なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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最近の暑さで、どうもモチベーションが激しく上下する作者です。

二日間休んで、どうにかこうにか復活しましたが、この暑さは本気で異常でしょ……。

普段から気を付けてないと、冗談抜きでヤバいかもです。

そんな今回ですが、時間帯的には弥生の家の大掃除と同時期です。

それと、前回の更新の後に楯無と簪の発言について言われた事があるのですが、それについては明確な理由が存在していて、それに関しては次回に説明しようと思います。

予めご了承ください。














一夏の特訓 その2

 夏休みも8月に突入し、俺の特訓も本格的になってきた。

 

 塩田さん達が、今の俺に必要な課題を出してくれて、俺はそれをこなす事に集中する事にした。

 そんな俺が今、やっている事は……。

 

「おらおらぁっ! そんなチンタラ走ってたら、朝飯食えねぇぞ!!」

「はっ……! はっ……! はっ……!」

 

 まだ早朝の涼しい時間帯に、俺は塩田さんの激励を受けながらベーカリー鬼瓶の近くにある川沿いの道をランニングをしている。

 彼女曰く、『太陽が完全に上がりきった昼間とかにランニングとかしたら、太陽の暑さにやられて、却って効率が悪い』だそうだ。

 同じ外でやるにしても、こうして涼しい時間にすれば効率も上がるしやる気も出る。

 なにより、最近になってかなり深刻化してきている熱中症の予防にも繋がる。

 

 俺と同い年の女の子なのに、こんなアイデアを思いつくなんて、本当に頭が上がらないよ……。

 

「いいペースじゃんか。この調子だ」

「おう!」

 

 塩田さんは俺の後ろから自転車に乗って追従しながら声を掛けてくれる。

 一人で黙々と走るのも悪くは無いけど、こうして誰かが傍で声を掛けてくれるのもいいもんだよな。

 

(一つ問題があるとすれば、それは……)

 

 塩田さんの恰好が、またもやセクシーである事ぐらいか。

 白いタンクトップに黒のスパッツと言った格好なんだけど、塩田さんはスタイルがいいから、正直目のやり場に困る。

 

(俺には弥生がいる…俺には弥生がいる…俺には弥生がいる…俺には弥生がいる……!)

 

 弥生の事を頭に思い浮かべながら、俺は必死に煩悩と戦った。

 

「あと1キロ! 最後まで油断すんなよ!」

 

 1キロ……! 長いような短いような……。

 とにかく、今は走る事だけに集中だ!

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 早朝ランニングを終えてベーカリー鬼瓶に帰ってくると、既に朝食がある程度は出来上がっていた。

 基本的に、俺の食事内容は健康志向になっていて、これもまたトレーニングの一環らしい。

 

「今日の朝食当番は……」

「私だよ」

「鷹橋か」

 

 キッチンからヒョコっと顔だけ出したのは、今日の朝食を作った鷹橋涼香さん。

 なんだかクールで飄々としているが、不思議と塩田さん達とは波長が合うらしく、とても仲良くしている。

 

「他の皆は?」

「まだ寝てる」

「そっか」

 

 実は、俺の特訓に合わせて、彼女達6人も俺と一緒に寝泊りをする事になった。

 本当ならこの間会った小栗さん(なんでか敬語で呼んだ方がいい気がする)と兵庫さんも泊まる予定だったが、彼らは吉六会の用事があるとかで、宿泊は出来なかった。

 その代わり、定期的にここに様子を見に来ると言っていた。

 多分、俺が彼女達に何かしてないかをチェックをしに来るのが目的なんだろうけど……。

 

(俺よりも圧倒的に実力が上の女の子達に対して、一体何をしろと?)

 

 下手に手を出せば、一瞬で返り討ち確定だろ。

 幾ら俺でも、そんな無謀な真似だけは絶対にしないから。

 

「完全に出来上がるまでにはもう少し時間が掛かる。その間に二人共、シャワーでも浴びてきたらどうだ?」

「そうだな。ここはお言葉に甘えようぜ」

「分かった。それじゃあ……」

「先にお前から行けよ。汗、凄い事になってるぞ?」

「うげ……」

 

 自分が着ているランニングシャツをよく見たら、汗でびっしょりと濡れていた。

 道理でシャツが体に纏わりつくはずだ。

 

「遠慮無く行かせて貰おう……かな」

「そうしろ。ちゃんと洗濯物は籠に入れとけよ~!」

「りょ~か~い」

 

 まるで母親みたいなことを言うんだな……。

 少しだけ弥生を彷彿とさせる子だ。

 

 んなことよりも、今はシャワーを浴びてスッキリしますか!

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 シャワーを終えて、夢の中から起きてきた他の4人と、俺と同じようにシャワーで汗を流した塩田さんや鷹橋さんと一緒に朝食を食べ終えた俺は、6人が普段から使っていると言う、吉六会提携のトレーニングジムに来ていた。

 今更ながら、吉六会ってどんな凄い組織なんだよ……。

 こんな大きなジムと提携して、しかも貸し切り状態にするって……普通じゃないぞ。

 その上、しれっと俺までここの会員にされちまったし。

 まぁ……それに関しては別にどうこう言うつもりはないんだけどさ。

 

 え? 塩田さんのシャワーシーン?

 そんなのを描写したら、絶対に殺されるぞ。俺が保障する。

 

 俺は他の皆と一旦別れて、更衣室でジャージに着替えを済ませる。

 案の定と言うべきか、俺の方が先に着替え終わったけど。

 やっぱ、根っこの部分は女の子なんだな~。

 

 は? 彼女達の着替えている姿を事故で見たかだって?

 俺がんなことする訳ねぇじゃん。 何言ってんだ?

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 床が板張りになって、壁の一つが鏡になっているトレーニングルーム。

 普段はダンスのレッスンとかに使われていそうなこの場所で、俺はスクワットをしている。

 少し離れた場所には、俺と同じタイプのジャージを着た皆がいる。

 

「197……198……199……200!」

「よし! 小休止!」

 

 吉崎さんの言葉を聞いて、俺はその場にベッタリと座り込んだ。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 早くも汗びっしょりになってしまった。

 けど、ここは冷房が効いてるから、そこまで不快じゃない。

 

 普通、夏場のトレーニングと言えば外での練習を思い浮かべるかもしれないが、実はそれは非効率で、あまりよくないらしい。

 理由は朝のランニングと同じで、体を動かした事による体力の消費よりも、夏の暑さによる体力の消費の方が上回っているらしく、下手に行おうとすれば、逆効果なんだと。

 これは冬でのトレーニングにも言える事で、寒い場所で無理矢理にでも体を動かそうとすれば、それが靭帯の損傷などの原因になりかねない…らしい。

 だから、夏は涼しい場所で、冬はある程度暖かい場所で体にあまり負担をかけないような環境で効率よくトレーニングをする事が一番望ましい。

 これ全部、塩田さん達の受け入れなんだけどな。

 

「ほら、足出して。少し揉んであげるから」

「ご…ごめん……」

「別に気にする必要は無いよ」

 

 下のジャージを捲り上げて、俺の脹脛をしっかり丁寧に揉んでくれる叶親さん。

 これはまた気持ちがいい……随分と手慣れてるな……。

 

「そう言えば、どうして塩田さん達は態々、貴重な夏休みを使ってでも俺の事を鍛えてくれるんだ?」

「あ。やっぱそこ気になるか」

 

 そりゃそうだ。

 俺としては非常に有難いけど、彼女達がこうしてくれる理由が思いつかない。

 

「簡単に言えば、恩返しだな」

「恩返し?」

「そ。私達は全員が吉六会の人達に恩があるし、あそこには私達の身内もいるしね」

「身内……」

 

 俺の足を揉みながら叶親さんが答えてくれたが、この子の身内って誰だ?

 

「それに、あそこの元締めは俺等の同級生でもあるしな」

「同級生!?」

 

 塩田さん達と同級生って事は……俺と同じ高校一年生で一つの組織の頂点にいるって事か!?

 

「本当なら家でぐ~たらしてたかったんだけど、総理達の頼みじゃ断れねぇしな」

「だから、こうしてお前の事を鍛えてやってるんだよ。感謝しろよ?」

「そ…それは勿論……」

 

 感謝しまくってますよ! 超感謝だよ!

 皆に足を向けて寝れないよ!

 

「はい。叶親が足を揉んでる間に水分補給しておきなよ」

「ど…どうもッス」

 

 植村さんが眩しい笑顔を見せながら、俺にスポドリを手渡してくれた。

 この人を見た時のインパクトは凄かったな。

 俺よりも背の高い女の子なんて初めて見たし。

 

「ぷは~……」

 

 いい具合に冷えたスポドリが体に染み渡る~!

 

「次は左脚」

 

 右足のマッサージが終わり、今度は左脚を揉み始める。

 この子も剣道をしているらしいけど、どれほどの実力なんだろう……。

 箒よりも強い……よな、やっぱり。

 叶親さんも、剣の腕なら千冬姉とほぼ互角かもしれない。

 なんせ、あの塩田さんが絶賛するレベルだし。

 

「それが終わったら、次は腕立てだからな。勿論、回数は200回で」

「うす」

 

 最初は100回ぐらいだったが、そこから徐々に回数を増やしていく予定らしい。

 今はまだ200回だけど、ここから300回、400回と増えていくのだろう。

 けど、それぐらいの回数をこなせないと、弥生を守るなんて夢のまた夢だ。

 だから、俺は絶対にやる! やってみせる!!

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 叶親さんのマッサージが終わってから、次は腕立て200回をこなす。

 その後にもまた小休止を挟み、今度は腹筋200回。

 回数的にはまだまだ少ない方だけど、体が完全に鈍っている俺の体にとって、いきなり多くの回数をこなすのは意味が無い……と、嶋鳥さんに言われた。

 まずは少ない回数からしていって、そこから段階的に回数を増やしていく。

 ……似たような事をさっきも言ったな。うん。

 

「178……179……180……181……182……!」

 

 何も余計な事は考えず、ジッと床だけを見つめ、只管に腕立てに集中する。

 そんな時に、このトレーニングルームにあの人達がやって来た。

 

「お? 頑張ってるね~」

「いい調子みたいだな」

 

 小栗さんと兵庫さんか……。

 いつ見ても、同じ高校生とは思えないような雰囲気を醸し出す二人だよな。

 

「おっす。もう向こうの方はいいのか?」

「今日の所はな。時間も空いたし、こっちの様子を見に来ようと思ってな」

「わかってるじゃ~ん♡」

 

 吉崎さんが兵庫さんの腕に抱き着いた。

 そういや、鷹橋さんが言ってたっけ。吉崎さんと兵庫さんは付き合ってるって。

 

「けど、今日はもう一人、特別ゲストが来てるッスよ」

「「特別ゲスト?」」

 

 塩田さんと叶親さんがハモった。

 心の中で密かにそんなツッコみをしている内に、俺は200回の腹筋を終了させていた。

 

「ふぅ~……」

 

 脱力して床に寝そべる。

 あ~……冷房で冷やされて、気持ちがいい~……。

 

「ふ~ん。彼が噂に聞く『織斑一夏』君ね~」

「うわぁっ!?」

 

 見た事のない三つ編みの女の子が俺の事を除きこんでるっ!?

 

「ゲストって桜井さんの事だったのか」

「よっす。アンタ達がなんかしてるって二人に聞いたから、ちょっと様子を見に来ちゃった」

「ソ~ナノカ~」

 

 桜井さんって……この子も塩田さん達の知り合いなのか?

 なんかこのままだと失礼だと思って、急いで半身を起す。

 

「初めまして。私は『桜井美保』。塩田達と同じ幕南高校の一年生で、叶親君とはクラスメイトなの」

「ど…どうも。織斑一夏…です」

 

 初対面の相手にいきなり呼び捨てとかはしちゃいけないって、箒達に散々言われてるんだよな……。

 俺は少しでも早く仲良く出来ればいいと思ってやってるんだけど、相手もそうとは限らないしな。

 体だけじゃなくて、こうした対人関係に関する事も勉強しなくちゃな。

 

「君の事はよく知ってるよ。世界的な有名人だし」

「だよな……」

 

 俺がISを動かした当初は、よくニュースとかで俺の名前が報道されていたらしい。

 あの頃は自分の事で精一杯で、周りの事を気に掛ける余裕が無かったしな。

 

「んでもって、弥生の中学時代の友人でもあるんだぜ」

「えっ!?」

 

 弥生の中学時代の友人って……昔の弥生の事を知ってるって事かっ!?

 

「あの頃の弥生は学園内ですっごく有名人だったのよね~」

「らしいな。確か、三年間ずっと中等部でトップの成績だったんだろ?」

「しかも、一番の有名人だったらしいな」

「有名人?」

「うん。後輩の子達からは『弥生お姉さま~』って呼ばれて、滅茶苦茶尊敬されてたわね~」

 

 なんだろうか……容易に想像が出来る。

 

(中学時代の弥生か~……。きっと、昔から可愛かったんだろうな……)

 

 今とは違う制服を着た、少しだけ幼い弥生。

 どんな姿をしてたんだろう……。

 

「見てみる? 中学の頃の弥生」

「見れるのか!?」

「私の携帯に写真があった筈……」

 

 そう言うと、桜井さんは自分の携帯を操作して、画面をこっちに向けた。

 

「ほらこれ」

 

 画面に映っていたのは、恥ずかしそうに顔を赤くしているブレザーを着た弥生と、その隣で彼女の肩を抱くようにして寄り添っている桜井さんの写真だった。

 

「「「「「「おぉ~…」」」」」

 

 って、いつの間にか塩田さん達も一緒に見てるし!

 

「へぇ~…これが昔の弥生か~」

「今とあんまり変わらないようにも見えるけど……」

「これはこれで可愛いな……」

「ブレザーを着た弥生も、なんだか新鮮だ」

「これ……私も欲しいな……」

「可愛い~♡ 今よりも2センチぐらい小さいね~」

 

 まだあどけなさが残る弥生……可愛すぎるだろ!!

 くそ……! 弾達もこの頃の弥生を少しだけ見に行った事があるんだよな……。

 なんで俺も一緒に行かなかったんだよ!! もしも、この頃に弥生と出会っていれば、絶対に告白してたのに!!

 

「どう? この頃の弥生も可愛いでしょ~?」

「確かに……。もしも共学の学校に行ってれば、間違いなく男子たちから告白されまくりだったッスね」

「男子だけでなく、女子達も虜にしそうだがな」

「実際に虜にはしてたけどね。後輩達だけじゃなくて、高等部の先輩達からも可愛がられてたし」

 

 もう確実に学校のアイドルと化してるだろ、弥生……。

 けど、だからいい!!

 

「休憩のついでに、少し昔の弥生の事を話してくれよ」

「お。それナイスアイデアだよ塩田」

「いい暇潰しにはなりそうだな」

「別にいいけど、その前に……はい」

 

 桜井さんが俺達にスポドリをそれぞれ配ってくれた。

 さっきも飲んだけど、とっくに体が喉の渇きを訴えている。

 俺からしたら非常に有難い。

 

「サンキューな、桜井」

「ありがとうございます」

「いいってことよ。それじゃあ、話しますか」

 

 壁に寄り掛かるようにして皆で座り、桜井さんの話を聞く事に。

 ヤバイな……かなりドキドキしてるぞ……。

 

 

 




           幕張メンバーのプロフィール その1



                 塩田鉄人


年齢:15歳
血液型:AB型
身長:156cm
体重:言ったら殺す(by塩田)
誕生日:12月1日

幕張南高校の1年1組所属で、あらゆる意味で万能の天才。
見た目は金髪が眩しい美少女なのだが、その見た目に騙されてはいけない。
握力は軽く500キロを超えるし、ジャンプ力も10メートルぐらいは余裕で飛べる。
更に、100メートル走では非公式ながらも5秒台を叩きだし、普通に世界記録を更新している。
兎に角、全てが化け物級の身体能力を持っている事に加え、ぞの頭脳も超人的。
家庭の事情から7歳の頃にアメリカのマサチューセッツ工科大学に留学し、そこで飛び級で卒業した挙句に3つの博士号まで取得している。

ここまで来れば超絶凄い完全完璧な美少女で終わるのだが、そう行かないのが塩田と言う少女である。
まず、性格が最悪に近い。
教師を脅して食事を奢らせるなど日常茶飯事。
ムカつく同級生を騙して罠に嵌める事も普通にする。
だが、仲間意識は非常に強く、一度でも塩田が仲間だと思えば、彼女は何をしても絶対に助ける。
意外と友情にも熱く、一番の親友である叶親のことはとても大事に思っている。

塩田は四神(スーシン)流と言う武術をマスターしているが、この四神流は多岐に渡っていて、格闘術だけではなくて、剣術や棒術、果ては札術までもあって、塩田はその全てを完全に習得している。
なのに敢えて格闘技を多用するのは、単純に無手を使った格闘技が好きだから。

塩田の家族構成は父、姉、妹で、母親は彼女が幼い頃に病で他界している。
因みに『ロリでショタで30代の男の娘は好きですか?』に登場したIS学園の女教師の塩田勇気は、塩田の実の姉になる。

フランスと日本の血が混じったクォーターで、実はシャルロットとは遠縁の従妹の関係だったりする。

イメージCVは沢城みゆき

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