ガンダムビルドファイターズ 闘いは数より質   作:タロウMK-Ⅱ

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 主役機になるのはデスティニーガンダムです。


ガンプラトレースシステム

 ガンプラバトル、始めは一対一のバトルから始まった。次第に競技として盛り上げるためにチーム戦を導入した。

 そして今、ガンプラバトルは新境地の開拓に乗り出していた。

 新しいバトルシステム。

 新しい戦場。

 全てはガンプラとガンプラバトルの未来のために。

 

 

 月面基地をイメージしたバトルフィールド。

 その中央にはアロンダイトを肩に担いだデスティニーガンダム。周囲には切り刻まれた敵機の残骸が漂っている。色とりどりの残骸からして5,6体分はありそうだ。

《次の戦闘では武装をパルマフォキーナに限定する》

 男性の声でアナウンスが流れた。同時にずんぐりとした丸みを帯びた敵機が5体横一列に出現する。バトルシステムの作り出した仮想敵機モック。

 

「光の翼とビームシールドも使用禁止ですか?」

 デスティニーを操るファイターが質問する。彼の両手には球状のコンソールが握られているが、それだけではない。両肘、両膝、腰、首に光の輪が結ばれている。

《禁止。水倉なら余裕でこなせるレベルだ》

「言ってくれますね。そんな風に煽てられたら1機につきパルマ一回で勝負しますよ」

《そこまでのハードルは求めていないが、やってみたまえ》

 デスティニーはアロンダイトと長距離ビーム砲を無造作に投げ捨て、ファイティングポーズをとる。その姿はファイターである水倉義晴(みずくらよしはる)とまったく同じ姿勢である。

 

 水倉は大学を卒業たばかりであるが、ガンプラの操縦技術を買われてヤジマ商事のテストファイターとして活動している。彼にとっては始めての大仕事である。

 

《試合開始!》

 5機のモックが一斉にビームライフルを構える。デスティニーに照準を合わせビームは放つ。

 水倉は手元のコンソールを操作せず体を捻る。するとデスティニーも同じように体を捻り攻撃を回避する。

 

 『ガンプラトレースシステム』アナウンスを流していた男、紅石徹(あかいしとおる)が担当している新操作システムだ。『機動武闘伝Gガンダム』をモチーフにしており、ファイターの体の動きをガンプラに投影することでより直感的で複雑な動作をこなす事を目的としている。

 ガンプラトレースシステムを扱いこなすためにガンプラの特性・癖を今まで以上に熟知しなければならない。また自分自身の体で操作するためそれ相応の運動神経も要求されるハイレベルな操作システムなのだ。

 

 モック達は扇形に広がりデスティニーに集中砲火を浴びせる。

「単調な攻撃だ」

 水倉はそう呟き全弾かわす。モックのレベルが低いのか敵機の中央部ばかり狙って撃ち、相手の動きを牽制する攻撃や移動先を予測した攻撃をしてこない。

 

 水倉は手始めに5体のうち真ん中のモックにターゲットを絞る。

 あっという間モックに接近したデスティニーは関節技を決めるように絡みつく。左右4体のモックは味方機がいようがお構いなしにビームライフルを撃つ。

「俺の撃墜が優先かよ!」

 水倉は掴んでいるモックを盾にして身を守る。

《肉を切らせて骨を断つ。誰もが仲間思いとは限らんよ》

「普通のCPUは味方ごと撃ってきませんよ!」

 水倉は悪態をつきながらも、攻撃を避けつつ残り4体のモックに接近する。

 

 

 紅石はバトルルームとは別の部屋でバトルを観戦していた。三十代後半に差し掛かる彼だがバトルそのものにはあまり興味がない。紅石が興味を示しているのは新しい技術、自分が新しいシステムを創り出す事である。

 紅石の企画したガンプラトレースシステムに要求されるものは操縦技術と運動神経に優れていること。水倉はその2つを兼ね備えており、ガンプラトレースシステムをえらく気に入った。

 

 しかし、社内から「使用者が限定されて大衆向けではない」「もっと子供も遊びやすい操作にしてくれ」などの非難ばかり。

紅石と水倉もガンプラトレースシステムの扱い辛さを重々理解している。理解しているにも関わらず開発を止めないのは彼らの信念である。上の者や世間から酷評されても、いざ発表・発売したらヒットした商品や映画だってある。あるいは時代が追いつかないだけで後の世で再評価されることだってある。

 ガンプラトレースシステムが評価されることを彼等は信じている。

 

 

 デスティニーが立て続けに敵機を撃破する。4体とも胸のど真ん中からパルマフォキーナで爆発させられている。

「1匹だけ誤射ですが、有言実行でいいですか」

《目的は十二分に達成できている。素晴らしい結果だ》

 

 バトルフィールドが消滅していき仮想敵のモックの残骸も一緒に消える。筐体の上にはデスティニーガンダムだけが残る。

 

 水倉がデスティニーを手に取ると紅石が部屋にやってきた。

「そろそろ対人戦もやりたいですね」

「設計上3対3のバトルまで対応しているが実際にテストしてみなければな。適当にファイターを見繕ってくるか」

「とりあえず、頭数だけでも揃えましょう」

「まったく、大規模バトル班から5人借りてくるか。水倉はそれまで食堂で休んでいたまえ」

 大規模バトル班とはガンプラトレースシステムとは別に動いている企画である。大規模と名乗るだけあり目標は100人によるバトルだそうだ。

 

「了解です。やっぱトレースシステムは体力使いますね」

「格闘技に近いからな。体力回復のための休憩が増えるのも課題か」

ガンプラトレースシステムはまだまだテスト段階であり、今後クリアする課題もどっさりある。

 

 水倉は食堂の端っこでスポーツドリンクを飲んでいた。人見知りや友達がいない訳ではない。社員の半分以上が大規模バトル班であり、ガンプラトレースシステムのメンバーは殆どいないのだ。

 同じヤジマ商事の社員なので敵対とは言いがたいが、仲良くともいえない状況だ。紅石は自己中心的なところがあるので他の人から煙たがれることもあるが。

 

「おっ水倉君こんな所にいたのか? そちらの班は上手くいってるかい」

佐伯(さえき)さんですか。まぁ、人数不足が否めないです。そもそもガンプラトレースシステムに前向きなのが俺と紅石さんぐらいですから」

 佐伯は紅石と同期の男性であり、大規模バトル班でありながガンプラトレースシステムにも多少興味を持っている。始めは理解者の振りをして大規模バトル班へ勧誘することが目的と疑っていたが、佐伯はその様な事を口にしたことはない。

 

「そりゃ勝ち馬に乗ろうと思ったら大規模バトル班に流れるのが自然だよ。多くのガンプラの行動を処理できるように容量を増やせばいいんだから。まっ、君たちはそれが不服のようだが」

 不服、一言で表せばそうなる。

「大勢でゴチャゴチャ戦うより、一対一の真剣勝負のほうが好きなんですよ。格闘技だって素人の喧嘩じゃ見世物になりませんよ。鍛え抜かれたプロが試合するから面白いんです」

 ガンプラバトルと格闘技を同じように考える人は少ないかもしれないが、闘う姿を見せる点ではどのような競技も同じである。

「君達の意見も十分理解している。ただ、ガンダムシリーズの要塞、拠点の攻防戦を再現するには今まで以上の人数によるバトルが不可欠なんだ」

「ガンダムシリーズあってのガンプラですからね」

「それとだ、近々大規模バトルシステムのテスト運用が決定されつつある。君達も何らかの実績を出さないと潰されてしまうかもしれない」

「予定より速いですね。紅石さんにも伝えておきます」

 水倉の返事を聞くと佐伯はその場から離れていった。

 

 大きく息を吸って溜息を吐く。水倉と紅石が大規模バトルに納得できないもう1つの理由、それは大規模バトルが選ばれる為の社内競争だからだ。過程と結論が反転しているのだ。

決して企画は大規模バトルとガンプラトレースシステムの2つだけではない。カプセル型の媒体に入りよりコックピット感を出す企画、バトルシステムの省エネ化、さらには初めから不可能だと分かりながら企画された携帯型バトルシステム等。

 様々な企画がありその中から大規模バトルが選ばれるのではなく、いかに大規模バトルが優れているか面白いかを示すための踏み台にされる。

 これが出来レースであることを知りながらも開発を投げ出さないのは、ガンプラトレースシステムが革新的な技術になると信じているからだ。

 

 

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