なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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やっぱ、投稿は夜に限ると、しみじみ実感している作者です。

昼間の暑さが嘘のように、夜が涼しくて最高です。

扇風機を組み合わせれば、もうそれだけでクーラーいらず。

早く昼間も涼しくなってほしいもんですね。






一夏の特訓 その4

 なんで……。

 

「う~ん……むにゃむにゃ……」

 

 なんでこんな事に……。

 

「しゅぴ~……」

 

 こんな事に陥ってしまったんだ……。

 

 なんて言っても、ぶっちゃけ意味不明だと思うので、まずは今の俺が置かれている状況を説明したいと思う。

 

 俺は今、塩田さん達6人と同じ部屋にて就寝している。

 そう、あの美少女6人組と一緒の部屋で、だ。

 

 別に、俺だって好き好んで彼女達と一緒の部屋で寝ているわけじゃない。

 そりゃ、こんな女の子達と一緒にいて、何も思わない訳じゃないけど……。

 

 就寝時、俺は基本的に鬼瓶さんから与えられた部屋にて寝るようにしている。

 今日も今までと同じようにその部屋で寝ようと思っていたのだが……。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 俺の特訓は主に昼間に集中して行い、夜は体を休める事にしている。

 だからと言って、決して何もしないと言う訳じゃなくて、今が夏休みである以上は学生として絶対にやらなくてはいけない事がありまして……。

 

「ほらそこ、文法間違ってるぞ」

「え? どこですか?」

「ここだって、ここ」

「あ、本当だ」

 

 俺は、リビングにて体を休ませながらも、夏休みの宿題と睨めっこしていた。

 隣には嶋鳥さんがいて、宿題を見てくれている。

 因みに、俺が今しているのは古文。

 IS学園だからと言って、決してIS関連の宿題ばかりじゃない。

 こんな風に、普通の学校と同じような基本5教科の宿題もちゃんと出題されるのだ。

 

「そういえば、嶋鳥さん達は宿題、大丈夫なんですか?」

「あ~…私達ならモーマンタイ」

「それって……実はもう終わってたり……とか?」

「んな訳あるかい。それは塩田達だけだよ」

「へぇ~…そうなのか~……って、塩田さんは終わってんのか!?」

「まぁな。塩田と吉崎と植村は7月の間に全部終わらせてるよ」

「マジか……。じゃあ、嶋鳥さん達は?」

「私と叶親と鷹橋は、ちゃんと計画を立ててからやってる。だから、別に焦る必要は無し」

 

 7月中に終わらせたって言う塩田さん達も凄いけど、ちゃんと計画を立てて、それを実行できてるってのも地味に凄いよな。

 だって、夏休みの計画程、破綻しやすい計画ってないだろ?

 

 問題を一問一問確実に解いていくと、扉がノックされた後に叶親さんがお盆に二人分の麦茶を乗せてやって来た。

 

「お疲れ様。少し休憩したら?」

「そうだな。ちょっち小休止するか」

「うす」

 

 お盆を床に置いてから、俺と嶋鳥さんにそれぞれ麦茶を手渡してくれた。

 幾ら涼しい夜とは言え油断は禁物。

 ちゃんと水分補給はしておかないと、後で自分が困る羽目になる。

 

「どこまで進んだ?」

「もう少しで古文は終わるかな? そうしたら、次は英語だ」

「じゃあ、今度は塩田の出番か」

「塩田さんが?」

「うん。アイツ、小さな頃にアメリカ留学してたから、英語超ペラペラだし」

「って言うか、英語だけじゃなくて、中国語に韓国語、フランス語にドイツ語にロシア語、他にも色々喋れたよな?」

「前に、よく分かんない言語を話してた時もあったっけ。古代ノルド語にラテン語とかもいけるって聞いた事があるような気が……」

 

 幾らなんでも凄すぎだろ。

 そんなにも沢山の言語をマスターして、一体何処に行くつもりなんだ?

 

「まぁ…兎に角、英語なら塩田にお任せって事だ」

「下手に間違うと拳が飛んできそうだけど」

 

 ……ちゃんと俺は宿題を終わらせられるんだろうか。

 

「お~い……って、叶親もいたのか」

「鷹橋さん。どうしたんだ?」

 

 今度は、携帯を持った鷹橋さんが入ってきた。

 短パンにTシャツと言った普通の格好だけど、彼女の場合は千冬姉と同等クラスのスタイルを誇るから、それだけでもかなりエロい。

 

「やっぱし、織斑の部屋のエアコン、ダメだったわ」

「そうか~……」

 

 鷹橋さんの言う通り、俺が普段から寝泊まりしている部屋のエアコンが見事な御臨終をなされたのだ。

 機械にあまり強くない俺には、壊れた原因がサッパリわからない。

 勿論、修理なんてもってのほかだ。

 

「私達じゃ対処のしようが無いから、明日にでも桜井さんに来てもらうことにした」

「おぉ~! それならもう安心だな!」

 

 は? なんでそこで桜井さんの名前が出る?

 

「あの……桜井さんって、昼間会った……」

「そ。あの三つ編みの子」

 

 弥生の中学時代の友人で、塩田さん達と同じ高校に通っている女の子。

 気が強そうな印象が強かったが、だからこそ引っ込み思案の弥生とは相性が良かったのかもしれない。

 

「私達も少し前に知ったんだけど、桜井さんって機械にめっちゃ強いんだよ」

「なんせ、前に私達の部室のエアコンが壊れた時も、桜井さんがチョチョ~イってすぐに修理しちゃったし」

「あれは本当に凄かったな……」

「あまりの暑さに、塩田がいきなり浴衣を取り出して、それを鷹橋に着せたぐらいだしな」

 

 学校の部室で浴衣を着せたっ!?

 どうやら、幕南高校って所も相当にカオスみたいだな……。

 

「ところで、嶋鳥さん達って何の部に入ってるんですか?」

「「「女子野球部」」」

 

 まさかの野球部っ!?

 この人達からは最も縁遠いスポーツじゃないか!?

 

「んでもって、吉崎がキャプテンで塩田が副キャプテン」

「叶親が四番バッターだったりする」

「ブイ」

 

 あの吉崎さんがキャプテンで、塩田さんが副キャプテンって……。

 叶親さんはあれか? 剣道してるからバッターなのか? つーか、なんで剣道部じゃないの?

 

「桜井さんはマネージャーをやってる」

 

 こんな個性豊かな面々が部員だと、桜井さんも苦労してるんだろうな……。

 

「あ、鬼瓶さんはどうだった? ちゃんと電話はしたんだろ?」

「うん。また向こうに泊まるってさ」

「今日も徹夜確定か……。編集者って想像以上にハードな職業なんだな……」

 

 鬼瓶さん……本気でご苦労様です!

 帰ってきた時は、美味しい料理でも振舞ってあげよう。

 

「んでさ、織斑は今晩はどうする?」

「どうするって?」

「だ~か~ら~。あの暑い部屋で寝るのかって聞いてるの」

 

 あ、それか。

 

「俺は別に構いませんけど? 今晩はそこまで暑いって訳じゃないし」

「その慢心が熱中症の原因になるんだぞ?」

「夜だからと言って、油断は禁物だぞ?」

「人間は寝てる間にコップ一杯分の汗を掻くって言われてるしな」

 

 それは俺も前にテレビで聞いた事があるような気がする。

 流石に実際に確かめた事は無いけど。

 

「つーわけだから、織斑は今晩、私達と同じ部屋で寝ること」

「はぁぁぁぁぁっ!?」

 

 なにがどうしたら、そんな結論に至るんだっ!?

 

「部屋自体はそこまで狭くないから、一人位増えても問題だろう」

「はい決定」

「ちょ…ちょっと待って!」

「「「なに?」」」

 

 そんな純粋な目で小首を傾げないでくれよ!

 まるで俺が間違った事を言ってるみたいじゃないか!

 

「お…俺は男ですよ!? 女の子達が大勢いる場所で一緒に寝るってのは倫理的に問題があるんじゃ……」

「そんな下らない心配をしてたの?」

「そんなの、私達からすれば今更だよね~」

「「「ね~?」」」

 

 今更って……。

 彼女達は、普段からどんな学校生活をしてるんだよ……。

 

「因みに、織斑に拒否権はありませんのであしからず」

「だと思いましたよ!!」

 

 ちくしょ~! どうして俺の周りの女子は、こうもアグレッシブな子達ばかりなんだ~!

 お淑やかな女の子って弥生ぐらいしかいないじゃないか~!

 あ~……急に弥生が恋しくなってきた……。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 そんな訳で、有無を言わさず俺はこの部屋に強制連行されて、こうして彼女達と一緒に寝る羽目になったのです。

 しかも、なんでか俺が真ん中に寝てて、全員が横並びになってるんだよな……。

 

「す~…す~…」

 

 女の子の寝息がすぐ傍で聞こえて、物凄く落ち着かない!

 こんな状態で寝れるわけないだろ~が!

 

 俺の両隣りには植村さんと塩田さんがいる訳で。

 二人共ラフな格好をしてるから、凄くアレなんだよ!

 

「んん~……」

 

 ちょ…ちょっとっ!? 塩田さんっ!?

 

(きゅ…急に腕に抱き着かれた……!)

 

 かなり力を入れて抱き着かれたから、思いっきり胸が腕に当たってるんですけど~!

 や…柔らかな感触をモロに感じて……。

 

(いやいやいやいや! 俺には弥生と言う、心に決めた女の子がいるじゃないか!)

 

 塩田さんは寝相が悪くてこうなっただけで、彼女には何の悪気も無いんだ!

 変に意識をする方が失礼ってもんだろう!

 

(で…でも、出来れば助けて欲しい……)

 

 音を立てずに周りを見渡すと、他の子達はすっかり熟睡していた。

 鷹橋さんは横を向いて寝ていて、その大きな胸がかなり強調されている。

 吉崎さんと叶親さんも静かな寝息を立てながら寝ていて、その寝顔に少しだけドキッとした。

 嶋鳥さんは顔を向こう側に向けていて分かりにくいが、ちゃんと寝息が聞こえることから、ぐっすりと寝ている事が窺える。

 

(もう…朝まで我慢するしかないのか……?)

 

 この煩悩だらけの状態で朝まで耐久とか、どんな拷問っ!?

 いや……弾辺りには天国のような場所かもしれない。

 少なくとも、彼女達が見目麗しい美少女である事には違いないから。

 

「あ~む♡」

 

 ぱく。

 

「いっ!?」

 

 み…耳を噛まれたっ!? 誰にっ!? 何故っ!?

 

「お肉~……」

 

 う…植村さ~んっ!? ちょ…ちょっとっ!? 俺の耳を甘噛みするのは止めてくれませんかねっ!?

 いつもは結んでいる髪が解けて、凄く色っぽくなってるから、かなり刺激的になってるんだよ!!

 

(ちくしょう……悔しいけど……悔しいけど……植村さんの甘噛み、めっちゃ気持ちいい……!)

 

 心が幾ら拒絶しても体は正直なようで、見事に体の『とある部分』が元気ビンビンになっている。

 

(い…いや! こんな誘惑に負けちゃ駄目だ!! 俺が好きなのは弥生! 俺は弥生を守ると決めた!)

 

 こんな時は、何か別の事を考えるんだ! え~っと……。

 

(日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、我等と我等の子孫の為に諸国民との共和による成果と……)

 

 この間やった宿題に出てきた憲法の前文を必死に心の中で暗唱して、今の自分の心を紛らわす。

 ついでに、弥生の頭を脳裏に思い浮かべる。

 

(とにかく、今は寝る事に全力を尽くそう! 確か、羊を数えればいいとかよく言うよな……)

 

 でも、今の俺の場合は羊よりも数えたいものがあるわけでして。

 

(え~と……制服姿の弥生が一人。ISスーツ姿の弥生が二人。私服の弥生が三人。夏休みだから、きっと今も私服姿なんだろうな……)

 

 おっと、弥生が可愛すぎるせいで思考が逸れてしまった。

 

(ビキニ姿の弥生が四人、あの時の姿は一生忘れないな……。スク水姿の弥生が五人、学園指定のスク水も絶対に似合って可愛いに違いない……。体操服姿の弥生が六人、あぁ……いつの日か弥生の体操服姿(ブルマ)も見てみたいぜ……)

 

 一度始まると、もう妄想は止まらない。

 後から後から、湧き出る泉の水のように弥生の色んな姿が思い浮かばれる。

 

(スーツ姿の弥生が七人、弥生はああ見えて大人っぽい所もあるからな、凄く様になっているんだろう。エプロン姿の弥生が八人、家事もかなり上手だって聞いたから、エプロンも絶対に似合うって。ネグリジェ姿の弥生が九人、いつの日か、そんな恰好をした弥生と一緒のベッドで寝てみたいな……)

 

 あ……段々と眠気が出てきて、瞼が重くなってきた……。

 

(ウェディングドレス姿の弥生が十人……)

 

 ウェディングドレス……か。

 

(子供は男の子と女の子がそれぞれ一人ずつがいいな……。そんでもって、俺が新聞を読んでいる横で弥生がキッチンでご飯を作って、それで……)

 

 そこまで妄想が達した瞬間、俺は自然と眠りについていた。

 この時見た夢は、弥生との幸せな結婚生活だったのは言うまでもない。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「ん……んん……」

 

 急に来た尿意に促され、嶋鳥は目を覚ました。

 

「……………」

 

 枕元に置いた自分のスマホで時間を確認すると、まだ午前の3時半。

 いつもならば余裕で夢の中にいる時間帯だ。

 

「………………トイレ」

 

 誰に言うわけでもなく、嶋鳥は小さな声でポツリと呟いてから、そっと部屋から出てトイレに向かった。

 この時の嶋鳥は、まだ寝ぼけていて、近くにいる一夏がどんな状況になっているのかよく分からないでいた。

 

 数分後に、少しだけ目が覚めて目が暗闇に慣れた嶋鳥が戻ってきて、その時になって初めて一夏の置かれた状態を見る事になった。

 

「弥生~……俺も愛してるぞ~……」

 

 右側に植村、左側に塩田を侍らせた状態で弥生の名前を呼ぶ一夏。

 傍から見ると、普通に最低野郎である。

 

「そんなに腰を振らなくても~……俺がちゃんと気持ちよくしてやるぞ~……」

 

 お前は一体どんな夢を見てるんだ。

 しかも、ご立派に股間を膨らませて。

 

「………………キモ」

 

 嶋鳥朱美、心からの一言だった。

 

 次の日の朝、当然のように嶋鳥の一夏を見る目が軽蔑に染まっていた。

 一夏に抱き着いていた塩田と植村はあまりよく分かっていない様子だったが。

 

 余談ではあるが、ちゃんとエアコンは桜井によって修理されました。

 

 

 

 

 

 




             幕張メンバーのプロフィール


                吉崎真由美



年齢:17歳
血液型:B型
身長:161cm
体重:塗りつぶされていてよく見えない
誕生日:12月7日

幕南高校の二年生にして、塩田達も所属している女子野球部のキャプテンも務めている。
と言っても、殆ど形だけで、実際にキャプテンらしいことは何一つしていない。

塩田達と出会ったのも、高校に入ってから。
名前だけは前々から知ってはいたが、お家事情により実際には会えずにいた。
自他共に認めるバイセクシャルで、男も女も基本的にOKなタイプ。
塩田達と出会うまでは、学校には殆ど顔を出さずに、街中でよく逆ナンをしては愛の無いセックスに溺れていた。
しかし、本格的に高校に通うようになってから兵庫と知り合い、色々な経緯を経て歳相応の少女らしい恋を覚え、それを見事に成就させて、兵庫と付き合う事になった。

そんな彼女は、実は弓の名手で、その実力は世界最強と言わしめる程。
『絶対必中』と言われるほどに凄まじく、どんなに小さな的でも絶対に外さない。
なんで吉崎が野球部に籍を置いているのかは本気で謎。

性格はかなりクールなのだが、それはあくまで表向きのポーズに過ぎず、実際の彼女は涙も脆く浮かれやすく、割と喜怒哀楽が激しい少女。

実はアイルランドの血が混じっていて、実は父親があの『真紅の魔槍を持つ青い槍兵』の直系の遠い子孫だったりする。
父親の容姿はご先祖に瓜二つで、性格もよく似ている。

余談だが、吉崎の母親は『平行世界からやって来た某17番目の人造人間な美人さん』にそっくりで、吉崎の弓の腕はそこから受け継がれていたりする。
実は地味に槍も使えたりするのだが、吉崎自身が槍よりも弓を好んで使う為、殆どその才能は発揮されない。

イメージCVは水樹奈々

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