ガンダムビルドファイターズ 闘いは数より質   作:タロウMK-Ⅱ

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 今回は少し短めです。


己の信念

 予算が無い、人員が居ない、誰からも期待されない。

 自分が信じるものは他人から鼻で笑われる。

 俺達は負ける為に用意された存在。

 

 消されてなるものか。

 敗者になろうとも積み上げてきた信念がある。

 惨めに生きていく位なら、華々しく散ってやる。

 

 

 ガンプラトレースシステムの製作者である紅石は声を上げて笑った。火力、防御機能、機動性、どれもシステムに干渉して得た機能だ。それだけの能力得たジ・Oが今まさにやられようとしている。

 

 水倉と一心同体に成ったデスティニーガンダムは左手でジ・Oの顔面をガッチリと押さえパルマフォキーナで貫く。破損した頭部の付け根に右手を叩きつける。

 デスティニーの掌から光が瞬く。次の瞬間、ジ・Oの胴体が膨れ上がり大爆発を引き起こす。爆発はデスティニーを飲み込みさらに拡がっていく。

「あっはっはっはぁぁ・・・こいつは予想外だ! 不正行為に不正行為を重ねた結果大爆発するとは。このバトルデータじっくり解析せねば」

 紅石は手を叩いて笑う。

 

「笑い事じゃないだろ! おかげで試合はドローじゃないか!」

「そう怒るな、これは水倉の勝利だ。俺が保障する」

 水倉のムスッとした表情は直らない。

 

「今回のバトルデータ解析よりも、大規模バトル班のテストに同行させて頂けるように頭下げに行くべきじゃないですか」

「そのためにはガンプラトレースシステムの資料を纏めて提出しなければな。そもそも午後10時過ぎてるから社員など居ないだろうが」

 水倉はバトルに何度も挑むうちに時間感覚を忘れていた。

 

「そんじゃ事務作業だ。不眠不休で明日の朝までに仕上げるぞ」

「あんた労働基準法で訴えっぞ!!」

 全身を使った運動の後の不眠不休の事務作業。どれだけ文句を垂れようとも最後まで付き合ってしまう、水倉義晴とはそういう人物なのだ。

 

 

 翌日、目の下にクマができやつれた表情で紅石は佐伯にガンプラトレースシステムの資料を渡した。

 

「大規模バトルのテスト運用会に乱入とは君達らしいね。しかしね熱意は伝わるが私は責任者じゃないんだが」

「お前経由ならどうにか成るだろ。どうせ俺が直接渡しに行ったら門前払いだ」

「精々前座かエキシビションぐらいだよ」

「大規模バトルだって正式発表じゃないだろ。かぁぁぁ、どうして中間発表でこんなに差が付くんだよ」

 出来レースだとしても途中経過ぐらいは平等にやってほしものだ。紅石は改めて自分の開発が見向きもされていないことを思い知る。

 

「せめて対戦ぐらいさせてくれよ。こっちにはガンプラトレースシステムを使いこなすファイターが居るんだ。大規模バトルなんかより高度で観客を沸かせるバトルが出来るって示せるんだよ」

「高度なバトルねぇ、水倉君も似たような事言ってたな。鍛え抜いたプロが闘うから試合は面白いとか」

「流石は俺の一番部下だ。理解してんな」

 紅石はニヤニヤとした笑みを浮かべたがクマのせいで不気味にしか見えない。

 

「でも、正直バトルは無理だろうね」

 佐伯はきっぱりと言い切った。

 

「何しろ大規模バトルは100人近くの情報を捌くことになる。その為に従来よりも操作システムを簡略してるんだ。君達の人体の動きをするガンプラと闘えば勝てるはずない」

「はぁ!? ふざけんなよ! それじゃあバージョンアップに成ってないだろ!」

 操作システムの簡略化。それはガンプラバトルが流行する前のTVゲームに逆戻りするようなものだ。

 

「上層部はね『誰もが楽しめる・扱いやすい』を目指しているんだ。初心者にもやりやすいように。もちろん今のバトルシステムが撤廃されるわけじゃない、住み分けはされる」

 『誰もが楽しめる・扱いやすい』この壁とガンプラトレースシステム班は幾度と無くぶつかってきた。紅石は今まで自分を認めたくない言い訳程度に思っていた。本当に操作系を簡略化するとは想像もしなかった。

 

「畜生! 直接バトルして負ければ印象が悪くなる、だからバトルはしないって事か」

「そんな事より、腕利きのファイターを借りてガンプラトレースシステム同士でバトルすればいいだろ」

「ふん、ポッと出の奴が水倉の相手になる訳ないだろ。ガンプラトレースシステムを扱いきれない奴とバトルしても面白くない」

 時間をかけて育成すれば水倉レベルのファイターは用意できる。だが、その時間も無ければテストに協力する人材も居ない。

 

 紅石は思考を巡らせる。どうすれば『魅せるバトル』をこの短期間で成せるか。

「・・・・・・・そうだ。俺達が不利ならいいんだろ」

「不利? いやいや5対1でもそっちの圧勝だよ」

 バトルに使われるガンプラは支給品でありカスタマイズは不能。ファイターの技量で勝敗は決する。佐伯は5人がかかりでも負けると踏んだのだ。

 

「いいや、その10倍で来い。水倉のデスティニーで50機相手する。これなら誰が観ても俺達が不利だ」

「確かにその条件なら上も納得するかもしれない。わざわざ当て馬になりに来たと思うだろうさ」

「じゃあその条件で伝えてくれ」

「いいのかい、そんな負け戦で」

「俺達の力が見せ付けられればそれでいい。もっとも50機撃墜しちまうかもな」

 

 

 2日後、佐伯の交渉の結果によりガンプラトレースシステム班はデモンストレーションの一部で出席が許された。

 

 

「はぁ!? 50人と同時にバトル!」

 ガンプラトレースシステムのバトルルームに呼び出された水倉はあまりにも唐突な出来事に驚いた。

 

「なぁに恐れるな、プラフスキー粒子供給と武装補給用のガンプラで俺も参加する。支給品のガンプラだと50体を相手にするのは武装とエネルギー面両方で不可能だからな」

 紅石はすでに勝ち誇ったように上機嫌だった。

 

「だとしても50対2じゃないですか。しかも紅石さんのガンプラ先程説明だと戦闘力ないじゃないですか」

「まぁな実質お前1人と言っても過言じゃない。大規模バトル班の奴等はバトルに負ける姿を晒したくないからな。だからこそ俺はこの不利なバトルを要求した」

 

「バトルする為とはいえ、自分から負け勝負を仕掛けますか」

「水倉どうやら勘違いしていないか? 50体全てを撃墜するに越したことはない。だが肝心なのは魅せることだ。俺達の開発したシステムがどれだけ凄いかを証明出来ればいい」

 勝敗ではなく動いている姿を披露する。少しでも自分達の知名度を広めるいい機会だ。

 

 最低でも半分の25体程は撃墜できれば話題性も出ると紅石は押さえている。

「テスト運用の会場はヤジマスタジアム。中高生の全国大会が開かれるぐらい立派な施設だ。魅せ付けるには格好の場所だ」

 さらにその昔は世界大会を開催した土地でもあり、ガンプラバトルの聖地ともいえる。

 

 そこで新しいガンプラバトルシステムが人目に触れる。

 

 時代と人が選ぶシステムはどちらか?

 

 

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