この素晴らしい世界に灼熱の怪獣王を!   作:千本虚刀 斬月

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尖兵

 三頭の怪獣を斃したバーニングゴジラとサキエルを視ていた者が居た。魔王軍の怪獣部隊が尖兵の1体、カマキラスである。迷彩スキルによって、姿や気配を周囲に溶け込ませる事で隠遁しているのだ。

 

カマキラスとて流石にこの場で奇襲を敢行する程に愚昧ではない。バーニングゴジラの耐久力と再生能力は、カマキラスの攻撃能力を圧倒的に上回っているのは明白だ。例え奇襲を成功させたとしても斃しきれずに、逆に斃されるのだと言う事くらい理解できている。

 

そして確信する。奴等こそが、占い師が予言した必滅、黒き灼熱と寄り添う青藍であるのだと。

 

故に、カマキラスは監視を一先ず3体の同族(昭和版)に任せて報告しにいく事にした。三頭双尾の黄金竜(キングギドラ)の元に。

 

 

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 一方その頃、アクアとカズマは新たなパーティーメンバーを募集していた。本当なら平原でカエル狩りをしたかったのだが、そのカエルが殆ど居ないのだ。

 

アクセル近辺のジャイアントトードは、ガバラという庇護者のおかげで他の怪獣達の脅威にもあまり曝されずに済んでいた。しかし、ガバラはバーニングゴジラの一撃で斃された。なので、大半は既に逃げるか隠れるかのどちらかである。

 

兎にも角にも目当ての獲物が居ない以上は、別の獲物を見繕うしかない。だが他のモンスター達も、その大半が既に怪獣の庇護下にあるか、大群を為しているか、単独でも生存可能な強力な個体であるかの何れかである。つまり、二人じゃキツい。

 

そんな訳でパーティーメンバー募集の張り紙を出して約6時間後、夕刻でギルド内が帰還した冒険者達で賑わいだした頃合に面接が行われている。

 

募集の張り紙を視て来た冒険者は三人。

 

一人は、ファンタジーにおいては典型的とも言える魔法使いの格好をした紅い瞳の美少女。(実は頭のおかしな爆裂娘として周知されつつある)

 

一人は、長い金髪をポニーテールにした全身鎧の女騎士。(生粋のドMかつ攻撃がほぼ当たらない所為で、パーティーを組んだ相手の大半から「頼むからもう勘弁してくれ」と懇願されている)

 

一人は、比較的まともそうな銀髪の美少女で盗賊職。しかし、そこはかとなく苦労人のオーラが漂っている。(実は、女神エリスの化身であるため不定期参加)

 

 

 

「え~、実は最初に言っておかなきゃならないことがある。俺達、ゴジラとサキエル(二人)は今は諸事情あって抜けてるんだけど、こう見えてガチで魔王を倒したいと考えている。」

 

天界に帰りたいアクアはともかく、カズマ自身は正直諦めかけている部分もあるのだが。

 

(魔王軍とモンスターだけでもぶっちゃけムリゲーなのに、プラス怪獣軍団とかマジでクソゲーもいいところじゃねーか!)

 

「とにかく、俺達はそのために冒険者になったんだ。という訳で、俺達の冒険は過酷な物になる事だろう。特にダクネス、女騎士のお前なんて、魔王に捕まったりしたら、それはもうとんでもない目に遭わされる役どころだ。」

 

「ああ、全くその通りだ!昔から、魔王にエロい目に遭わされるのは女騎士の仕事と相場は決まってるからな!それだけでも行く価値がある!」

 

「えっ!?・・・あれっ!?」

 

「えっ?・・・なんだ?私は何か、おかしな事を言ったか?」

 

それを聴いたクリスは、随分と遠い目をしていた。そこそこ長い付き合いだけあって、この性癖を矯正するのは不可能だと既に諦めているのだが、せめて初対面の相手には隠すくらいはして欲しかった。

 

「そっちの二人もいいのか?、相手は魔王。この世で最強の存在に喧嘩を売ろうってんだよ、俺達は。覚悟は良いか?」

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操りし者!我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも砕く!その我を差し置き最強を名乗る魔王!そんな存在は我が最強魔法で消し飛ばしてみせましょう!」

 

クリスもまた、魔王軍と敵対する事に怖じ気づく様子はなく、静かに闘志を燃やしている様に見える。

 

「あたしも、盗賊の強さってやつを見せてあげるよ。魔王討伐、いってみよう!」

 

すると、一番の関係者であるはずの女神様が

 

「ねえ、カズマ、カズマ・・・私、今の話聞いてたら何だか腰が引けてきたんですけど。何かこう、もっと楽して魔王討伐できる方法とかない?」

 

等と戯れ言を曰った。

 

取敢えず、明日の朝に正門の前に集合することにした。流石にエースとジョーカーが不在の状況で夜出歩くのは危険すぎる。全員が夜目が利くわけでは無いし、チームワークも碌にとれない即興のパーティーメンバーでは乱戦になった場合に同士討ちしかねない。何より、万が一にも強い怪獣に出くわしでもしたら逃げ出す余地も無く全滅する可能性だってあり得る。陽の下であればそのリスクを幾らかは軽減できる。

 

 

 

 

 

 

 本来ならば駆け出し冒険者の街近辺に居てはいけない程の強大なモンスター。魔王軍が尖兵の一体であり、幹部に準じる程の力を持つ存在。

 

巫女の躯に、3対6本の腕、下半身は脚では無く大蛇のソレ。おそらくはラミアの突然変異体と目されていたが、先だって相対した日本人転生者によって『姦姦蛇螺』と名付けられた化生。

 

そんな化物がアクセルの街を目指して進撃を開始した。

 

しかし、その姦姦蛇螺の目的は黒き灼熱と寄り添う青藍(ゴジラ サキエル)では無い。そちらについては既に怪獣達が赴いている。

 

新たに予見された水の恒星(アクア)を観測する為である。

 

 

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 当たり前の話ではあるが、冒険者とは命の保証というモノが全く無い職業である。朝に討伐系のクエストを受けて、そのまま姿を見る事が出来なくなる。そのような出来事は日常的にありふれている。例えばクエストを達成した帰りに、消耗した状態で運悪く手強いモンスターに出くわしたり。或いはダンジョンの探索時に運良くモンスターとエンカウントせずに済んだと思いきや、不運にも悪辣なトラップに嵌りパーティーごと全滅したり。

 

そして、未練を残したまま死んだ所為で成仏できずにアンデッドに為り果てる事だってある。かつて討伐すべき存在であったモンスターに為って、かつて仲間や同業者であった者達に斃されるのだ。

 

彼等のように。

 

ゴジラとサキエルがこの世界に来て最初に受けたクエスト。その折に見え、斃したガバラが弄び嬲り殺した冒険者達の為れ果て。

 

怨嗟の呻きを上げ、生者に群がり、貪り喰らう。グールと呼ばれる中級のアンデッドモンスター。

 

無論の事、彼等とて好きでその様なモノになった訳では無い。この街に近付きつつある最上級のアンデッドにして魔王軍幹部のベルディアが発する瘴気に当てられた結果、そうなってしまったのである。

 

彼等は大天使の聖気に引き寄せられて、我先にと群がってくる。己こそを天に召させて貰いたいが故に。

 

その無様な有様を晒す亡者共にバーニングゴジラは一切の容赦なく熱線を放つ。

 

その熱線は今までのものとは異なり、着弾と共に大爆発を引き起こした。

 

 

 

バースト熱線。ただしこの業には幾つかの欠点がある。

 

一つ目は、普段以上のチャージを必要とする為、隙が大きい事。

 

二つ目は、消耗が激しい事。

 

そして三つ目が、小規模の核爆発を引き起こしている訳なのだから、周囲一帯が放射能で汚染されてしまうという事。普段は周囲の拡散された余剰放射能を即座に吸収しているから、結果として汚染も最小限に留められている。だがバースト熱線の場合、放射能が空高くまで舞い上がってしまうのだ。

 

この世界の多くの生物にとってもまた放射能は有害だ。モンスターであれば、持ち前の生命力故に多少は耐性がある。だが大多数の一般人はそうでは無い。多用すれば甚大な被害を及ぼすのは明白。

 

しかし、バーニングゴジラにとってはその程度の事、構うものでは無い。

 

人間は極僅かな例外を除いて、状況次第で善にも悪にもなる畜生どもだ。衣食が足りなきゃ礼儀も仁義も消えて失せる、所詮は少しばかり賢しいだけの獣に過ぎない。恨みは忘れない癖に、受けた恩は忘れる。自分の損害になるなら、全てを犠牲にしてでも免れようとする。面倒でなければ下らぬ善行を施す癖に、面倒であれば巨悪を見逃すことも厭わない。我欲に駆られて行動し、失敗すれば自分以外の何かが悪いと曰う。少なくともバーニングゴジラにとって人類とはそう言う種族である。

 

鎮静状態であれば怒りと恨みを押さえ込み、無視に務める事が出来ている。だが其れはあくまで棚上げしているだけであり、消えて無くなった訳では無いのだ。

 

普段大人しくしているのは、ジュニアを生き返らせてくれたサキエルとアクアからの依頼だからであり、間違っても人間に対する気遣いなどでは無い。結局のところ、ゴジラと人類が解り合い友誼を結ぶなど不可能なのだ。

 

理解していたつもりだったが、いつの間にか忘れかけていたその現実を改めて突きつけられたサキエルは暫くの間、頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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