なお、作者に医療の知識はございません。今までのウンチクとは別に、フィクションということでお願いします。
「患者は17歳男性!腹部の刺し傷からの出血が酷く、血圧がかなり低下しています!」
「輸血の準備だ!患者の血液型は!?」
真冬の日暮れ。日が沈むのは早く、まだ18時にも関わらず外は真っ暗だ。
・・・どうしてこんなことになってしまったんだろう。
神剣奏也という人は絶対に負けない、絶対に倒れない。
あたしの強さの目標であり憧れだった。でもその奏也が今生死の境を彷徨い、明日をも知れない状態になっている。
みんな目を腫らし、顔をぐずぐずにして黙り込んでいる。もちろんあたしもだ。
あたしたちは・・・何もできない。ただただ、病院の先生が行う処置の様子を耳で聞いているだけ。
「なんだと!?それは本当か!?」
そこでお医者さんの怒号が響く。何かあったのかな・・・?
「申し訳ありません、この中に・・・」
話を聞くと奏也の血液型は通常のA・B・O・ABに分類されるものではなく特殊なもの(いわゆるRh-とかボンベイタイプとか)らしい。しかし最近同じ血液型の人が大きな事故に巻き込まれ、最寄りの血液センターにも十分な量のストックがないというんだ。
「ちょっと待ってください・・・それじゃあ、このままだと奏也は・・・・」
「・・・・非常に危険な状態になるでしょう」
「「「「「・・・・・・!」」」」」
おねーちゃんがそれを口にするとお医者さんは躊躇なく、しかし言い辛そうにそういった。
「いやあ!奏也あ!目を開けてよぉ!」
「そうよ!こんな時まで寝てるなんてとんだ寝坊助さんだわ!!!
その言葉を聞いたみんな。その中でたえちゃんとこころが叫ぶ。
おねーちゃんはこの世の終わりのような顔をしてその場にへたり込み、美咲ちゃんはどうしていいかわからない表情で固まり、そしてあたしはなにも考えられなくなっていた。
「くっ・・・この時間は診察も終わってるし、血液提供者がほとんど募れない・・・!このままじゃ・・・もって30分でしょう・・・」
そして追撃といわんばかりにお医者さんは現実を突きつけてきた。
「どうにか・・・どうにかならないの・・・!?」
もう・・・手は残されていないの?
もう奏也と話すことも・・・彩ちゃんを奏也のことでからかって笑うことも・・・
・・・・・待って
「彩ちゃん・・・・!」
私はあることを思い出し、すぐさまスマホを開いてパスパレの公式ページに飛ぶ。
見るのは彩ちゃんのプロフィール蘭だ。
「あった・・・・!先生、この血液型!」
「・・・・これは!」
そう、そのプロフィールに書かれていた血液型。それは奏也のものと同じだったんだ。
「・・・そういえば!この血液型の名称、どこかで見たことがあると思ったら!」
おねーちゃんも何かを思い出したようですぐ電話をかけ始めた。
「今井さん!つかぬ事を聞きますが血液型は・・・」
おねーちゃんはどうやらリサちーに電話をかけているようだ。
「すぐに迎えを送るよう頼みます!今井さん、奏也を助けて・・・!」
そして電話を切ったおねーちゃんはお医者さんに告げた。
「私の友人が・・・同じ血液型のようです。すぐに来るようにお願いしました」
「よく思い出せたね!おねーちゃん」
「以前、Roseliaで血液型占いのようなことをやったことがあって。その時に今井さんが言っていたのをなんとなく覚えていたのよ」
「これで二人分・・・!あと1人いれば間違いないのだが・・・!」
一人から採血できる量は限りがある。安全を確保するにはできるだけ多くあればあるに越したことはないらしい。でも、奏也の血液型、2人そろっただけでもすごいのに3人なんて・・・・
「今、香澄に話をつけたよ。来てくれるって」
「えっ!?香澄ちゃんもなの!?」
「うん。香澄から聞いたことがあるんだけど、香澄って小さいころ、昔輸血が必要なくらいの大きい交通事故に遭って、血液型が特殊なせいで輸血に苦労したんだって。確かその時聞いた血液型が・・・って思ったらアタリだった」
「これで三人・・・・!先生!足りますよね!?」
「ええ、3人分もあれば十分でしょう」
すごいすごい!これはもはや運命って言えると思う!
もしかして奏也が彩ちゃん、リサちー、香澄ちゃんに出会ったのはこの日のためだったのかもしれない。
「よし、こころちゃん!さっそくお父さんに言って3人を迎えに行って!」
「わかったわ!10分で連れてくるから待ってて!」
※
「奏也!」
「奏也くん!」
「奏也先輩!」
そしてしばらくして3人が到着した。
「日菜ちゃん!奏也くんは!?」
「今手術室だって・・・それよりも彩ちゃん!」
「う、うん!輸血だったね!」
「紗夜・・・何があったの?」
「詳しいことは後程。今はこっちが優先です!」
「そうだね!わかったよ!」
「・・・ねえおたえ。奏也先輩・・・そういうことだよね?」
「香澄・・・・」
「また・・・私の知ってる・・・しかもすごく大事な人が・・・・」
「香澄!」
「・・・!?」ビクッ
「気持ちはわかるよ。でもね、大事なのは今、それを考えるのは後だよ。今は一刻も早く奏也を助けないと・・・後悔が増えるでしょ?・・・香澄はそれでいいの?」
「・・・・絶対嫌だ!」
「うん。じゃあ今やれることをしよう?」
「それではお三方、こちらへ」
そして3人は、看護師さんに連れられ別室へ行った。
そしてしばらくして、奏也の手術が始まったのだった。
※
あれから何時間経っただろう。手術中のランプは未だ点灯しており、待合の椅子にはみんながひたすら祈るような格好で座り込んでいた。
「みんな、少し休んだ方がいいよ。特に丸山さん、今井さん、香澄は血を抜いてるんだし」
諸々の手続きをやってくれてた蘭ちゃんも加わり、そういう。
たしかにみんな疲労困憊といった感じだ。特に血を抜いたこの三人はキツそうだね。
「あっちの病室が丸々空いてるから、ベッドとか自由に使っていいってさ」
「でも・・・」
「彩ちゃん、気持ちはわかるけどさ。疲れてるだろうし休んできなよ?何かあったら呼ぶしさ」
「香澄もだよ」
「今井さんもどうぞ」
こんな感じで3人は空いているという近くの病室に行った。
加えてあたしたちも交代で休むということになり、先にこころちゃん、美咲ちゃん、たえちゃんが一緒に向かった。
つまり、この場にはあたし、おねーちゃん、蘭ちゃんが残ったわけだ。
「聞かないの・・・・?」
沈黙を最初に破ったのは蘭ちゃんだ。
「うーん、聞きたいといえば聞きたいけどさ。今はみんな疲弊してて冷静に話なんて聞けないだろうし、まず奏也が助かったら・・・かな」
「ええ。それにあなた方が無理やり奏也にやらせたのではないのでしょう?冷静じゃないときに話を聞いて判断が鈍るのはよくないですからね」
「紗夜さん・・・日菜さん・・・・」
「今は信じて待とうよ」
※
あれからしばらくして、各々が休憩を終えて手術室の前に戻ってきたタイミングだった。ついに手術中のランプは消え、その扉が開いた。
「先生・・・!」
あたしは真っ先に先生に詰め寄る。
「手術は成功しました」
その言葉を聞いた瞬間、みんな喜びの声を上げる。
しかしあたしはそうしつつも先生の少し浮かない顔に違和感を覚え、質問を重ねたのだ。
「それで・・・奏也の意識は・・・・?」
「・・・意識はまだ戻りません。それに手術は成功しましたが経過を見てみないことには何とも言えないところがありまして・・・・」
やっぱり。なんとなくそんな気はしてた。
喜びも束の間、といった感じであったけど、ひとまず命が助かったことにはみんな安堵した様子だった。
その後、リサちー、彩ちゃん、香澄ちゃんには「奏也は通り魔に襲われて負傷したということ」のみを伝えた。
そして蘭ちゃんから、お見舞いは大丈夫だけど奏也がここに入院していることは誰にも秘密であるということが付け加えられたのだった。
※
「こんにちは!奏也くん、お見舞いに来たよ!」
私は練習の後、奏也くんのお見舞いに来ていた。
「今日はね、いっぱい練習したんだよ?でもパスパレのみんなを心配させちゃったんだ。千聖ちゃんになんだか上の空よ?って。しかも日菜ちゃんは今日はお休みでね・・・・う・・・うええええええん・・・・」
気丈にふるまったつもりが、私はたまらなくなり泣いてしまう。でも泣いた私にかけられるいつもの優しい声は聞こえてこないままだ。
「なんでなのお・・・・どうして奏也くんがこんな目に遭わなくちゃいけないのお・・・・・・・」
いつだって私を守ってくれて、いつだって私を笑わせてくれた奏也くん。その奏也くんにいくら問いかけて帰ってくる返事はない。
いつでも聞けた声が聞けないということの辛さを全身で感じていた。
「でも、このままじゃいけないよね!」
そうだ、奏也くんはきっとすぐに目を覚ますはず!
ここで私が落ち込んで奏也くんが起きたときに怒られてたんじゃ奏也くんに悪いよね。
「私らしさ・・・だったよね?奏也くん。私、頑張ってるから。待ってるから。奏也くんも・・・がんばれ!」
正直から元気かもしれない。でも私は無理やり自分を奮い立たせ、そう宣言しました。
※
「リサ、紗夜。どうしたのかしら?」
「え・・・?」
「湊さん、どう、とは?」
突然友希那がそう声を上げた。
とぼけるふりをしてみるがアタシにもこうなっている原因はわかってる。
もちろん、紗夜も同じ気持ちだと思う。
「あなたが一番わかっているのではないのかしら?今日の音、これは何かしら?あなた達らしくもない・・・ひどい音よ」
「友希那さん!そこまでいわなくても・・・・」
「いえ、いいんです宇田川さん。とぼけるような真似をして申し訳ありません。今日は体調が悪いようです」
「リサも?そうなのかしら?」
「え!?アタシは・・・・」
「・・・・なにかあったのかしら?」
参った。友希那には隠し事できない。もうさすがに奏也のことは知らないだろうけど何かを見抜いた目だ。
「紗夜・・・・」
「今井さん・・・いたし方ありませんね。お話しします。ただし、このことは一切、他言無用でお願いします」
アタシたちは奏也のことを話す。
通り魔に襲われ、意識不明の重体で入院していること。
そしてなんらかの都合で病院は関係者以外に他言無用であることを。
「奏也くんが・・・・!?」
「うん・・・」
「そんな・・・!奏也先輩・・・」
「うう・・・」フラッ
「白金さん!しっかり!」
紗夜がふらつく燐子を受け止める。
「でも事情があって私たちは病院を知ることはできないということね・・・口惜しいわ・・・」
「申し訳ありません・・・」
「ごめんね友希那・・・」
「構わないわ。そうね、今日はもう練習になりそうにないし二人でお見舞いにでも行ってきなさい」
「いいの?」
「ええ。早くいつもの二人に戻ることを願うわ」
「・・・ありがとう、友希那」
※
「え?紗夜は今日行かないの?」
「ええ・・・実は日菜がちょっと体調を崩してて。今日は今井さんだけでいってきてください」
「そっか・・・うん、わかったよ!
そして病院へ向かい、病室に入る。
「あれ?彩?」
「リサちゃん!?」
そこには彩がいたんだ。そしてもう一人、病室へ入ってくる気配がした。
※
「奏也先輩・・・どうかな?」
「どうだろ・・・・手術は成功したんだし、あとは目が覚めるのを待つしかないよ」
「うーん、そうだよね・・・」
私はおたえと奏也先輩のお見舞いに来ていた。
病室へ向かうべく、廊下を歩きながらそんな会話をしていた感じだ。
「大丈夫。奏也には香澄の血が流れてるんだから。香澄の元気いっぱいのキラキラドキドキの血があれば意識不明なんて屁の河童」
「ぷっ・・・なにそれ・・・・でもそうなんだよね。今、奏也先輩の中には私の血が流れてるんだよね///」
うわっ!そう思うとなんか恥ずかしい!
不謹慎だけどちょっと嬉しいと思っちゃった・・・・
「・・・・ねえ香澄」
「・・・・?なに?おたえ?」
「香澄はさ、奏也のことが好きなんだね」
「え!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
「うーん、その反応。やっぱそっかー・・・・」
「え、あの、違うの違うの!」
「・・・・違うの?」
「うー・・・違わないけど違うのー・・・・おたえのばか!」
「ばかって言われた・・・」
「えっと、その、それはそうじゃなくて!」
顔から火が出てるみたい・・・・・
なんでバレたんだろ・・・・
「で、好きなの?」
「・・・・好きです///」
「そっか。うん、応援する。でもね香澄、最後は自分で・・・・自分たちで決めることだから」
「え?それってどういう意味・・・・?」
「秘密。あ、私飲み物買ってからいく」
「じゃあ私も・・・」
「香澄は先行ってて。少しの間奏也の寝顔を独り占めしててよ」
「・・・・///おたーえー!」
「あはは、その怒り方、有咲みたい」
「もう!」
「香澄はなにがいい?」
「・・・・カル●スウォーター」
「りょーかい」
そういっておたえはぱたぱたと自販機へ向かった。
うわー・・・なんだろこの気持ち。でもずっと自分で秘めていた想いが誰かと共有できてうれしい気持ちもある。
そんなことを考えて病室へ入ると、そこには彩先輩とリサ先輩もいた。
「あれ?香澄ちゃん?」
「彩先輩!リサ先輩!」
「香澄も来たんだ」
「はい!おたえも一緒で・・・・」
そういった瞬間。私たちの注意は全く違う方向へ向かった。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
「「「えっ!?」」」
それは病院の駐車場に止められていた車が突然爆発した音で・・・
その炎は勢いよく天へと昇って行ったのだった。
前回から日が開いて申し訳ありません・・・
仕事がクッソ忙し上に超難産でございまして・・・
動きの鈍い話だったかと思いますが、次回は思いっきり動かすつもりです。
しかし前話はかなり衝撃的だったようですね・・・・
お気に入りがゴリっと減って、そして同じくらいお気に入り登録がされ±0って感じに落ち着きました。
かなり賛否があったようで驚いてます。
よろしければ感想などお聞かせください!
引き続きよろしくお願いいたします!
★評価のお礼★
ビエンさん ★1ありがとうございます!精進します。