今日も割と疲れているのですが、昨日や一昨日ほどでは無い為、なんとか頑張っていこうと思います。
そんな今回は、ようやく夏休みに突入です。
弥生を初めとした面々は、どのような長期休暇を過ごすのでしょうか?
臨海学校が意外な形で終わりを告げて、それからすぐに、生徒達の誰もが待ちに待った一大イベントがやって来た。
「……と言う訳で、夏休みだからと言って羽目を外しすぎないようにするように。いいな?」
一学期最後のHRにて、織斑先生が夏休みにおける注意事項などを伝えている。
普段ならば一人の例外も無く静かにしているのだが、今回ばかりは違った。
(皆、明らかにソワソワしてる……)
私も気持ちは理解出来るが、だからと言って少しだけ気が早いように思える。
せめて、コレが終わるまではいつも通りにしていようよ。
他の子達は当然のように、箒やセシリア達ですらニコニコ顔が止まらない様子。
箒はもう少し真面目な子だと思っていたのに……。
(でも、一夏だけはなんか違うな~……)
完全に浮かれ気分になっている他の皆とは違って、一夏だけは何かを決意しているような表情をしている。
夏休みに何かをしようと企んでいるのかな?
アイツの事だから、きっと碌な事じゃないと思うけどね。
「では、これでHRを終了する」
一夏が『起立!』と言った後に皆が立って、『礼!』で腰を曲げる。
見慣れた光景だけど、これが暫くの間、見られなくなると思うと、それはそれで感慨深いものがある。
織斑先生と山田先生が教室から出ていく僅かな間だけ教室は静寂が支配していたが、二人が完全に教室を後にした瞬間、一気に皆の興奮が爆発した。
「よぉぉぉぉぉぉぉし!! この瞬間から夏休み開始だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「なにしよっかな~? まずは~……」
夏休み……ねぇ~……。
ま、私が主にやる事と言ったら、ある程度決まっているんだけどね。
「皆、完全に浮かれてるなぁ~……」
「当然だよねぇ~。なんたって、高校生になって初めての夏休みだもんねぇ~」
って、また私の所に全員集合かよ。
毎度毎度飽きないねぇ~。
「セシリアは夏休み、どうするんだ?」
「私は取り敢えず、色々な報告や機体の本格的な整備も兼ねて帰国することになりますわ」
そっか。セシリアはイギリスの代表候補生。
夏休みだからと言って、日本に留まって遊び呆ける訳にはいかないのか。
あれ? そうなると、他の代表候補生の皆も……?
「やっぱりセシリアもなんだ」
「と言うと、シャルロットさんも?」
「うん。僕の場合は会社に戻って報告や機体の整備をするんだけど」
会社の問題が片付いてからもシャルロットはちょくちょくと電話をしているようだけど、一度はちゃんと顔を合わせて家族で話した方がいいしね。
「私もだ。くっ……! 僅かな日数だけとは言え、姫様のお側を離れなければいけないとは……!」
ラウラの場合は代表候補生であると同時に、現役の軍人だからね。
他の皆以上に忙しいに違いない。
私も力になってあげたいけど、私じゃ何も出来ないしな~……。
「僕も同じ気持ちだよ。だから、父さんと義母さんには悪いけど、可能な限り早めに終わらせて、日本に戻ってくるつもり」
「ですわね」
いやいやいや。別にそんな事しなくてもいいから。
祖国での夏をちゃんと満喫してきな?
「しののんはどうするの~?」
「私は実家に帰る事にしている」
「実家……って言うと、篠ノ之神社か」
「あぁ。一応、寮に持ってきている荷物以外は、全て向こうに運び込んであるからな」
そういや、箒の実家って神社と剣道場を兼ねているんだったっけ。
前に本人から聞いた事があるけど、実際にどんな場所かは知らない。
学校の剣道場なら見た事はあるけど、本格的な道場となると、雰囲気からして違ってくるんだろうなぁ~。
「弥生さんは夏休みはどうなさるんですの?」
「私……は……」
基本、なる事さえやってしまえば暇人になってしまうからね。
特に何かをするって事はないんだけど……。
「それは私も興味があるな」
「確かにね。アタシも知りたいわ」
「右に同じく」
うわっとっ!?
ロランさんと鈴と簪がいきなり現れたっ!?
全く気が付かなかったぞっ!?
「別…に……大し…た事……はしない……よ……?」
「と言うと?」
「家……の掃除……をして……ペット……の皆……のお世話……をしなが…ら……過ごす……感じ…だよ……?」
ね? 至って普通でしょ?
「そ…掃除っ!?」
え? なんでそこで一夏が驚くの?
「お…おい? いきなりどうした?」
「何を驚いてるのよ?」
「いやだって………」
別に何もおかしい事は言ってないと思うけど?
「あの凄い家を一人で掃除するのか?」
「うん……」
「いやいやいや! どう考えたって一人じゃ無理だろっ!?」
む~……。
そこで無理って決めつけるのは気に入らないなぁ~。
「え? なに? 弥生の家ってそんなに凄いわけ?」
「凄いなんてもんじゃねぇよ! 豪邸も豪邸、超豪邸なんだよ!」
「そりゃ……仮にも内閣総理大臣の家だしな……。貧相であるわけがないが……」
「いや、箒も実際に見たら、そんな余裕な態度は取れなくなるぞ」
「そ…それ程なのか……?」
私の家を見た大抵の人が似たようなリアクションをするんだよな~。
もう完全に見られた今では、なんとも思わないけどさ。
「しかし、それ程の屋敷に住んでいるのであれば、メイド的な人間の一人や二人は雇っているもんじゃないのか?」
「おじいちゃん……がその手…の人……をあまり好まない……から……それ系…の人…は一人もいな…い……んだよ……」
「ほ…ホントですのっ!?」
「じゃあ、家事とかって……」
「私……がしてる……」
当然じゃない。何を今更。
「姫様がお一人でっ!?」
「それ……冗談じゃない…よね?」
「うん」
おじいちゃんは普段から忙しいし、他の吉六会の人達も時々、家に来て簡単な掃除とかをしてくれるけど、本格的な掃除ともなると話が違ってくる。
「何日か……に分けて……少しずつ…やってる……」
「それは流石に大変だよぉ~……」
それは私も重々に承知してるんだけどね。
でも、こればっかりは仕方がないんだよ。
「じゃあ、私が弥生ちゃんのお手伝いをしてあげるわ!!」
……………………。
(なんで……)
(楯無さんが……)
(一年の教室にいるんですの……?)
もうツッコむのもアホらしくなってきた……。
だから、ここは敢えてスルーの形で。
「何をやってるんですか……お嬢様……!」
「げッ!? 虚ちゃんっ!?」
楯無さんに続くようにして現れたのは、本音のお姉さんである虚さん。
鬼の形相で髪が逆立ってるけど、気にしたら負けだと判断します。
「仮にも生徒会長ともあろう者が、いきなり一年生の教室に押し掛けるなんて、何を考えてるんですか!!」
「だってぇ~! 私の中にある『弥生ちゃん分』が完全に枯渇しちゃって、少しでも弥生ちゃんの香りを……」
「馬鹿な事言ってないで、行きますよ!!」
有無を言わさずに楯無さんの首根っこを掴んで、そのまま外まで連行していった。
「ちょ……虚ちゃん?」
「全く……貴女には生徒会長としての自覚が足りなさすぎます!! 大体……」
引きずりながらもお説教が開始された。
あれを公衆の面前でされるのは、普通に羞恥プレイだな……。
「お前も苦労してるんだな……簪……」
「そんな事を言ってくれるのは、弥生と箒だけだよ……」
同情の瞳で簪を見つめつつ、そっと肩を叩く箒。
君のお姉さんも破天荒全開だからね~。共感出来る部分は多いんでしょう。
「逆に、本音のお姉さんは凄い人だね……色んな意味で」
「ん~?」
自覚無いんかい。
もしかして、あれが虚さんの素だったりするのか?
「でも、楯無さんの言う事も尤もですわ」
「そうだね。僕達で弥生の家の掃除を手伝いをしてあげたいよね」
それは非常に嬉しい申し出だけど、国には帰らなくてもいいの?
「しかし、お前達は一度、祖国に帰らなくてはいけないんだろう?」
「そうなのよね~。アタシも、中国政府から一度戻って来いって催促が来てるのよ」
「それはこちらも同様だよ。国が違えども、代表候補生のやる事なんてのは、往々にして似たようなもんなのさ」
まだ学生なのに、皆は凄いな~。
割と本気で感心するよ。
「ならさ、皆が丁度戻って来る頃を見計らって、掃除をすればいいんじゃないか?」
「それが一番理想的だけど……」
「やよっちはそれでもいいの~?」
「別…に……それぐ…らいなら……」
特に急いでしなくちゃいけないって訳でもないし。
少しぐらい遅れても問題は無い。
「では、そのようにするとしましょうか?」
「賛成だ。本当なら日本に残る私達だけでも先に行った方がいいんだろうが、こっちもこっちでやる事があるしな……」
「私も、日本の代表候補生として色んな所に呼ばれてる」
「実は私も~、おうちでしなくちゃいけない事があるんだよね~」
本音がそう言うと説得力に欠けるけど、彼女も一応は暗部の家系。
その手の関係でやる事があるんだろう……と信じたい。
「そう言う一夏はどうなのよ? アンタの事だから、てっきり真っ先に弥生の家の掃除を手伝いに行くって言い出すかと思ったけど」
あ、それは私も思った。
「そうしたいのは山々なんだけど、今年の夏休みは丸々全部に予定が入ってるんだ」
「なんだと? お前にしては珍しいな……」
「そうね~。てっきり、家の掃除を終えた後は、弾と一緒に遊んでばかりだと思ったわ」
「お前が俺をどんな風に見てるのか、その一言で全部分かっちまったよ」
いや、高校一年生の男子なんて、そんなもんでしょ?
まだまだ遊び盛りなんだし。
「でも、夏休みを丸々使うなんて、一体どんな用事なの?」
「ちょっとな」
そこで言葉をぼかすって、本気で何をする気なんだろう?
「兎に角、俺は手伝いは出来ない。ゴメンな、弥生」
「気にし…てない…よ……」
掃除に関して、一夏程の戦力が外れるのは純粋に残念だとは思うけど、彼のプライベートを潰してまで手伝ってほしいとは思わない。
一夏には一夏だけの夏休みがあるんだから。
(一夏が外れる……)
(これで、最大の障害の一角が潰れましたわ!)
(千冬さんは教師と言う立場上、来ることは出来ないから……)
(ここが僕達の正念場!!)
(チャンスはここしかない!!)
(この機会に弥生と距離を縮め、そして……)
(やよっちのおうち、楽しみだなぁ~♡)
あの~……みなさ~ん? なんか急に周囲の気温が上昇してるような気がするんですけど~?
ラウラだけが一人だけハテナマークを浮かべてるし。
「つーか、ちょっと気になったんだけど」
「な…なんだよ?」
「一夏ってさ、前に弥生の家に行った事があるの?」
「家の前までだけどな。流石に中には入ってねぇよ」
「あっそ」
そっけなくしている風に見えるけど、鈴ってば安心してない?
「先程の弥生さんの言葉で気になったんですけど、弥生さんはペットを飼っていらしてるんですの?」
「うん」
「どんなペットかは気になるけど、ここは敢えて何も聞かない方が吉と見た」
「楽しみが増えるからね」
外務大臣と財務大臣は普通だけど、文部大臣と農林水産大臣を見た時の皆のリアクションが気になる。
セシリアとか特に驚きそう。
「ところで弥生……」
「ん?」
皆の隙を見計らって、簪がそっと耳打ちをしてきた。
「夏休みは勿論……」
「行く……よね……?」
実は密かに私と簪は『ある約束』をしていて、もう既に一緒にお出かけをする予定を組んでいるのだ。
行く場所は勿論、私や簪のような人種にとって、夏の最大のイベントにして、最大の戦場。
ここまで言えば、勘のいい人達は分かる筈だよね?
それから暫しの間、夏休み談義に花を咲かせ続けた。
こんな会話をするようになって、私も本格的に女子高生になってきたんだな~って実感する。
でも、気のせいかな? 妙に後ろの方から視線を感じるような気がするんだよね……。
「フフフ……♡ 今日も素敵だわ……弥生さん……♡」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
IS学園の校門前。
ラピッド・レイダーに跨った状態で織斑先生と向き合っていた。
「出発の準備は終わっているのか?」
「はい……」
「荷物はどうした?」
「拡張領域……の中……」
「そうか。ISの私的利用は禁止されているが、私物を拡張領域に収納する事は禁止されていないからな」
その辺って結構曖昧だよね。
だからこそ、この手が使えるんだけど。
お蔭で手ぶらで家に帰れます。
「私も、お前がバイクの免許を持っていると知った時は驚いたぞ。普段のお前からは想像も出来ない程にアグレッシブなスキルだからな」
それは私もそう思っている。
でも、これはこれで便利なんだよね。
長距離の移動がすっごく楽になるから。
「にしても……」
ん? なによ。別におかしいところなんでないでしょ?
ラピッド・レイダーを貰った時にスカートを少し改造して、乗りやすいようにチャックで開け閉めが出来るようにスリットを作ったけど。
(スリットが入ったスカートでバイクに跨っている弥生は……エロすぎるぞ……)
エンジンは良好。エネルギーも問題無し。
ちゃんと武装は外してアーキテクトの中に入れてあるから大丈夫。
「一応、大丈夫と分かってはいても、教師としては教え子がバイクを使って帰宅しようとしている以上は、こうして対面上でもこの目で見送る義務があるからな」
そりゃそうだよね。
少なくとも、バイクの運転免許を持った生徒なんて今までいなかっただろうし。
前例がない以上は、こうして見るだけでもしなくちゃいけないって事か。
何度も言うようだけど、本当に教師って大変だ。
「じゃあ……行き…ます……」
「あぁ、気を付けてな。総理に……義父殿にもよろしくと伝えてくれ」
「分か…りまし…た……」
織斑先生の言葉に頷いた後、私はラピッド・レイダーに付属していた真っ黒なヘルメット(何故か猫耳付き)を被ってから、バイクを噴かした。
「じゃあ……二学期……で……」
ラピッド・レイダーが一筋の風となって、私と共に疾走し、学園を後にする。
目指す場所は私の家。
さて、家に帰ったらまずは何をしようかな?
「二学期……か。仕事さえなければ弥生の家まで迷わず行くと言うのに……。住所なら知ってるから」
……変な悪寒がしたけど、夏風邪でも引いたかな?
まずは冒頭ってことで。
次回からは、弥生サイドと一夏サイドを交互に描いていこうと思います。
そして、どこかで二人の道が交わる事も……?
と言う訳で次回はまず、一夏の吉六会との秘密特訓から始まります。