でも、休んだお蔭でいいアイテムも手に入りました。
ギガンティックアームズの一つなのですが、それを弥生のパワーアップアイテムとして劇中に出そうと考えています。
いつになるかはまだ言えませんが。
シャルル君が出した投影型モニターに一番最初に映ったのは、高級そうな背広を着た白人の中年男性が椅子に座った状態で呆けている姿だった。
彼がシャルル君のお父さん……なの?
「お…お父さん……?」
あ、やっぱそうなのね。
よく見ると、鼻の辺りとか少しだけ似ているような気がするし。
『シャ……シャルロット……?』
あれ? 向こうも彼女が通信を送ってきたことに驚いてる?
これが緊急用だからか?
『こ…この通信をしたと言う事は、何か急を要するような事が起きたのか……?』
「そうじゃない……けど……」
通信越しに親子の対面だけど、二人共めっちゃ困惑してる。
私達もどうすればいいか分からないから、今は黙っているしかないけど。
『まさか……正体がばれたのか?』
「は…はい……」
怯えながらも肯定する。
その背は少し震えていた。
「あ…あの……」
「分かっている。傍に行ってやれ」
お…おぉ~……。
私が何も言ってないのに、こちらがしたい事を分かっていらっしゃる……。
「やはり、姫様はお優しい……」
織斑先生の拘束から解放されて、その場にラウラを置いてからシャルル君の近くまで寄っていく。
「大丈夫……?」
「板垣さん……」
取り敢えず、彼女の頭に手を置く。
すると、彼女の体の震えが止まった。
『か…彼女は……!』
え? 私が何か?
『そうか……無事に彼女に出会えたのか……』
いやだから! まるで私を知ってる風な反応は止めてよ!?
こっちからしたら不気味この上ないから!
『ミス板垣に見破られたのか?』
「いや……彼女だけじゃなくて……」
チラっとこっちを向いてから、モニターを部屋全体を見渡せるように体をどかす。
『なっ……!? 例の男性操縦者にミス・織斑、他にもドイツの代表候補生とロシアの国家代表まで……!?』
「僕の変装じゃ、この人達は誤魔化せませんでした……」
『と、言う事は……?』
「はい……。僕の男装は、最初から見抜かれていたようです……」
『……………』
黙りこくった。怒ってるのかな?
『ハ……ハハハ……! 見抜かれていた……か……』
「お…お父さん?」
今度は急に笑い出した?
この人本当になんなの?
『いや……すまない。別にお前の事を怒っているわけじゃない。流石はブリュンヒルデに国を背負った代表と候補生。そして、ミスター板垣の御息女……ですな』
この人……おじいちゃんの事を知っている?
「お父さん……」
『なんだ?』
「貴方に聞きたい事があります」
『……何を聞きたい?』
シャルル君……いや、シャルロットが唾を飲む音が聞こえた。
「まず、僕の変装は最初からバレることを想定していたんですか?」
『あぁ……』
まずは私達の推理が一つ当たった。
それからも、彼女は私達が推理した事を一つ一つと社長さんに確認していった。
彼は、その全てを頷きながら肯定した。
『……シャルロット』
「なんですか……?」
『私達は親として、お前に最低の事をしてしまった。これは、どんな言い訳をしても、決して許される事ではない』
どんな言い訳をしても……か。
私的には、その言い訳にもよると思うけどね。
『だが、これだけは言わせてほしい……!』
モニターに社長さん以外にも、もう一人、悲痛な顔をしたスーツを着た妙齢の女性が現れた。
『私達は! ただの一度でもお前の事を憎んだ事も疎ましく思った事は無い!!』
『私達の事はどれだけ恨んでくれても構わない!! でも! 私達は貴女の事を心から愛しているわ!!』
涙を流しながら、必死に言葉を紡ぐ夫婦。
この二人からは、微塵も悪意も虚偽も感じない。
「「「「「………………」」」」」
私達も、彼らの言葉を黙って聞いていた。
「…………………」
そして、シャルロットは無言で涙を流しながらモニターの向こうにいる両親を見つめている。
「………お父さん……
『お前……今……』
「話して……くれますか……?」
『……無論だ。お前には、それを聞く権利がある』
そこから、夫婦はゆっくりと語りだした。
二人が、娘を致し方なく蔑にしてしまった理由を。
『デュノア社は……とある『組織』に狙われていた』
「狙われて『いた』? 過去形?」
『そう……過去形だ。私達も未だに驚きを隠せないでいるが、知らぬ間にデュノア社は助かっていたんだ……』
は? 知らない間に助かっていた?
『組織の事は私達もよくは知らない。だが、私たち夫婦は、その組織のエージェントを名乗る男から、会社の経営権と全ての資産を譲るように脅され続けていたんだ……』
「もしか…して……彼女…の事……も……?」
『ミス板垣の予想通りだ。場合によっては娘……シャルロットの事を人質にして、私達を意のままに操ろうと企んでいたようだ。シャルロットの体を使って金儲けをさせるとも言っていた』
………!! それって……まさか……!
「外道が……!」
「どこにでも、性根が腐っている輩っているものね……!」
他の皆も私と同じ考えに至ったようで、その顔は一堂に怒りに満ちていた。
『だからこそ……我々はお前に人質としての価値を無くさせる為に、苦渋の思いでお前に絶対に許されない仕打ちを……!』
『ごめんね……本当にゴメンね……』
あれは心の底から悔いている涙だ。
嘗て、同じ涙を私は見た事があるから、よく分かる……。
「僕は……嫌われてなかったの……?」
『『当たり前だ(よ)!!!』』
よかったね……。本当に良かった……。
『自分が産んだ訳ではないとは言え、貴女は私の一番の親友が産み、愛した子供……。私は、シャルロットの事を自分の子供のように大切に思っているわ……』
『私もだ……。お前は彼女の忘れ形見である以上に、掛け替えのない私の娘……。例え何があろうとも、私達はお前の事を守ると決めた……! その結果、お前に嫌われようとも……。お前が幸せであるならば、我々はそれだけで十分なんだ……』
『私達はね、貴女のお母さんの墓前で、それを誓ったの……』
「お母さんの……」
生半可な覚悟じゃないのは物凄くよく分かる……。
子供の為に命を賭けられる親が、悪人な訳がない。
「ねぇ……さっき、知らぬ間に助かったって言ってたけど、それってどういう意味なの?」
『ついさっきの事なんだが、私達を脅していた連中とは別の人間達がやって来て、いきなり『デュノア社から手を引く』と言い出したんだ』
「「え?」」
ちょ…ちょっと本当にいきなりだね……。
ついさっきって事は、私達と通信が繋がる前……ってか、直前?
『全く見た事も無い二人組の女性達だった。褐色肌に白髪の少女と、サングラスをつけた黒髪の女性達で、二人は姉妹だと言っていた』
「名前は?」
『褐色の少女は【アトロポス】、黒髪の女性は【ラケシス】と名乗っていた。簡単に名乗り、それを他言する事を許した時点で……』
「偽名。もしくはコードネーム……」
『でしょうね……』
ギリシャ神話に出て来る運命の三女神……。
どう考えても本名じゃないでしょ。
「でも、どうして今まで狙っていたデュノア社から手を引くなんて……」
『シャルロット、それに君達も最近のニュースで知っているんじゃないか? 女性権利団体の各支部が謎の襲撃者によって次々と壊滅していると言う事件を』
それ……知ってる。
おじいちゃんもその事で凄く頭を悩ませていたし、ネットの中でも最近はその話題で持ち切りになっている。
根も葉もない噂が所狭しと飛び交ってるけど。
「もしか……して……」
『そう。そのもしかして……だよ、ミス板垣。彼女達、正確には彼女達が所属している組織が襲撃の主犯らしい』
らしい……ってことは、確定事項じゃないんだな。
それは無理も無いか。碌に証拠も無い情報をすぐに信じるのは愚の骨頂だ。
『なんでも、権利団体の連中は、密かにかなりの金を隠し持っているらしいわ』
『彼女達は権利団体の事を【表側の悪】と言っていた。堂々と駆除出来るともな。恐らく、【組織】とやらにとっても権利団体の事が目の上のタンコブだったに違いない』
裏と表の【悪人】同士の潰しあい……か。
なんとも醜いもんだな。
いい気味と言えばそれまでだけど。
『それと、彼女達から【詫び】としてこんな物も貰ったよ』
社長さんがUSBメモリを見せてきた。
それがどうかしたの?
『この中に、彼女達が開発した第3世代型ISの設計データが入っているらしい』
「ちょ……大丈夫なの!? 明らかに怪しいよね!?」
『無論、後で中身をちゃんと確認してみるつもりだ。私達とて、裏の人間からもたらされた代物を簡単に信じる程、馬鹿じゃない』
約一名、私は簡単に信じそうな人間に心当たりがあるけどね。
そこにいる鈍感大魔神とか。
「ね…ねぇ……。僕はもう……スパイをしなくてもいいの……?」
『勿論だ。と言うか、それ以前にお前はスパイとしての知識も技術も身に付けていないだろう?』
「た……確かに……」
変装も『アレ』だったしねぇ~。
『これからは、堂々と女子として学園に通うといい。私達も、政府には『代表候補生が一人、IS学園に向かった』としか報告してないしな。何か目立つ事をしない限りは、向こうはお前がどんな格好をしていても気にも止めないだろう』
いやいやいや!? そんな簡単な報告だけでいいのかよ!?
それで日本行きを易々と許可したフランス政府も大概だけどさ!
「もう僕は……皆を騙さなくてもいいんだね……」
『何度も言うが、本当に済まない……。したくも無い男装をさせて、同級生を騙すような真似をさせてしまって……』
「ううん……。男装自体はそれほど気にしてないよ。これもある意味でいい機会だと思うし、それに……」
ん? こっちを見てどうした?
「この恰好をしていたからこそ、知り合えた人達もいるしね」
『……どうやら、いい友人達に恵まれたようだな』
「うん!」
なんとも眩しい笑顔ですな。
……私には一生かかっても無理だ。
『織斑教諭』
「なんでしょうか?」
『明日からでも娘を女子として再編入させることは可能でしょうか?』
「すぐに……となると、少々難しいかと。しかし、急げば来週にはなんとか……」
『そうですか……』
「あ。僕、女子の制服持ってない」
「すぐに用意するのも難しいしな……」
スリーサイズとかも新たに調べないといけないしね。
しかも、今日は土曜日で明日は休み。
発注会社だって、休みの日に注文されても困るだろうし。
「制服が届くまでは誰かのやつを借りればいいんじゃねぇか?」
「それは~……」
おい。そこでどうして皆の胸を見る?
「ふむ……。弥生や更識では胸のサイズが大きいし、ラウラでは逆に小さい。この場にいない連中に借りる訳にもいかんしな。こればかりは仕方があるまい」
「なんか複雑ですけど、そうですね……」
私と楯無さんは苦笑いをするしかないけど、ラウラは全く気にしてない。
まだまだ、色気よりも食い気なのかもしれないな。
「こちらの方でも準備だけはしておく。制服が到着するまでは男子のままでいて貰うが、それでもいいか?」
「こればかりは仕方が無いですからね。わかりました」
なんか妙な空気になってるけど、一応はこれで無事解決……かな?
『シャルロット。長期の休みになったら、いつでも帰って来なさい。その時は、家族水入らずで一緒に食事でもしようじゃないか』
「うん……! その時を楽しみに待ってるね!」
家族水入らず……か。
私もおじいちゃんと一緒にご飯が食べたいな……。
「あ…あのさ、もう二つほど聞きたい事があるんだけど……」
『なんだ? ここまで来たら、なんでも答えてやろう』
「僕や会社を狙って父さんたちを脅していた人達はどうなったの?」
『彼ならラケシス達が『殺処分』をしたと言っていた。多分、読んで字の如くだろうな』
当然の末路……だけど、なんとも物騒な世の中ですな。
「さ…殺処分って……」
「その部分に関しては考えるだけ無駄よ。織斑君」
だな。この世にはお前が知らなくてもいい世界があるのだよ。
「じゃあ、どうして僕に『板垣さんに接触しろ』って言ったの? あの時に言った事が真実じゃないんでしょ?」
『それは、彼女の義父殿が日本において非常に重要な人物だからだ』
「重要な人物?」
『そうだ。詳しくは書類にも書いていなかったから分からないだろうが、少なくとも、彼女と仲良くなっていれば、その繋がりで、日本におけるお前の安全が確保されると思ってな』
あ~……成る程な~。
おじいちゃんに認められれば、確かに日本では大丈夫だな。
「弥生のおじいちゃんってマジで何者なんだ……?」
「すご~~~~~~~~~~~~く偉い人よ」
「その一言に尽きるな」
「ですね。だからこその姫様ですから」
「分かるような、分からないような……」
割と簡単かつ重要なヒントを出してるけど、これでも分からないのか?
いや……答えが簡単すぎて、逆に分からないパターンかも。
『シャルロット。こっちの事は私達に任せて、お前はそっちで思う存分に青春を満喫しなさい。お前にはその権利がある』
『そして、いつか一緒に貴女のお母さんのお墓参りにでも行きましょう? 彼女もきっと喜ぶわ』
「うん……」
『ではな……。私達はお前が元気にいてくれることを何よりも願っている』
『それじゃあね。いつの日か、貴女の母親に相応しい女になってみせるわ』
最後は満面の笑みを浮かべながら、夫婦は通信を切った。
「ありがとう……お父さん。お義母さん……」
涙を流しながらも、笑顔で両親に向かって挨拶をする彼女の事を……私はとても可愛らしいと思った。
これで暴力的な部分さえなければ、普通に友達としてもいいと思うんだけどな~……。
これでシャルロットは両親と和解が出来ました。
次回はこの後のお話。
これからどうするか……とかですね。
多分、次でやっとシャルロットの問題が終わる……と信じたい……。