過去のことは流し見で結構でございますよ
俺がオッサンのところで稽古を受け始めたのは小学校4年生からだ。
そして俺たちの通ってた小学校は4年生になると毎週月曜日と金曜日にクラブ活動があった。
ま、俺はどうにも面白さを見いだせず最終的には所属だけとなったが、俺のように所属だけして参加しないやつは一定数存在する。他の幼馴染は真面目にクラブ活動に参加していたため月、金は幼馴染たちとも完全に別行動になっていた。
そして水曜だけはオッサンが仕事でいなかったため、結果火曜日と木曜日に幼馴染たちとオッサンのところに行き稽古をしていたというわけだ。
ちなみに当時は何の仕事をしているか知らなかったが、どうやらどっかの団体の特別顧問をやっていたようで、その辺はさすが元議員といったところだろう。
さて、こんな感じでクラブ活動に参加するのをやめた俺は、月・金は一人でオッサンのところに行くようになった。俺が他の4人と比べてずば抜けて強いのはそのため。他の奴らの2倍稽古をしていたから当然といえよう。
「オッサン、来たよ」
「おお奏也か。おめえクラブ活動はどうした?」
「つまんないからやめた。オッサンのところで稽古してるほうが有意義だよ」
「おー言ってくれるねえ。いいだろう」
「おじいちゃん、その人誰?」
「あ、美咲すまん。こいつは奏也っていうんだ。お前の弟弟子ってとこだな」
「どうも」
「どうも」
そこにいたのがオッサンの孫らしいミサキという少女だった。
無気力な女の子だったが顔は整っている。
「・・・そうだな長らく俺だけが稽古相手だったし奏也、美咲、今日からお前ら二人で稽古してみるか?」
ミサキは俺たちと小学校は異なるが、俺たちとは逆に月・金とオッサンのところに通って鍛錬をしていたらしい。長らく稽古相手がオッサンしかいなかったため月・金通いがデフォになった俺を稽古相手に抜擢したと。
ちなみにミサキの存在は幼馴染たちには言わなかった。理由は単純、なんとなくこっ恥ずかしかったからっていうガキらしい理由だ。
そんな調子で稽古を月・金はミサキと火・木は幼馴染たちとおっさんのところで稽古していた。
つまりミサキは俺にとっては同門で姉弟子、他の幼馴染にとっては同門姉弟子なのに存在を知らなかったということになる。
まあ正式に道場みたいな形で開いていたわけでもないしな。
※
「以上が回想である。みんな分かったかな?」
「奏也くん、誰に向けて言ってんの?」
「ま、多少はね?」
「会話になってない・・・ならなくない?」
「そういや美咲、中学に上がると同時にこの町から出て行ったんじゃなかったっけ?」
「まあね。でも自分なりに稽古は続けてたよー。部活が終わったあとの夜とか走ってこっちの町まで着たりとかも実はしてた」
あれ、聞いた引っ越し先、電車で1時間くらいかかるんじゃなかったっけ?
部活終わりに走るとか軽く補導時間圏内なんですが大丈夫なんですかね・・・?
なんかこう、俺に知り合いって色々おかしい(確信)
「それでまた高校がこっちにしたから戻ってきただけだよ。そのうち会うかなーと思ってたけどまさかこんなところで再会するとはね」
「せっかく帰ってきのにそのうち会えればいいやでよかったのか・・・悲しいなあ」
「別に感動的な別れをしたわけでもないしそんなものでしょ」
「お、そうだな(適当)」
「んーそんなチャラチャラしてたっけ奏也くん」
「人ってのは時代の流れで変わるんだよ」
「そう・・・(無関心)」
自分から聞いておいてなんて奴だ・・・
「あのー・・・そろそろ喋ってもいいですか?」
「あ、花音さんごめんなさい!おいてけぼりにしちゃって・・・」
そこで声を出したのは松原さん。完全に美咲と二人で話してた。すまんな。
「大丈夫だよ。えっと・・・美咲ちゃんと神剣さんはお知り合いなんですか?」
「こいつのじいちゃんに小さいころ遊んでもらっててな。一応幼馴染になるのか?俺たち?」
「そだねー。奏也くんは完ッッッ全に私のこと忘れてたけど」
「ね、根に持つんじゃありませんわよみさきち・・・・」
「そのあだ名やめんか・・・まあ私も結構雰囲気変わったらしいし、私も最初は奏也くんわかんなかったからおあいこってことで」
「ふふっ、美咲ちゃん楽しそう!仲、よかったんだね!」
松原さんは嬉しそうにそんなことをいう。
んー確かに思い返してみても美咲って変態幼馴染軍団と違って常識人だし気が合ったのも覚えてる。
え?紗夜は常識人じゃないかって?カタブツの皮を被った変態は常識人とはいいません。当たり前だよなあ?
「美咲、さっき見てたけどめっちゃ強いよな・・・やっぱあのオッサンって実はかなりすごい人なんじゃないか?教えを受けた俺たち全員メチャクチャ強いし」
「んーどうだろね。・・・ていうか全員って?・・・あ、奏也くんうしろ」
そういう美咲。とりあえず俺は後ろからかすかに殺気が漂ってくるを感知した。
とりあえず適当にパンチを放つと慣れた感触があった。
「ぎゃああああああああごあああああああああ!!!」ジタバタ
「あ、すまん。みてなかったから手加減できんかった・・・・」
その拳は意識を取り戻した男のうちの一人の顔面に炸裂し、鼻が折れたのか鼻血をスープカレーのごとく流しながらのたうち回る男がいた。
そんな光景をみて松原さんはうわっ・・・この人ヤバい人だ・・・みたいな顔をする。まあ広義の意味ではヤバい人かもしれないが・・・
「ってこれは・・・」
吹き飛んだ男の懐から何かが出てきた。
「おいおいマジかよ・・・メリケン粉ならたこ焼きパーティでもやるのかと思うがこいつあ・・・」
「うわーやばいもん見つけちゃってんじゃん・・・めんどくさ」
「え?え?」
その懐から飛び出した白い粉の正体を察した俺と美咲。松原さんは何がなんだかわからない状態だ。
「んー・・・とりあえず見過ごせねえわな。とりあえず俺は警察呼んだり色々するから、松原さんと美咲はもう帰れ。変な噂たったらめんどくさいだろ?」
「んー・・・それもそうだね。花音さん帰りましょうか。ここで見たことは全部忘れて」
「え・・・?うん、そうだよね、足を踏み入れちゃいけない世界ってあるもんね」
「理解が早くて助かるよ。まあこの後は警察に任せるつもりだから俺の出番もそうないけどな」
「すまん美咲、松原さんをちゃんと送ってくれ」
「はいはい。じゃ、またね奏也くん」
そんなこんなでその場を後にする美咲と松原さん。
さて、俺も【仕事】しますかね。
「えっと・・・こいつの財布は・・・あった。えっと免許証は・・・」
俺はその男の免許を抜き取り住所を記録した。
その過程で懐から結構な量の粉がパケに小分けされて出てきた。
うーん、これは自分で使うだけじゃねえなあ。
とりあえず俺はそしてその場はそれで終わりにした。多分こいつらは運び屋だろう。こいつらを今警察に突き出してもトカゲのしっぽ切りでおしまいだ。
ならばこいつらに制裁を加えて運び先や仕入れ元を吐かせたほうが社会のためになるだろう。
そしてそいつらが目を覚ますのを見届け、アパートの一室に入っていくのを見た俺は馬のマスクを被った。よくドン●で売ってるやたらリアルな奴だ。
ミッシェルのお面は流通していたとはいえこの商店街周辺だけだったし、今度は流通品。このマスクのせいで足が付くことはないだろう。
ちなみに結構な遅い時間になったし、今から他の幼馴染を呼ぶのも骨が折れるし今夜は俺だけだ。そして部屋の前。うん、これはモニターホンではないな。
ピンポーン
「はーい」
「あーすみません宅配便ですー!」
ガチャッ
「お届けに上がったのは地獄への片道切符だけどな」
「なんだこのウマ!?ぎゃあ!」
「どうした!?」
「うわ!馬!?」
手始めに出てきた奴をぶん殴ると残りの二人も奥から出てきた。
「おいおい騒ぐんじゃねえよ。おめえらだってヤバーイ粉持ってんだろ?」
「なんでそれを!?」
「まま、そう焦んないで」
某神のような口調でいさめる俺。大声出されたら困るのは間違いなくこいつらのほうだし、案の定「確かに今はやべえ・・・」って声が聞こえる。
「とりあえずヨ、選択肢やるよ。俺の質問に余すことなく全部答えるか、切符を切って地獄へ行くか」
「てんめー・・・だまってりゃ調子に乗りやがって」
「やっちゃうよ・・・?やっちゃうよ・・・?」
「やっぱそうなっちゃうのね・・・」
「てめえをぶっ殺せば全部終わりなんだよ!オラァ」
※
チリチリ・・・
「ぎゃあああ熱い熱い!」
「うーん、なるほど。髪の毛ってこんな風に燃えるんだあ。すっごーい!」
「やめろ!俺の!俺の髪が!」
「髪なんて必要ねんだよ!」
俺は雑魚二人は即座に眠らせてリーダーと思われる男から優しく(意味深)話を聞いていた。まったくガスコンロで髪の毛を燃やしてるだけなのに大げさだぜ。
「もう、ヤメテクレ・・・」
「んじゃ俺の言うこと聞くか?質問に答えるか?」
「いうこと・・・いうこと聞くから・・・!」
「しゃあねえな」
そう言って力を緩め、ガスコンロから頭を離してやる。
しかし奴がとった行動はとんでもないものであった。
「誰か助けて!」
「あ゛ーあ゛ー!?ざけんじゃねえぞオオイ!誰が大声出していいって言った!?」
なんとそいつはすぐさま身を翻し逃げようとした。
俺はすぐさま首根っこを掴み引き寄せる。
「ウソツキの小学生みたいなマネしやがって・・・怒らせちゃったねー俺のこと・・・お馬さんのこと本気で怒らせちゃったねー・・・・」
「ひ、ひいいいいい」
その後、どうなったかは想像にお任せしよう。
紆余曲折あり、俺は粉の受け渡しリストを入手した。
ちなみに粉は全部トイレに流しておいた。救急車と警察呼んでやったしまあなんとかなるでしょ。
そこには見慣れた文字・・・羽丘女子学園のある生徒の名前が書かれていた。
「うーん、女子高生にシャブ売りつけるとは世の中腐ってやがるなあ。さあて明日になったら幼馴染たちに召集かけなきゃなー」
そんなことを考えながら俺は帰宅したのだ。
「しかしこのマスクメチャクチャゴムくせえな・・・」
※
翌日、瀬田薫はいつも通り女子生徒から黄色い声援をかけられていた。
「きゃー!薫さまー!」
「はっはっは!子猫ちゃんたち。そんなに名前を連呼されると照れるよ」
「あのっ!薫様!」
「おや?どうしたんだい?」
ある程度の人が掃けたあと一人の女子生徒が薫に向かって声をかけてたのだ。
「突然すみません、実は薫様に個人的に相談したいことがあって・・・お時間はありますか?」
「ああ、今日は大丈夫だよ。それで、どこで話そうかな?」
「あ、ありがとうございます・・・こちらです」
※
あれ?あれは薫さんと同じ学校に人かな?
私は歩いていると薫さんを見つけた。真面目そうな人と一緒に歩いている。
しかしその向かう方向、明らかに人通りの少ない方向だ。私は気づかれないように後をつけるが薫さんもなにか不穏な空気を感じているようだ。
「なあ子猫ちゃん、その喫茶店というのは本当にこっちなのかい?こっちのほうはあまり・・・」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい薫様・・・!」
「え?いったい何を言っているんだい?」
「よしよし、よく連れてきたな!これは約束のもんだ」
「あ、ありがとう・・・ございます」
突然男が4人現れた。風貌はホームレスのようだが私にはわかる。雰囲気が違う、明らかにカタギの人じゃない。そしてそのうちの一人がその真面目そうな子に白い粉の入ったパケを渡したのが見えた。
「き、キミ!どういうことなんだい・・・!それにそれは・・・!そんなものに手を出しちゃいけない!」
「私にはこれしかないんです!これがないと生きていけないんです・・・!何でも持ってる薫様にはわからないでしょうね・・・」
「はいはい、お話はそこまでだぜ。お前にゃ恨みはないけどよ。俺たちも仕事だからさ、おとなしく捕まってくれや」
「私をどうするつもりだ・・・!?」
「シャブ打ってちょーっと閉じ込めるだけだ。おい連れてけ」
「くっ・・・!やめてくれええええ!」
いけないなこれは。んーでもあの人たちヤバい筋の人だろうし・・・
4人くらいなら勝てそうだけど素顔をさらしていくわけには・・・・
「お困りかな?」
「あれ?奥沢さんだ」
「はっ・・・!?えっ・・・!?・・・・変態だ・・・!」
「誰が変態だ!」
「そうだよ、変態なのはこっちの人だけ。私は普通」
「お前が普通とか冗談はよしてくれ」
現れたのは馬のマスクを被った二人の男女だ。
変態。いやこれ変態でしょ・・・・
でもその声の主は奏也くんと花園さんだった。
「そんなもん被って何してるの奏也くん、花園さん・・・」
「しらんなあ・・・俺たちは通りすがりの悪党狩りだ。義によって助太刀致す!」
「そんな大好き侍みたいにいわれても奏也くんにしか聞こえない・・・」
「奥沢さん、これ」
花園さん(?)から渡されたのはなんと二人とは色違いの馬マスク。
「いやー本当はもう一人呼んでたんだが急用でな。マスク余ったし混ざってくか?美咲」
「・・・・そうだね」
私は薫さんにあんなことをするのが許せなかった。
そのせいかな。似合いもしない怒りを抱き拳に力が入り、気が付いたらマスクを受け取って、それを被っていた。
「ゴムくっさ!!!!!!!」
「いいツッコミだね」
「ああ、幸先がいい。じゃあ、いこうか!」
そして私たち3人は薫さんを助けるべく突入したのであった。
★元ネタ解説★
●お、そうだな(適当)
迫真空手部MUR大先輩が野獣先輩に放った一言。
KMRに因縁をつけたくて仕方なかったのか「夜ラーメン食べに行きましょう」という野獣先輩の提案に適当に返答している。
●髪なんて必要ねえんだよ!
KBTIT先生が不良の髪をバリカンで刈っているときの一言。
場合によっては「神なんて必要ねんだよ!(無神論者)」という誤字があてられる。
●いうこときくから→誰か助けて→ざけんじゃねえぞ
かわいい小学生(大嘘)の「ひで」と優しいおじさんのほのぼのとした1コマ(大嘘)
というわけで薫君も巻き込まれちゃってます。
引き続きよろしくお願いいたします!