勧善懲悪BanG Dream!   作:光の甘酒

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今回で最終回といったな。
スマン、ありゃ嘘だ。




第7話 失われし輝きの鼓動

「戸山先生」

「あ・・・成瀬先生」

「いくら早く終わっても内容が適当にやっては終わったといえませんよ」

 

 

こんな早くできるわけがない。そう考えていた成瀬は成果を受取りチェックを始める。

どうせアラだらけだ。いつもミスをねつ造している成瀬だが、今回はミスを拾いまくってねつ造の幅を広げてやろうと考えていたのだが・・・・・

 

 

「・・・・・・!」

 

 

まさに完璧。

作成された書類は1文字もミスがなく非の打ち所がない。

ねつ造しようにもこれだけ完璧に仕上がったものに手を加えるとそこから綻びが出て、全体が壊れてしまう。

さすがにそこまで露骨なねつ造をできるわけもなかったのだ。

 

 

「・・・だ、大丈夫です。お疲れさまでした」

 

 

震える声で香澄にOKサインを出す成瀬。それを聞いた香澄は顔には出さないが嬉しさで爆発しそうであり、同時に奏也の凄さを改めて実感していた。

 

 

「ああ、そうだ戸山先生。私が来たついでと言ってはなんですが実はちょっと手伝って貰いたいことがありまして。ものを運んでほしいので体育倉庫前に行きましょう」

 

 

不自然ともいえるこの提案。香澄は隠れている奏也にそっとアイコンタクトを送り、意思疎通を果たしたのち、成瀬についていったのであった。

 

 

 

 

「ついに動いたか」

 

 

明らかに不自然。何が手伝いだバカバカしい。体育倉庫なんて裏にあって基本は誰も寄り付かないし建物の陰になっていて見えない。

さて、どう出るか・・・・?

 

 

「戸山先生、一つ相談があるのですが」

「な、なんでしょう?」

 

 

意を決したように成瀬がいう。

 

 

「今度の校長の聞き取り調査。まさかとは思いますが私にパワハラを受けているなんていいませんよね・・・?」

「あの・・・それは・・・」

 

 

遂に来たな。

よし、香澄ちゃん。打合せ通り答えるんだ。

 

 

「あの・・・やっぱり私、成瀬先生の指導はおかしいと思います!私自身もう耐えられません」

「言いがかりをつけるのはやめなさい!自分の未熟を棚に上げて人をパワハラ上司扱いするなんてなんて失礼な人なのッ!」

 

 

あーあー堪え性なさすぎでしょこれ。

はたから見たら完全にパワハラ真っただ中って感じだ。

 

 

「最後のチャンスです。校長の聞き取りにはパワハラなんてない、すべて私を思っての指導だと答えるのを約束しなさい」

「・・・・嫌ですっ!私はもう私の意思を曲げません!ねえ成瀬先生・・・どうしてこんなことするんですか?成瀬先生だって教師になった日、きっと新しい門出にドキドキしてたはずです。それがなんで・・・・!」

 

 

香澄ちゃんはあくまで成瀬を説得しようとしている。

香澄の願い。それは成瀬の処分をできるだけ軽くしたいというものであった。

優しすぎるんだよ香澄ちゃんは・・・・

そして成瀬が口を開く。しかしその答えは香澄の思いを踏みにじる、最低なものであった。

 

 

「はぁ?ドキドキ?なにそれ?私は単に先生って呼ばれたかっただけ。先生になってガキ共を支配して悦に浸りたかっただけよ。そして職場でいい男をみつけて結婚して、安定の公務員夫婦という肩書を手に入れる。そしてそのまま安定して暮らす・・・・それが私の願いだたのに」

「え・・・・?」

「それをあんたが!全部台無しにした!ちょっと前までは馬鹿な男どもは私をチヤホヤしてなんでもいうことを聞いてくれてたのに!あんたがきた瞬間手のひらを返して!誰も・・・私を見てくれなくなった・・・私の幸せと人生計画を台無しにしたあんなに何をしようと勝手でしょ!!!!」

「・・・そん、な・・・・・」

 

 

香澄ちゃんの顔は絶望色に染まる。

少しでも処分を軽くしたい。自分を陥れた相手なのに助けてあげたい。

そんな心遣いを踏みにじり、ぐちゃぐちゃにするような回答だったのだ。

そしてそれを聞いた香澄ちゃんは目に涙をため、ポケットに手を入れる。

 

 

「残念です・・・成瀬先生」

「・・・・ッ!それは!!」

 

 

香澄ちゃんが手に持っているのはボイスレコーダー。

そう、俺の指示で香澄ちゃんは成瀬との会話をすべて録音していたのだ。

 

 

「戸山あああああ!そいつをこっちにわたせえええええ!!!」

 

 

香澄ちゃんに襲い掛かる成瀬。しかし香澄ちゃんは間一髪回避して逃げ出した。

 

 

「おい!その女を逃がすな!!!」

「!?」

 

 

成瀬が号令を上げると、茂みの中からガラの悪そうな男が続々と出てきた。

 

 

「何人?」

「7人。今日のカモはこの女でいいわけ?」

「いいわ、グチャグチャにレイ●しちゃって。私はカメラを回すわ」

 

 

その光景に戦慄する香澄ちゃん。

そして余裕振る成瀬。

 

 

「驚いた?あんたが言うこと聞かないようだったら強制的に聞かせようと思ってお願いしてたの。私、若いころ結構やんちゃしててね。その時からの仲間なんだ、こいつら」

「今までも・・・・こうやって・・・?」

「そうよ。気に入らない奴はこいつらにレ●プしてもらって撮影。こんなに簡単な口封じはないわ」

「いや・・・来ないで・・・・!」

「もう遅いわ!!!さああんたたち、やっちゃって!!」

 

 

おっと、傍観者キメるのはここまでか。俺も行きますかね。

俺は手に持っていたビデオカメラの録画モードをOFFにし、奴らの方向へと向かった。

 

 

 

 

「俺も混ぜてくださいよ」

「なっ!?神剣先生!?なぜここに・・・・」

 

 

心底驚く顔をしている成瀬。

そして安堵する香澄ちゃんの姿があった。

 

 

「通りすがりですよ。とりあえず香澄ちゃん、あっちの方に行ってくれれば安全だからさ」

「は、はい!わかりました!」

 

 

そう指示すると香澄ちゃんは俺が指定した物陰の方へいく。

 

 

「ちょっ!?何を勝手に!!!!」

「まあまあいいじゃないですか。それに成瀬先生知ってますか?この学校の校則って原則教員にも適用されるんですよ」

「なにが言いたいの・・・・?まあいいわ。見られたなら仕方ないわね。あんたたち!この男もやっちゃって!」

 

 

その掛け声で男たちが臨戦態勢に入る。

 

 

「気が短けえなあアンタ。校則8条、犯罪およびそれに類する行為をしてはならない。第10条、正当な理由なく第三者を校内に入れてはならない。2つも犯しちゃってますねえ」

「ゴチャゴチャうるせえんだよテメエ!死ね!!!」

 

 

話の途中であるが男が一人殴り掛かってきた。

 

 

「人の話は最後まで聞こうって習わなかったんですかねえ・・・」ドゴォ!

「舐めんじゃねええええええ」

「あ゛―!もううっせえなあ!お前が通っていた小学校では人の話を遮って相手に殴り掛かりましょうって教えているのか?めちゃくちゃバイオレンスだなあオイ」ドゴッ!

「アベガブゲゲゲゲガアアアアアアア」

「Wao!(ネイティブ)すっげえ悲鳴!」

 

 

拳を入れた瞬間きれいな放物線を描きながらスクリューして吹っ飛ぶ男を見て空気が変わる。

 

 

「オイ大丈夫か!?テメエ・・・ただじゃ置かねえぞ・・・・!」

「なーんで暴力しか能がない悪党ってみんな同じこと言うかねえ。俺は今成瀬先生と話してるんだけど・・・ま、おめえらと遊んでからでも話はできるかなあ・・・」

 

 

俺が見ている方向を成瀬から男どもに変更する。

 

 

「うーむ。しかしなあ、30にもなる男が集団で女襲うって恥ずかしくねーの?働いてんだろ?こんなことが職場にバレたまずいだろ」

「んなもん関係ねえよ。見たやつ全員ぶちのめせば終わりだ!」

「野蛮だねえ」

「ゴチャゴチャうるせえ!死ね!!!」

 

 

一応やさしさ(大嘘)で気遣ってあげたんだけどなあ・・・

そういうことなら仕方ない。

 

 

「オラアアアアアアアアアアアアア!」

 

 

一斉にかかってくる男ども。うーん、アホじゃな。

さっさと話しをしたいから全員一撃をノルマにするかなあ。

 

 

 

 

「うぐっ・・・・ぐぉぉぉぉぉ・・・・」

「まあこんなもんか。やっぱ素人やな」

「なにが・・・起きたの・・・・?」

 

 

積みあがる死屍累々。とはいっても7人であるが。向こうでの滞在中、任務で同時に10人に20人相手するのも珍しくなかった俺には物足りない。

しかも相手は言ってしまえば素人だ。

そんなことを考えていると成瀬が目を点にしてその場にへたり込むのが見えた。

 

 

「え・・・?全部一撃・・・?無傷・・・?ありえない・・・ありえない・・・・」

 

 

そんなこと言いながらブルブルと震えだす。

まあ誰だって武器を取り上げられて銃を突き付けられたらこうなるだろ。

まさに今、奴らの仲間という武器を取りあげたのだがら当然といえば当然か。

 

 

「さて成瀬先生よ、話をしましょうかね」

「ヒッ・・・・!」

「そんな怖がらないでくださいよ~俺はただ話をしたいだけですし~」

 

 

満面の笑みで近づく俺。日菜あたりに見せたら極悪な笑みとか言われそうだ。

 

 

「こ、こないで・・・・!なんなの・・・なんなのよアンタ!!」

「俺か?通りすがりだって言っただろ?そして・・・・単なる悪党狩りだ」

 

 

そしてついに決着がついた。

 

 

 

 

さて、後日談だ。

あのあと、成瀬は男共々逮捕された。成瀬は俺が撮っていた動画と香澄の持っていたボイスレコーダーが動かぬ証拠となり、男どももそれに伴い全員お縄。

集団で脅迫を企てたいうことで成瀬はその主犯となった。強姦までさせようとしたことだし、おそらく起訴されて実刑になるだろう。

そのあと俺は環境が変わらないように後片付けに奔走した。

まず色々情報を操作して成瀬は逮捕前に自主退職した扱いにする。そして弦巻さんの力を借りて警察・報道陣に圧力をかけて事件が明るみにならないようにしておいた。

 

 

「奏くん、こっちこっち!」

 

 

そして事件が発生し、成瀬が逮捕されてから数か月。

さすがに内部的にごまかせない部分があって、一時は非常に良くない雰囲気が流れていた学校も元気を取り戻してゆく。

そう、もうすぐ学校の一大イベントである文化祭だ。

その準備が進められており、開催まであと数日というところに迫っていた。

俺と香澄は見回りという名目でデートっぽいことをやっているといった具合だ。

 

 

「にぎやかだねっ!」

「ああ」

「奏くんはここの出身だったよね。何かやったの?」

「まあ人並みには。露店で食い物売ったくらいさ」

 

 

お気づきの方もいるだろうが俺と香澄の関係はここ数か月で変わった。

まずは呼称。付き合うのにさすがにせんぱい呼びはないなということで今の形に収まった。

そしてそれ以上の進展はというと・・・・デートで手をつないだくらいでそれ以上はない。

お互いに初の相手ということで、どこまで距離を詰めていいのか・・・勝手がわからないのだ。

 

 

「結構大きい規模でやっているから楽しめると思うよ。準備期間をかなりとるし」

「そうだよねっ!めちゃくちゃ力いれててびっくりしたもん!」

 

 

さて、こんな風に明るさを取り戻したように見える香澄。

しかし一度負った傷はなかなか消えないようで、かなりマシになったがやはりどこか陰があるような感じが続いていた。つまり、キラキラドキドキを取り戻せていないのだ。

成瀬の正体を目の当たりにし、さらに逮捕という最悪の結果を迎えたことで、心の優しい香澄はやはりショックを受けているのだろう。

そして俺は頭の中でどうやったら香澄がそれを取り戻せるかをずっと考えているがなかなか思いつかない。

 

 

「さて、そろそろ戻ろうか」

「そうだね!」

 

 

一通り見回りを終えて職員室に戻ろうとする俺。

しかしそこで何かが聞こえてきた。

 

 

「これは―」

 

 

香澄がその音にすぐに反応する。

耳を澄ませて聴く。このメロディを俺たちは知っているからだ。

 

 

「夢見るSunflower―」

 

 

香澄がつぶやく。そう、それはPoppin’Partyの持ち歌であった。

香澄たちが作り、そして歌ったものだ。

俺たちは顔を合わせ、その音がするほうへと向かう。

 

 

「あれ?香澄ちゃんと奏也せんせー?」

 

 

そこにいたのは軽音部でガールズバンドを組んでいる生徒たちだった。

それぞれリードギター、ギター、ベース、キーボード、ドラムに分かれて音楽を奏でている。

 

 

「コラ、戸山先生でしょ」

「神剣先生でしょ」

「あはは、ごめんなさーい」

「文化祭の練習?」

「はい!」

「その曲は・・・・?」

「あ、これはですね!この辺で伝説になっているPoppin’ Partyっていうガールズバンドの曲なんです」

「で、伝説・・・?」

 

 

香澄が少しひきつった顔で復唱する。

話を聞くところによるとこうだ。

今現在でもこの町ではガールズバンドは大人気であるのだが、その中でも火付け役となった伝説とよばれる5つのバンド。

そのうちの二つであるPastel*PalletとRoselia知名度があるので顔も名前も知れ渡っている。しかし残りのPoppin’ Party、Afterglow、ハロー、ハッピーワールド!はプロデビューをせず、一部を除いて今はひっそりと社会人バンドとして続けてるにすぎないので、ライブハウスに音源が残っている昔の曲は知っていてもメンバーのことがわからないという感じになっているらしい。

確かに曲は知っていても歌っている人の顔はわからないってよくあるよな。(ドラマとかアニメの主題歌とか)

プロ歌手ならまだしも地元のガールズバンドでこのパターンを見るとは・・・・

 

 

「でもここのコードが難しくて・・・」

 

 

そしてボーカル&ギターの子は自分の演奏に納得がいっていないようだ。

 

 

「あ、これはね、こうしてこうすると・・・・・」

 

 

すぐさま香澄が反応する。そして教えたとおりにやると、どうやら上手くできたようで生徒に笑顔が広がる。

 

 

「すごい!香澄ちゃんもしかしてギター経験者?」

「だから戸山先生だよー・・・ま、いっか。んーまあそんなようなもんだよ!」

「経験者どころかその曲を・・・・」

「神剣先生」

 

 

つくったのは香澄たちだ、と言おうとしたところで止められた。

“いわないで”ウインクしてアイコンタクトを送る香澄。

それに俺は静かにうなずいた。

 

 

「じゃ、みんな本番頑張ってね!」

 

 

そういって練習室を後にする。

 

 

「言わなくてよかったの?」

「うん。本人の前でその人の曲をやるのってものすごいプレッシャーだし、私は伝説なんて呼ばれるような人じゃないし・・・・」

「そんなことは・・・・」

「ううん、わかってるよ。いや~しかしでも若いっていいね~!」

 

 

おどけてそんなことをいう香澄であったが、やはり少し陰がある様子だ。

しかし、それと同時にその姿はどこか生き生きとしているように見えた。

その後別れて帰宅し、そんな香澄の姿を見た俺は色々考えた結果あることに気づく。

 

 

「そうだよ・・・なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだ。キラキラを忘れたならキラキラを知ったきっかけをもう一度・・・・あ、もしもしおたえか?うん、実は相談したいことがあって・・・・

 

 

大好きな香澄を助けるために。もう1回、色々とやってみようじゃないか。

俺は考えていたことをおたえに話して、そして計画を実行すべく考えを巡らせたのであった。

 

 

 

時は文化祭当日。

「全員が平等に楽しむ」がコンセプトなだけあって、教員も基本的な見回りがあるだけで、あとは生徒同様の自由が与えられていた。

俺たちは例の軽音部の子を見に行こうと話し、激励するために控室にいったわけだが・・・

ここで一つ問題が起きたようだ。

 

 

「どうしたの?」

「あ、香澄ちゃん・・・」

「だーかーらー戸山先生!」

「あの、この子が・・・・」

 

 

話を聞くにボーカル&ギターの子が昨日から風邪をひいてしまい、喉をやってしまったらしい。

それでもなんとか1曲だけだし・・・と思っていたら今日の朝起きてみると、なんと声が全くでなくなったらしい。

しかも体調もあまり芳しくないようで、ギターを持つ手は震えている。

 

 

「だから演奏は無理だって!来年もあるし、今回はゆっくりやすも!」

「で・・・でも゛・・・わだじは・・・・いい・・・・でも・・・そのぜいでみんなが演奏できないのは・・・・」

 

 

ガラガラにかすれた絞るような、泣きそうな声でいう。

そんな彼女の姿をみるといたたまれないのか他のメンバーも黙ってしまう。

その様子を見て俺も何とも言えない気分になった。

今日のために、そのたった1曲のためだけにどれだけ練習してどれだけ楽しみにしてきたのだろう。

それを想像するだけで胸が締め付けられるようだ。

 

 

「ねえ、演奏するのはさ。夢見るSunflowerなんだよね?」

「え・・?そうですけど」

 

 

香澄が突然口を開きこんなことを聞く。

どうするつもりなんだろうか・・・・?

 

 

「ねえ、あなたのギター。私に貸してくれるかな?」

 

 

そういうと、ちょうどバンドの順番が回ってくる。

そしてそのままメンバーの子たちと何かを話したと思ったら。

香澄はそのまま舞台へと上がっていったのであった。

 

 

 

その姿には。

 

失われたはずの輝きの鼓動をかすかに感じるようであった。




次回こそ香澄編最終回!
最後までよろしくお願いします!
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