勧善懲悪BanG Dream!   作:光の甘酒

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第4部ハロハピの章、これにて完結です!


第5話 やっぱ自分は王道を往く・・・ですかね

「副会長さーん!」

 

「・・・えっと確か氷川さん」

 

 

私が声をかけたのは羽丘女子学園2年生、生徒副会長の斎宮いつきさんだ。

そう・・・蘭ちゃんが正しければこの人が・・・多分黒幕ってやつらしい。

 

 

「これ、よくわからないけど副会長さんに渡してって言われて持ってきたんだけど」

 

「・・・手紙?いったい誰が」

 

「うーん、あたしもよくわかんないんだよねーさっき校門でいきなり渡されてさ。なんか普通っぽい男の人だったよ。ラブレターじゃないのー?」

 

「・・・よくわかりませんがありがとうございます」

 

「確かに渡したからねー!」

 

 

奏也の作戦はシンプル。それっぽいことを書いた手紙を副会長さんに渡して動向を見る、以上!

これって作戦っていえるのかなあ・・・・

ま、奏也が間違えることなんてないから多分大丈夫かな!

内容は運び屋は潰したこと、裏で副会長さんが手を引いているとわかっていること。バラされたくなかったら指定する場所にくること。

そこからは奏也と美咲ちゃんがやるって感じ。

さて、残念だけど私はこれから急に仕事が入ってしまった。日常も守れ。奏也にそう言われたから私はこれで退場。

 

 

「奏也・・・頼んだよ」

 

 

 

 

とある廃工場の広場。俺たちはそこに斎宮を呼び出していた。

 

 

「・・・くるかなあ」

 

「きっと来るさ。蘭が挙げてくれた証拠もご丁寧に手紙につけてやったんだ」

 

「ていうか美竹さんまで何者なの・・・?」

 

「さあ・・・俺もアイツの情報網がなんなのかイマイチわかってないんだよな。以前調べようとしたら謎の力が働いてまったくわからなかった」

 

「謎の力」

 

「つまりそういうことさ」

 

「・・・どっかで聞いたようなくだりだよそれ」

 

「コレがまた結構汎用性高くてな」

 

「薫さんが二人いるみたいだ・・・」

 

「っとおでましだぜ?」

 

 

そして人影が近づいてくる。

羽丘女子の制服を着た女性とが一人近づいてきた。

 

 

「馬・・・あなた達ですか?あんなものを私に寄越したのは」

 

「その通りだ。斎宮いつきさんよ、お前がやったことはまるっとすべてお見通しってやつだ」

 

 

昔の推理ドラマの仲間由●恵のような口調で告げる。

 

 

「まったく心当たりがないのですが・・・・」

 

「あーとぼけても無駄だと思います?こんな物騒なところにまでわざわざ来るって自白みたいなものですし・・・」

 

「その通りだな。ここにお前が来た。それがなによりの証拠だ」

 

 

「・・・・・ふう。ま、もらったお手紙をみた時点で言い逃れはできないかと思いましたけど。一応言ってみただけです」

 

 

雰囲気が変わる。それは生徒会副会長:斎宮いつきではなく、物騒な何かだ。

やはりただ者ではないのであろう。

 

 

「それで?なにが聞きたいワケ?忙しいから手短に頼むわ」

 

「潔いじゃないか。まず、なぜこんなことをした。何の罪もない女子高生を薬漬けにして人生を破滅させて・・・そんなことをしても大したカネにならないし、むしろチンピラ二人に金を払っていたんだから赤字だろ?」

 

「私ってさ、常に上に立つ人間である必要があるの。羽丘女子学園はいわば私の築く王国。思い通りに作って、支配して・・・私のこれから始まる飛躍の第一歩なの。生徒会をやっているのも学園の内部事情を知るためだし、今回のことだってそう。ターゲットにしたやつらは私にとって目障りだった、それだけの理由よ。私の描くシナリオに必要のない奴を間引きしてるだけ。私より優秀と褒められる人、私にたてつく人、そして私より目立つ人」

 

「たったそれだけのために人の人生をめちゃくちゃにしたの・・・・・?薫さんや、他の人も・・・・!」

 

「ああ、あなた瀬田さんのお知り合い?人生?そんなこと私の知ったことではないわ。あなたは道を歩いているとき、踏みつけた雑草や目に見えない小さな虫に対して罪悪感を感じるかしら?」

 

「いままで食ったパンの枚数を覚えているか?みたいに聞かれてもな。うーむ、控えめに言ってド外道だなあ」

 

「なんとでもいいなさい。ひとまず・・・あなた達も私の王道には邪魔ね」

 

 

ブオンブオン!

 

 

「なんだぁ?うるせえな」

 

「・・・!奏也くん!あれ!」

 

 

美咲に言われ音のするほうを向くと、数十台のバイクとともに大量の男たちが割り込んできた。

おいおい、こんなこと聞いてないぜ。

 

 

「アネさん!すみません、おまたせしやした!」

 

「いや、ちょうどよい時間だったぞ。今日はアイツらよ」

 

「馬・・・?ふざけたカッコしやがって、てめえらか!アネさんを困らせやがったのは!」

 

そのうちのリーダー各と思われるところが激昂しながら俺たちに言葉をぶつける。

見るからにガラがわりぃ、こりゃあ暴走族かあ?

 

 

「自己紹介させてもらうわ。斎宮いつき。”神滅栄鬼(クラッシュ・ゴッド・オーガ)”のリーダーをやっているわ」

 

 

”神滅栄鬼”といえばこのあたりでヤバイといわれている暴走族じゃねえか。

こんな姉ちゃんがリーダーってことは・・・こいつ、多分この中で一番つええってことか。

しかしなんで暴走族だのヤンキー集団だのはクッソ中二臭い名前つけたがるかねえ・・・・

 

 

「よく恥ずかしくねえな、こんな名前つけて」

 

「私が付けたんじゃないわ!・・・コホン。今日は急な召集で悪かったわね。何人?」

 

「42人っす!アネさんが緊急で呼ぶくれえだからどんなヤバい奴らとの戦争かと思ったら変なウマ2匹じゃねえっすか!楽勝だよ」

 

「そうね。そいつらにしゃべられたら困るから喋れないようにしてあげて。家に帰さなくてもいい」

 

「了解っす!オラァ!行くぞてめえら!」

 

 

鉄パイプ、角材・・・いろんなエモノを持って男たちが突撃してくる。

 

 

「美咲、使うか?」

 

 

俺は近くに落ちていた廃材を広い、美咲に使うかどうか訊ねた。

 

 

「んー・・・人数多いし、ないほうが動きやすいかな」

 

「了解。確かに人数が多い。消耗を最低限にせねばならんから一人1撃、多くても2撃で仕留める、いいな」

 

「うーん、やってみる・・・」

 

 

無気力な声で美咲は返答をするがにじみ出るオーラは闘志そのもの。

怒り、闘志・・・いろんなものが入り乱れてものすごく好戦的になっているのがわかる。

 

 

「一斉に来るぞ・・・美咲!やられんなよ!」

 

「奏也くんこそね・・・!」

 

 

そこからは乱戦。

全神経を張り巡らせ、360度から襲い来る気配・殺意を察知し的確に攻撃を繰り出す。基本は一撃で急所を突き意識を刈り取るのが基本だ。

・・・しかし、いかんせん人数が多い。倒して回避、倒して回避。基本はその繰り返し。しかし動きは完全にケンカ。力任せに何も考えずに突っ込んでくるからシンプルで読みやすいのが救いか。

 

「美咲!今何人だ!」

 

「こっちは4人!そっちは!?」

 

「こっちは7だ!畜生、まだ半分も行ってないのかよ!」

 

物量攻めは戦った経験がないがここまでとは・・・

2人で42人、一人頭21人倒す計算だ。これは思いのほかキツイぞ・・・

以前錯乱墓を潰したこころ、おたえ、紗夜、日菜で4人だったうえに、主力クラスを叩きのめした段階で相手が投降したと聞く。あいつらがあっけからんとしてたので、暴走族共が集まったところで大丈夫だろうと俺自身乱戦を舐めていた。まあなんとかなるだろうと。

しかし実際はどうだ、今回はヤンチャ盛りの暴走族。素人高校生とは一味も二味も違う。今のところ一撃では仕留めているが動きが早くパワーも違うし回避にも体力を使う。美咲のほうをチラッとみると、むこうもなかなか辛そうだ。

 

 

「よそ見してんじゃねえぞオラ!」ドガッ

 

「ぐっ…!いてえなこの野郎!!!!」バキッ

 

「うぐぉおお!」

 

 

油断した。これは完全に油断だ。不覚にも角材での一撃を頭に受けてしまった。

一瞬視界が揺れ、脳が震えた。

すぐさま反撃し、静めるがダメージは残っている。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・オラァ!」

 

 

美咲はなんとか攻撃を受けずに済んでいるようだ。

しかし俺は最初に受けた一撃が尾を引き、明らかに動きが鈍くなっている。

その後も何回か攻撃を受けてしまい、ダメージはしっかり蓄積されていったのだ。

そしてやがて42人全員を静める。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・・おわった・・・?」

 

「その、ようだな・・・・畜生、頭いてえ」

 

「これは驚いた。まさか二人で倒しちゃうなんて。でもねえ・・・残念だけどこれで終わりじゃないんだよ」

 

ブオン!

 

 

「アネさん!うお!?なんだこいつら全員やられたのか!?」

 

「遅い!遅刻!」

 

 

その後、もうひと塊きやがった。

今度は17人ほどらしい。さっきの42人を加えて69、リーダーの斎宮で70人。結構な大所帯じゃねえか。

倒せねえことはないと思うが骨が折れるぞこれは・・・・

 

 

「あいつらだいぶ疲弊してるからサクッとやっちゃってよ」

 

「わかった。おら!おめえら行くぞ!」

 

あーもうわかったわかったわかったよもう!

やりゃーいいんだろやりゃあ!

早いとここいつらぶちのめして家に帰って風呂に入って板チョコでも齧りながらゆっくりてえわ・・・

 

 

「ぐあああああ」

 

「なんだてめ・・・ぎゃあああああ」

 

「なんだ!?お前らどうした!?」

 

しかし攻撃は始まらなかった。

後ろのほうにいた奴らが悲鳴を上げたのだ。

 

 

「助けに来たわよ!」

 

「こころ・・・?」

 

「ごめん、奏也。こころがいくって聞かなくて」

 

「ま、私たちから見てももう大丈夫だと判断したので連れてきたわけですが」

 

「おたえ・・・紗夜・・・」

 

そこにいたのはなんとこころ、おたえ、紗夜だった。

待機命令だしてたのに助けられちまったな。俺の見立てもまだまだだ。

今回のことは今後の反省材料だな。

 

 

「奏也にしてはだいぶ苦戦しているようね。そんなにボロボロになって、なかなか見られない姿じゃないかしら?」

 

「ちょっと油断しただけだ。まあ俺が悪いな」

 

「・・・奏也が素直すぎて気持ち悪い・・・・」

 

「気持ち悪いとはなんだ!」

 

こんな状況なのに紗夜もおたえもひでえいいようだが、こいつらと話していると不思議と落ち着く。

頭がグラグラしてたのも徐々に収まってきたし、もういっちょやるか。

 

 

「奏也・・・昨日は迷惑かけたわね」

 

「んだよ、しおらしくしやがって・・・お前にそんなの似合わねえ。いつもみたいにムチャやって俺を笑顔にしてくれ。お前が守るものには俺の笑顔も含まれてんだ」

 

「奏也・・・!わかったわ!よーし、いくわよ!」

 

 

そこからは勝負が早い。増援できた17人は一瞬で蹴散らされた。

途中、疲弊からかとどめを刺しきれなかった最初の42人のうち何人かも起き上がってきたが一瞬だ。

 

 

「さてと」

 

「残りは斎宮さんだけだね・・・・」

 

「あんたたち・・・いったいなんなの!?」

 

「とおりす・・・」

 

「通りすがりの悪党狩りよ!」

 

 

こころにセリフを取られてしまった。ま、今回は譲るか。

 

 

「まって・・・まさか錯乱墓高校がやられたのって・・・!」

 

「んなことはどうでもいい。さて斎宮さんよ。これであんた一人だ。おとなしく降参しな。ボコられてからバラまかれるのと痛い目に遭わずバラまかれるのどっちがいい?」

 

「・・・ひとつ勘違いをしている。私がやられること前提で話をしているが、そもそもそれが違う。私は”神滅栄鬼”を束ねるリーダー!こんなことで私の王道を阻ませない!」

 

 

斎宮は戦闘態勢に移る。かなり自信があるようだ。

 

 

「・・・・なにが王道なのかな。あなたがやってること・・・邪道どころじゃない外道だよ。今回のことでそれだけの人が傷ついたのかな?」

 

 

「・・・美咲?」

 

「奏也くん。私がやる。こころ、いいよね?」

 

「ええ、あなたに任せるわ。いっちょやっちゃいないさい美咲!」

 

 

 

 

体は疲れている。でも不思議と心は軽い。

元気になったこころをみたからかもしれないし、奏也くんの激励があったからかもしれない。

うーん、私ってやっぱこころやハロハピのこと自分が思っている以上に大事みたい。

だからこそそれを脅かす要素は消さなきゃ。

 

 

「じゃあ、斎宮さん。いくよ」

 

「あんたが相手ってわけ?あんだけ動いた後に大丈夫?」

 

「あーうん。多分。っていうかおしゃべりが過ぎない?」スッ

 

「え?・・・・ふぐぅ!バカな・・・・こんな・・・わたしが・・・どこからこんなちからが・・・・!」ドサッ

 

 

あの時こころを止めたのと同じ。目にもとまらぬスピードで距離を詰め、一撃で仕留める。おそらく美咲の集中力が極限まで高まった結果出せる技なだろう。

 

 

「‥‥終わったよ」

 

「美咲―!!!!!!」

 

「うわっ!こころ急に抱き着かないで」

 

「美咲!すごいわ!すごいわ!美咲ー!」

 

「あーもう暑苦しいからあ」

 

 

こうして騒動は幕を閉じた。

その後どうなったかというと、まず俺はアドレナリンのせいで気づかなかったがマスクを取ると頭から血が結構出てて大騒ぎだった。まあ、実際の傷は大したことなかったわけだが。頭って血が出やすいからね、しょうがないね。

他の4人はめだったケガもなく、美咲が戦闘後にこころの相手をしてさらに疲れたってことくらいか。

 

さて、”神滅栄鬼”の連中だが全員病院送りで事実上の壊滅。

そいつらの口から暴走族を潰した正体不明の5人組の存在が語られ、”unknown”という名前でヤンキー・暴走族界隈で有名になっているらしい。

また恥ずかしい名前つけやがって・・・

 

そして斎宮いつき。実はこいつ、弦巻家に次ぐこの町の金持ちのご令嬢。蘭に頼んでマスコミリークした情報は見事にもみ消された。

まあ本人は海外留学という名目で羽丘を辞め海外に逃がされたし、日本から消えたらしいから良しとするか。

そして無理やりクスリを打たれた子たち。これも斎宮家が相当な慰謝料を払い、さらにしかるべく治療機関の紹介でなんとか話をまとめたとか。

これで依存症を治してくれることを願うばかりである。

 

 

「さあ、今日もみんなを笑顔にするわよ!」

 

 

そしてまた今日もその声が響き渡り、笑顔が広がっていくのだ。

相変わらずこころは騒がしいし、美咲はミッシェルをこなしているし、瀬田さんもバッチリ回復したみたいだ。

 

さて、今回はこれくらいにしておこう。

俺はまた、次の物語を語る準備をしておくことにするか。

 

 

第4章 完

 




★元ネタ解説★

●お前のやったことは~
仲間由紀恵氏と阿部寛氏が主演を務めたミステリードラマ「トリック」にて仲間由紀恵氏が演じる山田奈緒子が犯人を追い詰めるときに放つ言葉の一つ。パターンが多々ある。

●いままで食ったパンの枚数~
ジョジョの奇妙な冒険第1部ファントムブラッドにてジョジョが、吸血鬼と化したディオに、自分のために何人の人間を犠牲にしたのかという質問をしたところ、ディオから帰ってきた答え。


想像以上に筆が乗りまさかの5話まで行ってしまいましたが無事終わりました!
次回はポピパの章、頑張って書きます。

感想・評価は励みになるのでぜひお願いします!
もっと書き方をこうしたほうがいいなどのアドバイスも大歓迎!


引き続きよろしくお願いいたします。


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