道を歩いていたら男の子が5人に囲まれていた。
5人はみんな同じ学校の制服を着ていて、いかにも学生ヤンキーグループといった感じだ。それに対し男の子はいたって普通である。
「オラオラ渡瀬クンとやら!早いとこ俺たちにお小遣いを渡せよ」
「ん?渡瀬と渡せをかけたの?つまんねーwww」
「うるせーよwwwおいおい渡瀬クン、おめえせいでツレに笑われちまったじゃねえか」
「そ、そんな、ボクは悪くないじゃないか・・・」
「おめえが渡瀬なんて名前してるのがわりーんだよ」ボゴッ
「痛い!や、やめてくれよ・・・!」
一人が殴り始め、それに便乗する形で次々と容赦のない暴力が起きる。
でも通行人は誰も止めることなく見て見ぬふりをし通り過ぎる。
確かに5人もいるし余程腕に自信がないとあそこに入っていくなんて無理なんだけど、アタシは放っておけなかった、というか体が勝手に動いちゃったんだ。
「おまわりさん!こっちですこっちで高校生が乱闘してます!」
「あ?サツだぁ・・・?」
「チッ・・・めんどくせえな」
「おい、次までにちゃんと金を用意して来いよ!」
警察なんて本当はいない。
とっさに思いついた方法がこれ、ヤンキー系のマンガとかでよくある手法だ。
そうしてその人たちは走って逃げて行った。
「大丈夫?」
「あの・・・ありがとうございます。それで、その、警察は・・・?」
「あ、ほんとは呼んでないから安心して。あいつら、酷いね」
「ボクの家がお金持ちだからって・・・ああやって待ち伏せして、ああやって毎週毎週お金をせびってくるんだよ・・・」
「最低じゃん・・・親とかには?」
「いえないよ。心配かけたくないし」
「んー気持ちはわかるけどさあ。警察とかは?」
「警察に言ったら親にばれるじゃん!あんた関係ないんだからほっといてくれよ!」
突然大声で怒鳴られる。
確かにアタシたちはたった今顔を合わせ、偶然居合わせただけ。この人にはこの人なりの考えがあるだろうし、理屈では解決できないことがあるのかもしれないね。
「確かにアタシが口出しする問題じゃなかったね。ごめんね、でも限界になったら色々考えたほうがいいよ。それじゃ、アタシはこれで行くから」
「・・・怒鳴ってごめんなさい、ありがとうございました」
「ん、素直でよろしい!じゃあ、またね!」
※
「いらっしゃいませー」
場面は打って変わってバイト。いつも通りレジを打ってると、見覚えのある人が来た。この人・・・前カツアゲしてた人の中の一人だ・・・!
まずい、この前私が警察を呼ぶと演技をしたとき顔を見られてるはず。
「おい、早くしろよ」
「あ、すみません」
アレコレ考えていたらその人がレジにやってきた。
「あ、スミマセン!」
「いいから、はやくしろ」
そのままフツーにレジを打っていく。
そして会計終了まで何事もなく、その人は出て行った。アタシの顔覚えてないのかな・・・?
「んー?リサさーん、どうかしたのー?」
「あ、うん。なんでないよ、モカ」
バイト仲間のモカが気にする様子だけど特に何かされたわけじゃないし、余計な心配をかけたくなかったので何も言わなかった。
・・・けどここからだ。おかしくなり始めたのは。
まず町を歩いているとつけられているような気がしているし、バイト中も怪しい男がコンビニの前を見張っているというのを店長に聞いた。
念のためということで店長に送って行ってもらったことがあったけど、その夜誰かに店長が襲われたらしい。うまいこと逃げられたらしく軽いけがで済んだらしいけど、あの男の人が店に来てから立て続け。明らかに狙われてるのはアタシだし、どう考えても偶然とは思えない。さらに最近になって非通知の不在着信まで来るようになった。
電話に出ても無言、切っても切っても、着信中に電話からも着信があり気が付いたら十分少々で二けたの着信だ。
正直、精神的に参ってしまっていた。でもこんな卑怯なことをする奴らに負けるわけにはいかない。それに友希那達Roseliaのメンバーに心配をかけるわけにいかない。と、そんなところで声をかけてくれたのが奏也だ。
紗夜が信頼しているせいか、奏也本来の持ち味なのかついこの人に相談しようと思ってしまった。
※
「ってわけかな。これが1か月くらい続いている感じだよ」
「・・・大変だったな」
「うん・・・」
「警察や親には?」
「言えないかな・・・心配かけたく無いし。うーん、渡瀬って人の気持ちが痛いほどわかるなー」
「渡瀬・・・ああ、カツアゲの被害者か」
「うん。確かにこういうこと、親とかRoseliaのみんなとかに知られたくないや。ほんと、理屈じゃ解決できないことあるんだねー」
明るくふるまっているようだが、リサの顔は落ち込み気味だ。
まだまともに話して1日目だが、リサはRoseliaみんなから絶大な信頼を得ていて、めちゃくちゃいい奴だ。それに今日一日観察していたら、多分Roseliaはリサというムードメーカーがいないと絶対に回らないだろう。
つまり、リサが不幸ということはRoseliaが不幸、しいては紗夜という俺の大事な幼馴染にまで不幸が及ぶということだ。
それにそんなことをするゲス野郎をこのまま野放しにするのはどうだろうか。
「ひとつ、方法がある」
「え?」
「俺の知り合いに探偵みたいなやつがいてな。そいつに犯人を調べてもらい、直接叩く」
ま、蘭のことがな。リサも蘭のこと知っているようだし、まさか蘭がこの町一番の情報屋だとは思うまい。
「で、でも相手は平気でカツアゲするようなアブナイやつだよ?どうやって?」
「そういうガラの悪い奴らを懲らしめる人も心当たりがある」
「ほんと!?」
「ああ。ちょっと俺のほうで当たってみる。ちなみにコレ、一応秘密な。わかってると思うけど。それまでは十分に注意してくれ。あとこれを預けておこう」
俺はとあるものを手渡す。
「防犯ブザーだ。防犯ブザーははシンプルイズベスト。ヤバいと思ったら線を引っこ抜いてできるだけ遠くに投げろ。それと線を引っこ抜くと内蔵されているGPSから俺の携帯に現在地が送られてくるスグレモノだ。使わないに越したことはないが・・・・一応持っていろ」
「うん!ありがとう!!」
どうやらリサは少し元気になったようだ。俺に話したから、というより今まで誰にも相談できずにモヤモヤしていたのと、俺が具体的な解決策を示したのが良かったのかもしれない。
そしてそのあと、一応リサを家まで送り、俺も帰路に就いたのである。
ので、あるが・・・・
※
さて状況を確認しよう。
リサの家からの帰り道、街灯が少なく比較的暗い一本道の路上。
「あー、そういえばリサを家まで送った店長さんが襲われたっていってたなー」
そんなところを俺は歩いていたわけだが、知らねー間に前方後方の道をふさがれていた。
うん、間違いない。5人組でマスクで顔は隠していて、手には鉄パイプ。しかし参ったな、今どうもケンカするテンションじゃないんだが・・・・
しかしまあ、道をふさがれていて逃げることもできないか。
「うーん、どうしたもんかなー」
「なにブツブツ言ってやがる?死ね!」
「あぶねえ!」
うわっこいつ喋りながら鉄パイプ振ってきやがった!
人が考え事してるのに失礼しちゃうわ!
「今のを避けやがっただと?てんめー・・・」
「ヘイ!なにか楽しそうことやってるわね!」
ゴス!
ゴス!
ゴス!
「ん?なんだ?」
そこで見たものは暗闇の中、チンアナゴを振るう変なマスクをかぶった少女であった。そのチンアナゴの餌食なった3人はその場に崩れ落ちる。
「なんだと!?てめえなにもん・・・グオ!」ゴス!
まあ怖い!鉄パイプなんて握って物騒だわ!」
セリフを言い終わる前にまた一人、チンアナゴの餌食となる。
ってかこいつは・・・
「よう。鉄パイプが物騒っていうが。そんなもんで4人を殴り倒すなんてお前こそ物騒だぞ」
「あら、奏也!ごきげんいかがかしら?水族館のおみやげを持っていったのに家にいないんですもの!それで何かあったのかもって思ってきてみたら案の定だったわけね!」
その正体はこころだった。
どうやら俺に今日遊んできた水族館の土産を持ってきたら家にいなかった。
なにかあったか?と思い探してたら偶然敵に囲まれる俺を発見。
いつものミッシェルのお面はないので偶然持っていたハロハピのお面をかぶって参戦したという具合らしい。
「せっかく色々買ってきたのに。あ!そうだわ、今日ペンギンが脱走してそれを花音が・・・」
「おいテメエ!突然割り込んできて仲間に手を出したくせに・・・俺を無視して話を進めんじゃねえ!」
「そうそう、これみてみて!このチンアナゴのぬいぐるみ、水族館に売ってたんだけど中に鉄芯を入れて表面を硬化させてみたの?素晴らしいと思わない!?」
「あらやだこころちゃんったらチンアナゴに硬い棒(意味深)を突っ込むなんて卑猥ね」
「今日も下ネタがキレッキレね!ちなみにあなたの分も作ってあるわ!帰ったら渡すわね!」
「・・・ビジュアル的に俺が振り回すのは無理があんだろ。」
「おいてめえら!!!無視すんなゴルァ!」
気づいている読者の方々も多いと思うが、変態幼馴染軍団は敵を前にしてもガン無視して独自のペースで会話を続けることが多々ある。
それでいて敵の動きをすべて見切っていてちゃんと倒すのは大したもんだと思う。
「あら?あなたは誰かしら?」
「さっきお前がぶちのめした奴の残りだぞ」
「まぁ!影が薄すぎて気づかなかったわ!」
「このクソアマ・・・不意打ちで勝ったからってチョーシこいてんじゃねえぞ」ピキピキ
暗闇であるがなんとなく青筋を浮かべているのが想像できる。
まあこいつがキレたところでこころには敵わないだろう。
しかし、そこで予想外のことが起きた。
「おいお前ら!何をしている!」
なんとそこに現れたのはリアルお巡りさん。
おいこらクソマッポ、普段仕事しねえくせにこういうときだけ真面目にお仕事しやがって・・・ツンデレかよ
「逃げるぞ」
「了解よ!」
「あ、おい待てい!」
警官が必死に呼び止めるが、俺たちはRPGでめんどくさい敵に当たって逃走確定アイテムを使ったかのような猛スピードで逃走を開始した。
「おらっ!どけ!」
俺は相手の男を押しのけ、逃げる。
それと、男のほうはなんと男はその警官をぶん殴って気絶させ、他の4人もこころに打たれたところをかばいながら逃走していったようであった。あらやだ、見かけ通り野蛮ね!まあ、警官を助ける余裕もないし、これで捕まったら本末転倒なので逃げることにした。仕方ないね。
※
「すまんこころ、助かった。日常スタイルだったし、正直ケンカのテンションじゃなかったんだよな」
「チンアナゴの威力を試せたから大丈夫よ!」
「相変わらずクレイジーな奴だぜ」
「それで?なんで奏也は襲われていたのかしら?」
「・・・今から言うことは他言無用で頼むぞ」
俺はこころに今日あったことを説明した。
「と、いうわけでな」
「なるほど、リサが困っているのね!これは助けるしかないわ!」
「お前ならそういうと思ったよ。今回はリサの意思を尊重して俺たちだけで動く。他のメンバー、特に紗夜には絶対に秘密だ。明日蘭に調査を依頼する」
「でも相手の目星はついているのかしら?」
「実はこんなものを持っておりまして」
俺は持っていたあるものを懐から取り出した。
「あら?お財布?」
以前他のヤンキーにやっとことと同じ、去り際に押しのけた際、男から財布をスっておいた。俺は財布を開示し、身分が分かるものを探す。
「あったぜ。夢先圭吾。夢も何もないことしてやがるのになにが夢だ。アホくさ」
「住所もバッチリね!年齢は・・・あら、17歳。奏也と同じね」
「マジかー。未成年って色々めんどくさいんだよなー」
「でもやるんでしょ?」
「ま、やるな」
もちろん、手加減するつもりなんざ微塵もない。
ガキならなおさらやっちゃいけないことといいことの違いを体で覚えさせる必要があるだろう。
「ガキっていうけど奏也も同い年よ?」
こころがグサッと一言。容赦ねえな・・・
「・・・そうだな。てか心の声を読むんじゃねえ」
「こころは私よ?私の声ってどういうことかしら?」
「何番煎じだよそのネタ!」
とりあえず蘭に調査を依頼し、まずは奴を完全に特定する。
そこからはいつも通り動き、目的や他に動いている奴を聞き出して始末するという算段を立てた。
「さて、いっちょやりますか!」
「ねえねえ奏也、これがあなた用に作ったチンアナゴよ!我ながらいい出来だわ!」
「こころさん?人の話聞いてました?」
難しいことは奏也に任せたわ!といわんばかりのこころである。
まあ、直前にもっかい話せばいっか・・・
こうして今井リサ救出作戦がスタートしたのであった。
武器がチンアナゴなのは、以前水族館へ行った際チンアナゴのぬいぐるみが売っていたのを私が覚えていたからで特に意味はありません。
仕事の都合で少しの間県外に出るので次話は少し時間がかかります。
引き続きよろしくお願いいたします。
★評価のお礼★
スイカのパンジャンドラムさん
いつも&★10ありがとうございます!引き続きよろしくお願いいたします!