そんな今回は、福音VSスペースガチョビンスーツとの戦いの決着。
そして、秘められた真の力を開放する?
弥生の知り合いだと言う男の人『鬼瓶久吉』さんが俺達に見せてきた映像に、俺達は目を奪われた。
何故なら、そこには俺達がつい先程説明された、暴走したと言われているアメリカとイスラエルが共同開発した軍用IS『
「なぁ……あれって……」
「言わないで、一夏…。あたし自身も我が目を疑ってるんだから……」
唯一、話が分かりそうな鈴に声をかけたが、すぐに封殺されてしまう。
けど……アレって……アレだよなぁ……。
「嘘……でしょ……?」
「や…弥生さん? どうしましたの?」
「姫様?」
「姫……? 少し様子が変だぞ?」
ロランの言う通り、弥生は映像を見た途端に俺達以上に驚いていて、さっきからずっと目を見開いて、口を開けっ放しにしている。
こんなに驚いている弥生を見るのは初めてだ……。
「お……鬼瓶…さん……これって……ま…まさか……」
「その『まさか』…だよ。弥生ちゃん」
「そんな……」
まさか? まさかってなんだよ?
「スペース…ガチョビン…スーツ……。完成……してい…たの……?」
「は?」
スペース……なんだって?
「い…板垣は、アレがなんなのか知っているのか?」
「は…はい……」
千冬姉の質問に、体を強張らせながら頷いた弥生。
その顔には汗が滲み出ていた。
「スペースガチョビンスーツ……。私の……おじいちゃん……が長い年月…を掛け…て…製作……した……パワードスーツ……です……」
「パワードスーツって……」
それってつまり、ISに近い存在なのか……?
「ちょ…ちょっと待って。やっちゃんのおじいちゃんがアレを製作したって事は、今アレを着て戦っているのって……」
「勿論、製作者である弥生ちゃんのおじいさんですよ」
「なっ……!?」
じょ…冗談だろ? 弥生のおじいさんが、アレを着て暴走した軍用ISとたった一人で互角以上の戦闘を繰り広げているってのかっ!?
そんなこと急に言われても、にわかには信じられないぞ……。
そう思っているのは俺だけじゃないようで、他の皆も同じ様に声を出さないまま、無言で顔だけ驚いていた。
特に千冬姉と束さんと山田先生の驚きようは尋常ではなく、俺すらも見た事が無い程に動揺していた。
唯一の例外は弥生と鬼瓶さんだけで、弥生は心配そうにしながら胸の辺りで祈るように両手を組んでいて、鬼瓶さんはずっとニコニコしている。
「おじいちゃん……」
……そうだよな。
弥生にとって唯一の肉親である人が、画面の向こう側で一人で戦っているのを見て、不安にならない筈がない。
俺だって、同じように千冬姉が戦っていたら、同じ顔をしていたに違いない。
弥生を少しでも安心させる為に、俺は隣にいる彼女の傍に寄り添った。
「さっきから福音が、弥生さんのおじいさまの頭部を集中的に狙っているように見えますけど……」
「相手は暴走しているISの筈だが、そんな器用な事が可能なのか……?」
セシリアと箒の疑問を聞いて、俺も画面に改めて注目する。
すると、確かに福音はおじいさん、正確にはスーツの頭部にある角を狙って攻撃をしているように感じた。
「弥生ちゃん、気が付いたかい?」
「はい……」
気が付いたって、二人は何に気が付いたんだ?
「あのISは、間違いなくスーツの唯一の弱点である角に攻撃を集中させている。それが意味する事は……」
「福音……は暴走して…いな…い……」
「…………え?」
今……なんて言った? 福音が暴走してない?
「暴走し…たIS……に…ピンポイントアタック……が出来る……とは……考え…にく…い……」
「そうかもしれないけど、だとしたら福音は……」
「誰か……に『強奪』…され…て……正規…のパイロット…じゃない…人…が乗って…いる……」
「「「「「「「「「「!!!!!」」」」」」」」」」
マ…マジかよ……! 軍の専用機を誰かが奪って操縦するなんて、そんな芸当が本当に可能なのか!?
幾ら弥生の言葉でも簡単には納得出来ないぞ……。
「そんな事が……いや、でも……」
束さんは顎に手を当ててブツブツと考え込んでいるし、千冬姉は怖い顔をして画面を見つめている。
そんな二人を見て、俺達は戸惑う事しか出来なかった。
「で…でも、なんで角が弱点なのよ?」
「もし仮…に角…が取れてしま…ったら……ただ…のガチャピン…になっちゃう…から……」
「は…はぁ?」
いや……なんでそうなる?
弥生、自分がおかしな発言をしてるって自覚ある?
「別にガチャピンになっても問題無いんじゃ……」
そうだ箒! 弥生に言ってやってくれ!
「ある…よ…。だって……世間…が黙ってい…ても……ピエール瀧…が黙って…いない……!」
何故にそこでピエール瀧の名前が出てくる?
「つまり……角…が取れる……もしくは……破壊…された時点…で……おじいちゃん…は敗北……を認めざる…を得ない……んだよ……」
冗談抜きで意味が不明なんですけど……。
「それ以前に、あの角にはスペースガチョビンスーツの中枢機能、ISで言う所のコアが内蔵されていますから、どっちみち角が破壊されたら終わりなんですよ」
弥生の発言を全否定するように鬼瓶さんが普通の事を言ったし!!
それならそうと、最初から説明してくれよ!!
「あの福音の戦闘能力は私達の想定を遥かに凌駕している。悔しいが、あのまま出撃を許していたら、間違いなく全員揃って返り討ちに遭っていただろう……」
千冬姉が、おかしくなりつつあった空気を元に戻す為に発言した。
(確かに、千冬姉の言っている通りだ……。どんなに頑張っても、今の俺じゃ、あの福音を倒すどころか、一撃を当てるビジョンすらも浮かばない……!)
結局、俺達はここで想い人のおじいさんの戦いを指を咥えて見ているしか出来ないって事か……! クソっ……!
「おじいちゃん……負けないで……!」
俺からも頼む……!
この国を護る為とか、皆の為とかじゃなくて、彼女を……弥生を悲しませないために勝ってくれ!!
アンタがいなくなっちまったら、弥生が一人ぼっちになっちまう!
「頑張れ……!」
思わずそう呟いた俺は、いつの間にかスペースガチョビンスーツがとてもカッコよく見えていた。
きっと、あれこそが俺の真に目標にすべき姿なんだ……!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
海上にて壮絶な死闘を続けているスペースガチョビンスーツと福音。
完全に人知を超えた戦いが、そこにはあった。
『コノ……キグルミ風情ガ……!』
「その着ぐるみ風情に徐々に追い込まれているのは、どこのどいつかな?」
『クッ……!』
弱点である角さえ破壊できれば、それで終わる。
頭では分かっていても、現実はそれを易々とさせてはくれない。
当然のように自分の光弾は全弾完全回避されて、向こうの打撃は着実にダメージを蓄積させていく。
こちらも決してダメージを与えていないわけではないが、向こうと比べればその差は歴然だ。
事実、福音の装甲には多くの損傷が見て取れる。
「お主……何者じゃ?」
『ナニ……?』
高速の攻防を繰り返しながら、スペースガチョビンスーツがいきなり問いかけてきた。
いきなりの言葉に、思わず福音も素の表情が出る。
「ワシも少なからずアメリカ軍とは個人的に親交があっての。それ故に、福音の操縦者であるナターシャ・ファイルスとも仲がいいんじゃよ。彼女の模擬戦はこれまでに何回も見せて貰ったが、明らかにお主の戦い方とは違っている」
『…………!』
どんなに表情を隠し、感情をコントロールしているつもりであっても、目の前で堂々と真実を告げられれば、少なからず何らかの変化が起こるもの。
それは福音……否、ラケシスも例外では無かった。
そして、その僅かな変化をスペースガチョビンスーツは見逃さなかった。
「矢張りのぅ……そうだと思わったわい」
膝蹴りを放って、その衝撃で少しだけ間合いを開ける。
「元々ナターシャの戦い方は、福音の機動力と火力を最大限に駆使したヒット&アウェイ。それなのに、お主は福音最大の攻撃である『
『………………』
ラケシスも、お世辞にも自分の最も得意とする戦法と、福音の武装がマッチングしていない事は分かっていた。
どんなに高性能でも、相性が良くなければ機体の性能を十全に発揮は出来ない。
作戦を重視するあまり、子供でも分かりそうな簡単なミスを犯してしまった。
だが、ラケシスは表情を崩さない。
『……ソレガ分カッタカラト言ッテ、ココデ貴様ガ無様ニ敗北スル事ニ変ワリハ無イ』
「それはどうかのう?」
突如、スペースガチョビンスーツが構えを解き、両手をブランとさせた。
一見すると無謀な格好だが、ラケシスはその場から動く事が出来なかった。
何故ならば、スペースガチョビンスーツの全身から、なにやらオーラのような物が浮き出ていたから。
真の強者にだけ分かるオーラ『闘気』が周囲の空気すらも歪めていくように見えた。
「最初はナターシャが洗脳でもされたかと思ったが、お前が彼女でないと分かった以上、こっちも手加減をする必要が無い」
『手加減……ダト……!?』
先程までの戦闘でも、充分すぎる程の戦闘能力を誇っていたが、それでも『手加減』と言ってしまう。
ラケシスは、目の前にいる緑の恐竜の潜在能力を計れないでいた。
「アメリカとナターシャには後でワシから詫びを入れればいいとして、今は多少強引であっても福音を奪取する事が先決」
次の瞬間、スペースガチョビンスーツの姿が徐々に歪んでいくように見えた。
まるで、別のナニカに変化していくように。
「では……いくぞ。耐えろよ」
迫力ある声に、ラケシスは反射的に構える。
「コード! アグレッシブ・ダイナソー・チャージ!!」
スペースガチョビンスーツがラケシスに向かって突撃し、その途中でその姿が完全に変化した。
刺々しい西洋の鎧のような純白の装甲に、有機的なデザインのパーツ、その背にはまるで悪魔の翼のようなウィングが二対四枚装着されていた。
読者の諸君に分かりやすく説明すると、ぶっちゃけ、ライン・ヴァイスリッターの姿に変化した。
唯一、変化していない所と言ったら、その目だけがガチョビンのままだった。
『ナッ……!?』
「では行くぞ!! ハウリング・ヲゥガリランチャー!!」
今までとは比較にならない程の超高機動を行いながら、無数の残像を生み出しながら真紅のビームを撃ちまくる。
先程までのお返しと言わんばかりのビームの弾幕が、ラケシスの眼前に生み出された。
「圧倒的な弾幕は、なにも福音だけの専売特許ではない!!」
『コノ……老イボレガァァァァァァァッ!!!』
ラケシスの放つ銀の鐘とライン・ヴァイスガチョビンの攻撃が衝突し、壮絶な爆発が起こる。
間髪入れず、両者は二本の線となって青空を駆け抜ける。
「撃てるのはビームだけではないぞい!!」
『実弾モ発射出来ルノカ!』
激しく火花を散らしながら幾度となく交差していく中、ラケシスは銀の鐘を収束させ、最大出力で放とうとする。
それに真っ向から応戦する為に、ライン・ヴァイスガチョビンも手に持つ『ハウリング・ヲゥガリランチャー』を変形させる。
『喰ラウガイイ!!』
「ハウリング・ヲゥガリランチャーXモード!!」
白と紅の一撃がぶつかり、二つのビームが超絶的なスパークを起こした。
その影響で空が真っ白に染まり、瞬間的に何も見えなくなる。
すぐに視界は晴れるが、そこにはガチョビンの姿は無かった。
圧倒的な殺気を背後から感じ、振り向くと、そこには真紅の重装甲『アルトガチョビン・リーゼ』に変化しているガチョビンが右腕についている固定式のパイルバンカーを構えていた。
『シマッ……!』
「踏み込みの速度ならば負けん!! ゼロ距離……取ったぞい!!!」
回避する間も無く腹部にバンカーが直撃し、そこから連続で撃ちこんでいく。
一撃一撃が重く、一気に福音のSEを削っていく。
最後の一発でラケシスが吹き飛んだ瞬間、肩部のハッチが開き、そこにあるベアリング弾が発射される。
「特注のベアリング弾じゃ!! 全弾受け取れい!!」
『オオォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!』
咄嗟にクロスアームブロックで防御するが、それでも衝撃は受け流せず、そのまま吹き飛ばされていく。
全てのベアリング弾を撃ち尽くすと、全身から紫電を放ち満身創痍な福音があった。
『幾ラ高性能トハ言エ、借リ物ノISデハコレガ限界カ……』
機体の方は完全に戦闘不能だが、肝心のラケシスは微塵も披露した様子は無い。
彼女もまた、彼らと同じ『規格外』と言う事を身を持って示していた。
「福音を返して貰おうか」
『……勝ッタ気ニナルナヨ。私ノ専用機ガアレバ、貴様ナド敵デハナイ』
「世間では、それを『負け惜しみ』と言うんじゃ」
『抜カセ』
ラケシスは悠然とした立ち姿で、どれだけ傷ついても彼女の優美さは損なわれていない。
『今回ハ素直ニ負ケヲ認メヨウ。ダガ、次ハ無イ。次ハ私ガ勝ツ。コノ屈辱ハ絶対ニ忘レンゾ……!』
どこからか取り出した閃光弾を投げて、ガチョビンの視界を塞ぐ。
「くっ……待つんじゃ!!」
『待テト言ワレテ、待ツ奴ハイナイ』
光が止んだ後、そこにはもうラケシスの姿は無く、青空と雲だけが只管に広がっていた。
「逃げられた……か。結局、奴の正体は分からず、福音も……」
意気消沈しそうな所に、謎の物体が頭上から落ちてきた。
それに気が付いた彼は、すぐに手を伸ばしキャッチした。
「これは……」
手の中にあるのは、白銀の羽を模したペンダント。
それこそが福音の待機形態だった。
「結果オーライ……かの」
そう呟くと、ガチョビンは元の姿に戻って、静かに旅館の方に飛んで行った。
「ロケットパンチ……使えなかったのう……」
残念そうに言っているが、もしもロケットパンチを使えば、確実に福音は消し飛ぶので、これもまた結果オーライなのかもしれない。
こうして、謎は一切解けないまま、福音を巡る戦いは主要人物達を完全に無視して集結した。
途中でのガチョビンの変化は、分かる人には分かるネタです。
もう随分と昔のことですが、分かるかな~?
今回はガチョビンが勝利しましたが、いつかあるかもしれないラケシスのリベンジマッチはどうなることやら……。
次回、遂に『おじいちゃん』の正体が判明!!……って、もうバレバレなんですけどね。
一応、名前出しは次回が初めてです。