この素晴らしい世界に灼熱の怪獣王を!   作:千本虚刀 斬月

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魔剣の勇者

 王都は今、危機的状況にある。怪獣達に絶え間なく襲撃されているのだ。怪獣を斃し得る力を持つ勇者は確かに居る。だが敵軍は多勢に無勢。どれだけ頑張ろうとも刻一刻と追い詰められているのは認めざるを得ない。

 

その中でも怪獣相手に戦果を上げて見せた益荒男達に対する受勲式はちゃんと行われる。と言うか、やらないと根無し草を標榜とする冒険者などは、国を見限って余所に行ってしまいかねないのだ。

 

その様な状況下で舞い込んできた情報は宮廷中を激震させるには充分すぎるものだった。

 

 

曰く、そのパーティーは終焉級(ワールドエンドクラス)の大怪獣と正真正銘の大天使、他にも凄腕の上級職冒険者が多数在籍している。

 

曰く、この1ヶ月の間に幾多もの怪獣を屠り去っている。しかも、そのうちの1体は戦略級(ディザスタークラス)である。

 

曰く、つい昨日には魔王軍幹部のベルディアと、精鋭の姦姦蛇螺を撃破した。

 

 

「俄には信じがたい話です。でも、もし本当ならば到底捨て置けません。」

 

「はっ!ミツルギ殿に至急調査を依頼しましょう。彼ならば信頼も実績も申し分ない。それに、パーティーメンバーの増強の為にアクセルの街に行きたいと言っておりましたし、ちょうど良いでしょう。」

 

「事実確認がとれ次第、そのパーティーには招集の勅命を出す事に致します。」

 

「レイン、明日の朝にでもテレポートでアクセルに送り届け、サポートするように。まあ、ミツルギ殿であれば手早く済ませる事だろうが、件の怪獣は相当に強いらしいからな。念は入れておいた方が良いだろう。」

 

「はい!お任せ下さい!」

 

 

だがレインは後にこう語る事になる。「あれは、相手が悪すぎた。」と

 

 

 

 

 

 

 

☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢

 

 

 

 

 

 カズマとアクアは、とある場所へ赴いていた。スキル構成にアレコレと悩んでいた際に、ふと思い出したのだ。以前に、大物アンデッドと邂逅を果たしていた事を。

 

このパーティーは、やっぱりどう考えてもアンバランスだ。主戦力のゴジラとサキエル、盗賊のクリスは不定期参加で、場合によっては居ない事もある。

 

あの3人が不在の状況で、もし強い怪獣と遭遇しようものなら詰みだ。故に、早急に安定した火力を手に入れる必要があった。いや、今でも全く無い訳では無いのだが、()()は魔力消費が激しすぎる。

 

その為にこの『ウィズ魔道具店』に訪れたのだ。カズマは店に入る前に何度もアクアに釘を刺す。

 

「ちょっと、何で私がそんなことしなきゃなんないのよ。一度言っておきたいんだけど、カズマって私をなんだと思ってるの?私、チンピラや無法者じゃないなよ?女神よ?神様なのよ?サキエルの上司にして、エリスの先輩なんだからね?」

 

一人なのに姦しいアクアの文句を右から左に聞き流しながら入店する。

 

「いらっしゃい・・・って、ああっ!?」

 

「あああっ!?出たわねこのクソアンデット!あんた、こんなところで店なんて出してたの!?リッチーのくせに生意気よ!こんな店、神の名の下に燃やしてっいだいっ!?」

 

予想通りに暴れだしたアクアに制裁を下しながら挨拶するカズマ。

 

「ようウィズ、久しぶり、って程でも無いかな?まあとにかく、約束通り来たぞ。」

 

 

店内を見て回りながら小姑みたいな嫌がらせを繰り返すアクア。それにひたすら脅え、赤べこの様に首を振り謝罪するウィズ。分ってはいたが、この二人の相性は最悪らしい。もしここにサキエルが加わっていたらカズマでは制止不可能だったかも知れない。

 

「なあ、ウィズ。以前言ってたろ?何かリッチーのスキル教えてくれるって。何か教えてくれないか?」

 

カズマの提案に、予想以上の剣幕でくってかかるアクア。

 

「ちょっと、何考えてんのよカズマっ!リッチーのスキル?リッチーのスキルですって!?以前この女に名刺貰ってた時、一体何を話してるんだろうって思ったら!リッチーの持つスキルなんてろくでもない物ばっかりよ!そんな物覚えるなんてとんでもないわ!いい?リッチーってのはね、薄暗くてジメジメしたところが大好きな、いってみればなめくじの親戚みたいな連中なの!」

 

「ひ、酷いっ!」

 

カズマは自分の考えを懇切丁寧に説明し、リッチーのスキルが打開策につながるかも知れないと説得する。アクアは渋々ながらも一応は納得の意を示す。

 

結局、カズマはウィズから『ドレインタッチ』を教わった。このスキルがあれば、『白熱光+魔力収束(擬似放射熱線)』や、カマキラスにトドメを刺した『|クリエイト・ウォーター+クリエイト・アース+魔力収束《アブレシブ・カッター》』だってぐっと使いやすくなるだろう。

 

その後は、ウィズが実は魔王軍幹部と判明し、再度アクアが襲いかかったり、ゴジラとサキエルがこの場に居た場合の状況を考えたカズマが戦慄し居ない事に心底安堵していたりもしていた。

 

暴れるアクアに『バインド』をかけて雑に担ぎ上げ、帰路につくカズマ。

 

しかしこれ、端から見たらかなりアレな光景である。ロープで雁字搦めになって、男に雑に担がれながら喚き立てる美少女。本来なら通報待った無しなのだが、アクアが悪名高いアクシズ教のアークプリーストだと知っている街の住人は遠巻きに見ているだけで、寧ろ関わり合いになりたくないと避ける者も少なくない。合流した他のパーティーメンバーも、どうせアクアがまた何かやらかしてカズマに折檻されているんだろう、と勝手に納得している有様だ。

 

「め、女神様っ!?女神様じゃないですかっ!」

 

突如、大変な血相で駆け寄ってくる男。そしてカズマに激昂しながら掴み掛かり、アクアの解放を要求した。カズマは仕方なくアクアを解放しようとするが、その前に男が腰元の剣を抜き放ち一閃。綺麗にロープだけを切断して見せた。唖然としている一行を尻目に、その男は、同じく唖然としているアクアの手を掴み何やら捲し立てている。

 

「おい、あれお前の知り合いなんだろ?女神様とか言ってたし。多分、先に送られてきた日本人転生者じゃねぇの?お前が何とかしろよ。」

 

しかし当のアクアは、その男に対して首を傾げる。

 

「・・・えっと・・・・・あんた誰?」

 

「何言ってるんですか女神様!僕です、御剣 響夜ですよ!あなたに魔剣グラムを頂いた!!」

 

予想通り、チート持ちの日本人転生者だったらしい。その男の後ろには、取り巻きと思われる美少女が3人。そのうちの一人、地味な魔法使いの美少女はダクネスと知り合いだったようで挨拶を交わしている。

 

(チッ!ハーレム野郎が!)

 

毒づくカズマを余所に話は進む。と言うか男が一方的に説明を要求してくる。

 

「バカな。ありえないそんな事!君は一体何を考えているんですか!?女神様をこの世界に引き込んで!?しかもその理由が、ただの腹いせで転生特典に選んだ!?ありえない!!」

 

人の話も聞かず、ヒートアップし続ける御剣某。

 

「女神にしてアークプリーストのアクア様、そっちの二人もクルセイダーにアークウィザードか。君は随分とパーティーメンバーに恵まれているんだね。だと言うのに就いてる職業は最弱職の冒険者か。君達、今まで苦労したんだね。これからは僕と一緒に来るといい。というか、パーティーの構成的にもバランスが取れてていいじゃないか。ソードマスターの僕に、僕の仲間の戦士と、そしてクルセイダーのあなた。僕の仲間の盗賊と、アークウィザードのその子にアクア様。まるであつらえたようにぴったりなパーティー構成じゃないか!」

 

この発言にはカズマ達や、当のアクアでさえドン引きした。大顰蹙で非難囂々。だけどそれでも折れる事無く、明後日の方向に頑張り続ける御剣某。

 

「悪いが、僕に魔剣という力を与えてくれたアクア様を、君の様な男には任せられない。君にはこの世界は救えない。魔王を倒すのはこの僕だ。アクア様は、僕と一緒に来た方が絶対にいい。━━━この僕と勝負しないかい?アクア様を、持ってこられる『モノ』として指定したんだろ?僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ。君が勝ったら、なんでも一つ、言う事を聞こうじゃないか。」

 

などと、極めて自分勝手な戯れ言をほざきだした。だが高レベルかつ上級職のソードマスターで魔剣まで持っている御剣某と、最弱職の冒険者でレベルもまだ10台のカズマでは、真面に戦り合えば結果は明白。

 

御剣自身も、流石に無茶振りが過ぎる自覚があったらしく、ハンデを付けても良いという。

 

「アクア様を除いたパーティーメンバーの一番強いものに代理を頼んでも良い。相手が誰であろうと、僕は受けて立つ。決して負けない!」

 

カズマが所属するパーティーの最強は、言うまでも無くゴジラである。

 

いやはや、全く無知とは恐ろしい。

 

 

 

 

 

 

 

 




魔剣の勇者様のご冥福をお祈りします。
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