「いやだ・・・こっち来るなよ・・・・」
血まみれの刃物を持ったソレはジリジリと近づいてくる。
そっか・・・私の足がすくんで動けないのをわかってやってるんだ・・・・
私は・・・これで終わりなのか?少し前なら一人で生きていただけだった、私がどこで何をしようと勝手だった。でも今はみんながいる。そう、私は一人じゃなくなったんだ・・・・!
「いや、いやだぁ・・・たすけて・・・助けてよ香澄ぃ・・・・」
そこで出てきたのは香澄の名前だった。強引だけどいつだって私を、私たちを引っ張り、導き、そして助けてくれた香澄。
もう・・・香澄の声を聴くことはできないのかな・・・・?
「火事だあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「!?」ビクッ
その時、聞きなれた声そう叫んだ。
「有咲!こっち!早くッ!!!!!!」
「え・・・?なんで・・・香澄・・・?」
「いいから!逃げよう!!!」
すくんでいた足なんてお構いなしに香澄は私の腕を引っ張る。
「え・・・?火事?」
「キャアアアアア!人が倒れてる!」
「あそこに刃物持ってる人がいるぞ!」
「警察だ!警察を呼べ!」
そしてその香澄の声を聞いた近くに民家の人が窓を開け外の様子をうかがう。
それに犯人が怯んでいる間に私たちはとにかく逃げだしたのだ。
「ハァ・・・ハァ・・・香澄・・・なんで・・・」
「人の注目を集めたいときは泥棒!とか叫ぶより『火事だ!』って叫ぶのが一番いいってマンガで読んだたから・・・」
私たちはとにかく全力で走って私の家まで帰る。
「そうじゃなくて、なんであそこにいたんだよ」
「スマホがないことに気が付いて・・・最後にスマホ出したの有咲の家だったから・・・」
香澄も取りに来る途中だったのか。
「あの、さ・・・香澄。ありがとな・・・その、助かったそ、うれしかった」
「あ、有咲が素直だ・・・!」
「はぁ!?私だってお礼するときはちゃんとするから!」
香澄のことだ多分このあたりで「有咲~!」っていって抱き着いてくるんだろうなー
構えるか。
「・・・・・あれ?」
おかしい来ないぞ。香澄のほうを見るとなにやら様子がおかしかった。
「あ、あはははは。いまさら足が震えてきちゃった」
そしてそのまま香澄はその場にへたり込んでしまった。
「・・・・ほんと、ありがとな」
「え?有咲なにか言った?」
「な、なんでもねー!今日遅いし、あいつがまだうろついてるかもしれないから・・・きょ、今日は泊って行けよ・・・」
そんな感じで、香澄に再びウチへ上がってもらう。
そのあと、ばーちゃんに事情を話し、警察へと連絡したのちお巡りさんが家やってきた。
時間も遅いし、明日学校を休んで警察署で事情聴取をさせてくれとのことで、お巡りさんはそのまま帰って行った。
「わーい!有咲の部屋!」
「だー!暴れるなよー!」
※
場面は変わって有咲の部屋。
私の家には警察から連絡がされ、そのあとお母さんから電話がかかってきた。
とりあえず大丈夫だよってことと、明日事情聴取があるから保護者として来てほしいということを伝えた。
あーちゃんにもだいぶ心配をかけちゃってるみたいだ。
「さ、けっこー遅いし、そろそろ寝よっか!」
「あ、ああそうだな・・・」
「有咲?」
有咲は少し顔を赤くしている。そしてその体を見ると少し震えていた。
「あーりさ」ギュッ
「わ!なんだよ香澄!いきなり抱き着くなあ!」
「有咲、怖かったよね。大丈夫だよ。今日は私が一緒にいるから・・・」
「・・・・・かすみぃ・・・・」
私がそういうと有咲は泣き出してしまい、そのまま顔を私の胸にうずめた。
いっつも強がってる有咲だけど私はその弱さを知っている。やっぱり、有咲は怖いのを我慢してたんだね。そりゃそうだよ。直接刃物を向けられて、危ない目に遭ったんだし。
「こ、今夜は一緒の布団で寝てくれねーか・・・・?」
「もっちろん!なんかいーね!こういうの!」
うお!こんな有咲初めて!
でもうん、気持ちはわかる。私だって怖かったもん。でも有咲はそれ以上だったろうな。
そして私たちは眠る。有咲がほんとに無事でよかった。
「・・・・だいすき」
寝息を立てる有咲の顔を横目に、私はそうつぶやき、まどろみの中へ意識を落としていったのだった。
※
翌日おたえから連絡をもらい警察署へ向かった。
香澄ちゃんと有咲ちゃんが例の通り魔に襲われ、事情聴取を受けているというのだ。
「おたえ!」
「あ、奏也!」
「神剣先輩、こんにちは」
「こんにちは、神剣先輩」
そこにはおたえ、沙綾ちゃん、りみちゃんもいた。皆事情を聴いて心配になってきたようだ。
しばらく待合室で話しながら待つと、奥から香澄ちゃんとお母さん・お父さん、有咲ちゃんのおばあちゃんが出てくる。どうやら終わったようだ。
「あ!みんなー!来てくれたんだ!」
香澄ちゃんはあっけからんとそんなことをいう。
「香澄!有咲!大丈夫だったの!?」
「わわっ!さーや、大げさだなあ」
「香澄ちゃん、でも通り魔に襲われたって・・・」
「りみりんもそんな心配しなくて大丈夫だよ~!私も有咲もケガしてないしさ」
「そーだな。でも心配かけちゃったっと思うから、そこはごめんな」
二人とも意外と平気そう・・・いや、そうでもない。
気丈にふるまっているがかなり疲れているようだ。そりゃ通り魔に襲われた上に神経を使う警察の事情聴取を受けたら疲れるのは当たり前だ。
おたえも黙っているがそれには気づいている雰囲気だ。
警察の事情聴取というのは、おこったことをすべて話、それを一言一句聞き逃さずに刑事が調書に記していく。
そしてすべて終わった後読み合わせをして、間違いがないかを確認までするのでとにかく時間がかかるのだ。
俺(というか筆者)も昔、油断してコソドロに財布から1万を抜かれたことがあり、被害届を出したとき調書を書いたりするだけで2時間も時間をとられた記憶がある。
当然担当する刑事の力量にもよるのだろうけど。
「とりあえず無事ならよかった。今日は練習なしでいいよね?有咲も香澄も疲れてるだろうし」
おたえが提案する。まあそりゃそうだわな。
「えー?私は全然平気だよー?」
「ダメだよ香澄ちゃん・・・今日は休んだ方が」
「そうだよ?無理してもしょうがないし、しっかり気持ちを落ち着けてからだよ!」
「有咲もそれでいいよね?」
「そうだなー・・・さすがにちょっとしんどいや」
「そっかー・・・まあそうだね!わかったよ!」
どうやら意見がまとまったようだ。
こうして皆はそれぞれ帰宅した・・・のだが。おたえに呼ばれ、再び外に出るのであった。
※
「ようおたえ、どうした?」
「あ、奏也。えーっとね、今回のこと。香澄か有咲のこと。さっき有咲のおばあちゃんと香澄の親御さんと話した。有咲は私が、香澄は奏也がしばらく送り迎えすることになったよ」
「ほーん、そうか・・・・ファッ!?」
なっ”た”?
「格闘技経験者の信頼できる知り合いっていったらOKだって。それで挨拶したいから来てほしいって香澄のお父さんが・・・」
「あ、おい待てぃ。おい。どういうこったよ(困惑)」
「・・・・?」
「・・・・?じゃねえ!本人の承諾はどうした!?」
「・・・・いる?」
「いるわボケェ!」
※
っていうことを話したがおたえに通じるわけもなく、そのまま俺は戸山家に向かう羽目になった。
まあ通り魔の事件について関心はあるし、いいっちゃいいんだけどな。
ピーンポーン
「はい?」
「あ、花園さんからご紹介にあずかりました神剣と申します」
「入ってください、どうぞ」
そして俺は戸山家に招き入れられる。
通してくれたのはおそらく香澄ちゃんの妹さんだろう。確かあーちゃん・・・・明日香さんといったか。
「失礼いたします」
「お、キミだったか」
「あれっ?神剣先輩?」
「どうも、香澄ちゃん。先ほどはどうも」
「そうか、さっき警察署にたえちゃんたちと一緒にいた男の子か」
この人が香澄ちゃんのお父さんか。
優しげな雰囲気だがガタイがいい。いかにも一家の大黒柱という雰囲気だ。
「お茶をどうぞ」
「あ、お構いなく」
香澄ちゃんのお母さんわけえな。
「それで、たえちゃんから話を聞いているが・・・君が香澄のボディガードを買って出てくれたと」
「えーまーはい、うんそんな感じです」
買って出たってか事後承諾の強制なんですはそれは・・・
まあいいか。ここまで来たらやるしかない。
「格闘技をやっていると聞いたのだけれど、何をやっているのかな?」
「そうですね・・・んーなんというか名前ないんですよね。僕の師匠が創始者で、我流ですから」
「なるほどねえ・・・本当に大丈夫なんだろうね?好意はすごくありがたいのだが、気がついたら二人とも通り魔にやられましたじゃね」
「お気持ちはわかります」
結構慎重な人みたいだ。まあ大事な娘さんが通り魔に襲われた上に、娘の友達の紹介とはいえ知らねえ男が来たら警戒するもんだわな。
「よし、こうしよう。今から庭で私と一勝負行こうじゃないか」
「・・・・え?」
「お父さん!?」
香澄ちゃんと明日香さんは驚いている。
「え?だってお父さん、神剣先輩は高校生だよ!?」
「そうだよ、いくら私のためって言ってもお父さんが相手なんて!」
話が見えない。どういうことだ?
「まあいいじゃないか。別に勝てと言っているわけじゃない。神剣君、実は私、趣味がトレーニングでね」
「道理で立派なお体をお持ちだと思いましたよ」
「鍛えるばっかりで最近使う場面がなくてな。娘たちがもっと小さいころは二人を両肩に乗せて散歩したものだが・・・ちょっと遊び相手になってくれないか?」
なるほど、そういうことか。暇つぶしついでに俺の力量を図ろうということだろう。
「いいですよ」
「では庭に行こう」
そして掃き出しから庭に出ると、戸山さんは何やら持ってきた。
「おとーさん!神剣先輩にケガさせないでよ!おたえの大事な幼馴染なんだから!」
「わかってるよ。では神剣君、ルールは簡単だ。このバルーン帽子をかぶり、先に頭の上の紙風船を潰したほうが勝ち。そこに至るまでは何をやってもいい。ただし、動きが止まるほどのパンチやキックが一撃でも入った場合、風船が無事でも負け。いいかな?」
「シンプルでいいですね。わかりましたよ」
「手加減はいらない。男の勝負だ・・・いいね?」
「わかりました、では本気で」
向こうがそうおっしゃるなら仕方ない。では、いきますか!
「香澄!スタートの掛け声を頼む!」
「わわっ、じゃあはじめ!」
スパァン!
一閃。俺は掛け声と同時にかけ、そして頭上の風船目がけ一撃を放った。
動こうとしていた戸山さんは動きが固まり、残ったのは戸山さんの頭上でつぶれた風船だけだ。
「これはさすがに予想外だよ神剣先輩」
※
「神剣先輩ってすごいんですねっ!!」
香澄ちゃんのお父さんを文字通り瞬殺したあと、無事パパ試験には合格したようでボディガードの任を与えられた。
そして玄関先で香澄ちゃんに見送られる。
「まあ俺も鍛えてるからなー」
「おたえから神剣先輩はおたえより格段に強いって聞いてて、ほんとかな?って思ってたけどまさかお父さんを一瞬で倒すなんて!くぅ~カッコイイな~!!!」
「はは、ありがとね。じゃあ明日朝と学校帰りに迎えに行くからさ。・・・校門の前だ色々と誤解を受けるし待ち合わせ場所を決めておこうか」
これは彩の件で学んだ。なにより女子高の校門は不審者扱いされるからすごく居心地が悪いしな。
「はい!じゃあ明日からよろしくお願いします!!」
こうして俺の戸山香澄期間限定ボディガード生活がスタートしたのであった。
※
CiRCLEでのポピパの練習が終わり、解散する。
手筈通り有咲ちゃんはおたえが、香澄ちゃんは俺が家まで送っていく。
途中の公園でクレープの移動販売車が見え、香澄ちゃんが食べたいといったので俺が買いに行くこととなった。
「んじゃ買ってくるから香澄ちゃんはここで待っててよ」
「はーい!なんか放課後こうやって一緒に帰ってクレープ買うってデートみたいですね!」
「そうか?仲が良ければそれくらいやると思うけど」
「わわっ!予想外の返事!」
別に小さいころからおたえやこころ、紗夜や日菜とやってきたことだし別にそうでもなくないか?
ま、いいか。
「絶対動かずここにいること。まあこんな人目に付くところに来るとは思えないが」
「わかりました!」
そして俺はクレープを注文し、待ち時間で香澄ちゃんの方をみる。
すると学生服を着た男が一人、香澄ちゃんの前に立ち何かを話していた。
ナンパか何かだろうか?あまり香澄ちゃんはいい顔をしてないな。
「お待ちどうさまー」
ちょうどクレープが来たな。さ、戻るか。
クレープを2つ持ち、香澄ちゃんのところに戻り、二人の方を見ると香澄ちゃんは沈んだ表情で、いつもの元気さのかけらもなかった。
一体こいつは何をしやがったんでしょうかね?
「クレープお待たせ―っと、あんた誰?」
「あ?お前戸山の彼氏か?」
「まあそんなようなもんだ。俺、こいつから離れられないんだよ・・・」
ナンパだったことを考慮し、ちょっと脚色する。
ま、ボディガードだから間違っちゃいないな!
「へー彼氏なら知っておけよ?こいつ小学校のころ陰キャでよ、変な歌うたってはいじめられてたんだ」
「そう・・・(無関心)んで?それが?」
「は?人の話聞いてなかったのかよ?こいつマジで変な奴だし、突然わけのわからん歌とか歌いだすから気をつけろってことだ!」
こいつは何がいいたいんだ・・・?
どうも要領を・・・ああ!こいつが当時のいじめっ子ってことか!
「それでさぁ、それが何の関係があるわけ?香澄ちゃんが変なのはすでに知ってるしそれによって迷惑被ったことねーんだが?」
それを聞いて香澄ちゃんが顔を上げ俺の方を見る。その表情は心なしか嬉しそうだ。
「せっかく人が教えてやったのに・・・なんだその態度は?あ゛?」
「聞かれてもないことをしゃべってそれで恩を着せるってお前はどんな大物国会議員だよ。世間一般ではそれ、”余計なお世話”っていうだぜ?あ、漢字わかる?”余計”の”余”に”余計”の”計”で”余計”って書いて、お世話は・・・」
「テメェ、バカにしてんのか!?」
「まだ最後まで説明してないのにぃ」
おっと、ちょっと煽っただけでこれかよ。最近の若者は堪え性がないなあ(最近の若者並みの感想)
「クレープ溶けちゃうからもういいよ。帰って、どうぞ」
「この野郎・・・・!」
「ちょ、ちょっと神剣先輩、島田くん・・・!」
ああ、こいつ島田っていうのか。
「香澄ちゃん、ちょっとクレープ持っててくれるかな」
「え?あ、はい」
「さて、島崎君。もうよくない?」
「島田だコラァ!」ガシッ
俺は飛んできた拳をそのまま掴む。
当然、島居君は抵抗を試みるが、がっちりホールドしているため動かない。
「う、腕が動かねえ・・・」
「もうわかったろ島根くん。もう、帰って、どうぞ」
「だから島田だって・・・イデデデデデデ!わかったわかったわかったよもう!」
少し力を入れたらこれか。貧弱貧弱ゥってか?
島山くんを見送った後香澄ちゃんとクレープを食べながら歩く。
うーん、やっぱクレープってうまいな。体に悪いのわかっててもついパクパク食べてしまう。
女の子を魅了してやまない理由が男の俺でもわかるってもんだ。
「それにして神剣先輩ってホントに強いんですね。島田くん、昔からかなりヤンチャだったんですけど」
「まああれなら香澄ちゃんのお父さんの方が114514倍強い」
「あはは!そうなんだ!・・・でもあの話聞いて私を見る目変わったりしませんか?」
ちょっと不安そうな顔で聞いてくる。なんというか香澄ちゃんらしくないな。やっぱり気にしている。
「さっきもいったけど香澄ちゃんが変な子なのは知ってるしさ」
「あー!酷いですー!」
「まあでもそれで俺が迷惑被ったわけでもないし、大事なのは今をどう生きるかでしょ?例えば友希那さんみたいに音楽をひたすら追求するのも、彩みたいに一生懸命アイドルであり続けるのも全部その人だけの生き方だ。香澄ちゃんはキラキラドキドキしたいんでしょ?それでいいじゃないか。それが戸山香澄の生き様なんだからさ。過去のことなんて今に至るまでの通過点に過ぎないよ」
「・・・・・」
あれ?黙っちゃった。何か変なこと言ったかな?
「なんていうか・・・神剣先輩すごいなって。うーん、これはモテるのも納得だなー・・・」
「え?」
「あ、何でもないです!そろそろ家ですね!今日はありがとうございました!」
こうして一日は終わった。さて、俺も帰るかなあ・・・・
ピロン!
すると幼馴染のトークルームにメッセージが。
たえ:みんな、今日時間ある?よかったら次のターゲットについて話をしたいの
ついに来たかあ・・・そろそろだと思っていたが・・・
Soya:了解。各々、来られる時間を連絡してくれ。家の鍵は開けておく。
さて・・・どうでるか。
その後約1時間して、幼馴染軍団は俺の部屋に勢ぞろいしたのであった。
遠藤ゆりかさん、今までお疲れさまでした。
さて、ポピパ編ヒロインは有咲と見せかけて香澄です!
香澄ヒロインの小説って少ない・・・少なくない?
ちなみに香澄が小さいころいじめられてて物静かな子だったというのは、
小説版の設定を輸入&アレンジしたものになります。
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