あの戦争を生きてくぐり抜けて事で、パーティーメンバーの幾人かのレベルが上がった。そこでカズマがたまったスキルポイントで何か切り札になり得る攻撃系のスキルを習得したがった。
『冒険者』は職業補正こそ皆無だが、全スキルを習得可能という所が唯一の利点なのだから、多彩なスキルを覚えておきたい。と考えるのは当然と言えば当然か。既にクリスから盗賊系のスキル全般、知り合いの冒険者達から『片手剣』『弓』『狙撃』『千里眼』を教わりはしたが、攻撃力に乏しいのは否めない。
しかし中々難しい。例えば、めぐみんから爆裂魔法を教えて貰い、習得可能な状態になったとして、先ずポイントが絶対的に足りない上に、仮に習得したとしてもカズマの魔力では一撃でさえ真面に撃てまい。
「う~~ん、今のポイント残高でもギリギリいけそうなスキルは・・・・・『怪獣王の咆吼』か『白熱光』か。」
ゴジラのスキルは他の幾つかを既に視ているのだが、ポイント的には何とか習得可能でもカズマの能力値では使い熟せそうに無い。
『怪獣王の咆吼』を冒険者が習得し使用した場合、自分よりも弱い相手には効果があるが、逆に強い相手に迂闊に使用すれば挑発行為と見なされ襲いかかってくる。実力が伴っていなければ文字通りに虚仮威しだ。
『白熱光』は鋼鉄さえも容易く融解させる程の吐息である。既に習得している『魔力収束』と併用すれば擬似的な放射熱線とすることも出来る。ただし、消耗が激しく身体への負担も大きい。
カズマが悩んでいると、酔った同業者が話しかけてきた。
「よう、カズマ。知ってるか?なんでも魔王軍の精鋭二人が、この街からちょっと登った丘にある、古い城を乗っ取ったらしいぜ?おかげでモンスター共がビビって引っ込んじまって、碌なクエストがねぇ。」
「そりゃまた、はた迷惑な話だよなぁ。でも、そういうことなら腕利きの騎士やら冒険者やらが討伐に来るんじゃねぇの?」
「いや~~~、それがな・・・・・」
しかし、この世界は甘くない。ただでさえ魔王軍やモンスターの対処で一杯一杯だったのだ。そこに怪獣軍団が登場した事で、完全にキャパシティがオーバーしてしまった。おまけに、実はチート持ち転生者の供給が途絶えている有様。
現在、王都はメガニューラの大軍やメガロ、ムートーの番などの怪獣が襲撃を繰り返している。更に言えば、
圧倒的に人手不足、新兵を補充した端からガンガン死んでいく。如何に相手が魔王軍幹部であろうと、討伐に人員を割ける余裕など無い。寧ろ、そんな人材がいるのならこっちに寄越せと言い出しそうなくらいには余裕が無い。
(━━━━━━どうやら、俺が思っていた以上に人類は詰んでいたらしい。ベリーハード通り越してルナティック、こっちにゴジラとサキエル様がいなけりゃナイトメアでさえヌルいレベルじゃねぇか!!?)
そんな状況下でも相変わらずマイペースなのが二人。めぐみんとアクアである。アクアはと言うと、仮にも女神とは思えないくらい俗物的で快楽主義。毎晩、酒を浴びるように呑んでは宴会芸を披露する。その所為で基本的に金欠であり、しょっちゅうカズマやサキエルにお小遣いをねだっている。昨日、アクアの小遣い稼ぎと、レベルアップによる【幸運】【知力】の向上を目的としたクエストを受けたりもした。その際、予期せぬ大物アンデッドに出くわしたりもしたが、詳しくは割愛する。
めぐみんはサキエルに付き合って貰い
《緊急!緊急!街の中にいる冒険者各員は、至急戦闘態勢を整え街の正門に集まって下さい!繰り返します。街の中にいる冒険者各員は、至急戦闘態勢を整え街の正門に集まって下さい!特に、ゴジラ様とサキエル様は大至急お願いします!!》
再び街中に響き渡る緊急アナウンス。数日前に行われたばかりの怪獣大戦争の時と同じ様に空気が張り詰める。そして、正門前の広原にて2体のモンスターが姿を現した。魔王軍幹部のデュラハンのベルディアと、準幹部でラミアの変異体と思われる姦姦蛇螺である。
既に装備を調え集っていた冒険者達は、畏れはしても卒倒する者は居なかった。先達っての経験に加え、希望が在るが故にであろう。
しかしあの二人、目は血走りこめかみには青筋がたっている。何というか、ブチキレ寸前といった感じが漂っている。
「俺達はつい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが・・・・・・・まままま、毎日毎日毎日毎日っっ!!あの城に、毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込んでく頭のおかしい大馬鹿は、誰だああああああああー!!」
この街の冒険者の中には爆裂魔法を代名詞とするアークウィザードが一人居る。それを知っている皆は当然のようにめぐみんに視線を向けた。
「━━━━━━貴女ですか、あの城に連日爆裂魔法を撃ち込んでくる魔法使いは?」
こちらは激昂はしていないものの、やはりキレているのがヒシヒシと伝わってくる。ネットリと絡みつくような、怨念じみたオーラを纏っているのだ。
流石のめぐみんも些か怯むが、颯爽とマントを翻し、高らかに名乗り上げる。
「我が名はめぐみん!紅魔族の者にして、この街随一の大魔法使い!爆裂魔法を操りし者!!」
そして、
「私は水と繁栄を司る天使サキエルと申します。彼女の連日の爆撃は、貴方達を城から引きずり出す為の作戦の一環だったのですよ。」
「・・・そっ、その通りです!こうしてまんまとこの街に、二人だけでやって来たのが運の尽きです!」
「・・・・・おい、あいつ絶対作戦とかわかってなかっただろ。」
「・・・うむ、しかもさらっとこの街随一の大魔法使いとか言い張っているな。」
「しーっ!そこは黙っておいてあげなさいよ!良いとこなんだから、このまま見守るのよ!」
しかし、魔王軍の精鋭たる二人はサキエルのみ注視している。駆け出しのひよっこなど眼中にも無いのだろう。それに、何より警戒していたゴジラの姿が此処に無いの為、余計に不安になっているようだ。
「ああ、一応言っておきましょう。私達は貴方達を決して逃がしません。徹底的に殲滅します。」
大天使として審判の宣告を下したサキエルは、遠見の術で件の廃城を映し出す。その映像は、魔王軍の精鋭たる二人にとって絶望的なものであった。
なんとバーニングゴジラが単独での城攻めを敢行していたのだ。それはもはや一方的な蹂躙と言っても過言では無かった。連日の爆撃に加え、最大戦力の二人が出払っているのだ。アンデッドナイト達は真面な抵抗さえ出来ず、蹴散らされている。
「あ、嗚呼・・・・・ウア゛ア゛ア゛アアァァ!!己己己己己己己己己己己己己己己己己己!!!絶対に許さいイイ―――――!!!」
激昂しサキエルに襲いかかる姦姦蛇螺。迎え撃つサキエル。暗黒と聖光が乱れ飛ぶ。毒液と聖水がぶつかり合い飛沫を上げる。呪詛と洗礼詠唱が響き渡る。
ベルディアもまた、黙ってみている訳も無い。魔王軍幹部の肩書きは伊達では無く、本気を出せば単独でアクセルの街を壊滅させられる実力があるのだ。(尚、実際にそれをやるとウィズを敵に回す事になる。)
だがこの街にはゴジラとサキエル以外にも注意すべき連中が居た。例えば、耐久特化のクルセイダー。例えば、小賢しさと悪運だけはやけに良い最弱職。例えば、紅魔族の爆裂狂。例えば、水の女神。
詰まるところ、彼等の命運は疾に尽き果てていたのだ。
次回
魔剣の勇者