この素晴らしい世界に灼熱の怪獣王を!   作:千本虚刀 斬月

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アクセル

 ゴジラとサキエルはギルドへの報告のために一旦アクセルの街に帰還することにした。商隊の人達も一緒である。

 

人間嫌いのゴジラは、意外にも渋る事無くすんなりと承諾した。どうやら爆裂魔法を放った紅魔族に興味が湧いたらしい。

 

確かにあの一撃は凄まじかった。とにもかくにも一発こっきりで、撃ったら倒れるのでお世辞にも実用的とは言い難い。しかし、その威力だけなら赤色熱線にもそう劣るものでは無い。

 

加えて言うのなら、邪神ウォルバクの片割れである魔獣を従えているのだ。・・・そのネーミングセンスは本当にどうかと思うが。

 

基本的に人々を十把一絡げに『人間』としか認識しないゴジラが、他者と一応の区別を付けているくらいには評価している(今の処ゴジラが他者と明確に区別している人間は女神アクアと天使であるサキエルを除けば、恐竜だった頃にラゴス島で見え怪獣と成って再会したさいに直接葬り去った新堂 靖明と、超能力者の三枝 未希の2名のみ)らしく、ちょむすけに懐かれても邪険にはせず、すり寄られて困惑するというレアシーンを拝む事が出来た。

 

しかし、いかにゴジラとサキエルが同行しているからとてモンスターに全く出くわさないとも限らない。

 

そう、一行は知らず知らずのうちに、自らモンスターのテリトリーに足を踏み行ってしまったのだ。

 

それは、さながら飛んで火に入る夏の虫の如く。

 

或いは、甘く蕩ける蜜(ウツボカズラ)に惹かれた虫の様に。

 

である以上、冒険者達の末路は決定した。

 

迷い込んだ哀れな羽虫は、溶解し喰らい尽くされる(MELT DOWN)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、街道の付近にある湖の畔で休息を取っている。商隊の中には護衛役として雇われた冒険者や二人の紅魔族以外にも一般の乗客が乗り合わせているし、馬だって定期的に休ませなければバテてしまう。

 

湖畔の近くにある森の中にソレは居た。目の良い者なら畔からでもギリギリで見えるかどうかの位置。一本の樹木に寄りかかるように座り込む、痩せ細った緑の少女。

 

その少女は脚や腕に血の滲んだ包帯を巻いていて、身動ぎする度に顔を顰め、何かを訴えかけるように上目遣いで見つめてきた。並大抵の冒険者や旅人であれば慈愛の心を抱かずには居られないだろう微笑みを浮かべて。

 

もっとも、今少女の目の前に居る存在は並大抵とは到底言えない、埒外の破壊神であるのだが。

 

「・・・・・・・・・」

 

「━━━━━━━━━」

 

両者は暫し無言で見つめ合う。

 

件の少女は、身動ぎは恐怖故の震えに換り、包帯に滲む体液は血糊のような何かでは無く脂汗になり、浮かべる微笑は完全に引きつっていた。

 

このワンシーンだけを視るなら少女に同情して身を挺してでも庇おうとする勇敢な冒険者(ロリコン)も居るかも知れない。

 

だがしかし、その少女の名は『安楽少女』。喰人性の植物型モンスターであり、人を引き寄せてやまない諸々の要素は全てが擬態であり演技なのだ。

 

とは言え、それらの事情はゴジラの知った事ではないし、どうでも良い事である。

 

人間とて言ってしまえば数多居る生物種の一つ。極ありふれた生存競争で、真っ当な理の内側の出来事である。

 

ゴジラは安楽少女を数秒程観察した後、あっさりと興味を失い湖へと去って行った。

 

「───ッブネ―!マジで死ぬかと思ったぜ、クソッタレ!!」

 

プレッシャーから解放された反動からか、地金を晒した状態で盛大に毒づく安楽少女。

 

「あ~あ。ったくよー、せっかく良い感じで養分になってくれそうな人間が沢山いるってのに、んだよアレ?!」

 

もしゴジラが沈静化しておらずバーニングモードであったのなら到底無事では済まなかったのだから、この安楽少女はまだ幸運であると言える。

 

「「「─────────」」」

 

本人の、油断による間抜けさを考慮しなければ。

 

繰り返すが、商隊の中には護衛役として雇われた冒険者達が居る。そして、この三人は周囲に危険なモンスターが居ないかを偵察する役割を請け負ったのである。勿論、先程の光景もバッチリ目撃している訳で

 

「・・・・・イマノハ、ナカッタコトニ、デキマセンカ・・・?」

 

「あんなん見た後でそんな媚売りが通じる訳無いだろ?往生・・し・・・」

 

ソレを聴いた安楽少女は、観念するように瞑目し、両手を胸の前で組んだ。

 

「・・ソウ、ダヨネ。ケッキョク、ワタシハ、モンスターダモンネ・・・。モシモ、ウマレカワレルノナラ、ツギハ、ホンモノノニンゲンダト、イイナア・・・。」

 

涙を浮かべながら、精一杯に微笑んだのだ。

 

安楽少女にとっては起死回生をかけた渾身の一手。例え演技であると知られていても、尚も討伐を敢行出来る者など居ない。そう確信できる程の手応え。

 

(いける!やっぱ人間ってバカだわwwwこのまま押し切って、あわよくば虜に・・・!?)

 

「させませんよ?」

 

背後から首筋に掌を添えられ、耳元で囁かれた。躰が硬直して声も出せないのは呪縛魔法を掛けられたからと言う訳では無く、自身の生殺与奪権を完全に掌握されたのを理解してしまったからである。

 

サキエルは紛れもない大天使。天使達は神の眷属だけあって幾つかの特権を行使できる。例えば、僧侶や聖騎士に為らずとも神聖魔法を行使出来る。或いは、相手の邪気を感じ取る事で嘘を見抜く。

 

「今回は見逃してあげますが、あまりおいた(・・・)をしてはいけませんよ?良いですね?」

 

安楽少女は必死に為って首を縦に振る。

 

「聞き分けが良くて大変よろしい。」

 

これ程までに恐ろしい猫撫で声は初めて聴いたし、この先の生涯において聴く事は無いだろう。それは安楽少女のみならず、その場に居合わせてしまった全員の総意でもあった。

 

安楽少女にとって、先のゴジラは良くも悪くも天災に等しい存在であったが、このサキエルは冷徹な裁定者と言える。もし一片でも邪念を抱いていたなら容赦も慈悲も無く刈取られていた。

 

ともあれ、一先ずは生き存えた事に安堵する。だがこの時点では誰も予想していなかった。この安楽少女が、後にあのように成り果てるだなんて。

 

 

 

 

☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢  ☢

 

 

 

 

 

アクセルの街はベルゼルグ王国の中では魔王軍の城砦から最も遠い位置にあり、周囲に生息するモンスターも弱い為、駆け出し冒険者の街としての側面が強い。

 

だからなのか、神々によって送り込まれてきた転生者は先ずこの街に現れる。

 

そして、今まさに降り立とうとしている者が二人。より正確に言うのなら、一柱の女神と一人の少年がこの世界に降り立ったのである。

 

 

 

 

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