翌日、クエストに行く前にカズマの防具の類いを一通り揃える事にした。ハードレザーの胴衣に金属製の籠手と脛当、その上に中丈のマントを羽織っている。
「少しはまともな冒険者に見えるようになったじゃない。ジャージのままじゃファンタジー感ぶち壊しだものね-。」
「せっかく魔法が使える異世界に転生したんだ。剣は元より、魔法は是非とも覚えたい。で、スキルの習得ってどうやるんだ?」
「和真さんは『冒険者』ですから、まず誰かに教えて貰う必要があります。直接見て、詳細を聞く事でそのスキルが習得可能になります。ただ、習得に必要なポイントは本職に比べると幾らか多めになりますが。」
例えば中級魔法を習得しようとした場合、本職の魔法使いであれば必要なポイントは10となる。だが『冒険者』の場合、個人差はあるが凡1.5倍のポイントが必要となるのだ。おまけに魔力値が低いから魔法の威力も撃てる回数も高望みは出来ないと来ている。
結局カズマは中級魔法の習得は取敢えず諦めたものの、魔法を使う事への未練を断ち切れず初級魔法を教わった。アクアにも何か教えて貰おうと暫く思巡していたが、しょうもない宴会芸辺りを披露しそうな予感でもしたのか止めたようだ。
「他に何かありませんかね?出来れば習得にあまりポイントを使わないで、それでいてお得な感じの。」
「ん~、そうですね・・・では、これなどはどうでしょう?」
そう言ってサキエルが披露して見せたのは『魔力収束』のスキル。ゴジラは放射熱線に螺旋の回転を加える事で貫通力を高めて放つのがスパイラル熱線な訳だが、それがこの世界に転生した所為で明確にスキル化されたのである。
「おお!コレを習得すれば、例えば螺旋丸みたいな事も出来たり・・・?!」
「その螺旋丸が何なのかは分りませんが、巧く使う事が出来れば初級魔法にも其れなりの威力を持たせる事が出来るでしょう。」
☢ ☢ ☢ ☢ ☢ ☢ ☢ ☢ ☢ ☢ ☢ ☢
その後、ゴジラとサキエルは二人で討伐クエストに向かう事にした。アクアとカズマはクエストの内容が怪獣三頭の討伐だと知るや
「い、いや~俺達にはちょっと速いかなーと。って訳で、今日も平原でカエル相手にレベル上げだ、いくぞアクア!」
「そ、そうね!まあ、私は余裕だけど、仕方ないからカズマさんに付き合ってあげるわ!」
今の二人であれば、確かにちょうどお手頃な相手ではあるだろう。カズマは金属の防具がある為、カエルは補食を嫌がるだろうし、昨日さんざん戦ったのだから退き際も弁えている筈だ。アクアに関しては最初から心配要らない。何故なら普段から身に纏っている羽衣は、強力な耐久力を持ち、あらゆる状態異常を受け付けず、様々な魔法がかけられている正真正銘の神具だからだ。
そんな訳で、憂い無く本来の仕事に専念できる。ギルドの情報によると、三頭の怪獣は森の奥深くで目撃される事が多いとのこと。その森は本来ならブラッディモモンガ、スライム、一撃ウサギ、コボルト、ゴブリン等の多数のモンスターが生息する中級以上の冒険者にとっては美味しい狩り場であった。だが怪獣が住み着いた所為でギルドは森への立ち入りを禁止。冒険者達の鬱憤はたまりにたまって爆発寸前の状態である。
しかし元から生息していた雑魚モンスター達にとってみれば無上の災難であろう。タダでさえ三頭の脅威に逃げ惑っていた処に、其れを遙かに凌ぐ怪獣王と大天使が揃って現れたのだから。
「ハアアァ『ダイアモンドダスト』!」
サキエルは有象無象の軍勢に向けた掌から冷気の波動を放ち、全てを凍結させた後に指をパチンと鳴らし破砕させた。これで周囲一帯のモンスターは一掃されたようだ。
「━━━━━━━━━━!」
「ふむ、漸く本命のお出ましですか。」
先ず現れたのは大イカ怪獣ゲゾラ。デカくて冷たい以外にはコレと言った能力を持たず、炎熱に極端に弱い怪獣だ。
だがこのゲゾラは、その冷たさが尋常では無くなっていた。数値にして-200℃。並大抵の相手であれば、体表面に触れただけで凍傷を負う。
それ以前に30メートルと言う大きさと、2万5千トンと言う重さは対峙する者に恐怖すら抱かせる。デカさはそれだけで強さとなるのだから。
その相手がゴジラで無ければ。
「▇▇▅▇▇▇▅▅▂▂▅▂!!」
ゲゾラは、ゴジラの覇気に脅威を感じたらしくイカスミを吐き掛けてきた。液体窒素を下回る超低温の墨である。その上、非常に高い粘性を誇る。
ゴジラは熱には凄まじい程の耐性を持つものの、冷気には比較的弱い。実際、スーパーXⅢには氷漬けにされ活動停止に追い込まれた事もある。
つまりゲゾラのイカスミは、ゴジラの弱点を的確に突く事が出来る攻撃手段なのである。
真面に浴びせる事が出来たのなら、の話だが。
「『ストライク・エア』!!」
サキエルの魔法によってイカスミは吹き払われ、ゲゾラは致命的な隙を晒す。
「▇▇▅▇▅▅▂▂!」
ゴジラのスパイラル熱線によって眉間を撃ち抜かれたことでゲゾラは絶命した。
だが、実際の戦場においては勝利を確信した瞬間こそが最大の窮地。敵はゲゾラだけではないと言う事実を、刹那の間失念していた。
その代償を支払うかのようにゴジラは豪速で飛来してきた特大の火球に呑み込まれて爆焔に包まれる。
「!?」
サキエルが火球が飛んできた方角に振り向いた瞬間、地中から巨大な鋏が突き出てきた。咄嗟に飛翔する事で回避はしたものの、今度はサキエルに向かって火球が飛んでくる。更には地中から現れたガニメからのバブルブレスの挟撃。
だがその程度手あっさりと堕とされる程、大天使の称号は安くない。人間の肉体では耐えきれないであろう程の超高速旋回機動を以て躱してのける。そして
「▇▇▅▇▅▅▂▂!▇▅▅▇▅▇▇▇▅▅▂▂▅▂!!」
当然、ゴジラがこの程度の攻撃で斃れる訳がない。況してや熱焔攻撃とも為れば、半端なものでは逆効果でしか無い。
「********!!」
火球の砲撃主であるカメ―バも負けじと咆吼しかえし、今度は流動的な熱焔を吐きかける。
だがゴジラは其れもまた吸収し、熱線に上乗せし、バーンスパイラル熱線として放ったのだ。かつて、満身創痍の状態だったとはいえどスペースゴジラとMOGERAの両者を爆散炎上させた熱線である。カメ―バが耐えられる道理は無く、同様の末路を辿ったのだった。
ガニメも既に、サキエルの『ライト・オブ・セイバー』で鋏を切り落されていて、後はトドメを刺すだけの有様だ。
「済みません。私、カニはちょっと苦手なんです。『フォトン・レイ』!!」
サキエルはその掌から極彩の光砲を放つ。その耀は、まるでメカゴジラのメガ・バスターを彷彿とさせる砲撃であった。
ガニメは断末魔の叫びを上げながら躯と化した。
強大な力というのは往々にして他の力持つ者を呼び寄せる。ある者は傘下に入り庇護を得る為、ある者は討伐し誉れを得る為、或いはその力を取込み利用する為。
そして、このモンスターも怪獣という災禍によって覚醒しようとしている。否、モンスターという呼称は正確ではない。かつてこの世界に送り込まれた日本人転生者、その一人が創り上げたロボットだからだ。
その機体は鋼鉄の200倍の硬さを誇るキャタピラ状の装甲で、その両目からは殺人光線を放つ事が出来、5メートル程度の大きさなれど総数は100体に及ぶ。ついでに言うなら、100機全てにチートハーレム型リア充抹殺プログラムと自爆機能が組み込まれている。
そして、そのモゲラ(擬)を束ねる司令塔として作られた特別なロボットが1機。
とある世界線ではガイガンとメガロを相手に戦いを挑み、最終的には美事に撃退してみせた伝説的なロボット。
それら全てが、紅魔族の里にある研究施設の深奥より一斉に解き放たれようとしていた。