下田騒動から1日。
香澄ちゃんは睡眠薬を盛られたせいか前後の記憶がはっきりしておらず、とりあえず俺たちは昨日のことを香澄ちゃんに告げないことを約束した。
香澄ちゃんは改めて下田の交際の申し出を断り、現在に至る。
「神剣先生、コーヒー買ってきました!!」
「ありがとうございます」
放課後の職員室。俺は下田の買ってきたコーヒーのプルタブを開け一息。
あ、ちなみにコレは俺が命令したとかじゃないよ?
下田が勝手に俺を怖がって勝手に俺の機嫌を取ってるだけだ。
奴からしてみれば、フられた事実よりもアイツの弱みである恥ずかしいデータをたくさん持ってるいる俺の方が気がかりで、さらにヤンキー出身の奴からすると圧倒的な力を見せつけられて逆らう気をなくしてるのだろう。
「そういえば戸山先生は?」
「戸山先生なら部活ですよ。顧問を3つ掛け持ちしてるんで大忙しです」
「・・・・3つ!?」
思わず驚きの声を上げてしまった。
1年目の女性教師が受け持つ量じゃないぞ・・・・?
「ホラ、成瀬先生いるじゃないですか。それと教頭先生」
教頭先生。仕事一筋で未だ独身の女性だ。
話すとメチャクチャ優しそうなおばさまって感じだった。
「成瀬先生と教頭先生・・・二人して戸山先生に当たっているんですよ」
「女の嫉妬・・・という奴ですか」
「おそらくは・・・・」
「それに成瀬先生は戸山先生にミスばっかりといってますけどアレ多分ウソですよ。難癖付けたいからミスを捏造してるんだと思います」
なんてこった。パワハラもここまでいくとヤバイな。
ここは調査報告をまとめて弦巻さん経由でなんとかしなければ。
「それはいけませんね・・・とりあえず何の部活を?」
「ええとですね・・・」
俺は下田に話を聞き、ひとまず香澄ちゃんのいるであろうところに向かった。
するとちょうど廊下を歩く、部活がすべて終わったであろう香澄ちゃんを見つけたのだ。
「香澄ちゃん~!次はおれの勉強見てよw」
「コラ、戸山先生でしょ?」
「ワリィワリィ、んじゃあね香澄ちゃん!」
フレンドリーに話し、去っていく男子生徒。
しかしいささかフレンドリー過ぎないか?まあこれが香澄ちゃんの持ち味なんだろうしいいところでもあるが・・・
とりあえず声をかけようとしたどのとき、違う声が響いた。
「戸山先生!なんですか今のは!?」
「は、はい!?」
そこにいたのは成瀬先生であった。
「あなた教師でしょう!?あんな男子生徒のヘラヘラして恥ずかしくないんですか?」
「わ、私ヘラヘラなんて・・・・」
「言い訳無用!生徒に色目を使う、仕事はミスばかりする・・・そんなので教師が務まると思っているんですか?」
「色目!?そんな、私・・・」
うん、これはよくない。
仕方ない、そろそろ仲裁に入るか。
と思っていたら・・・それだけは終わらなかった。
「なにをしてるのですか?」
「教頭先生・・・」
そこに現れたのは教頭先生。
俺が知っているにこやかな物腰のやわらかい上品なおばさまといった感じだ。
「戸山先生が・・・・」
今あったことを脚色し、捏造して話す成瀬先生。
「なるほどねえ・・・・まあまあ成瀬先生。戸山先生もお若いんですからちょっとした出来心くらいありますわよ~」
「そうですかね~」
「えっ・・・私ほんとにそんなこと・・・・!」
「まあまあまあまあわかってます、わかってますよ。あまり過激にやりすぎないでくださいね、戸山先生。じゃ、行きましょう成瀬先生」
そういって去っていく成瀬先生と教頭先生。
なんというかすげえ性悪女だなあオイ。
「なんでだろ、私は私なりに一生懸命やってるだけなのに」
「香澄ちゃん・・・いや、学校では戸山先生かな」
「奏也せん・・・神剣先生」
俺は明らかに落ち込んでいるらしい香澄ちゃんに声をかける。
「ごめん、みちゃった」
「そう・・ですか。あはは、大丈夫です!私が、私が頑張れば・・・・ううっ・・・」
香澄ちゃんは涙を隠せていなかった。
「よし、とりあえず今夜飲みに行くか!」
飲みにケーションなんぞ悪習だと思うが、結局のところ適切なタイミングで誘えるかどうかだと思うんですよね。
やれ上司に付き合えだの、給料も出ないのに週末は職場の飲み会で実質サビ残になるだの・・・・つまり”押し付ける”のがよくない。
ただそれだけなのにいまだに”付き合って当たり前””酒を一緒に飲めば誰とでも仲良くなれる”だなんて思ってる頭バッドワールドの老害は多いよね。
まあそれはいい。とまあこんな感じで俺は香澄ちゃんと夜の街へ消えていったのであった。
※
「わたしだってぇ!精いっぱいやってるんれすよー!」
う~~~~~む。
香澄ちゃんがこんなに酒癖悪いだなんて想定外だった。
ものすごいペースが早くてオイオイ大丈夫かよと思い始めたときはすでに遅し。
完全に出来上がっていたのだ。
「ちょっとぉ、聞いてるんれすか奏也せんはい!!」
「き、聞いてる聞いてる」
さっきからずっとこんな感じだ。香澄ちゃんのヒートアップが止まらない。
「なんで成瀬先生はこんなに私にキツイんですかあ!仕事だってちゃんとやってますよぉ!!!!!」
その後は香澄ちゃんは本音をボロボロとこぼし、俺が言葉受けのサンドバックになることで時間がどんどん過ぎていったのだ。
※
さて、明日も普通に仕事があるわけでして。
結構早めの時間に店を出た。時間は大体21時ごろ。
「おーい、香澄ちゃん?」
「うにゅぅ」
「うにゅぅってアンタ・・・・」
香澄ちゃんは店を出てしばらく歩いていたら眠ってしまった。
倒れこむように地面に座ろうとする香澄ちゃんをキャッチすると俺は家まで送っていこうと考えたのであるが・・・
「香澄ちゃんの家知らねえ・・・・」
そう、いつも駅で別れていたので香澄ちゃんの部屋の場所を知らないのだ。
おたえなら知っているだろうとさっき連絡を取ったのであったがどうにも捕まらない。
「仕方ないかあ・・・」
やむを得ず俺の家に連れてくる。
この前の教育実習生事件もあったし少し用心が足りないのではとも思ったが、そこは俺が相手ということで少しは安心してくれたのかもしれない。
そうだとしたら嬉しいものだ。
ひとまず香澄ちゃんを空いているベッドに寝かせ、もう一度起こすことを試みた。
「おーい、香澄ちゃーん」
「うにゃぁ」
「ネコかアンタは」
そういえばさすがに例の猫耳型の髪はやっていないな。
長く伸びて部分的にまとめられた髪はとてもきれいだ。
そしてこうやって寝顔を見ているといつものパワハラにやられ冷めた感じになっている香澄ちゃんではなく、かつての香澄ちゃんのようだ。
そのギャップに思わず心が跳ね、その顔に見とれてしまう。
香澄ちゃん、普通に可愛いからなあ。
「うゆ・・・・?」
「あ、起きた?」
「あれぇ・・・?なんで奏也せんぱいが私の部屋にいるの~?」
どうやらまだ酒が残っているうえに寝ぼけているようだ。
「あ~そっか~これは夢か~。なら好きなのことやってもいいってことかなあ?」
「え?香澄ちゃん何を言って」
刹那。
俺の体は香澄ちゃんにより抱擁され完全に”抱き着かれている”という格好になっていた。
「えへへ~奏也せんぱいだあ~♪」
「えっ・・あの」
「うーんあったかーい!それにすごくぬくもりがあって奏也せんぱいの匂いもいっぱいだな~」
「あっあっあっ」
抱き着かれ、胸に顔を埋められ、ネコみたいにスリスリされることにより、緊張してどもりまくるオタクみたいになる俺。
今のこの状況・・・なんだこれ・・・
香澄ちゃん可愛すぎるでしょ・・・・いやまあ向こうは多分夢と思ってるんでしょうけど。
まさに昔の・・・俺の知っている香澄ちゃんがそこにいた。
やっぱ香澄ちゃんはこうでないとな。っとそんなこと言ってる場合じゃねえ、さすがに酔って寝ぼけている女の子にこんなことさせるわけにはいかないからね。
そろそろ何とかしなきゃ。
「・・・香澄ちゃん、そろそろ」
「ん~夢のくせに意見するなんてナマイキだぞぉ!夢のくせに・・・・・・アレ???????」
徐々に目を開く香澄ちゃん。
目を開ききったところでこれは夢ではないと認識したようで、ただでさえ酔って赤くなっているかがメチャクチャ真っ赤になった。
「そ、そそそそそそ奏也せんぱい??????」
「あ、なんていうか・・・おはよう?」
「いやああああああああああああ忘れてえ!忘れてください~~~~~~~~~!」
その後はしばらく、布団を抱いてベッドでゴロゴロ転がりながら悶える香澄ちゃんの姿を堪能することができたのであった。
「取り乱しました・・・・・」
「あ、うん。まあそういう日もあるよね・・・」
「その気遣いがむしろ痛いですぅ!!!!」
そして落ち着くと、こんなやり取りをしてある程度酔いがさめた香澄ちゃんから話を聞いたのであった。
これ何話までいくんでしょ。
多分あと2~3話かなあ。
香澄は年齢を重ねたのと境遇でかなりクールになってますね。
意外にこういうキャラも似合うのではと勝手に思ってます。
引き続きよろしくお願いいたします!
★評価のお礼★
なるとさん ★10ありがとうございます!