勧善懲悪BanG Dream!   作:光の甘酒

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第4話 ポピパのことを世界で一番好きなの私だから

香澄ちゃんが取り乱してから数十分、ショックで気を失っていた香澄ちゃんを明日香ちゃんと香澄ちゃんのお母さんと介抱し、ベッドに運んだ。

 

 

「ごめんね神剣君」

「いいですよ。とりあえず僕が見ているので」

 

 

香澄ちゃんのお母さんはそう言って部屋を出た。意識を失っている娘の部屋に男の俺を一人残すのはいささ注意が足りていないとも見えるが、それだけ俺のことを信頼してくれている証であるのでそれは純粋に嬉しかった。

それに香澄ちゃんも本当に辛いのだろうと思う。少しタイミングがずれていたら自分が被害に遭っていたかもという恐怖心、これは以前有咲ちゃんを助けたときのことがフラッシュバックしたのもあるだろう。まあ、俺が一緒なら絶対に死なせないがね。

そして自分をいじめていたヤツとはいえ、名前も顔も知っている人間の命が奪われたこと。

この町に住んでいると「~で事件がおきた」という情報は回覧板やニュースを通じて入ってくる。

しかしどれも名前も顔も知らない人が被害に遭っているため「まあ怖いわね」で済んでしまっており、所詮は他人事と思う人が大半であるのだ。そんな中で自分の知る人間が被害に遭い、あまつさえ命まで落としてしまったという事実は重く、身近な日常でも十分起こりうることであるということを現実に思い知らされたということになる。

もし被害に遭ったのが島田ではなくポピパのメンバーだったら?もしこれが自分の家族だったら?

そう考えてしまうのはある意味当然で、15歳の少女にはあまりに重く、そして残酷なものであることは想像に難くない。

 

 

 

「んっ・・・」

「おはよう、香澄ちゃん」

「そうやせんぱい・・・・?」

 

 

どうやら眠り姫がお目覚めのようだ。

刺激しないようにゆっくり声をかける。

 

「あれ・・・・わたし・・・・?」

「あんまり急に起き上がらなくていいよ。ゆっくりしてなよ」

「あ、はい・・・」

 

 

ボーッっとしたまま香澄ちゃんは生返事をする。

しかし徐々に覚醒し、表情が変化するのにそう時間はかからなかった。

 

 

「奏也先輩・・・・奏也せんぱいぃぃぃぃぃ・・・」

 

 

その後覚醒するなり大泣きを始める香澄ちゃんは泣き止み、冷静になるのに30分以上も要したのである。

 

 

「あのっ・・・すみませんでした!」

「いいよ。とりあえず今日は一日ゆっくり休もう」

「はいよ。じゃあ俺は帰るから、戸締りをしっかしりてね」

「はい!」

「それじゃあ・・・」ギュ

 

 

しかし俺が歩みを進めることはかなわなかった。

 

 

「あれ・・・?なんで私奏也先輩の袖なんて掴んで///すみません!今日はありがとうございました!おやすみなさい!」

 

 

そのまま某ラッコアニメの焦るときの効果音をならしながら怒涛の勢いで家の中に入っていってドアを閉めてしまった。

 

 

「一体なんだったんだ・・・?」

 

 

 

Soya:通り魔で死者が出たのは知っているか?

氷川紗夜:ええ

ヒナ:島田って人?

Soya:そうだ

たえ:それがどうかしたの?

 

 

その夜、俺はトークアプリで島田が昔香澄をいじめていたやつで最近絡んできたこと、俺がボコったこと、そしてそれを受けて香澄がショックを受けて体調を崩してしまったことを話した。

 

こころ☆:放置しすぎるのもあまりよくないわね?

奥沢:そうだね。おじいちゃんの家を調べる日程早く決めたほうがいいかも

Soya:俺もそれを提案しようとしていた

 

 

結果、各々予定を調整して1~2日以内に決めていこうということになった。

そして香澄ちゃんは次の日も学校を休んだ。

迎えに行こうと家を出たときにメッセージが届き、まだ体調が戻らないからということだった。

事情が事情なのでポピパの中でも、その日はお見舞いはもうちょっと様子を見てからということになったみたいだ。

 

 

「明日はいけそうです!!」

 

 

そんなポジティブなメッセージが届いたのはその日の夜。

それを聞いて安心した俺は翌日いつも通り向かいに行くべき就寝したのであった。

 

 

 

 

「あれ?おたえ・・・とポピパのみんな?」

 

 

朝戸山家に来るとポピパの4人も来ていた。

 

 

「香澄、昨日休んだから。今日は来られるって言ってたしせっかくだから一緒に行こうと思って」

「なるほどな。その方が香澄ちゃんも喜ぶかもな」

 

 

そして俺はインターホンに押す。

 

 

「はーい!奏也先輩?」

「うん。あとポピパのみんなも来てる」

「わっ!そーなの?もうすぐ行くから玄関まで入ってて下さい!」

 

 

その導きに応え、俺たちは戸山家の玄関までお邪魔する。

 

「ごめんねーお待たせ!」

 

 

そしたらそんなに時間がたたずに香澄ちゃんが出てきた。

 

 

「香澄にしてははえーじゃねーか」

「あー!有咲ひどい!奏也先輩が来るようになってからは寝坊とかしてないんだよ!」

「あはは、さすがの香澄もその辺は大丈夫かあ」

「でもよかった、香澄ちゃん元気そうで」

「そうだね、やっぱ香澄がいないと」

「えへへー照れるよー」

 

 

よかった、思ったよりも元気そうだ。

 

 

「さて、時間もないしそろそろいくぞ」

「「「「「はーい!」」」」」

 

 

5人は元気に返事し、ぞろぞろと外へ出る。

・・・そう一人を除いては。

 

 

「あれ?香澄?どーしたんだよ。早くいくぞー」

「そ、そうだね!うんうん、今、行くから・・・」

 

 

そう言いながらも一向に足が動く気配がない。

それにしびれを切らしたのか、有咲ちゃんが香澄ちゃんに歩み寄り、手を引く。

 

 

「ほら、いくぞー」

 

 

しかし手を引いたその刹那。

誰も予想していないことが起きたのだ。

 

 

「い、いや!」バシッ

「・・・・え?」

 

 

手を振り払われた有咲ちゃんはもちろん、その場にいた全員が驚きの表情を隠せてない。それはそうだ、あの香澄ちゃんが親友の手を振り払ったのだから。

 

 

「いやっ・・・おそとは・・・お外はいやぁ・・・・・」

 

 

そこにいたのはさっきまでの元気いっぱいの戸山香澄ちゃんではない。

その表情は外に出ることに怯え、あの日の夜-

島田が犠牲になり、震えあがっていた日のものであった。

 

 

「お、おい香澄・・・」

「・・・・あ」

 

 

そして自分がやってしまったことに気が付いたのか香澄ちゃんは目に涙をため、震えだした。

 

「ごめっ・・・有咲・・・!そ、そんな、そんなつもりじゃ・・・」

「香澄、おい香澄!落ち着けって!なっ?」

「ごめん、ごめんね有咲・・・ごめんね・・・・・!」

「香澄!!」

 

 

そして香澄ちゃんはそのまま身を翻し、家の中に戻ってしまった。

 

 

「香澄!!」

 

 

すかさず有咲ちゃんはその後を追い、ポピパのメンバーと俺も後に続く。

自室へと戻った香澄ちゃんは布団を頭にかぶり、震えていた。

 

 

「なあ香澄。どうしたんだよ?こんなの香澄らしくないぜ?」

「あ、有咲・・・怒ってない・・・?」

「んなことで怒るかよ。話してみ?力になれるかわかんねーけどさ。その・・・友達・・・なんだからさ」

「あ、有咲あ・・・・」

 

 

そして香澄ちゃんは島田の事を語りだす。かつの交流、犠牲になる前まで話していたことまで。

 

 

「いままでこういう事件とかってさ・・・他人事だと思っていたんだ。でもね、こうやって知っている人が犠牲になって・・・ほんとは昨日も学校に行こうとしたんだけど、どうしてもお外に出るのが怖くて・・・こんな事件は身近なんだ、これで狙われたのが友達だったら?家族だったら?ポピパのみんなだったら?って思いが外に出る怖さを一緒にあふれてきちゃって・・・それでこんなことになってるんだと思う」

 

おおむね俺の予想通りだったようだ。もう少し俺が気を使ってケアしてあげるべきだったんだな・・・

不覚だ。

 

 

「ばーか」

「は、ばか!?ひどくない?」

「私・・・私たちはいなくなんねーよ。その・・・私たちは5人でポピパっていつもいってんじゃん。誰一人欠けることなんてありえねーしずっと一緒でいるっていつも言ってんじゃん・・・・なんでもっと私たちの事頼ってくんねーんだよ?」

「そうだね。香澄、私たちはいなくならないよ。もっと仲間の事信用してもいいじゃない?」

「さーや・・・・!」

「そうだね。それに今の私たちにとっては今香澄ちゃんが欠けてる状態なんだよ?」

「りみの言う通り。5人でポピパなんだから、まずは香澄が戻ってこないとダメ」

「おたえ・・・・」

 

 

やっべえ泣きそう・・・・

なんだこのいい子たちは・・・・いい子たち過ぎて汚い俺の存在が浄化されそうだよ・・・・

 

 

「みんな、ありがとう!!!!!」

 

 

その瞬間、戸山香澄は完全復活を遂げたのである。

 

 

「しかし有咲・・・あんたほんと香澄のこと好きなんだね」

「なっ!?そんなんじゃねーし!!!」

「そういえばこの前ポピパが世界で一番好きなのは私とか言ってたらしいじゃん」

「なぜそれを!?」

「有咲ちゃんのおばあちゃんから聞いた。盆栽の世話をしながら語りかけてたとか・・・・」

「ばあちゃんめええええええ」

 

 

そんなことを暴露したら茹でタコなんて軽く凌駕するレベルで顔を真っ赤にする有咲ちゃんの姿がそこにあった。

 

 

「あーりさー!」

「香澄!きゅ、急に抱き着くんじゃねえ!」

「あーりさ!」

「沙綾まで!?おい、暑いから離れろ!」

「りみ、わたしたちも」

「そうだね、おたえちゃん!」

「「えーい!!」」

「おーまーえーらー!」

 

 

俺はその尊い光景を見て、まるで無我の境地に達した修行僧のような表情をしていた。

 

 

「・・・・?奏也、鼻血出てるよ・・・?」

 

 

と思っていたら煩悩の塊でしたスミマセン許してくださいなんでもしますから。

 

 

「ああ、尊い・・・・」

 

 

瀬田さんのようなセリフを吐きこれからきたるべく宿命へ向けて、ひそかに覚悟を固める俺であった。




ワイ、ポピパちゃんの仲いい感じ大好きやねん・・・

「ポピパのことを世界で一番好きなの私だから」という有咲のセリフは実はこちらも小説版(のコミカライズ)が元ネタです。
こっちの有咲はアニメ・ガルパとは性格が全然違いますがマジでいい子です(ステマ)

最終章ということで多分5話じゃ収まる気がしていないので、終わるまでお付き合いくださればと。
引き続きよろしくお願いします!
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