なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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お待たせしましたぁぁぁぁぁぁっ!!!

休み過ぎたかもって思いましたが、その分、これから頑張っていきますので、改めてこれからよろしくお願いします!

予告 今回、船婆が再登場します。










悪い事は出来ないね~

 レゾナンスに来て色々と見て回った僕達は、最初の目的地である水着専門店へと辿り着き、そこへ並んで入っていった。

 

「こ…これが全て水着なのか……?」

「そうだよ。ラウラはこんな場所に来るのは初めてなの?」

「あ…あぁ……」

 

 ラウラは軍の中で育ったって聞いてたけど、どうやら、弥生が前に言っていた通り、想像以上の世間知らずみたい。

 一緒に暮らしている弥生の苦労がしのばれるよ……。

 

 お店には所狭しと色とりどりの水着が数多く並んでいて、とても賑やかなイメージがする。

 店頭にも何体ものマネキンに水着を着させていたし、日本が先進国だってことを改めて実感させられる。

 

「あ……」

「「ん?」」

 

 弥生が何かに気が付いたかのように声を出して立ち止まった。

 

「ラウラ……」

「いかがなされましたか? 姫様」

「水着……って持って…る……?」

「いえ。別に学園指定の水着で充分なのでは?」

 

 そ…そうか! 私服すらも碌に持っていないラウラが、プライベート用の水着なんて持ってる筈がない!

 どうしてこの事に今まで気が付かなかったんだろう!

 今の反応を見る限り、弥生もたった今思い出したみたい。

 

「どうやら、ラウラは他にも買う物があるみたいだね?」

「な…なに?」

「水着……買お?」

「ひ…姫様がそう言われるのであれば……」

 

 ほんと、弥生の言う事なら何でも聞いちゃうんだね。

 このままいくと、本当に親子になっちゃったりして。

 

(流石にそれは無いか)

 

 幾ら絵になるとは言え、この二人は同い年だもんね。

 逆を言うと、同級生同士なのに親子に見える方が凄いんだけど。

 

「まずは弥生の水着を見繕おうか?」

「わ…私……?」

「当然。ここまで来た以上、ちゃんと弥生にも水着を購入して貰うんだからね?」

「で…でも……私……は……」

「大丈夫。そこに見えるけど、ここの更衣室は足元までちゃんと隠れているから、仮に試着をしてもカーテンさえ開けなければ問題無いよ」

「う……うぅ……」

 

 本当は、僕が弥生の水着姿を見てみたいだけなんだけどね。

 恥ずかしそうにしている弥生も可愛くて眼福です。

 

「そんなわけだから、店内を見て回りながら弥生とラウラに似合いそうな水着を探していこう」

「シャルロット……は……?」

「僕もちゃんと探すよ? でも、優先順位が高いのは二人なの」

「「は…はぁ……」」

 

 全く同じリアクション。

 本当に血の繋がりとか無いんだよね?

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「もう着た~?」

「ま…まだ……」

 

 あれから10分ぐらいお店を探査し、途中で出くわした店員さんに二人に似合いそうな水着をチョイスして貰って、今は弥生が試着室にて水着を試しに着てみている最中。

 勿論、念の為に店員さんには余所に行って貰い、仕切りであるカーテンはしっかりと閉じてある。

 これならなんの問題も無い筈!

 

「弥生の次はラウラだからね?」

「な…何!? わ…私は結構だ!」

「え~?」

 

 ラウラが手に持っているのは、少し小さめの白いフリルがついた黒いビキニ。

 ゴスロリっぽくて、銀髪のラウラにはとてもよく似合うと思う。

 流石は専門店で働いている店員さん……見事なチョイスだ!

 

「き……着まし…た……」

 

 この時を待ってました!!

 

「み…見てもいい!?」

「は…恥ずかしい……から……それ…は……勘…弁……」

 

 あぁ~! そんな事を言われちゃうと、増々見てみたくなっちゃうよ~!

 

「ちょっとだけ! ちょっとだけでいいから!」

「…………少しだ…けな…ら……」

「やった!」

 

 僕はカーテンの端の方にほんの少しだけ隙間を作ってから、そこに顔だけを入れて中を覗いた。

 因みに、ラウラには『弥生は恥ずかしがり屋だから、見ないようにしてあげようね』と予め言っておいた。

 少しは渋るかと思ったけど、彼女は快く言葉を受け入れてくれた。

 どうやら、普段の生活でも細心の注意を払いながらラウラに肌を見せないようにしているみたい。

 僕にも弥生と同じぐらいの注意力と警戒心があれば、あんな恥ずかしいバレ方だけはしなかったんだろうな~……。

 

「ど…どれどれ……」

 

 興奮を抑えられないまま、僕は試着室の中にいる弥生の姿を見る。

 

「………………」

 

 そこには……『女神』がいた。

 

 一見すると唯の白いビキニのように見えるけど、ほんのりと薄いピンク色になっていて、胸の真ん中辺りにある結び目の部分の小さくも可愛らしいリボンがアクセントになっている。

 幾ら水着であるとは言え、可能な限りは肌を出したくないと言う思いの表れなのか、腰から足元に掛けて真っ赤なハイビスカスが描かれたパレオをつけていて、そこから見える脚線美が何とも言えない色気を醸し出している。

 僅かに見える足の付け根の部分から察するに、この水着は思っているよりも角度が際どくなっているみたい。

 

 体中に傷があるとか無いとか関係無しに、僕は弥生の美しい水着姿に目を奪われた。

 

(胸の谷間とか、パレオから僅かに見える太腿とか、エロすぎるよ弥生!!!)

 

 心臓はさっきからバクバクで、僕は今すぐにでも弥生に抱き着いてキスをしたい衝動に駆られたけど、必死に自分の欲望を抑え込んだ。

 もしかしたら、今までの人生で一番頑張った瞬間かもしれない。

 

「は…鼻血……」

「はっ!?」

 

 頭では抑え込んでいるつもりでも、鼻からは『愛』が溢れ出てしまったみたい。

 どんなに頑張っても、本能には勝てないって事か……。

 

「凄くよく似合ってる! とっても可愛いよ! 弥生!」

「お…お世辞…はいい……です……」

 

 お世辞なんかじゃないよ~!

 僕の真っ赤な『愛』がその証拠だよ!

 

「も…う……脱ぎた…い……」

「そ…そうだね! ゆっくり着替えていいからね!」

 

 急いで試着室から顔を戻して、ティッシュをくるんでから鼻に詰める。

 

「ど…どうした? 何があった?」

「な…なんでもないよ」

「そ…そうか……?」

 

 ちゃんと僕の脳内フォルダに保存はしておいたから、帰ってからも繰り返し使用可能だ。

 もしかしたら、夢にも出てきてくれるかもしれないな~♡

 

「む? お前達、こんな所で何をしている?」

「「え?」」

 

 なにやら聞いた事のある声が聞こえたから振り向くと、そこにはいつもと同じスーツ姿の織斑先生と、それに随伴する山田先生がいた。

 

「もしや、水着を買いに来たのか?」

「はい」

「少しだけ会話が聞こえたが、試着室には板g…弥生もいるのか?」

「そうですけど……」

 

 あれ? 織斑先生って弥生の事を名前で呼んだりしてたっけ?

 

「でも、よく板垣さんが水着を買う事をOKしてくれましたね~」

「ラウラの水着を買うなら、弥生も買わなくちゃ…って言ったら、渋々ながらも了承してくれました」

「「あぁ~……」」

 

 この答えで納得しちゃう辺り、二人も弥生とラウラが親子みたいに見えてるんだろうな……。

 

「………デュノア」

「はい?」

 

 織斑先生が僕に耳打ちしてきた。

 

「弥生の水着姿はどうだった?」

「控えめに言っても……最高です」

「そうか……」

 

 織斑先生のこんなにも嬉しそうな顔、始めて見た。

 

「弥生は今、中で着替え中か?」

「そうです」

「ならば……」

 

 徐に織斑先生が試着室に近づいて行って、小さな声で呟いた。

 

「あ~……弥生。聞こえるか?」

「お…織斑先生……!?」

「別に返事はしなくてもいい。ただ聞いてくれさえすればな」

 

 何を話すつもりなんだろう?

 

「着替え終わったら、しゃがみながら下の方からそっとカーテンをしたまま出てきてほしい」

「???」

 

 は…はぁ? なに? どういうこと?

 

「教官。それは一体……?」

「少し……な。真耶、アイツ等はまだいるか?」

「はい。バッチリと」

 

 あいつ等って……まさか皆も来ているの!? ど…どこに!?

 

「あのバカ共には大人として灸を据えてやらねばな。……お願いします」

「任せておいて。千冬ちゃん」

 

 って! いつの間にか見知らぬおばさんが足元に座ってたんだけど!?

 この人は誰なのさ!?

 

 その後、弥生は織斑先生に言われた通りに下からそっと水着を持ったまま出てきた。

 本人も本気で混乱していたけど。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「くっ……! ここからではよく見えんぞ!」

「先程、確かに弥生さんが水着らしき物を持って試着室に入っていくのを目撃したと言うのに……!」

「でも、下手に近づいたらラウラとかに勘付かれる可能性が高いわよ?」

「それは分かってる……!」

「ど~しよ~か~?」

 

 箒達ストーカーヒロインズは、店の前まで来てはいたが、そこから中に入ることが出来ずに立ち往生を強いられていた。

 ラウラと言うある意味で最強のボディーガードがいる以上、安易に接近する事は死を意味する。

 彼女達は今、選択を迫られていた。

 

「あ! なんか千冬さん達も来たわよ!」

「なんだと!?」

 

 ここに来てまさかの増援。

 これで弥生の(水着姿を守る)防衛網が更に強化された。

 

「なんか話してるけど、よく聞こえない……!」

 

 千冬と真耶とシャルロットとラウラが何か話し込んでいるが、箒達の位置からでは喧騒に紛れてよく聞きとることが出来ない。

 

「フッ……」

「ロラン?」

「虎穴に入らずんば虎児を得ず……とはよく言ったものだ」

 

 ロランのいきなりの発言に、鈴は嫌な予感が背中に走る。

 

「私はもう我慢の限界だ! 姫の……弥生の水着姿をこの目で拝まなければ、一生後悔する!!」

「ちょ…ちょっとっ!?」

 

 デジカメを構えた状態でロランが店の中へと全力疾走する。

 それを見て、慌てて追いかける箒達であったが、そこで丁度、千冬達が更衣室の傍から離れていった。

 

「チャンス! この機を逃しはしない!!」

 

 すかさずロランはシャッターポーズになって、その背後に他の面々もズラッと並ぶ。

 

 その時だった。唐突に試着室のカーテンが開かれた。

 そして、彼女達は試着室の中の光景を見て戦慄する事となる。

 

「「「「「「あ……あぁぁぁぁぁっ!?」」」」」」

 

 試着室の中にいたのは……

 

「うっふん♡」

「「「「「「ふ…船婆……」」」」」」

 

 先程まで弥生が試着していた水着の色違いの黄色いビキニ(パレオ無し)を着てセクシーポーズをしている船婆の姿だった。

 

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「目が……目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「あ……あぁぁぁ……」

「………………」

「ブラックジャック先生~~~~!! お金はあるんです~~~~!! どうか私の記憶を消してください~~~~!! お金はあるの~~~~~!!」

「…………死のう」

 

 箒と鈴は目を押えながら倒れ、セシリアは白目を剥き気絶。

 ロランに至っては、デジカメが完全に壊れ、本人は真っ白になって石化していた。

 簪はいる筈のない闇医者に記憶の除去を懇願し、本音は心の底から絶望し、死を望んだ。

 

 これこそが千冬の制裁。

 後からコソコソとストーカー紛いの事をしていた彼女達に対する『お灸』だった。

 その精神的ダメージは計り知れないが。

 

 余談だが、船婆はその水着をちゃんと買っていったらしい。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 後ろから聞こえてきた箒達の断末魔を聞きながら、僕達は別のコーナーに足を運んできた。

 

「これであいつ等も少しは凝りるだろう」

「なんて残酷な……」

 

 あの船婆って人には申し訳ないけど、僕もあの場にいたら精神的に死んでたかもしれない……。

 

「さて、アイツ等が倒れている間に私達も選ぶか」

「ですね」

 

 織斑先生達の水着姿か~…。

 二人共、揃ってスタイル抜群だから、何を着ても似合いそうだけど。

 

「ふむ……」

 

 織斑先生はすぐに二着にまで絞ったみたいで、白と黒のビキニを手に持って悩んでいる様子だった。

 

「弥生」

「はい……?」

「お前はどっちがいいと思う?」

「え……!?」

 

 いきなりのご指名に驚く弥生。

 でも、僕も弥生がどっちを選ぶか知りたいかも。

 今日の服装からも分かる通り、弥生ってファッションセンスはあると思うから。

 

「え……っと……」

 

 悩んでる悩んでる。

 弥生はどっちを選ぶのかな?

 

「黒……がいい…と思い…ます……」

「何故だ?」

「織斑先生…は普段…から黒いスーツ……を着ている…から……そう言うイメージ…が定着し…ている……って言うか……」

「成る程な」

 

 それって僕も分かるかも。

 白でも似合いそうではあるけれど、僕もここは黒がいいと思うな。

 

「分かった。ならば黒いほうにしよう」

 

 多分だけど、これって弥生がどっちを選んでも関係無かったんだろうな……。

 織斑先生も弥生の事を好きみたいだし……。

 

 それから、僕と山田先生の水着も決めてからレジへと向かった。

 

「二人とも……ここ…は私……が払う…よ……」

「えっ!? 流石にそれは悪いよ!」

「そうです! これぐらいの値段ならば全く問題ありません!」

 

 自分が選んだ水着ぐらいは自分で払わないと、僕だってそれぐらいのお金は持ってるんだよ?

 

「大丈夫……だよ。私…が払いたい……の」

 

 そう言って弥生が財布から出したのは、一枚の黒いカードだった。

 

「そ…それは!?」

 

 噂に聞く超がつくほどのお金持ちだけが持つ事を許された最高のクレジットカードである『ブラックカード』!?

 それがまさか、同級生の財布の中から出てくるなんて思わなかったよ!?

 

「先生達…のも払い…ましょう…か……?」

「い…いや、流石に生徒に奢って貰うのは……」

「そ…そうですよ!」

「はぁ……」

 

 あれ? なんか残念そうにしてる?

 

 結局、僕とラウラは弥生の押しに負けて、彼女に水着を奢って貰う事になった。

 

 ある程度の予想はしてたけど、弥生ってどれだけお金持ちなのさ……。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 弥生達が水着を買っていて、箒達が船婆から壮絶な精神攻撃を受けている頃、今まで出番が無かった一夏はと言うと……?

 

「9997……9998……9999……10000!」

 

 IS学園内にある誰もいない剣道場にて、一人で剣道着を着て竹刀の素振りをしていた。

 

(もう後悔はしたくない!! 強くなるんだ……俺は!!)

 

 彼の前には確かな決意と覚悟が満ちていた。

 汗だくになりながら一心不乱に竹刀を振り続ける彼の姿を見れば、弥生も少しは見直すかもしれない。

 

(もう二度と弥生の悲しむ顔を見たくない! もう二度と弥生を危ない目にあわせたりはしない!! 俺は……俺は!!)

 

 歯を食いしばりながら竹刀を握る一夏の手の皮は破れていて、そこからは血が滲んでいた。

 

「俺が!! 弥生の事を絶対に守ってみせる!!!」

 

 もうそこには、『皆を守る』と妄言する少年はおらず、愛する少女の為に全てを捧げると誓った一人の『漢』がいた。

 

 一夏はいい意味で自分の殻を破ってみせた。

 彼はもう二度と、分不相応な事は言わないだろう。

 

 この瞬間、織斑一夏の中で最優先に守護すべき存在が入れ替わった。

 

 

 

 




まだ全部を読んだわけじゃありませんが、十二巻は相当にとんでもないことになってますね。

勿論、新たに登場したヒロインであるお姫様も弥生と絡めたいと考えています。

どんな化学反応が起きるでしょうね~?

次回は午後からのお話になります。

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