第1話 昼飯にコロッケでも食ったのか?
「ここ最近頻発している通り魔事件。警察では同一犯の犯行とみて捜査を進めているようですが、依然手掛かりはつかめていないとのことです」
「いやーしかし怖いですね。確か数年前にも同じような事件が起きたのでは?」
「はい、確かに起きていますね」
「同一犯の可能性は?」
「当時の犯人は逮捕されましたので違うのではないでしょうか。同じ町で同じ手口でやることは考えにくいですしね。しかし当時の犯人として逮捕された方は一貫して無実を主張しており、」
「確かにそうですねー」
俺はテレビのコメンテーターが喋る傍ら、ネットである事件の記事を見ていた。
【花咲川・羽丘連続通り魔事件】
数年前に花咲川・羽丘エリアで起きた連続通り魔事件。
6人が犠牲になり、治安の悪いところに行かなければ日常生活は安全のはずのこの町は、一時期恐怖に支配されていた。
誰でも、外を歩くだけで死の恐怖があるのだから当然だ。
:被害者リスト:
神剣祐也
神剣かなえ
そう、その中には俺の両親がいた。そしてその恐怖が今、この町に蘇ろうとしている。
俺は確信していた。こいつは・・・あの時と同一犯だと。
俺は被害者遺族として当時捕まった犯人の裁判はすべて傍聴した。そして一緒に調べていたおっさんはツテで得た色々な情報を調べたのだ。
そして俺たちは一つの結論に達した。
「なあ奏也、あいつぁ犯人じゃないぞ」
「なんだと・・・・?」
その後、確信を得るためにもうひと調査行ってくるといったあと・・・
オッサンはゆきずりの強盗に遭い命を落とした。
俺は確信した。オッサンは何かを掴み、そして口封じのために殺されたのだと。
あの滅茶苦茶な強さのオッサンの命を奪われるなんてよっぽどのことがないと考えられない。
似たような手口、そしてこの町での凶行。俺の両親とオッサンの死になにか関係があるに違いがない。
※
「いやー奏也くん、今日はありがとう!」
「いんや構わないっすよ。ちょうど暇でしたし」
俺はCiRCLEにいる。
まりなさんが予約管理のミスをしてしまい、どうしても人手が足りなくなったということで手伝いに来た次第だ。
まりなさんとは幼馴染が所属するバンドのツテで知り合い、何かあればこのような形で手伝いに来ているのだ。
「あ、奏也だ」
「かっみはやせんぱーい!お疲れ様ですっ!」
「香澄ちゃんは今日も元気だなあ」
スタジオから練習を終えたポピパメンバーが出てくる。
おたえ、香澄ちゃんに続き、りみちゃん、沙綾ちゃん、有咲ちゃんもだ。
「奏也くん、今日はもう上がっていいわよ」
「いいんですか?」
「ええ。ポピパでちょうど一区切りついたし、あとは私だけでも大丈夫そう」
まあ確かに予約リストを見てももう大丈夫そうだな。
「じゃあこれで上がりますわ」
「奏也終わり?」
「ああ、そのようだ」
するとおたえは有咲ちゃんに声をかける。
「有咲、奏也もいい?」
「私は別に構わねーぞ?」
何やら示し合わせているようだが、俺なんも聞いてないぞ。
「今から有咲の家でお茶するんだけど奏也も来ない?」
※
というわけで来たのは市ヶ谷家。流星堂という質屋をやる横には大きな蔵があり、そこに入って何すんだよと思っていたらなんと蔵の中は整理され、部屋のようになっていた。聞けばここはポピパの練習場所らしく、スタジオを使う以外はここでやるらしい。うむ、確かに防音もしっかりしているようだ。
「なんつーかすげえな」
「でしょ!すごいんだよね、ここ!遠慮なく使ってくださいね!」
「お前の部屋じゃねえだろ!?つーかなんで香澄が誇らしげなんだよ!?」
有咲ちゃんも相変わらずだ。香澄ちゃんに対しては強気だけれどその言葉の裏には大好きの気持ちが込められているのを俺は知っている(おたえ談)
「まあまあ有咲落ち着きなって。香澄のいうことにツッコミ入れてたらキリないよー?」
「さーやひどい!りみりーん!有咲とさーやがいじめる~!」
「あはは。でも香澄ちゃんの気持ちもちょっとわかるな。なんていうか、私たちポピパの帰る場所って感じがするし」
「はぁ!?りみ、そ、その、急に何ってんだよ・・・///」
「あー!有咲照れてるぅ~!かわいいー!」
「暑苦しいからはなれろぉ~!」
有咲ちゃんにハグする香澄ちゃんに対し、口では文句を言っている有咲ちゃんだがその雰囲気は嬉しそうだ。
なんというかポピパってホント仲がいいんだな。みていてほっこりする。
しかもこの香澄ちゃんと有咲ちゃんを眺めてるとなにか違う道に目覚めてしまいそうだなあ。
「・・・・ていっ」ゲシッ
「いてえ!」
そんなことを考えていたらおたえに脇腹を小突かれた。
どうやら心を読まれていたようだ。
「なんていうかさ。ほんと君たち最高に仲がいいんだね」
「はい!私たちは5人でポピパですから!!!何があっても一緒です!」
「おお、言い切った。いいね、こういうの」
おたえもいい友達を持って幸せ者だ。
「そういえば奏也。ちょっと最近気になることがあるの」
「藪から棒にどうしたおたえ?」
「奏也ってよく鈍感とか言われたりしない?」
「感覚は人一倍鋭いつもりだがな」
「あー・・・ダメだこりゃ」
マジで意味が分からない。そういえば最近日菜にもそんなことを言われる気がする。
「おたえ、もしかしてそういうこと?」
「さすが、沙綾は鋭い」
「あ、私もなんとなくわかっちゃったかも」
「あー確かになー」
「え?なになに?どういうこと?」
どうやら香澄ちゃん以外は意味を把握しているようだ。
そしておたえたちは香澄ちゃんに耳打ちをして何かを教えている。
完全に蚊帳の外じゃあないかこれでは。
女子高生5人に男一人ってのもアレなのにこの仕打ちはないぜ。
「あー!そういうことか!なるほどねー!」
どうやら香澄ちゃんも理解したようだ。
うむ、俺だけ仲間外れ。悲しいなあ・・・・
「ね、奏也。ちょっとテストみたいなのやってみない?」
「ほう、どんな?」
「とある項目について奏也のレベルがわかる」
「ほう、面白そうだな。いいぞ、かかってこい」
レベルを図るといわれたら黙ってられない。男とは常に向上を目指すもの。
どんな項目かはしらんがここは高レベルを叩き出してあっと言わせてやる。
「んーじゃあ私から第一問ですね!ある女性と待ち合わせをしていました。あなたは待ち合わせ時間15分前に到着し、女性は時間ぴったりに到着し、『ごめんね、待たせちゃったかな?』と言ってきました。それになんと返しますか?」
「んー・・・時間通りだから気にするなかねえ」
「えぇ・・・初級から・・・?」
沙綾ちゃんはなにか微妙な顔をしている。
「私から第2問いきます」
「次はりみちゃんか」
「女性と出かけていたら女性が靴擦れを起こしてしまい、途中からおぶって歩くことになりました」
「いや履きなれてない靴で来るなよ」
「奏也、黙って」
「ハイ」
なんかおたえがこえーんだが・・・・
「えっと・・・続けますね?その時女性に『重くない?』って聞かれました。どう返答しますか?」
「体重のことはデリケートだからな。重いとも軽いともいわずごまかす」
「あ、そうなんですか・・・」
あ、でも以前彩にもそのことについてなにか言われたような。
なんかみんなの顔が引きつってきたぞ?
「じゃあ私から第3問!誕生日に女の子から手作りのマフラーを貰いました!それをどう捉えますか!?」
「よっぽど作る時間があって暇だったんだろうなみたいな・・・手作りは嬉しいけど」
「ええ・・・ほんとに・・・?」
「第4問ね。会った女性がなんだか様子がおかしいです。でも心当たりはありません。なぜだと思いますか?」
「うーん・・・・生理?」
「ハァーーーーーー(クソでかため息)女の子なめてんの?」
いやだから怖いですって!
「じゃ、じゃあ私から第5問だなー。ある女性とお昼から会う約束をしていました。待ち合わせ場所で合流すると女性の唇はいつもよりぷりっっとして光っています。なぜでしょう?」
「・・・・昼飯にコロッケでも食ったのか?」
「そうくるかァァァァァァ!」
「お、有咲ちゃん渾身の突っ込み」
「そこは今来たっていうところですよ!」
「とりあえず重くないっていうところです!」
「どう考えても好意持ってるでしょ!?」
「とりあえず悩みあるの?とか何か悪いことしたの?とか聞こうよそこは」
「どう考えてもグロスだろ!」
「それでなんのテストだったんだ?」
「「「「「ここまで言ってわかってないの(かよ)!?!?!?!?」」」」
結局答えは返ってこない。そう思っていたら全員がこちらに向き直りそしてさらに言い放った。
「「「「「0点!!!!」」」」」
内容もよくわからないまま俺は0点を言い渡されてしまったのである。
イミワカンナイ
※
「あ、そうだ。今日食べようと思ってうちのパン持ってきたんだよ!」
結局謎のテストの内容は明かされず、別の話題に切り替わり各々談笑していた。
そんなとき沙綾ちゃんが声を上げたのだ。
「おー!さーやんちのパン!」
「わぁ~!チョココロネある!?」
「あはは、あるよ~りみのために持ってきた」
「練習が終わってちょうど小腹がすいてたから嬉しい」
「あ、そんなら私お茶入れてくる」
と有咲ちゃんが立ち上がる。
「あ、そんなら手伝うよ」
「いえいえ!先輩に手伝ってもらうわけには・・・」
「俺なんもしてないし、6人分となりゃ結構な量でしょ?男では使えるときに使うもんだよ」
「それですね・・・それじゃ、お願いします」
※
「紅茶?」
「あ、はい。せっかくなんで」
そういって有咲ちゃんは用意をしている。
「ポピパは楽しい?」
「え?あ、はい。楽しいですよ。最初はいやいやって感じだったけど・・・なんか香澄のペースに巻き込まれちゃって知らない間にって感じで」
「それで有咲ちゃん、その知らない間に香澄ちゃんのこと大好きになったわけか」
「なっ!?そ、そ、そそんなこと!あいついっつもくっついてきて暑苦しーし、いっつもうるさいし、思い付きで私を巻き込むし!」
そんな風に文句ばかりいう有咲ちゃんであるが口元は緩み、顔は赤い。
うーん、女の子同士って美しい。
「でも・・・大好きなんでしょ?香澄ちゃんだけじゃなくて他のみんなもさ」
「なっ・・・!?いやに攻めますね神剣先輩!?」
「はは、ごめんよ。でもいいな。俺もおたえとは幼馴染だけどこんな風に楽しくワイワイ何かをやるってことなかったからなあ」
「・・・まあ今が楽しいのは本当ですよ。実はちょっと前、ポピパメンバーでケンカっていいうか・・・。ちょっとすれ違いがあって。とはいっても私が意地張ったのがそもそもの原因なんですけどね。でも・・・この出来事で、私にとってポピパがいかに大事な存在で、かけがえのない場所なのかわかったんです。だから私は・・・これからもポピパがポピパであるために。この変わらない日常を守るために頑張りますよ」
「・・・驚いた。これメンバーが聞いたらすごいことになりそうだね」
「な!?ナシで!それだけはナシで!あーもう、こういう話できる人がいなかったせいでつい口が滑ったー!」
「ま、恥ずかしくてメンバーには言えないよね。有咲ちゃんの性格から行くとさ」
なるほど。みんなに対してはあんな口調でも有咲ちゃんはポピパのことを本当にお大切に思っているんだな。おたえは本当にいい友達をもった。
さて、お茶が入ったようだ。とはいっても俺は何もやっていないが・・・
「じゃ、運んじゃうか」
「ナシですからね!!!!」
そしてカップを3つずつのせお盆を持ち上げる。
そして部屋を出る前、俺はナシを叫ぶ有咲ちゃんにこういった。
「あ、そうだ。有咲ちゃん。おたえのこと、これからもよろしくね」
「・・・・?はい」
突然の発言に意図がわからないといった具合だが有咲ちゃんは頷き、そして俺たちは蔵へと戻っていったのであった。
「で、ナシですからね?」
「わかってるよ」
※
「有咲!じゃーねー!」
「おじゃましました」
「ありがとね、有咲ちゃん!」
「また明日ねー!」
「お邪魔しました。またね、有咲ちゃん」
いい時間になってきたのでみんなを見送る。
みんなの後ろ姿を見ていると少し寂しい気分になるけど平気だ。明日も学校に行き、一緒にお昼を食べて、放課後は練習。
この楽しい毎日は変わらない。
「さてと、片付けるかー」
みんなが帰った後の片づけをする。神剣先輩は片づけの手伝いも申し出てくれたけど断った。
それに私はこの時間が嫌いじゃないのだ。この散らかりはみんながここで楽しく過ごしてくれた証。それを感じながら片付けるのはなんかいい感じなのだ。
「・・・・ん?」
しかしそこで見つけたのはスマートフォン。これは香澄のやつだ。
「ったくしゃーねーなー」
時間を見る。少し遅めの時間ではあるが香澄の家なら行って帰ってきてもそんなに時間はかからない。
そ、それに香澄もスマホをなくしたと思って不安だろうしな!
しゃーない、届けてやるかー
「ばーちゃーん、香澄が忘れもんしてるから届けてくるよー」
「こんな遅くにかい?」
「香澄の家なんてそんなかかんないからすぐ帰ってくるしさ」
そんなこんなで家を出る私。
夜道を歩き香澄の家に向かう。しかしその道中。二人の人影があったのだ。
一人は地面に倒れているようでもう一人はかがんでその人に何かしている。
もしかして急患人!?大丈夫かよ!?
「どうかしたんですか!?」
私が声をかけるとかがんでいる方の人はぴくっと体を動かす。
その人はフードを被っており、マスクをしているのか顔がよく見えない。
しかしそんなことはどうでもいい。それよりも・・・横たわる人のお腹からは血が流れ出ていて、フードマスクの人の手には・・・
「うそ・・・だろ・・・」
街灯に照らされ、赤に染まった刃物が・・・その恐ろしさを強調していた。
「まさか・・・連続通り魔・・・?」
そしてその人物は・・・狙いを私の方へ向けて
そして、近づいてきたのであった。
最終章はPoppin' Party編です。
正直、かなり難産っぽいんですよねえ・・・これ
頑張って走り切りますので最後まで応援よろしくお願いします!
★評価のお礼★
lllyasさん★8評価ありがとうございます!