なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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私の中で弥生の専用機が決まりつつありますよ~。

色々と考えたのですが、今は二つにまで絞られてきました。

ぶっ飛んだ機体にするか、それとも貧弱な機体にするか。

悩み所ですね~……。







ご飯ぐらい静かに食べられないの?

 ある程度は予測していた、凰鈴音の昼食時の乱入。

 頼むから、騒ぎだけは起こさないでくれよ~?

 食堂を出禁になるとか、割とマジで洒落になってないからな?

 

「そういや、鈴はいつ頃こっちに戻ってきたんだよ?一言でも連絡くれれば、出迎えぐらいはしてやったのに」

「しょ…しょうがないでしょ。こっちだって色々と急だったんだから……」

「ふぅ~ん」

「そ…それよりも! そっちこそ、なにISを動かしちゃってるわけ? テレビの緊急速報を見た時、本気で驚いたわよ?」

「俺に言われても困るっつーか……」

 

 このざる蕎麦……美味い!

 つるつるで喉越し爽やか! 味も申し分ないし、これなら20人前と言わず、この倍は軽く食べられる気がするぞ!

 このつゆもコクが合っていいし、ネギや山葵との相性も抜群!

 口に入れた時の鼻にツ~ンってくるのが最高なんだよね~♡

 

「ここでイチャつくのは構わないが、もうそろそろ彼女の事を教えてくれないか?」

「そうですわ。別に彼女の事はどうでもいいですけど、朝からあんな風に登場されては、名前ぐらいは知りたくなりますもの」

「私も別にどうでもいいかな」

「おいし~ね~♡ ん? 何を話してるの?」

 

 あ~……もう4分の1も減ってしまった。

 やっぱり、昨日何も食べてないのが今日に響いてるな~。

 

「べ…別にイチャついてなんか……。って言うか、サラッと傷つくような事を言わなかった?」

「「別に?」」

「???」

 

 つゆが薄くなってきた……。

 ちゃんとおばちゃんから替えのつゆを貰ってきて正解だったな。

 

「まぁ、簡単に言えば、鈴は俺の幼馴染だよ」

「「幼馴染……?」」

 

 おや? 少し視線を向けてみれば、なにやら険悪なムードになってませんか?

 箒は普通にハテナマークを浮かべているだけだけど、鈴の方は凄い形相で一夏の事を睨んでいる。

 いつもの私ならば、ここでガクブルしていただろうが、今日は違う!

 私の目の前には絶品のざる蕎麦があるのだからな!

 これを食べていれば、嫌な現実とは少しの間だけおさらばよ!

 

「ん? なんでこっちを睨む?」

「別に!」

 

 さてさて。こちらに飛び火しない間に、私も食事タイムに戻りましょうかね。

 あ、山葵が薄くなってネギも少なくなってきた。

 予備のヤツから追加しないと。

 

「もしや、小学生の時に私が転校した直後に小学校にやって来たのか?」

「お! よく分かったな~! そうなんだよ。鈴は丁度、箒と入れ替わるようにして中国から転校してきたんだ」

「そうだったのか。成る程な」

「そうよ! って……なんかリアクション薄くない?」

「そうか? 別に普通だと思うが?」

「えぇ~……?」

 

 なんか盛り上がってますなぁ~。

 まだまだ余裕だな~。

 そういや、ここってわんこ蕎麦とか出来ないのかな?

 前から一度やってみたかったんだよ。

 一杯の量が非常に少ないから、軽く1000杯はいける自信あるけど。

 

「こいつが篠ノ之箒。前に話した事があっただろ? 小学校からの幼馴染で、俺や千冬姉の通っていた剣道場の娘」

「あ~……アンタが」

 

 やば。無呼吸で蕎麦を貪っていたから、軽い呼吸困難に陥りかけた。

 いくら美味しいからって、息ぐらいはしないとな。

 

「初めまして、凰鈴音よ。今後ともよろしく」

「そうか。まぁ、適当に頼む」

「……あれ? それだけ?」

「それ以外に何か?」

「えっと~……」

(ちょ…ちょっと? これってどういう事? てっきり火花を散らした睨みあいに発展すると思ってたのに、なんかかなりフラットなんですけど? どうして?)

 

 ん? なんか鈴が困惑してないか?

 つーか、早く食べないとラーメン伸びちゃうぞ~。

 

「そんで、そっちのアンタは……」

「イギリス代表候補生のセシリア・オルコット。別に覚えなくてもよろしくてよ? 私も貴女には大して興味はありませんので」

「それってどういう事かしら?」

「そのままの意味ですわよ?」

「アンタ……アタシに喧嘩売ってんの? それとも、同じ代表候補生として、アタシに負けるのが怖いとか?」

「強いとか弱いとか、勝つとか負けるとか、そんな目先の小さな事柄に対してのみ興味を示せない時点で、貴女と私は相容れませんわね」

「……なんですって?」

「確かに、ISの操縦技術を向上させて自分の故国に貢献するのは大事な事ですが、今の私にはそれよりももっと重要な事がありますの。私にとってある意味で人生すらも賭けた大勝負が……」

「そ…そう……」

(あ…あれ~? なんかこの金髪もアタシが予想してたようなリアクションじゃないんですけど~? 私的に思いっきり正面から喧嘩売られると覚悟してたんだけど……)

 

 うあ~……もうかなり無くなってきちゃったよ~。

 これはもう、夕食もタップリと食べる事確定ですな。

 

「えっと~……眼鏡を掛けたアンタは……」

「四組の更識簪。以上」

「終わりっ!? 他には!?」

「趣味は読書と音楽鑑賞。これでいい?」

「適当過ぎる!」

(この子は……別のクラスだから警戒しなくてもよさそうね……)

 

 またつゆが薄くなってきた。

 こりゃ、食べ終わるまでに後数回は継ぎ足さなくちゃ駄目だな。

 

「布仏本音だよ~。よろしくね~リンリン~」

「リンリン言うな! あたしゃパンダか!」

「おぉ~…ナイスツッコみ」

 

 一時の清涼剤として、我が嫁である簪と本音の顔を見よう。

 あぁ……本当に癒されるな~……。

 鋼鉄の拳がいつ飛んでくると知れない環境において、二人の存在は私の宝だよ~。

 

「ねぇ……このさっきからずっと山盛りのざる蕎麦を食べまくっている子は……」

「この子は板垣弥生。俺と同じ一組で、ある意味で俺の恩人なんだ」

「お…恩人?」

「おう。前に色々と勉強を教わって、勉強以外にも沢山のアドバイスを貰ったよ。弥生がいなかったら、俺は今も授業についてこれなかっただろうな……」

「へ…へぇ~……そう~なんだ~……」

(この子が昨夜、一夏が話していた『弥生』ね。この細身で大飯食らいなのは本気で驚いたけど、見た限りは大人しそうな子よね。でも、一夏と凄く仲がよさそうだし、勉強も教わったって……。まさか!? この子の部屋で二人っきり!? それってモロに部屋デートじゃないの!?)

 

 な…なんだ? 背中に未だ嘗て体験した事が無いような悪寒が走ったような気が……。

 

(間違いない! この弥生って子こそが最大のライバル! アタシから見ても相当な美少女だし、スタイルだって凄くいい……。くっ……! なんか自分で言ってて惨めになってきた……)

 

 なんか……鈴がこっちをジッと見てるんですけど……。

 え? 何? 私ってば何もしてないよね? 普通に食事をしてただけだよね?

 

「よろしく、板垣弥生さん。アタシは凰鈴音。鈴って呼んでくれていいわ。私もそっちの事は弥生って呼ばせて貰うから」

「よ…よろ……し…く……」

 

 なんか握手を求めてきたんだけど、ここで断れば絶対に報復が待ってるよな……。

 かと言って、素直に握手に応じれば、その瞬間に手を握りつぶさそうだし……。

 

 少しだけ悩んだ結果、私は意を決して握手に応じた。

 握力は普通だったけど、彼女の目は全くもって笑っていなかった。

 

(これから長い付き合いになりそうね……この子とは)

(な…なんだ……!? この脊髄に氷柱を入れられたような感覚は……!)

 

 言葉に出来ないプレッシャーを感じ、即座に手を離して食事を再開。

 怖い事はお蕎麦を食べて早く忘れよう……。

 

(初対面で早くも弥生の事を呼び捨てだと!?)

(なんて暴挙を……! 許せませんわ……!)

(私の嫁である弥生を本人の許可なく呼び捨てするなんて……! 排除すべきか?)

(む~……。やよっちと握手するなんて……リンリンズルいな~……)

 

 気のせいか? 私の目の前にいる四人から殺意の波動が垣間見えたような気がしたんだけど……。

 んな訳ないよな? 箒やセシリアならともかく、私の嫁達がそんな物騒な事を考える筈ないもんね。

 うん、気のせい気のせい。

 

「しっかし、弥生の食事風景を始めて見たけど…本当によく食べるんだな……。これだけ食べて、このスタイルだろ? 一体どうなってるんだ?」

「ずるるる……ごくん。お…お蕎麦……は消化にいい……から……」

「いやいや。これだけ食べれば消化がどうとか関係無いからね?」

 

 私の事はどうでもいいから、お前は自分の食事をしろっつーの。

 お昼時間だって無限じゃないんだぞ?

 

「もう4分の1ぐらいになってるわよ……。これだけの量をお腹に入れて、尚且つこのスタイル……」

 

 なんでまたこっちを見る?

 

(絶対に全ての栄養があの胸に行ってるわね。じゃないと説明がつかないわ)

 

 またスゲー目で睨み付けてくるし……。

 怖いから、私の事は放置して、好きなだけ隣のキングオブ鈍感とチョメチョメしてろよ。

 それが私の望みでもあるんだからさ。

 

「ねぇ一夏。ちょっと小耳に挟んだけど、アンタってクラス代表をしてるんですって?」

「そうなんだよ~…。なんか、気が付いたらなってた……」

「へぇ~……」

 

 あと少し……あと少しで本当に終わってしまう~!

 こんな事なら、天ぷら(20人前)も一緒に注文しておけばよかった。

 天ぷら蕎麦、最高だよね? 私大好き♡

 

「じゃあさ、アタシがISの操縦の訓練とか見てあげよっか?」

「う~ん……俺としては助かるんだけど、それっていいのかな?」

「ど…どういう事?」

「いやさ。鈴は二組で、俺は一組のクラス代表な訳だろ。それってつまり、今度あるクラス対抗戦ってやつで試合相手になるわけじゃんか。対抗戦が終わった後ならともかく、この時期に他のクラス代表から教わるのはいかがなものかと……」

「い…一夏の癖に妙に頭が回るじゃない……」

(まさか……これも弥生の入れ知恵? くそ……! まさか、こんな形で先手を取られるなんて! 可愛い顔して侮れないわね……)

 

 あぁ……あと数口で終了してしまう……。

 すっごく美味しかったよ……お蕎麦さん。

 絶対にまた食べるからね……。

 

(チッ! 一夏め……余計な知恵を身に付けおって! これでこの中国女とくっつけば、晴れて弥生に付き纏う余計な存在が合法的に排除出来たものを!)

(ですが、これはチャンスでもありますわね……。織斑一夏が彼女に気を取られている隙に私が弥生さんと……エヘヘヘ~……)

(弥生の名残惜しそうにしている顔も、また可愛い……♡ そうだ、携帯で撮ってちゃんと保存しておかないと……)

(なんだろ~……あの顔を見ていたら、むしょ~にやよっちにご飯をあげたくなっちゃうね~)

 

 終わってしまった……私の至福の時間が……。

 麺一本残さずに胃の中へと流し込んで、ついでに薄くなったつゆもゴクゴクと全部飲み干す。

 そんでもって、手と手をちゃんと合わせて御挨拶。

 

「ごちそうさま……でした……」

 

 満腹満腹……♡

 でも、これも数時間後には無くなるんだよね……。

 

「本当に全部食べちゃった……」

「しかも、この短時間に……」

 

 少しお腹が物理的に膨れてしまった。

 妊娠しちゃったっ♡ テヘペロ♡ 

 ……誰かツッコめよ。ここは笑う所だぞ。

 

「これぐらい、弥生さんならば普通ですわ」

「そうだな。私達はもう、この光景は見慣れてしまった」

「弥生の胃袋はブラックホール」

「世界の舞台に立てるフードファイターだよね~」

 

 慣れって怖いもんですね。

 でも、下手に何か言われるよりは、慣れて貰った方がずっと楽ちん。

 こっちも気軽に食事を楽しめるからね。

 

「一……夏……」

「ん? どうした?」

「食べない……の……?」

「え?」

 

 おいおい……話すのに夢中になってご飯を食べてないとか、小学生じゃないんだから……。

 しっかりしようよ。お前はもう高校生なんだぞ?

 

「お…俺だけ? 皆は……」

「私ならもう食べ終わったぞ」

「私もですわ」

「右に同じ」

「お腹いっぱい~♡」

「言っとくけど、アタシも終わってるわよ」

「マジで俺だけかよ……」

 

 一人だけ取り残されての食事とか、普通に悲しすぎだろ。

 って言うか、虚しい。

 

「早…く食べない…と……お昼…の授業…に……間に合わ…ない……よ…?」

「弥生の言う通りだ。もしも食事が遅くて遅刻しました~…なんて事が織斑先生に知られでもしたら……」

「間違いなく、あの出席簿が光って唸り、輝き叫びますわね」

「シャイニング出席簿」

「IS学園校則第一条。頭部を破壊された者は退学となる?」

「退学以前に普通に死ぬわ!!」

 

 流石にこのまま放置するのは可哀想と言う事になったので、一夏が食べ終えるまで待つことに。

 こいつが一人で食べている間、私達は女同士の会話に花を咲かせていた。

 と言っても、私が喋っていたのは主に簪と本音だけだけど。

 他のメンバーからは話を振られた時に返事をする程度。

 

 その後、一夏はなんとか食べ終わって、急いで教室に戻ったお蔭で遅刻はせずにすんで、彼はシャイニング出席簿からは逃れられた。

 けど、今度もし遅刻でもしたら、その時は真っ赤に燃えるゴッド出席簿か、東西南北中央不敗なダークネス出席簿が炸裂するに違いない。

 それを避けるためにも、今後は私も遅刻しないように気を付けないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 




お昼だけで丸々一話……。

どうしてか、私がISの二次小説を書いた時って、この場面は食事風景だけで終わってしまうんですよね……。
 
本当に不思議です……。

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