KOFオールスターに完全にハマってしまった作者です。
現在はレべリングをやりまくってます。
それと並行してFGOやミトラスフィアもやってるんで、ちょっと大変ですけど。
楯無と簪が自分達に割り当てられた場所を掃除している頃、他のメンバーもそれぞれに掃除を頑張っていた。
その様子を少しだけ覗いて見る事にしよう。
まずは、箒&鈴のコンビ。
「こ…これはなんとも……」
「凄まじいわね……」
雑巾片手に呆気にとられている二人の目の前に広がっているのは、端の方が霞んでしまうほどに長い木製の廊下だった。
割と綺麗になっているように見えるが、座り込んでよく見れば細かい埃があるのがよく分かる。
「これを弥生はいつも一人で掃除してるのか……」
「あたし……本気で弥生の事を尊敬するわ……」
IS学園の廊下に匹敵するほどの長さを誇る板垣家の廊下。
床が長いと言う事は、必然的に床に面している壁も長いと言う事だ。
「……やるか?」
「そうね。今回のアタシ達は、弥生の負担を少しでも減らすためにここにいるんだもの。やってやろうじゃないのよ」
気落ちしそうな心を奮い立たせ、二人は気合を入れ直し、バケツに溜まっている水に雑巾を浸す。
「アタシが廊下を拭くから、箒は壁をお願い」
「分かった。任せてくれ」
丁寧ながらも素早く廊下と壁を拭いていく二人だったが、20分を過ぎた辺りから心が折れかけたのは言うまでもない。
それでもなんとか頑張って一階の廊下を壁をなんとか拭き終えた二人は、後にこう語る。
『もう二度と廊下の雑巾がけは御免だ』と。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
リビングを担当したセシリアとシャルロットは、非常に高そうな調度品に触れないように心掛けながら、慎重に掃除を行っていた。
「流石は弥生の家のリビングだよ。僕の想像以上に広くて、高そうな家具ばかりだ」
ソファーにテーブル。棚や窓に至るまで、その全てが間違いなく高級品だと見て分かる代物ばかり。
トドメは、国内最大に大きな80V型液晶テレビが堂々と置かれていた。
畳一畳分とほぼ同じ大きさのテレビは、それだけで迫力満点だ。
二人にとってはそれなりに見慣れた物ばかりではあるが、だからこそ掃除の仕方もそれなりに理解している……つもりだった。
「ちょ…ちょっとセシリア! そんな風に磨いたら、壊れちゃうよ!」
「え? そうなんですの?」
セシリアが磨いていたのは、リビングの端の方にインテリアとして置かれている有田焼の大きな壺で、とても美しい文様が描かれていた。
しかし、完全に力任せに磨いているセシリアのやり方では壊れる可能性がある。
シャルロットは急いで彼女の暴挙を食い止めた。
「ひ…罅とか入ってない……よね? よかったぁ~……」
「お掃除って難しいんですのね……」
「いや、難しいって言うか、なんて言うか……」
弥生の為に頑張りたいと言う気概はあるのだが、セシリアの場合、それが完全に空回りしている。
結果として、シャルロットの負担が倍増していた。
「シャルロットさんはお掃除がお上手なんですのね」
「僕の場合は、趣味も兼ねてるから」
シャルロットは料理や掃除などと言った家事全般を好んでいて、学生寮の彼女の部屋もとても綺麗にしてある。
一夏とは趣味が共通していることから、友達としてはそれなりに仲が良かったりする。
一方のセシリアは、シャルロットとは完全に真逆で、家事全般がからっきしだった。
今までずっとメイドに任せっきりだったせいもあって、料理だけじゃなくて掃除も碌に出来ていない。
「えっと、セシリアはあまり勝手な事はしない方がいいかも……」
「残念ですけど、今回はそれが良さそうですわね……。シャルロットさん、出来れば私に指示をしてくれませんこと?」
「了解。それじゃあ、まずは……」
シャルロットが実働部隊と指揮官を兼任することで、ようやく掃除がまともに動き出した。
だが、スロースタートだったせいもあって、掃除が終了するのは一番遅かった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
二階にある客間を担当することになったダリルとロランであったが、この場所を安請け合いした事を早くも後悔し始めていた。
「まだ二部屋目か……」
「先は長そうだね……」
板垣家にある客間は、非常に高級感に溢れ、花月荘と見比べても遜色無い和室で、敷かれた畳がとてもいい香りを放っていた。
「客間だからと言って侮ったつもりはないんだけどよ……」
「このクオリティの部屋が、まだあと2つもあるなんてね……」
この板垣家の客間は、一部屋一部屋がそれぞれに違う風貌になっている。
彼女達が先程掃除した部屋は和洋折衷になっていて、次の部屋は完全な洋室となっていて、色んな好みに合うように揃っていた。
住んでいる者だけでなく、訪れた客の事もちゃんと考えている親切設計だった。
「ここで嘆いていても仕方がない。今は口よりも手を動かそうじゃないか」
「お前にしてはいい事を言うじゃねぇか。そうだな。弥生はこれをいつも一人でやってんだ。二人がかりで出来ませんとは言えねぇよな」
「その通り。では、さっさと始めよう」
この二人、意外と息の合ったコンビネーションで掃除を進めていき、あっという間に部屋が綺麗になっていく。
ロランとダリルの予想外の女子力が明らかになった瞬間だった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
楯無と簪が掃除をしている倉庫のすぐ傍にて、ラウラとフォルテのチビッ子コンビが着々と掃除を進めていた。
「家の外観から見て、三階の廊下はあまり長くないと思ってたんスけど……」
「流石は姫様が在宅している家だ。廊下一つとっても凄い出来栄えだ」
廊下の構造自体は箒達が掃除をしている一階と大差無いのだが、一階とは違って廊下の端々に飾り付けがなされていた。
別に高級品という訳ではないが、花瓶やちょっとした絵画などが、いいアクセントとなっていた。
「恐らくではあるが、この飾り付けは姫様がしたものだろう」
「弥生ちゃん、そういうのが好きそうッスもんね。いいセンスをしてるッス」
話しながらも、ちゃんと手は動かしている辺り、二人の根っからの真面目さが垣間見える。
廊下は見違えるように綺麗になっていき、拭いている二人の顔が反射して見えるレベルになっていた。
「む? ここは……」
「弥生ちゃんの部屋……みたいッスね」
廊下を拭いていると、二人の目の前に『弥生の部屋』と書かれたドアがあった。
「ここは流石に手を出しちゃ駄目っッスよね」
「うむ。自室は姫様が既に掃除したと言っていたし、姫様の許可無しに入るなど論外だ」
ここで少しでも『覗いてみよう』という選択肢が生まれない二人は、今回のメンバーの中で虚の次に生真面目なのだろう。
この二人が来てくれたことは、間違いなく弥生にとって幸運だったに違いない。
「続きを早くやっちゃうッス」
「だな。まだまだ掃除する場所はあるからな」
会話を止めて掃除を再開する。
範囲もそうだが、二人の連携ならば、次の場所に移るのも時間の問題だろう。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
そして、一階の和室を掃除している布仏姉妹と弥生はと言うと……。
「やよっちはお掃除上手だね~」
「そ…それほ…どでも……」
「謙遜する必要は無いですよ。本当に手慣れていますね」
本職のメイドと言う事もあって、虚はかなりのハイペースかつ効率よく掃除を進めていき、見る見るうちに和室の汚れが消えていく。
当初は本音は戦力にならないと思われていたが、想い人である弥生が傍で一緒に掃除をしていると言う事もあって、本人なりにキビキビと掃除をしている。
傍から見れば、かなりスローだが。
「ちゃんと畳の上での掃除機の掛け方も熟知しているようで安心しました」
掃除機で畳の上を掃除する際には、目に沿って掃除機を動かさなければいけない。
もしも適当に動かしていけば、畳が傷んでしまうからだ。
「では、窓の縁などは『コレ』を使いましょうか」
「そ…それ…は……!」
虚が徐にポケットの中から取り出したのは、ゴムで縛られたティッシュが装着された一本の割り箸。
(
家の掃除をする時の強い味方。
部屋の隅などの狭い場所の汚れならば、これにお任せ!
「それ……ちゃんと持ってきてたんだね……」
「当然です。これなくして掃除は成り立ちませんから」
(この発言から予想するに、虚さんは普段からコレを多用してるんだろうな~…)
なんとなく、布仏の家庭事情が垣間見えた弥生だった。
「あ……そう…だ……」
「どうしました?」
「ちょっと……」
徐に弥生が立ち上がり、どこかに向かい始めた。
「掃除…をしてい…たら……体…も汚れる…だろうし……汗…も掻く…と思う…から……今…からお風呂…を沸かし…ておこう…と思って……」
「いいんですか?」
「は…い。今回…は私……の我儘…で来て貰った…ようなもの…だし……これぐ…らい…はしたく…て……」
「わ~い! 大きいお風呂だ~♡」
年頃の女子としては、大きな檜の風呂と聞かされれば、喜ばずにはいられない。
それは本音だけでなく、姉である虚も同様だった。
(ひ…檜のお風呂…ですか。ちょっと興味はありますね……)
心の中で密かに虚もワクワクしていたり。
なんだかんだ言っても、彼女も立派な乙女だった。
弥生が風呂を沸かしに行った後も掃除は進んでいき、彼女が戻ってきた頃には完全に和室の掃除は完了していた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「「「「お…終わったぁ~……」」」」
全員で手分けして家全体の掃除を行った結果、終了した頃には夕方になっていた。
「マジで大変だったぜ……」
「普段からこれを一人で全部やってるなんて……」
「弥生は本当に凄いんだな……」
全員が疲れまくり、リビングにて椅子に座ったり、床に座り込んだりしている。
その体にはうっすらと汗が浮かんでいる。
「皆……」
「どうしましたの?」
「ご苦労様……そし…て……ありがとう……。お風呂……を沸かし…てある……から……遠慮…なく入って…いいよ……」
「「「「お風呂っ!?」」」」
風呂と聞いて、即座に反応したのは鈴とシャルロットとフォルテと本音の四人。
疲れていた心も一気に回復したようだ。
「も…勿論、弥生さんも一緒に入るんですのよね!?」
「え…え~と……」
気まずそうに目を逸らす弥生を見るに見かねた、事情を知っている三人が急いでフォローに入る。
「ま…まずは箒ちゃん達で入ってきたらどう? ほら、幾ら広いと言っても、ここにいる全員が入れるほどじゃないんでしょ?」
「そ…そうで…すね……」
「僕と楯無さんと虚さんと弥生は、皆が入ってきた後に入るから! 最初は皆が行って来ていいよ!」
「それがよさそうですね。ここで変に渋って弥生さんのご厚意を無下してはいけませんから」
とってつけたかのような説明に不満が零れかけた一年生組だが、言っている事も尤もだったので、大人しくお風呂に入らせて貰う事に。
「でも、着替えはどうしましょうか? 流石に持ってきては……」
虚が言いかけた時、彼女以外の全員がバックから自分用の着替えを取り出し始めていた。
「……………え?」
「お姉ちゃん……持ってきてないの?」
「と言うか、どうして皆して持ってきてるんですか……?」
「いや……別に? あわよくば弥生ちゃんのおうちにお泊りとか出来ればいいかな~なんて、これポッチも考えてなんかいなかったわよ? うん、絶対」
「はぁ~……」
どうやら、考えている事は全員同じだったようだ。
「あ…あの……お客さん…用…の浴衣…ぐらい……ならありま…すよ……?」
「…………お借りします」
変に遠慮するのも失礼な話なので、ここは大人しく借りることに。
「では、浴場をお借りします。姫様」
「ん。ゆっくり……入ってきて……ね。バスタオル……は更衣室…の棚…の中……に入ってる…から……」
「分かったわ。ありがとね」
ゾロゾロと集団でお風呂へと向かった面々。
それをジッと見送った弥生達。
「行ったみたいね」
「よかったです」
ホッと胸を撫で下ろす楯無達。
だが、シャルロットはともかく、楯無達が自分の体の事を知っているのが気になった。
「あの……楯無さん…達……はどうして……」
「ん~……私は、前に弥生ちゃんが寝込んでた時にうっかり……ね。今まで言えなくてごめんなさい」
「私はお嬢様から聞かされました。今まで言い出せずに、申し訳ありませんでした。シャルロットさんはどうして?」
「僕は~……前に少し……」
ここで『一緒にお風呂に入って、その時に見ちゃいました~』とは言えないシャルロット。
この状況でそれを言う勇気は無かった。もしも言えばそうなるか、容易に想像がついた。
「とにかく、少しでも事情を知っている人間が身近にいれば、弥生ちゃんも安心でしょ?」
「そうで…すね……」
気が付かない内に楯無達が自分の秘密を知っている事に驚きはしたが、その事で彼女達を恨むような事はしなかった。
寧ろ、安心感すら覚えていた弥生。
(この人達なら……大丈夫かな……)
心にも余裕が生まれ安心したのもつかの間、突如として弥生のスマホに着信が来た。
「ん?」
「あら、誰かしら?」
「ちょっと……失礼し…ます……」
一度断りを入れてから、少し離れた場所にて通話に出る。
「もし…も…し……? え? い…きな…り…どうし…たの……?」
通話相手は相当に焦っているようで、捲し立てるような言葉にタジタジになってしまう。
「うん……うん……事情…は分かった…よ。そ…れで……私…はどうす…れば…いい……?」
弥生は急いで周囲を見渡して、適当なメモ紙とペンを手に取って、何かを書き始めた。
「……………………了解。私……なら大丈夫…だよ。気持ち…は分かる…し……」
通話相手は弥生の言葉に安心したのか、礼の言葉を言ってから通話を切った。
「アイツ……も苦労…してる…んだな……」
静かになった自分のスマホを見つめながら、ポツリと呟いた弥生だった。
まだまだ終わりが見えない大掃除編!
次回の弥生サイドは、なんと! またまたお風呂回だ~!
そして、当然のように一夏の一日もまだまだ終わりません。
一夏と弥生の話は基本的に連動してますから。