この素晴らしい世界に灼熱の怪獣王を!   作:千本虚刀 斬月

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レベリング

 この世界のあらゆる存在はその体内に魂を秘めており、他の存在を殺したり食べたりすることでその者の魂の記憶の一部を吸収し、体内に貯め込む性質を持っている。そしてそれらを一定以上貯め込んだ生物は、ある日突然、急激に成長することができる。所謂、レベルアップと言うやつだ。

 

ゴジラは現在レベル4。ガバラとガイラを斃した割にはあまり上がっていないが、ベースとなっている器の規格が違う為に、必然的にレベルアップに必要な経験値も膨大なものとなる。代わりと言っては何だが、成長の上限は無く、戦い続けていけば何処までも強くなれる。同じレベルでもこれがカズマであれば雑魚モンスター数匹であっさりレベルが上がるだろう。みっちり鍛え上げていけば、何れは幹部級の相手にもそれなりに食い下がれるくらいには強くなれかも知れない。

 

現在、そのカズマはアクセルの郊外にある平原でレベリングに勤しんでいる。と言っても、残りの八千エリスで用意出来た武器は量産品と思われるショートソードが一つだけ。アクアの方はそのままではあるが、此方は心配など不要だろう。駆け出し冒険者の街ではオーバースペックと言っても過言では無く、カエル程度では相手にも為るまい。そもそもアクアの場合、既にしてステータスがカンスト状態且つアークプリーストの全魔法を習得済みなので、レベルを上げる事の意味が薄い。女神は総じて、レベルやステータスでは無く信仰の如何によって力の出力が上下する。故に強くなりたいのなら、布教活動に勤しみ信仰の基盤を盤石なものにした方が良いのである。

 

 

 麗かな蒼天の下、汚い高音の悲鳴が響き渡る。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!た、助けてえええええ!喰われるうううううううっ!」

 

「・・・まあ、こうなりますよね。」

 

平和呆けした現代の日本人、それもケンカすらまともにした事が無さそうな引きこもりの少年である。武器一つ与えられただけで、いきなり実戦に放り込まれて相手を躊躇いなく殺せる方が稀であろう。

 

その様子を離れたところから見ていたアクアは腹を抱えて大爆笑。ゴジラは興味すら無いのか、見向きもせずに日なたぼっこに興じている。

 

「『パラライズ』。さあ、今のうちにトドメを。」

 

「あ、ありがとうございます!流石、天使様。どこぞの元なんとかにはぜひ見習って欲しいところだ。」

 

「元って何!?ちゃんと現在進行形で女神よ私は!いいわ、見てなさい!カエルの群を華麗に一掃して見せてやるんだから!」

 

しかしこの女神、幸運値が最低かつ知力も低めなのである。オブラートに包んだ言い方をするなら足元をすくわれやすい性質の持ち主であり、身も蓋もない言い方をするならバカで間抜けだ。

 

「神の力、思い知れ!ゴッドブロー!!」

 

単身、拳に神気を纏わせ突貫する女神。だがこのカエル、打撃系の効果は薄いと予め聴いていた筈なのだけれど。まあ相手はたかがカエル三匹。多少相性が悪かろうとも、スペックの差でねじ伏せられるだろう。

 

「ゴッドブローとは女神の怒りと悲しみを乗せた必殺の拳、相手は死ぬ!」

 

アクアの拳は三匹のどれでも無く地面に突き刺さり、広範囲の液状化現象を引き起こした。そしてカエル諸共、自分で拵えた泥沼に沈む水の女神。

 

数分後、サキエルによって救出されたものの泥だらけでめそめそと泣いているアクア。カエルにトドメを刺しながらその光景を見ていたカズマは心底後悔していた。なんで自分はよりにもよってこの駄女神を転生特典に選んでしまったんだろう、と。

 

パーティーメンバーの総戦力だけなら、無敵とさえ言えるのに。

 

 

 

 

 紅い陽が地平の彼方に沈もうという頃、カズマは本日十五匹目となるカエルを仕留めた。

 

「・・・ハァ・・ハァ・・し、死ぬぅ。これ、以上は・・ハァ・・本当、無理・・・」

 

「まったく、カズマったらしょうが無いわね-。ま、ヒキニートにしては頑張った方かしら-?」

 

ちなみにアクアは、サキエルが『クリエイト・ウォーター』で躰を清めてあげたので、もう泥だらけでは無い。

 

ゴジラ以外の三人はアクセルのギルドに向かう。

 

ゴジラは寝床にしている湖に行った。余談ではあるが、その湖は最近水質が悪化していてワニの群が住み着きだしていたのだが、ゴジラの咆吼であっさりと逃げ散っていった。水もサキエルが浄化した。たまに湖底に置いてあるマナタイトを狙う輩が来たりもするが、ゴジラにとっては悪くない住居となっている。

 

肉の買い取りと討伐報酬を合わせて三十七万五千エリスを受け取り、併設されている酒場で晩飯を食べる。特にカズマは無茶なレベリングを課せられた所為で疲労困憊。唐揚げ定食の特盛りを一心不乱にがっついている。

 

カズマが今日一日この世界でやった事を文字に起こして箇条書きにすると、RPG等では至極ありふれた行為であるのだ。サキエルとゴジラのおかげで命だけは保証されていたのだから、マシとさえ言える。実際に、そのおかげでレベルがいっきに13にまで上がったのだから。

 

 

三人が食事を終え、食後の余韻に浸っていると、一人の騎士らしき者が随分と慌てた様子でギルドに駆け込んできた。

 

彼の騎士曰く、魔王軍に2つの大きな動きがあったらしい。

 

一つは、魔王城の周囲一帯に未知の結晶体が乱立し、今までのものとは別種の極めて強固な結界に覆われたとのこと。

 

もう一つは、幹部の一人であるデュラハンのベルディアが大量のアンデッドを引き連れてどこぞに出立した。しかも怪獣と思しき存在、三頭双尾の黄金竜と共に。

 

 

 

 

 

 




パーティーメンバー(暫定)

ゴジラ
タンク兼ダメージディーラー。最強戦力であり、存在自体がチート。体内炉心が不安定という欠点があるが、サキエルのサポートのおかげでさしたる問題にはならない。ただ良くも悪くも天災のような存在なので、人間の意のままに動くことは先ず無い。

サキエル
性格、能力共に欠点の無いオールラウンダー。ステータスも高水準で纏っており、スキルや魔法も多彩。苦労人気質。

アクア
水の女神にしてアークプリースト。カタログスペックにおいては申し分の無い戦力を誇るオールラウンダー。ただ、お調子者で能天気、ものぐさで空気を読まない、威勢の良い啖呵を切る割には打たれ弱くて泣き虫な構ってちゃんという性格と、類を見ない程の運の悪さが諸々の長所を打ち消してしまう事も珍しくない。芸事に関しては、ある種の極みに達している。

佐藤 和真
咄嗟の機転が利き、かなりの幸運を誇る。しかしそれ以外では、特に秀でた能力などは無い。性格面においては、駄目人間の一言に尽きる。
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