なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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中途半端に終わった弥生の初陣。

これ以降、予定ではまた弥生は荒事から暫くの間、遠ざかる事になります。






大浴場解禁?

 保健室からこっち、私は皆が待っている食堂へと向かう事に。

 割とマジでお腹も空いていたので、夕食を何にしようか考えながら食堂へと入っていくと、すぐさま嫌な予感が体全体を過った。

 

「弥生!!! 大丈夫だったか!?」

「むぎゅっ!?」

 

 一瞬で私の視界が真っ黒になった。

 同時に、何か柔らかい物が顔に当たっている。

 

「あぁ……私の大事な弥生……」

「く…苦しい……」

 

 この声はロランさんだな!?

 多分、この人の事だから、皆と同じように私の事を心配してくれたのだろうが、いきなり抱き着くのだけは勘弁してほしい。

 普通に驚くし、なにより息苦しい。

 

「君の身に何かあったらと思うと、私は食事も喉を通らないよ……」

「嘘つけ。さっき堂々とナポリタンを食ってたじゃねぇか」

 

 ダリルさんの声が聞こえたと思ったら、視界が明るくなってきて、目の前に声の主であるダリル先輩と一緒に、見知らぬ女子生徒が立っていた。

 リボンの色から察するに二年と思われるが、それにしても小柄な子だ。

 これなら、下手をすると小学生にすら間違われかねない。

 

「あぁ~……この子が例の……」

「そ」

 

 例の? なんのこと?

 

「確かに、これはほっとくとソイツみたいな連中に目をつけられそうっスね」

 

 ソイツを指しているのがロランさんだって事だけは分かった。

 

「初めまして。私は二年でギリシャの代表候補生をしている『フォルテ・サファイア』って者ッス。よろしくッス」

「ど…どうも……」

 

 この名前も原作で見た事があるような気がする。

 ダリル先輩とセットだったような……?

 

「君の事は、ダリルと一緒にちゃんと見ているから、安心するッス!」

「はぁ……」

 

 いきなり言われても意味が分からない。

 でも、なんかいい人だってのだけは、なんとなく分かる。

 

「なんか大変だったっぽいな? 怪我とかはしてないか?」

「はい……。私…はなんともない…です……」

「そっか。じゃあ、早くクラスメイト達の所に行ってやりな。アイツ等も凄く心配してたからな」

「分かりま…した……」

「ならば、私も一緒に同行しt「「「板垣さん!!」」」ぶふぉっ!?」

 

 ロランさんがしれっと私の肩に手を伸ばそうとした瞬間、例の三人娘達がいきなりやって来てロランさんを吹っ飛ばした。

 

「大丈夫でしたか!?」

「お…お怪我などはございませんか!?」

「何か困った事があればなんでも仰ってください!」

 

 お…おふ……。

 なんかいつも以上にグイグイ来るじゃないか……。

 

「ははは……愛は強し……か」

「んな恰好で言っても全くもって響かねぇぞ」

「全くっス」

 

 傍にあった観葉植物に頭から突っ込んでいるロランさん。

 そんな状態でも笑顔を出せるアンタを少しだけ見直したよ。

 

「えっと……お腹空…いた…から……食券…を取りに行き…たいん…だけど……」

「「「お供します!!」」」

「完全に舎弟になってるし……」

 

 あ、それ私も思った。

 一昔前の不良漫画とかにありそうなシチュエーションだよね。

 この子達は全く悪い子達じゃないけど。

 

「こいつの事はオレ等に任せて、とっとと行け。腹空いてんだろ?」

「はい」

 

 そんな訳で、何故か女の子三人を引き連れて販売機とカウンターまで行く羽目に。

 お蔭ですっごく目立ってました……。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 注文した『超大盛りトルコライス』を持って、予め見つけておいた皆がいる場所まで移動する。

 勿論、あの三人も一緒だ。

 

 私の姿を見た皆が、立ち上がりながら心配そうに話しかけてきた。

 

「や…弥生さん!」

「怪我とかは無い!? どっか擦り剥いたりとか!」

「だ…大丈夫…だよ……?」

 

 もうそれ何回聞くんだよ……。

 

「弥生! ラウラの奴は……」

「あの子…も大丈夫……。気を失った…のは……精神的疲労……が原因…ら…しい…よ……」

「そ…そっか……」

「今…は保健室…のベッド…で寝てる……。織斑先生…もいる…から…心配ない…と思う……」

「千冬姉も一緒か。なら問題無いな」

 

 自慢の姉だからか、全幅の信頼をしているみたいだな。

 家族を信頼するのは私もよく分かる。

 

「色々と大変だったけど、誰にも怪我とか無くて本当に良かったよ……」

「これこそ、不幸中の幸いだな」

 

 全くだね。

 

「弥生は今から夕食なんだよね? だったら、ここに座ってもいいよ」

「私とかんちゃんの隣だよ~」

 

 おぉ~。それは有難い。

 もうお腹ペコペコで、口の中は密かに涎で一杯だったですよ。

 

「私達も運ぶの手伝います。二人共、そっち持ってくれる?」

「「了解!」」

 

 あ……私が運ぼうとする前に彼女達によって夕食の超大盛りトルコライスがテーブルの上に……。

 

 簪と本音の隣に座ってから、備え付けの割り箸を手に取り食べようとしたら、またまたあの人がご登場。

 

「弥生。ここは私が食べさせてあげよう」

「「「うわぁっ!?」」」

 

 どっから出てきたんだよ彼女は!?

 いきなりのロランさん再登場の巻。

 今回は本気でビビった……。

 

「わりぃ……不覚にも逃しちまった……」

「中々に曲者ッスね……あの子……」

 

 後から疲れた顔をしたダリル先輩とフォルテ先輩がトボトボとやって来た。

 つーか、代表候補生二人を振り切るってどんだけ!?

 

「もうロランに関しては多少の事は諦めるしかないんじゃないかしら?」

  

 ちょっと鈴!? 諦めたらそこで試合終了だよ!?

 

「そんな事よりも、弥生はトーナメントの話は聞いたか?」

「話……?」

「さっき学食のテレビで言ってたんだけど、トーナメント自体は中止になったんだけど、今後の個人データの指標と関係するからって事で、全ての一回戦だけはする事になったみたいだよ」

「やっぱそうなるか~。仕方が無いって言えばそれまでなんだけどな」

 

 そこら辺は原作通り……か。

 まぁ、このまま何もせず中止にしたら、それはそれで皆が可哀想だしね。

 妥当な判断と言えるかもしれない。

 

「ふふ……弥生に私の勇姿を見せるいい機会だな」

 

 あ~…はいはい。ソーデスカ、ヨカッタデスネ~。

 

「でも、中止になったのなら、噂になっていた優勝賞品(?)の弥生の耳かきはどうなるんだろう?」

「別にお流れでもいいんじゃないか? 私達ならばいざ知らず、他の生徒達はそれほど食いついてはいなかったんだし」

「そうですわね。いざとなったら個人的に頼めばいいだけですし、おすし……」

 

 おい。なんか今、セシリアがイギリス人らしからぬ事を口走らなかったか?

 

「そう言…えば……楯無さん……は……?」

「お姉ちゃんなら、今は生徒会室で事後処理に追われてる。多分、虚さんに激を飛ばされながら泣き泣きやってるんじゃない?」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「うわぁ~~~~ん!! なんでこんなにも忙しいのよ~~~!?」

「お嬢様!! 今は口よりも手を動かす!!」

「虚ちゃんのイジワル~~!! 少しぐらい小休止してもいいじゃな~~~い!!」

「そんな暇はありません!! 早く終わらせないと、今日は生徒会室に泊まる羽目になりますよ!?」

「それだけはマジで嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 弥生ちゃ~~~ん!! お姉ちゃんを癒して~~~~~~~!!!」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 なんだろう……容易に想像が出来てしまう自分がいる……。

 生徒会って本当に大変なんだな……。

 

「あ! 織斑君! ここにいたんですね!」

 

 もぐもぐ……。

 おや? いつの間にか食堂に来ていた山田先生が嬉しそうにしながらこっちに来ますよ?

 この人も事後処理で忙しいんじゃないの?

 

「俺がどうかしましたか?」

「はい。実はですね、本日から男子の大浴場の使用が解禁されました!」

「おぉ~! マジですか!」

「マジです! 今日はトーナメントの裏でボイラーの点検が行われていて、最初から生徒が使用できない日になっているんですけど、折角ならいつもは使えないでいる織斑君に使って貰おうって話になったんです」

 

 ボイラー業者の方々……ご苦労様です。

 

「大浴場の鍵は私が持ってますし、後は織斑君の準備が済んだら、いつでも入浴できますよ」

「分かりました。んじゃ、今から部屋に戻って色々と取ってきます」

「私は大浴場の前で待ってますから」

 

 一夏は嬉しさを隠しきれないようで、私達に軽く言ってから、ニコニコしながら食堂を後にした。

 

「子供だな」

「同感」

「童心……なんでしょうか?」

「普通にガキっぽいだけじゃない?」

「あはは……」

 

 わふ……。

 今日の最大の功労者であるにも関わらず、一夏には相変わらず辛辣なのね……。

 本人がこの場にいなくて本当に良かった。

 

「あの一年坊主も苦労してんだな……」

「学園唯一の男子ッスからね。私達には分からない苦労も沢山あると思うッスよ」

 

 先輩方……なんて気遣いの出来る方々!

 そこに痺れたり憧れたりはしないけど、普通に尊敬は出来る。

 

「そうだ。板垣さん、ちょっといいですか?」

「ふぁい?」

 

 もぐもぐ……ごっくん。

 山田先生が私に用事とか、なんでしょう?

 手招きされたので、少しだけ席を立って離れた場所に行くことに。

 

「あのですね、いい機会ですから、今日は板垣さんも大浴場を使いませんか?」

「私も……?」

「はい。板垣さん、まだ一度も大浴場を使った事ありませんよね?」

 

 な…なんでそれを知ってるんだ……?

 

「一応、使用記録は残ってますから」

 

 流石はIS学園! 風呂一つとってもセキュリティは完璧ってか!?

 

「えっと……ですね。あなたの体の事は訳あって知っているんです。私だけじゃなくて織斑先生や佐藤先生も」

 

 マ…マジですか!? いつだ!? いつ知られたんだ!?

 もしかして、無人機騒動の時に私が保健室に運ばれた時か!?

 

 私が内心で混乱していると、山田先生が私を安心させるようにこっちの手を握りしめてくれた。

 

「大丈夫。この事は他の先生達は知りませんから。私達だけの秘密にしてあります」

 

 それは安心……していいのかな?

 山田先生の優しい笑顔のお蔭で、なんとか落ち着く事は出来たけど。

 

「織斑君が大浴場を出たタイミングでお知らせに行きますから、食事が終わったら準備をしておいてくれませんか?」

 

 う~む……他ならぬ山田先生の折角の御好意だ。

 これを無下にするなんて私的には論外だし、ここは素直に先生の優しさに甘える事にしよう。

 

「分かり…ました……」

「よかった……。それじゃあ、私はもう行きますね。これからも、何か困った事があれば何でも相談してください。私はいつでも板垣さんの味方ですから!」

 

 な…なんて眩しい笑顔……。

 そんな顔されたら……惚れてまうやろ~!

 

 山田先生も笑顔を浮かべながら食堂を後にした。

 私が大浴場を使う事は……皆には内緒にした方がいいかもしれないな。

 

 さて、早く戻って食事を再開しますか。

 

 いつか……皆にもちゃんと説明しないといけないかもしれないね……私の体の事を。

 特に、ラウラには隠し事はあまりしたくないから……。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 夕食を食べ終わってから、私は一人で部屋に戻ってからお風呂に入る準備をした。

 

 ……少し前までは一人でも平気だったのに、ラウラと一緒に過ごしたせいかな……。

 途端にこの部屋が広くて、寂しく感じてしまうよ……。

 

 少しだけ灌漑に耽っていると、部屋の扉がノックされた。

 

「板垣さ~ん? 準備は出来ましたか~?」

 

 山田先生だ。

 どうやら、一夏が大浴場から上がったみたい。

 

「は…い……。出来て…ます……」

 

 バスタオルや着替え等を手に持ってから、急いで扉を開ける。

 

「それじゃあ、行きましょうか。こっちですよ」

 

 そのまま、山田先生の先導で大浴場へとれっつらご~。

 

 初めての場所だから、ちょっとだけドキドキしてます。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「はふぅ~……」

 

 体と頭を洗ってから、私は大浴場の中央に位置している一番大きな湯船に首まで浸かっている。

 勿論、後ろ髪はタオルで纏めてある。

 

 改めてグルリと見渡すと、これ以外にも色々な種類の風呂があるけど、私にはどれも珍しくないんだよね~。

 

(だって、家にはこれと同じぐらいの大きさの檜風呂が普通にあるし)

 

 この大浴場も様々な風呂を完備しているけど、その全てに他の場所で入った経験がある。

 だから、これと言った真新しさは特に感じなかった。

 さっきまでのドキドキをどうか返してほしい。

 

(今日は今年で1・2を争うぐらいに疲れたんじゃなかろうか……)

 

 因みに、もう一つの筆頭候補は無人機騒動の時。

 私、気絶しちゃったからね。

 

「あ~……」

 

 このまま何も考えずにボ~ッとしていたい……。

 そして、願わくば一刻も早くラウラの元気な姿を見て、彼女をギュッとハグしたい。

 

(今日は一人で寝るのか……)

 

 ここ最近はずっとラウラと一緒に寝てたからな~……。

 今夜、ちゃんと寝れるといいんだけど……。

 

 僅かな間だけ目を瞑って湯の温もりに全てを委ねていると、なにやら遠くから大浴場の扉が開くような音が聞こえた気がした。

 

 でも、私はすぐに「気のせいだ」と思って、その音の事を無視した。

 その事が、私と一人の少女の関係を少しだけ変える切っ掛けになる事も知らずに。

 

 ちょっと逆上せてきたので、もうそろそろ上がろうかなと思い始めた時、先程の扉の開く音が私の真後ろで聞こえてきた。

 流石にこれは無視出来ないから、思わず扉の方を振り向くと、そこには意外な人物がタオル片手に立っていた。

 

「えへへ……来ちゃった♡」

「シャ…シャル…ロット……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作通り(?)シャルロットのお風呂乱入!

弥生は傷を隠しきれるのか!?(フラグ)

次回、文字通りのお風呂回。


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