さて、件の飲み会から2日休みが明けて実質初出勤の今日、俺はあるモノを目にしてしまう。
「戸山先生!この報告書、間違ってますよ!」
「あれ・・・?出す前には確かに・・・」
「言い訳無用!チヤホヤされていい気になってるんでしょうが仕事は別です!」
「わ、私べつにチヤホヤなんて・・・!」
「おだまりなさい!いいから早く直してくださいね、今日中に!」
「わ、わかりました・・・・」
こんな感じで成瀬先生が香澄ちゃんにつらく当たってるところであった。
「ね、酷いでしょう?成瀬先生、戸山先生が赴任してきてからあんな感じで」
「何か理由があるんですか?」
その様子を見て、隣の席に座る加藤先生は俺に話しかけてきた。せっかくなので疑問を口にしてみることにしたのだ。
「そりゃあ戸山先生が来るまで成瀬先生が職員室のアイドルでしたからね。それが急に若い子が来て男性職員の目を全部奪っていったんですから。嫉妬でしょう」
「なるほど・・・」
うーむ、女の嫉妬というのは怖い。特に立場が上の成瀬先生だ。仕事を絡めながら上手いことやっているみたいだ。
しかしこれはよくないな。このことは間違いなく香澄ちゃんの疲れた様子の原因の一端を担っているだろう。もはやパワハラといっても差し支えない。
しかしストレートに香澄ちゃんをかばうと俺のいないところで香澄ちゃんがどんな目に遭うか・・・・
少し手段を講じてみよう。香澄ちゃんには少し我慢してもらうことになるが様子見だな・・・・
そんなことを考えていると下田先生が香澄ちゃんの方に近寄り、話しかけていた。
俺は耳を澄まし、その会話を聞き取る。
「戸山先生。成瀬先生、相変わらずひどいですね・・・」
「そんな!私が悪いんです!」
「いえいえ、さすがにあれは目に余りますよ!なんなら少しお手伝いしましょうか?放課後は体育教官室にずっといますので、書類を持ってきていただければ手伝えるところは手伝います」
「えー・・・でも悪いですし・・・」
「そんなことありませんから!ねっ!?」
「わ、わかりました・・・じゃあ・・・・」
ありゃ。香澄ちゃん、全然乗り気じゃなさそうなのに勢いに押されちゃったなこれは。
うーむ、普通なら同僚の仕事を手伝うほほえましい職場風景なんだが相手があの下田先生だからなあ・・・
しかも体育教官室なんて中でやりたい放題じゃん。
こいつあくせえ、ゲロ以下の臭いがプンプンするぜ!
「動きますかね」
俺はひそかにそう呟き、放課後まで仕事をしたのであった。
※
「下田先生っ!失礼します!」
「やあ、戸山先生!」
私は放課後、書類を持って下田先生の待つ体育教官室にやってきた。
正直乗り気じゃないんだけど職場の人間関係や空気を悪くするのは後々デメリットになるし、なにより下田先生は親切で言ってくれているはず。
無下にするのもなんか申し訳なくて、なし崩しに来てしまいました。
とりあえずその雰囲気を気取られないように元気に体育教官室に入ったわけだ。
「じゃあ、はじめましょうか!」
あくまで体裁を崩さず、いつも通りの元気な私でいる。
そしてしばらく仕事を進め、終わりの目処がついたところで休憩にしましょうと下田先生がお茶を淹れてくれた。
「いやーしかし成瀬先生・・・ちょっと戸山先生にキツすぎないですかね?」
「私が未熟なだけですよ~」
「戸山先生は優しいですね」
他愛のない話。下田先生の口からは成瀬先生の悪口が多めに出てくる。
確かに成瀬先生にはあまりいい感情をもっていないけど、やっぱ陰口とか悪口はやだな・・・・って思う。
「そういや戸山先生、神剣先生と知り合いなんでしたっけ」
「あ、はい!高校生の頃お世話になって!ずっと海外行ってたらしいんですけど最近帰ってきて、しかも同じ職場なんてびっくりしました!」
そこからはじまる奏也せんぱいに関する話。私はついつい楽しくなり、奏也せんぱいがいかにいい人かをいっぱい話した。
そしてその話の途中、急に真剣な表情になった下田先生は私の目を見つめ、離し始めた。
「戸山先生・・・実は僕・・・戸山先生のことずっと気になってたんです」
「えっ!?」
突然の告白。
どうしていいかわからずあたふたする。
え、これほんとにどうすればいの!?
「えっあのっ・・・そのっ・・・」
「好きです、付き合ってください!」
「あのっ・・・ごめんなさい・・・」
そしてつい出てしまった謝罪の言葉。
私の心は決まっている。だから深く考えることもなく、無意識にこの言葉がでてしまったのだ。
「あの!私、下田先生のことそういう風にみたことなくて!それにその・・・私、好きな人が・・・」
「神剣先生ですか?」
奏也せんぱいの名前を出された瞬間、火を噴いたように顔が赤くなるのがわかる。そしてそれと同時に、下田先生の表情が曇るのがわかった。
「やっぱり・・・・さっきから神剣先生の話をする戸山先生、楽しそうでしたから」
「あの・・・えっとですね・・・・・・っ!?」
言葉を返そうとした瞬間、突然強烈な眠気が襲ってきた。
頭が揺れ、視界が歪む。そして必死に見開いた目の先には・・・したり顔をした下田先生がいて、そして私の意識はまどろみの中に溶けていった。
※
朝の下田先生と香澄ちゃんのやり取りをみて不信感を覚えた俺は、日中誰もいない時間帯に体育教官室に忍び込み盗聴器を仕掛けていた。
しかし初日ということ仕事が長引き、電源を入れたのが今。最初から会話を聞くことが叶わなかったわけだが・・・・
「戸山先生!戸山先生ー!ふふふ・・・寝たか。さすが睡眠薬は強力だぜ」
なんと大変。どうらや加藤の野郎は香澄ちゃんに睡眠薬を盛ったみたいですねえ
睡眠薬を盛るってお前、●獣先輩の専売特許ってそれ一番言われてるから。
「とりあえずハメ撮りでもしてそれをダシに色々と・・・」
さらに物騒なことつぶやいてやがる。さて、そろそろいきますかねえ
ガチャッ!
「どうもー下田先生!ちょっと聞きたいことがあってですねえ!」
俺は体育教官室のドアを勢いよく開ける。
さて、ドアを開けるとそこには寝息を立てながら可愛い顔で眠る香澄ちゃん。そしてズボンを脱いでパンツ1枚になって、間抜けヅラで香澄ちゃんのブラウスのボタンに手をかけようとしている下田がいた。
「ありゃ、ストリップ大会中でしたか」
「神剣先生!?なんでここに!?鍵がかかってたはずじゃ・・・」
「カギ?そんなん掛かってたんですかね?力づくでドアノブ回したから気づかなかったです!!!」
「この野郎・・・!」
怒りに顔を染める下田。そして下半身もエレクトしてビンビンな下田。
これからお楽しみって時に邪魔されて怒る気持ちもわかるけどね。スマンがそれ以上はダメですよ。
「そんなエレクトした汚ねーもんみせんでくださいよ。それにアンタ今何しようとしてるんです?それ、犯罪ぞ?」
「黙れ!お前がいるせいで俺は・・・」
「あんたの恋が叶わないのと俺がいることに因果関係なんざねーよ。それにこういうことするビチグソ野郎が何偉そうなこと言ってるんですかって感じですよ」
「てめえ・・・先輩にナメた口ききやがって」
「うわ!さすがにここで先輩だの後輩だの持ち出してくるのは予想外だったなあ・・・まあでも、見ちゃったもんは見過ごせないな」
まあ盗聴してたからきたんだけどね。
「俺をナメるなよ・・・俺を誰だと思っている?」
「うーん・・・誰っていわれてもなあ」
「お前も教師の端くれなら”錯乱墓高校”くらい聞いたことはあるだろう?」
ふむ。錯乱墓高校。読者の諸君は覚えておいでだろうか。
かつては伝説のヤンキー高校として名を馳せていたが、7年ほど前に一人の男にアタマとNo.2、No.3を倒された上に、たった5人に学校を制圧され一気に地位を落とした。
そして何を隠そうそのTOP3を倒したのは俺で学校を制圧したのはおたえたち幼馴染。俺が知らないわけないんだよなあ。
詳しくは本編第三章を参照だ。”さんしょう”だけにな(激寒)
「知ってますよ。でも今は廃れちゃってますよね?」
「ああ。だが廃れる前、俺はアタマをやっていた。つまり・・・ケンカは大得意ってことだ。おい神剣、言ったよな、俺の邪魔をするなって?お前わかりましたっていったよな?」
「犯罪の邪魔をするななんてことに同意した記憶はねーよ。それにアンタ・・・錯乱墓高校のOBでしかもアタマかよ・・・」
「ビビったか?」
こいつが26歳ってこたあ俺の1個上・・・いや、廃れる前に卒業してるってことは2個上か。
ということはアイツらのことも当然知ってるってこった。
「とりあえずお前が今見たモンは全部忘れさせてやる。そんで恥ずかしい写真でも撮って俺のパシリにしてやんよ」
「そいつは光栄だ。ぜひお願いしたいね。ただし・・・・」
「あ?なんだよ?」
「パシリになるのはお前だ」
※
「さっさとぶちのめしてやる!」
うーむ、見るからにおキレになっていますわね。
まあ関係ないけどそれに・・・
「なんだよオメー。なんか雰囲気が大した事ねえなあ。まだガキの頃の渡瀬や夢先の方が殺気があったぜ」
「え???なんでお前アイツらのこと知って・・・?」
「そりゃ一緒に遊んだ仲だからな。一撃で寝ちゃったけど」
「ちょっと待て・・・龍清と圭吾が一撃でやられて・・・しかも神滅栄鬼をやったのもおんなじ奴だって噂だ・・・まさか・・・まさかああああ・・・!」
あ、こいつ察したようだな。まあさっきのヒントで察しなかったら脳みそ足りねえどころじゃないと思うが。
「お前が”unknown”なのか!?」
「うわっ、その恥ずかしい通り名まだ残ってたのかよ!?7年前だぞ!?」
思わぬ反撃を食らう俺。だがしかし、やることは変わらんな。
「さて、おしゃべりは終わりだ。よし、ここでお前に選択肢をやろう。俺にやられて恥ずかしい写真を撮られて奴隷になるか、恥ずかしい動画を撮られて奴隷になるか」
「せ、選択肢がないじゃないか・・・」
「ブッブー時間切れーじゃあ両方お見舞いしちゃいまーす」
「く、くるなあ・・・こっちへ来るなあ!」
ごめん、それ無理。
「とぼけたこと言ってんじゃねえぞコラ。てめえ香澄ちゃんに何しようとした?意識奪って辱めようとした外道野郎のくせにいっちょ前にブツクサいってんじゃねーぞ」
「た、助けてくれ~なんでもしますから~!」
「ん?今何でもするって言ったよね?じゃあ・・・」
「ぎゃああああああああああああああああああああ」
お仕置き完了。
まーた俺のデータフォルダがクッソ汚い写真と動画で埋まるのかあ・・・壊れるなあ
「とりあえず、このことバラしたらどうなるかわかるよね?」
「わかったわかったわかったよもう!バラまくんじゃねえぞ!」
「んん?それが人にものを頼むときの態度??」
「ば、バラまかないでください・・・よろしくお願いいたします」
「よろしい」
まったく、俺はなんでこんなことやってんですかね・・・?
別に悪党狩りでも潜入でも何でもないただのバイトみてえなもんなのに。
「ううん・・・」
そこで香澄ちゃんが目に入る。
その寝顔を見た瞬間、そんな気持ちはどうでもよくなった。
「ま、いっか。守れたし」
そんなことを考えながら俺は香澄ちゃんを抱きかかえ、体育教官室を後にしたのであった。
引き続きよろしくお願いいたします!