「弦巻さん、ご用件は?」
足立が殺された翌日の朝、俺は弦巻豪さん・・・こころのお父さんに呼び出されいた。
「通り魔の件から手を引き給え」
「なっ・・・・!?」
「私が今まで君たちがやっていたことを知らないと思っていたのかい?」
「・・・全部知ってたんですか」
「ああ。それを踏まえた上での忠告だ」
「・・・なぜ止めるのです?」
「なぜだと思う?」
その言葉を聞いた瞬間俺はこころのある言葉を思い出した。
”この荒神勇馬って人知ってるわ。お父様のパーティで何度か会ってるもの”
「・・・まさか!荒神勇馬とつながりが・・・!?」
「だとしたらどうする?」
「あんたをつるし上げて奴のことを吐かせる・・・・!」
俺は戦闘態勢に入った。
しかしその瞬間、大量の黒服の人が俺に一斉に襲い掛かってきたのである
「神剣奏也!おとなしくしろ!」
「おとなしくしろって言われておとなしくする奴がいると思ってんのかよ・・・・!」
俺は構わず黒服を迎撃する。
さすがはSPとして訓練を受けたエージェントだ。しかし俺の動きも負けていない。
厳密には、動きの完成度では負けているのだろうが、俺のほうはオッサン仕込みの我流。
時に力任せに制圧し、時にイレギュラーな動きをする。そういったテクニックで翻弄しつつ、敵を倒すのだ。
「オラァ!」
「くっ・・・貴様!もっと人を呼べ!」
「キリがねえ!」
ダメだ、今までの奴とはレベルが違いすぎる・・・このままでは物量で負ける。
ならば・・・総大将を狙うのみ!
「オラァ!」
そして俺は素早く移動し、弦巻さんの背後に回るとそのまま人質にとることに成功した。
「動くな!動くと大将のクビがポッキリいっちゃうぜ?」
「キサマァ!」
よし、このまま情報を聞き出して・・・
「・・・・なるほど。いい動きをする」
「なんだと?」
「だがまだ若いな・・・ふんっ!」
「なんだとぉぉぉぉぉ!?」
次の瞬間、俺はあっという間に一転攻勢をくらい弦巻さんに拘束されてしまったのである。しかし俺も負けられない。すぐさま拘束を解き、反撃に出る。
「よせっ!ここは私が相手をする」
動こうとする黒服に制止をかけた弦巻さんはそのまま俺に向かってきた。
「そんな遅いパンチじゃ私にはあたらないぞ?」
「おっさんのくせになんて動きしやがる・・・・」
いや・・・まて・・・この動き・・・まさか!?
「つ、弦巻さん!あんたまさか・・・・!」
「チェックメイトだ」
そしてその瞬間。
俺は弦巻さんの一撃をくらい・・・そのまま意識を手放した。
そう・・・俺は敗北したのだ。
※
「目が覚めたかね?」
目を覚ました俺はベッドに横たわっていた。そしてその傍らからは弦巻さんの声がした。
「弦巻さん・・・あなたは・・・・もしかしてオッサンの・・・荒神連也先生の・・・」
「・・・ああ、元弟子だ」
「やはり・・・あの動き・・・」
「まずは先ほどの無礼を許しておくれ。君の実力を試しておきたかったのだよ」
「それであんな挑発を・・・黒服の人まで使って一体何のために?」
「奏也くん、君には改めてこの事件解決のために動いてもらいたいからだ」
「・・・わけをききましょう」
実は弦巻さんはオッサンが死ぬ前、情報収集にあたっていた。
しかし迎えたのはオッサンの死とスケープゴートの逮捕による収束。
この結果に納得できない弦巻さんは独自に調査を続けていたらしい。しかし、ある日それが敵側に察知され、バレてはいないものの警戒されているのが今の現状ということらしく、事件は解決したいが弦巻の人員を使えばそれが完全にバレてしまう恐れがあるとのことだ。
そこで俺という存在がいた。俺ならば敵に全くマークされていないし、フットワークが軽い。
つまり弦巻さんは俺に弦巻家の臨時エージェントになれといっているのだ。
「なるほど・・・話はわかりました。こちらとしても弦巻家のバックアップを受けられるのはありがたいので」
「君ならそう言ってくれると思ったよ。・・・では、入ってきてくれ」
「え・・・?」
「失礼します」
弦巻さんの掛け声で入ってきたのはなんと蘭だった。
「彼女は当家お抱えの情報屋の家系でな。華道の家元という表の顔の他に、その気になれば総理大臣の預金残高までも調べることもできる情報屋という顔も持っている。君ともすでに交流していると思うがね」
マジかよ、美竹家半端ねえな。
「そうだったのか・・・・道理ですげえ情報収集能力だと思ったぜ。ん?ってことは俺が蘭と知り合ったのは弦巻さんが仕向けた必然だったわけか。・・・ってことは俺があの日、荒神の情報を発見したのも発見しやすいように資料の位置調整をしていたな?」
「ゴメン、そうなんだ。落としたのは予想外だったどさ」
「いいや、構わんさ。むしろ正体がわかってスッキリしたぜ。それと弦巻さん、もうちょっと聞いてもいいですか?」
「ああ」
俺はかねてより気になっていたことを聞いた。
「なぜ俺たちの悪党狩りを知っていながら止めなかったのか・・・です」
「ふむ。そのことかね」
これが最大の謎だ。弦巻はおそらく蘭を通してすべて知っていたのだろう。
しかもこころまで実働で動いている。自分の娘が危ないことに手を出しているのはふつう見過ごせないだろう。
「それは・・・君を信じていたからだ」
「おっしゃってる意味がわかりません」
「いずれこの事件は再発し、君たちがかかわってくるのは間違いないと私は踏んでいた。しかし君にそれに対応しうる力はあるのか?君が今まで解決したモノ程度でつまずいているようではとてもじゃないが任せることはできない。そう思ったのだよ。さすがに車に撥ねられたときは肝を冷やしたがね」
「なるほど・・・しかし今こうやって呼び出されているということは・・・」
「ああ、合格だよ。しかし・・・君はもっと強くなる必要がある」
「・・・・?」
「こころや他の子たちは・・・この作戦から除外するんだ」
「いままでの作戦はアイツらがいたからこそです!確かに弦巻の人間であるこころは考慮する必要がありますが・・・・!」
俺は突っかかる。俺一人の力じゃない。みんながいてこその作戦成功だ。
「なあ奏也くん。現実的な話をしようか。蘭さん、言ってあげなさい」
「・・・はい。ねえ奏也、まずはゴメン。私はみんなで解決したい・・・って思って動いてたけど父さんや弦巻さんの話を聞いて・・・ね。だから、アンタの知ってる美竹蘭じゃなくて、弦巻家の情報屋・美竹蘭としての言葉で聞いて。この件にみんなを巻き込むってどういうことかわかる?」
「どういうこと・・・とは?」
「奏也、あんたは足立という死人を出したことをもっと深刻にとらえるべき。アンタなら情報の重要性を理解して方向性をもっと相談してくれると思ってたのに・・・私に相談もしないで勝手に情報を流してさ。その結果が足立という死ななくてもよかった人が死んだ」
「くっ・・・・!」
「それにヤクザなんかよりも質の悪い「国家権力」を敵に回すとどうなるかってことを理解してる?ヤクザと違って警察はあらゆる情報を手に入れることができるし、その気になれば人ひとりの命なんて思いのままだよ。
今はまだ奏也たちの存在は露見していないが、露見した場合は消されるか一生マークされて生きていくハメになる」
確かに・・・言われてみればその通りだ。あの時の俺は両親・そしてオッサンの仇を打てると舞い上がっていた節がある。
こんな簡単なことに気づかずに俺は・・・・
そうだ、アイツらは・・・あいつらを巻き込んじゃいけない。
「ひとまず話はこれで終わりだ。君がこちらの条件をのんでくれるなら弦巻家として全力でバックアップしようじゃないか」
こうして話は一旦終わった。
俺は考えることが多すぎるこの現状をどう消化したものか自問自答しながら、帰路に就いたのであった。
※
その後幼馴染たちと合流した。そこには現実を目の当たりにし、少し恐怖を覚えている面々の姿があったのだ。
情報を渡した足立がすぐに消された。この事実はつまり、真相を暴こうとするものは容赦なく消されるということを意味する。そのことを薄々感じているのだ。
「しかしなんであの記者の人は消されたんだろ?」
「・・・おそらくあのネタを使って荒神本人を脅しにかかったのだろう」
日菜の疑問に答える。
「・・・・少し冷静になったほうがいいようだ」
「冷静になる・・・とはどういうことでしょうか?」
「いつものノリで何とかなるだろう、これでオッサンの仇が討てる。みんな、なんとなく気軽に考えていたんじゃないか?」
「「「「「・・・・・」」」」」
「これで分かった・・・こんな疑わしきを罰する、えげつない行為はいともたやすく行われるんだ。少し間違えれば消される。特に俺みたいな身寄りのない奴ならまだしもお前らはお前らの場所があるんだ」
「奏也らしくないなあ・・・いつもならもっと堂々としてるのに!」
「うん、なんか変」
「そうよ!私たちの存在がバレたわけじゃないなら打てる手はいくらでもあるわ!」
「もしかして奏也くん・・・私の事気にしてる?」
美咲が閉じていた口を開く。
その通り。荒神勇馬・琢磨がオッサンの弟・甥だとすると美咲はこの二人の親族ということになる。
犯罪者とは言え親族を私刑にかけようとしているんだ。気にしないほうがどうかしてる。
「それもある」
「それなら気にしなくていいよ・・・お父さんやお母さんもほとんど関係が切れちゃってるみたいだし、私自身存在を知らなかったくらいだしさ・・・」
「だがそれだけじゃないんだ。・・・それでな。この件はしばらく様子を見ようと思う」
「「「「「「えっ!?」」」」」
まあそうなるわな・・・・
ここで俺は蘭に聞いた、足立を死なせてしまったことの意味と国家権力を敵に回すとどうなるか・・・ということを話した。
「「「「「・・・・・・」」」」」
その話を聞いてみんなが黙る。
「わかってくれたか?まだ俺たちは動くべきではなかったのかもしれない」
「で、でも奏也くん!」
「すまんが俺はこれから用事があってな。もうすぐ出ていかねばならんから話はこれで終わりだ。また何かあったら召集する」
「奏也!まだ話は終わってないよ!」
「いいから!・・・用事があるといっただろう。早く出て行ってくれ」
「奏也・・・!」
「日菜、気持ちはわかるけど今は引きましょう」
「・・・・そうだね。今はみんな冷静じゃないし、頭を冷やしたほうがいいと思う」
「・・・・納得いかないけど仕方ないわね。奏也!また来るから待っているのよ!」
強引ではあったが〆ることができた。
不満げな顔をする幼馴染たちを家からだし、俺は弦巻さんに連絡を取る。
「どうも、神剣です・・・ええ、お受けします。詳しく話を・・・わかりました」
そして俺は電話で指定された場所へ向かうべく、準備を始めたのであった。
「すまない・・・・でもわかってくれ・・・・」
※
「ぜっっっったいおかしい!」
奏也の家を追い出された後、つぐみちゃんのお店で私たちは話していた。
「ええ、日菜の言う通りよ。あんな奏也、初めて見たかもしれません」
「やっぱそう思う?なんというか今日の奏也・・・焦り?隠し事・・・?とにかくなにかおかしかった」
「あー・・・付き合い短い私でもわかるってことはやっぱみんななら一目瞭然だよね」
「ほんっと頭にキちゃうわ!」
あたしはちょっと困惑していた。
確かに今回の件を甘く見ていたのはあるけど、それにしてもあの強引な奏也はいただけなよ!って。そもそもあんな奏也初めて見た。奏也はすごく強くて、作戦も冷静に、綿密に練って、突然のトラブルにもすぐさま対応できる。そんな人のはずなのに。
これはあたしだけじゃない。みんな同じことを考えているようだね。
「ねえ、みんな!奏也、これから用事があるいっていってたわよね?なら後をつけてみない?」
「こころ、さすがにそれは・・・・今回の件に関係ないかもしれないし」
「でも美咲も気になるわよね?」
「・・・それはそうだけど」
「・・・・いこう」
するとおたえちゃんが言った。
「このままモヤモヤしてても仕方ないし、何もなければそれでいい。でも奏也が私たちに隠れて何かをしようとしているなら・・・それは知っておきたい」
「・・・・そうですね。私たちが何かをするかどうかはおいておきましましょう。現状を把握するのはいいかもしれません」
「きまりだねっ!」
そんな会話をして私たちはすぐさま羽沢珈琲店を出た。
さあ、奏也。奏也が今何を抱えているのか、それを教えて・・・・!
そして家から出る奏也を発見し、隠れてそのまま奏也の様子をうかがう。
すると・・・そこに1台の大きい車が現れた。
「あれは・・・うちの車だわ!」
「えっ!?こころの家の・・・?あ、言われてみればそうだ」
そして奏也はそのまま車に乗り込み、そのまま発進してしまったのだ。
当然追い付けるはずもなくそのまま・・・奏也を見失ってしまった。
「でもうちがかかわっていることはわかったわ!これなら何か調べられるかも!」
そしてただならぬ気配を察知したあたしたちは・・・弦巻家へ急いだ。
※
「まさかこんなデカイ車が来るとは思いませんでしたよ」
「ここなら移動しながらだし誰かに話を聞かれる心配がない。さて、まず奏也くんにやってもらいたいことがある」
「なんでしょう?」
「足立記者を殺した実行犯。こいつはもう調べがついている」
「なんですって・・・・!?」
「こいつは荒神勇馬個人とつながりのある殺し屋だ。ほぼ専属といってもいいね」
「ってこたあ俺がやるのは・・・」
「こいつの始末だ。ああ、安心してくれ。奏也くんに殺しはさせない。捕縛するだけでいい」
やっぱりな。この話の流れからしてそうなる気はしていた。
「おそらく奴らは足立のことは目の前に飛ぶハエくらいにしか思っていないだろう。しかし再び自分を脅し、なおかつ腕利きの殺し屋が失踪するような事態になったら・・・?」
「そういうことですか!」
「君は話が早くて助かるよ」
真相を知る者が現れたのはイレギュラーな事態だが、俺が足立に渡した情報自体は大したことない。
もしかしたら荒神琢磨かも・・・?といった揺さぶる程度の少ない情報だ。
見るものが見れば単体で効力がないことなんてわかってしまう。
しかしもっと真に迫る情報を持つ者が脅迫してきたら・・・・?
足立のような小物でも潰す用心さを持っているのだから間違いなくそちらも潰しにかかるだろう。
そしてそこで懇意にしている殺し屋が姿を消す。そのあとうまくやれば本人を引っ張り出せるかもしれない。
「奏也くん・・・・ひとつ聞いてもいいかね?」
「・・・・なんでしょう?」
「君は・・・死ぬ覚悟はあるのか?」
そう、相手は今まで何人も殺してきたプロに加え、国家権力を振りかざした大ボス。
”失敗”
それはすなわち”死”を意味する。
「弦巻さん、人を傷つけんとする者は自分も傷つけられる覚悟がないといけないんですよ」
天然で怒ると怖いけどいつだって真実を見抜いていたおたえ。
ハチャメチャでいっつも巻き込まれてばっかだったけど、本当に仲間を大切に思うこころ。
他の人のことがわからないといいながらも、人のために力を惜しまない日菜。
カタブツに見えて意外と抜けているところもあるが、芯が熱い紗夜。
思いがけぬ再会を果たし、今もこうやって縁がつながっている美咲。
そして蘭、リサ、彩、香澄ちゃん・・・・そしてたくさんの人たち。
みんなの笑顔を浮かべる。
「俺の命ひとつであいつらの笑顔が、町の人たちの笑顔が戻るなら・・・喜んで捨てますよ」
「そうか・・・」
「まあもっとも・・・・・」
「死ぬ気なんぞさらっさらありませんけどね」
オッサン、父さん、母さん。
俺、やるからさ。そっちで見守ってくれよな。
「よし、ではこれから実行する内容を伝える」
こうして俺の命を懸けた最終戦が始まろうとしていた。
次の展開どうしよ(考えてない)
まあこんなノリでここまで続いたんです、なんとか走り切ります!
★元ネタ解説★
●総理大臣の預金残高も調べられる
恨み屋本舗というコミックに登場する情報屋の文言だけお借りしました。
●いともたやすく行われるえげつない行為
ジョジョの奇妙な冒険7部 スティールボールランのボスであるファニーヴァレンタイン大統領のスタンド名、D4C。
★評価のお礼★
銀シャケさん ★9ありがとうございます!
引き続きよろしくお願いいたします!