ガンダムビルドファイターズ 闘いは数より質 作:タロウMK-Ⅱ
新たなガンプラバトルの試作品の発表会が行われるヤジマスタジアムには多くの報道陣に関連企業が押し寄せる。
発表されるシステムは完成品ではなく、まだ開発途中であるにもかかわらず会場は賑わっている。スタジアムの中央には50台以上のバトルシステムの筐体が引っ付いている。
薄暗い控え室で水倉は極度の緊張により心臓の鼓動が自分でも感じられるほど高ぶっていた。行きかうスタッフは大規模バトル班の人ばかり。事実ガンプラトレースシステム班は水倉と紅石の2名である。
「俺達こんなにも速く準備終わって良かったんでしょうか?」
「良いも何も俺達のバトルシステムを端っこにセットする以外やることないだろ」
紅石は冷静であり緊張している様子は微塵もない。
「発表会の後、俺達も含め他の班どうなっちゃうのでしょうか。体裁の為に建てられた班だから解体されるんでしょうか」
「さあな。観客の心を掴むことが出来る俺達は生き残れるだろうがな」
「余裕ですね。それもそうですよね、俺達はガンプラトレースシステムを魅せるために来たんですから」
紅石の強気な態度が感染してきたと水倉も自覚している。自信の無い人間は紅石の下で働くことなど出来ないだろう。
自分達の技術は革新的だと信じているからこの会場までやって来たのだ。
今更臆病風に吹かれる訳無い。
「さてさて、開演まで残り3分だ。俺達の出番は何時ごろだ」
「初めの挨拶があり、新バトルシステムの概要説明、その後のデモンストレーションです」
水倉は一般配布用のパンフレットを見ながら答えた。
「意外と早そうだな」
「その代わり、デモンストレーションの後暇ですけどね」
閉会式まで役割がない。デモンストレーションの後直ぐに帰りたいが自分達のバトルシステムは大規模バトルの物と連結しているため取り外せない。片付けまで控え室で待機である。
新システム発表会は予定どおりに開会された。
まだシステムが稼動していないというのに観客席中からカメラのフラッシュがたかれる。バチバチとシャッター音があちらこちらで鳴り止まない。
「おいおい、司会のおっさんをあんなに撮影して楽しいのか」
「ベストショットを取りたいだけですよ、おっさんフェチで撮影している訳じゃありまんから」
水倉と紅石は舞台裏からステージ上と観客席を除き見ていた。
大規模バトル班の開発者等がステージ上に登り軽い挨拶と意気込みを語り出す。
「糞、俺にもステージで色々と喋らせろよ。ガンプラトレースシステムだって出るんだぞ」
紅石はブツブツと文句をたらす。
水倉と紅石が出演できるのはバトルの時だけ。どちらも壇上で話すことは許されていない。つまりガンプラトレースシステムも大規模バトル班の人により解説されてしまう。ろくに理解していない人がたどたどしく説明するか、欠点ばかりを強調して失敗作のように扱われるのが落ちだ。
「大規模バトルの操作系の簡略化にブーイングでも起きればいいものだが」
「あれは許せない人多いと思いますよ。安易な道ばかり選ぶ衰退するのが世の常ですからね」
とは言え、容量減らすためとは感づかれないよう言葉巧みに説明するのだろう。
ステージ上で話している開発人も大規模バトルの使用を始める。
「我々の開発したバトルシステムは誰もが手軽にガンプラバトルに参加することが出来て、100人での大乱戦する可能にするものです! ガンダムシリーズには欠かせない拠点防衛戦に艦対戦すら再現するのです! この映像をご覧ください!!」
モニターには大規模バトル班が撮影したガンプラバトルの映像が流れる。4枚のひし形が四葉のクローバーの様に合わさった宇宙要塞リーブラとそれを護衛する機体の群れ。
反対側にはピースミリオンを護衛する機体が集まっている。
「このバトルはガンダムWのリーブラ攻防戦をアレンジした内容です。ピースミリオンチームはピースミリオンをリーブラに体当たりさせて破壊できれば勝利です。反対にリーブラチームはリーブラを死守できれば勝利です。どちらも戦艦や要塞に搭載されているギミックを生かして戦う必要があります」
両軍のガンプラがバトルフィール中央で激突する。リーブラチームは7体ほど前線には赴かずその場からリーブラに据え置きの砲台に指示をおくる。
「このようにセンサー類が強化されたガンプラなら司令塔としてフィールド上のギミックを巧みに操る戦術が可能です」
その後も、ギミックを生かした攻撃、バトル中にガンプラの修理等の解説で会場を盛り上げていく。
いよいよ解説は操作システムに差し掛かった。
「操作システムは従来のものよりシンプルに仕上がっております。これはマニュアル車からオートマ車に変更したようなものであります。大規模バトルは個人の操作テクニックより戦略・戦術を重視したバトルです。知略がものをいう・・・・・・・」
これがプレゼンテーション能力なのか、初心者向け・誰にでも等という言葉を選ばずマニュアル車からオートマ車へ。説明はまだ続いていたが水倉は思わず感心した。
すると、ドンと紅石に肘打ちをされた。
「口八丁に騙されるな。頷いていたぞ」
「すみません。ちょっと乗せられてました」
「まったく。それよりガンプラトレースシステムの解説始まるぞ」
良く言われないのはわかっているが、逆にどう表現されるか聞いてやろうと開き直るしかなかった。
「続きましてデモンストレーションに入る予定ですが、今回は特別にもう1つの新バトルシステムの試作版に軽く触れたいと思います」
大規模バトルと違いモニターに映像は流れない。
「ガンプラトレースシステム。つまりファイターの動きをガンプラに投影するシステムです。ガンダムに詳しい人はGガンダムを思い浮かべていただければ結構です。しかし、このシステムは人の動きを反映するためかなりの体力と運動神経を要求され・・・・・・」
知っていた事とはいえ気分を害する。観客はこの説明を自嘲しているだけと捉えるだろう。大規模バトルを引き立たせるために戦略と気付く人はどれ位いるのだろうか?
「笑いのネタにされるのは尺に触るな。水倉、どうしてやろうか?」
「バトルで俺達の凄さを示してやればいいんですよ」
緊張していた水倉も、冷静だった紅石も闘いの前から高揚感が押さえられなくなっていた。
「激励はもういらないようだな。俺の信頼を裏切るなよ」
「貴方も人を信頼するんですねちょっと意外です」
「お前から見て人間不信の奴に信じられたんだ、それだけ俺達が積み貸せて来たものがあるってことだ」
「ははっ、紅石さんにそこまで言われたら予想以上の結果を出してやりますよ」
水倉と紅石は互いのガンプラであるデスティニーガンダムとジ・Oをコツンとぶつけた。
後半に続きます。