なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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ここらで弥生にとって数少ない癒しとなるキャラを投入しようと思います。

ISにおける癒し系と言えば、大体の人が『彼女』を想像するでしょうね。

その想像の通りの彼女です。







癒し系キャラ

 三時間目になって織斑(フルネームで呼ぶのが面倒くさくなった)の専用機の話が出た。

 その一連の会話は原作通りだったので、特に特筆すべき事は無い。

 唯一違う所があるとすれば、専用機を用意して貰えると聞いた途端に私の方を向いて見事なサムズアップをした事か。

 それを見て数人の女子がうっとりとしていたが、それを向けられた私は一体どんな反応をしろと?

 他の子達のように顔を赤らめろとでも?

 そりゃ無理だわ~。

 アイツの本性を垣間見た今となっては、もう最初から0だった好感度がマイナス値になってるし。

 そんな顔はお前さんのハーレム達に対して向けなさい。

 ほら、織斑の顔を見て篠ノ之辺りがうっとりとして……

 

「馬鹿かあいつは……」

 

 ……あれ? なんか呆れてる?

 ま…まぁ……彼女ってあんまり人前で色恋沙汰を持ち出すような人間じゃないし、これはこれでいいの……かな?

 どっちにしても、私には関係ない話だけどさ。

 

 専用機の話の流れから、篠ノ之があの天災兎の妹であると担任様が暴露して、周囲の女子達の反応にブチ切れて大声で怒り出した。

 はっきし言って……めっちゃ怖かったです……。

 なんかまた泣きそうになったし……。

 うぅ……やっぱり原作ヒロインはおっかない連中ばかりだよぉ~……。

 

 オルコットもオルコットで休み時間に入った直後に喧嘩を売りに行ってたし。

 

「よかったですわね。政府から専用機を用意して貰えて」

「お……おう……?」

「これで心置きなく貴方に引導を渡せますわ」

「い…引導……?」

「もうお忘れですの? 貴方が弥生さんにした所業を……!」

「そ…それは! さっきちゃんと謝ったよ……」

「まぁっ! 謝罪した程度で本当に全てが許されるとでも!?」

「ど…どういう意味だよ!?」

「あの時、弥生さんがどれだけの恐怖に震えて泣いて怯えていたか……貴方はほんの少しも理解していないようですわね!」

「う………!」

「もうクラス代表なんてどうでもいいですわ……。今の私の目的は唯一つ! それは…貴方をこの手で完膚なきまでに叩きのめし、弥生さんの無念を少しでも晴らす事!!」

「そ…そうはいくかよ! 弥生は俺が守るって決めたんだ!!」

「どの口が仰るのかしら? 貴方なんかに弥生さんを守る資格が本当にお有りと思って? それ以前に、貴方に弥生さんは相応しくはありませんわ!!」

「勝手に決めんな!! お前になら弥生の隣に立つ資格があるって言うつもりかよ!?」

「当然ですわ! 私はイギリスの代表候補生! 地位、実力、その両方で弥生さんの隣に立つに最も相応しい人間と言っても過言じゃありませんわ!」

「「いや、過言だろ」」

「ちょ……貴方ねぇ! それと箒さんもしれっと混ざらないでください!」

「弥生の隣に立つ資格は私にだってある筈だ。何故なら、あの時…一番に弥生の事を心配して駆けつけたのが私なのだからな!」

「「そ…それは……」」

 

 なんか妙に盛り上がってるな~。

 私はイヤホンをつけて音楽を聞いてるから、あの三人が何を話しているか聞こえないんだけど。

 多分、早くも原作キャラ同士で仲良く乳繰り合ってるんでしょ。

 その調子でくっついて、もう私に関わらないでくださいな。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 昼休みになって私は誰にも気づかれずに食堂へとやって来ることに成功した。

 やっと一人でのんびりと食事が楽しめるよ~♡

 この日をどれだけ待っていた事か……。

 よ~し! 今日はテンションを上げて、ちょっと奮発しちゃおうかな~?

 

「こ…これ……」

「はいよ。……本当にこれを注文する気かい?」

「………? はい……」

「そうかい……分かったよ。ちょっと時間が掛かるから、この番号札を持って席で待っていてくれるかい? 出来上がり次第、席の方に持っていくから」

「わ…かりました……」

 

 まぁ……確かに、時間は掛かるかもしれないな。

 ここはちゃんと割り切って、席の方で大人しく待っている事にしよう。

 

 『1』と書かれた番号札を受け取ってから、私は一番端の方にある席へと向かった。

 どんな場所でもそうなんだけど、端っこが一番落ち着くんだよね~。

 

 待っている間は今ハマっているソシャゲをする事に。

 

(あ……もうこのイベント始まってるんだ……)

 

 こんな時の為にストックはしてあるから、早速ガチャをしなくては。

 上手くSRとかが出るといいなぁ……。

 

 私がスマホゲーに夢中になり始めると、すぐ後ろから声が聞こえてきた。

 

「あ! かんちゃん、ここが空いてるよ~」

「ちょっと本音……待ってよ……」

 

 本音? 本音ってまさか……。

 スマホの画面から目を離して後ろを振り向くと、そこには一人のクラスメイトと、この時点では会わない筈の存在が立っていた。

 

「あ………」

「お! なんか見た事のある後ろ姿だと思ったら、やよっちだったのか~」

 

 布仏本音……。

 数多くいる原作キャラの中でも、比較的大人しい部類に入る子だったよな……。

 性格的に見ても、他の連中とは違って暴力的な描写も無かったし……。

 でも、問題はその隣にいる子なんだよね……。

 

「『やよっち』って?」

「板垣弥生だから『やよっち』だよ~」

「また勝手に人の渾名をつけて……」

 

 彼女の隣で溜息を吐いている水色の髪の少女は……原作ヒロインの一人でもある『更識簪』じゃないか!!

 私の記憶が正しければ、本人は至って大人しい少女だが、問題は彼女の姉にある。

 

 更識楯無。本名『更識刀奈』。

 暗部である『更識家』の現当主であり、自由国籍を取得したロシア代表。

 そして、このIS学園の生徒会長でもある。

 ここまで言えば凄い人物に聞こえるが、その中身は痛々しい程のシスコン。

 妹に危害を加える存在には敵対心丸出しにして、己の権力を使って色々と脅しをかけて、場合によっては排除すらもしようとする女……!

 私の中では織斑姉弟と並ぶ程の危険人物として『弥生ブラックリスト』に記入してある。

 

「ねぇねぇ、やよっち~。隣に座ってもいいかな~?」

 

 更識簪は言うに及ばず、この布仏本音も生徒会のメンバーだった筈。

 ここで下手に断って、あのシスコン会長を敵に回すのだけは絶対に御免だ!

 慎重に……慎重に言葉を選ばなくては……!

 

「ど…どうぞ……」

 

 急いで立ち上がって、二人の分の椅子を引いてあげる。

 これぐらいしないと、後でどんな目に遭うか分かったもんじゃない。

 

「お~…ありがとね~♡」

「ありがとう……」

 

 よし! まずは第一関門突破!

 ここからは大人しくしていれば大丈夫……。

 

「あ……貴女は昨日の騒ぎの……」

 

 え? 昨日の騒ぎ?

 

「大丈夫だった……?」

「な…んとか……」

「そう……よかった……」

 

 私の中じゃ姉に対するコンプレックスの塊ってイメージなんだけど、こうして話せば普通にいい子なんだな……。

 本当に……あの会長様が全ての元凶なんじゃないだろうか?

 

 布仏さんは『お茶漬け定食』を、更識簪は『月見うどん』を注文していた。

 たったこれだけで本当にお腹いっぱいになるのかな?

 

「えっと……二人は……」

「あ、そう言えばまだじこしょーかいしてなかったね。うっかりうっかり」

「本音……」

 

 そこ、呆れてあげないであげて。

 こればっかりはマジで仕方が無いから。

 悪いのはあの朴念仁だから。

 

「私は『布仏本音』。同じクラスだから、仲良くしようね、やよっち~」

「更識簪……四組……です」

 

 これはこれはご丁寧に。

 ここは私も自己紹介をしなくてはいけませんな。

 

「板垣弥生……です」

 

 完っ璧! 今回はちゃんと言えたぞ!

 

「よろしく……板垣さん」

「は…はい……更s「名字で呼ばれるのは好きじゃないから名前で呼んで」ひぃ……!」

 

 こ…怖ぇ~!?

 なんか急に言葉を遮って睨み付けてきたんですけど~!?

 

「かんちゃん~。やよっちを苛めちゃだめだよ~」

「別にそんなつもりじゃ……」

「それでも……だよ。昨日の事……忘れたの?」

「あっ………」

 

 な…なんちゅー子だ……。

 天然キャラに見えて、その実はちゃんと他者の気遣いが出来る優秀キャラだったとは……!

 

「……ごめんなさい。少し言い過ぎた……」

「大丈夫……です。こっち…こそ……すみません……でした……」

「はい、仲直り」

 

 布仏さんが私達の手を取って、そっと握らせてきた。

 腕袋越しではあったけど、彼女の手はとてもポカポカしていた。

 

「これで、私達はお友達だね」

「友……達……?」

 

 私と……彼女達が……友達……?

 

「うぅ……」

「や…やよっち!?」

「ど…どうしたの?」

「私……今まで…ずっと一…人(でいる事が好き)で……(相手の方から)友達っ…て言われた……の(前世も含めて)初め…てで……」

「やよっち……」

「板垣さん……」

 

 くそ……ボッチ道を極めつつ私が……まさか『友達』と言われただけで泣いてしまうとは……。

 けど……だけど……なんでか嬉しかったんだ……。

 一人が好きな筈なのに……一人の方が気楽な筈なのに……。

 

「私はやよっちを一人になんてしないよ。大切な『友達』だから。ね? かんちゃん」

「うん。私と板垣さん……いや、弥生は今日から友達」

「二人…とも……」

 

 やば……涙が止まらないや……。

 

「ありが…とう……」

「「…………!?」」

 

 ちゃんと笑顔……出来てたかな?

 今にして思えば、この二人って原作でもとてもいい子達だったじゃないか……。

 この二人なら心を許してもいいかもしれない……。

 少なくとも、第一期ヒロインズ(暴力女達)のような事はしないだろうし……。

 

(やよっちの笑顔……とっても可愛かったよ~♡)

(え? ちょっと? なんで私こんなにドキドキしてるの? 相手は同い年の女の子だよ?)

 

 おじいちゃん……弥生は生まれて初めて、心から信頼出来る人間……友達が出来ました。

 私もとうとうリア充の仲間入りか……。

 

「おやおや。なんだか楽しそうにしてるじゃないのさ」

「「「あ」」」

 

 私が注文した品を持ってきてくれた食堂のおばちゃんが、ニコニコしながら大きな木製の桶と熱いつゆが入っている器を私の目の前にドンッ!と置いてくれた。

 

「それじゃ、確かに渡したからね。無理しない程度に食べるんだよ」

 

 さっきまで置いてあった番号札を代わりに持っていった。

 

「や…やよっち……?」

「これはなに……?」

「えっと……釜あげ…うどん?」

「いや、それは見て分かるんだけど……」

「量が……」

 

 そんなに驚くような事かな?

 木製の大きな桶に並々と入っている熱々のお湯に入っているのは、16人前の釜あげうどん。

 普段でも食べられる量ではあるけど、リア充の仲間入りを果たした今の私ならば、余裕で平らげられる自信がある!!

 

「二人…は食べない……の?」

「「あ!」」

 

 忘れてたのかよ……。

 

「「「いただきます」」」

 

 簪のうどんは少し危なかったが、それでも何とか食べられた。

 本音はなんともスローなペースで食べていて、見ているこっちが心配になってくる。

 

「「おぉ~……」」

「ほうひはひふぁ?」

「凄いね~……」

「美少女フードファイター……」

 

 フードファイターって……私なんてまだまだでしょ。

 本職のフードファイターの人は私なんて比較になんてならないよ。

 

「人は見かけによらない……」

「だね~…。それでいて、本当に美味しそうに食べてるよね~」

 

 実際に美味しいからね。

 あ~……マジで麺料理大好き。

 うどんも蕎麦もラーメンもどんと来い!

 他にもちゃんぽんとかもいいよね~。

 いつか長崎まで行って、本場の長崎ちゃんぽんを味わってみたいな~。

 

 後で知ったんだけど、私の事を追いかけて織斑も食堂にやって来ていたらしいが、お約束のように篠ノ之とセシリア・オルコットと遭遇して、また追いかけられたらしい。

 向こうも向こうでリア充をしてるんだな~。

 早くハーレムを築いて、私の事なんか無視して原作のようなドタバタした毎日を送ってくれたまへ。

 私は私で、ここにいる『友達』と充実した毎日を送るからさ。

 

 そういや、本来ならここで織斑が上級生に『ISの事を教えてあげる』って言われていたっけ。

 そんでもって、それにムキになった篠ノ之が自分の素性を明かして、自らあの野郎の特訓を受け持つ事にしたんだよな。

 先輩に誘われなくても、結果的に放課後に一緒に練習をするんだろうな。

 ……私には関係無いか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、少し一夏を救済したいと思います。

流石にこのままじゃ不憫ですからね。

でも、その事でまた弥生に気苦労が増えるかも?

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