣と上地は少し不満そうながら答えた。
待てよ、本当にその流れになる感じか!?
「どうだ、赤見?」
赤見さんは少し考えると、決断したように口を開いた。
「いいんじゃないかな。その方が繋吾の覚悟も見れるだろう」
本気ですか赤見さん。
あそこまで勧誘しておいて、負けたらダメってなかなかに厳しい世界だ……。
「じゃあ繋吾とやら、いっちょデュエルやるか。構わねぇよな?」
ここまで来たらもう退けない。
入隊がかかっている以上、やっぱり今回も気が抜けないデュエルにはなりそうだ……。
何よりも相手はデュエルで仕事をしているプロ。一筋縄ではいかないだろう。
「あ、あぁ……。それでみんなが納得するのなら構わない」
「いい返事だ! 俺は郷田ってんだ。よろしくな!」
「こちらこそよろしくお願いします。郷田さん」
俺は丁寧に頭を下げると、郷田さんがデュエルウェポンをこちらに差し出してきた。
「ほら、これお前用のデュエルウェポンだ。もちろんこれからのデュエルは戦闘用のモードじゃなくて、訓練用にするから安心してくれ」
「ありがとうございます」
この間左近ってやつから借りたのとどう見ても同じものだ。
見るからに高そうな品だし、お古でも文句は言えないか。
ありがたくいただくとしよう。
「おっし! それじゃさっそくデュエル訓練場へ行くか!」
郷田さんを先頭に、俺たち特殊機動班の5人はデュエル訓練場へ向かった。