なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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皆さん、お待たせしました。

弥生×千冬の事後の話です。

弥生と一緒にベットインした挙句、朝チュンを盛大にぶちかましてしまった千冬。

その真相はいかに!?






やっちまった!!

「こ…これは一体どういうことだ……?」

 

 私自身、全く状況が飲み込めていないが、取り敢えずこれだけは言える。

 

「私は……もしや、とんでもない事をしてしまったのでは……!」

 

 私と弥生が一緒のベッドに入り、一糸纏わぬ姿になっている。

 あの鈍感神と揶揄されている一夏ですら、この状況を目撃すれば、一発でナニがあったのか容易に想像してしまうだろう。

 

「何が……何があったんだ……! 思い出せ私……!」

 

 くっ……! 思い出そうとすると頭が痛む……!

 これがもしもファンタジー小説などであれば、記憶を封印されたとか真っ当な言い訳が出来るが、これは間違いなく、そんな御大層なモノじゃないと断言できる。

 

「二日酔いか……! しかも、いつも以上に頭が痛む……! どうやら、昨晩はかなりの量を飲んでしまったようだな……」

 

 弥生が作ってくれたツマミが本当に美味しくて、思わずガンガン酒が進んでしまったのだけはよく覚えているが……。

 

「完全に途中からの記憶が無い……」

 

 いや待て……ここは冷静になって考えろ織斑千冬。

 幾ら一緒のベットに裸で入っているからと言って、それがそのままアレに直結するとは限らないじゃないか。

 

「そうだ……そうに決まっている。きっとそうだ」

 

 隣で寝ている弥生を起こさないように、静かに呟きながら自分に言い聞かせる。

 

「いかに酔っていたとは言え、教師としての本分を忘れるなど有り得な……」

「ん……んん……?」

 

 窓から差し込む陽光に網膜を刺激されたのか、弥生は目を強く瞑りながらモゾモゾと動く。

 その時に思わず弥生の裸体を見てしまった。

 

「ゴ…ゴクリ……」

 

 以前に佐藤先生に教えて貰った通り、その小さな体には無数の痛々しい傷跡があった。

 情報として知っていても、実際に目にするのとでは衝撃の度合いが違う。

 

「弥生……」

 

 そっと彼女の頭を撫でる。

 静かな寝息を立てている弥生の寝顔を見て、自分の心の中に確かな想いが生まれるのを感じた。

 

 弥生が愛おしい。弥生が可愛らしい。弥生の傍にいたい。弥生の事を守ってあげたい。

 

「もしかしたら……これが私の初恋なのかもしれないな……」

 

 よりにもよって、初めて恋心を抱いたのが同性の教え子だとは……。

 普通に考えたら絶対にあってはいけない事だろうな。

 

「む……?」

 

 こ…この角度からだと、弥生の胸がよく見える……。

 普段から服の上からでも分かるぐらいに大きいとは思っていたが、一度服を脱げば更に大きく感じる。

 もしや、弥生は着痩せするタイプなのか?

 

(くぅ~…! こんなエロい体を前にして、私は本当にナニをしたって言うんだ!! どんな些細な事でもいいから、思い出せ私の脳みそ野郎(ブレイン)!!)

 

 私の体も十分にエロいだと?

 自分の体に欲情する馬鹿がどこにいる?

 

「ん……? 朝……?」

「あ……」

 

 お…起こしてしまったか?

 目を擦りながら、弥生がゆっくりと半身を起す。

 

「ち…ふゆ……さん……?」

「お…おはよう……弥生……」

 

 き…気まずい……。

 こんなにも気まずい朝は初めてだ……。

 

「あ……!」

 

 自分の姿に気が付いたのか、弥生が慌ててシーツで体を隠した。

 恥ずかしそうにしながら体を隠す弥生も可愛い!!

 

「そ…その……だな……昨夜のこと…なんだが……」

「昨夜……」

「あ…あぁ……。私はその……お前に……」

 

 こっちが全てを言い終わる前に、弥生の顔が急沸騰した。

 

「ち…千冬さ…ん……」

「な…なんだ?」

「………激しかっ…た……で…すね……」

「激しかったっ!?」

 

 ナニがっ!? 私のナニが激しかったって言うんだっ!?

 

「わ…たし……は別…に気に…したり…とか…はしてませ…ん…から……」

 

 お前が気にしなくても、こっちが気にするんだ!!

 や…やはり私は弥生の事を~……!

 

「その……私…も気持ち…よか…った……で…すし……」

 

 私を安心させる為だろうか。

 はにかみながら視線を逸らす弥生を見て、初めて『萌え』と言う感情を知った気がした。

 

(これが『萌え』か……)

 

 悶絶したくなる程に弥生が可愛い。

 いや……もうヤることをやってしまったのであれば、この場で抱きしめても問題無いのでは?

 ふと、私の脳裏で悪魔がそう囁いた気がした。

 

「え…っと……朝御飯……を作ってき…ます……ね……」

 

 床に散乱している自分の服を手に取って、弥生はそそくさと部屋から出て行った。

 

「まるで……新婚初夜みたいだな」

 

 自分で自分の言った事に密かに感動してしまった自分を鑑みて、地味に落ち込んでしまったのは内緒だ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 あ~……さっきは驚いたな~。

 さっきもだけど、一番驚いたのは昨夜の出来事だった。

 完全に酔っぱらった千冬さんが、私の事を抱き上げて、いきなり自分の部屋のベッドにシュートインしたからね。

 あの様子を見る限りでは、昨日の事は何にも覚えていないみたいだけど。

 

 リビングに移動して、自分の服を着ながら昨日の事を思い出す。

 

(私……またキス……しちゃった……)

 

 前回の束さんに引き続き、今回で二回目のキス。

 今度もまた年上の大人女性で、しかも自分のクラスの担任教師でクラスメイトの姉だ。

 

(でも……どうしてだろう……。全然嫌な感じじゃなかった。無理矢理キスされたに等しいのに、嫌悪感とか怒りとか、全く無かったし……)

 

 なんて言えばいいのかな……。

 まるで家族(・・)に包まれているような安心感があったって言うか……。

 とにかく、あの時の私に拒絶するって選択肢が無かったのだけは事実だ。

 それ以前に、千冬さんの腕力が強すぎて抜け出せなかったんだけど。

 

(ほんと……なんで『あんな事』になっちゃったんだろう……)

 

 あ、ここから回想シーン入るから。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 それは、私が千冬さんの手によってベッドに放り込まれた時の事だった。

 

「あ…あの……その……」

「もう……辛抱たまらん!!」

 

 いきなり叫ぶと、その腕力と巧みなテクニックにて、ポポポポ~ンと私の着ている服を全部脱がせて、床に放り投げてしまった。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「ならば、私も……クロスアウト!!」

 

 こっちが悲鳴を上げている間に千冬さんも素早く服を脱ぎ去り、私と同じ裸状態に。

 

(うわ……うわ……! こんな時にアホな事だと思うけど、千冬さんの体って綺麗だな……)

 

 窓から入る月明かりに照らされて、千冬さんの裸体がよく見える。

 私みたいな傷だらけの体とは大違いの、本当に美しい体をしていた。

 

(束さんの体も綺麗だったし……私の周りの女の子ってこんなんばっかりだ……)

 

 増々自分が惨めに思えてしまうが、今はそんな事を行っている場合じゃない。

 だって、この完全に泥酔した担任教師に、私は貞操を奪われる危機的状況なんだから。

 

「弥生……私はお前を……」

「千冬…さn……」

 

 再びのキス。

 またもや舌が入ってきて、私の口の中を蹂躙していく。

 

「んちゅ……れろ……」

「ふふぁ……」

 

 二人の間に輝く細い橋が形成されて、すぐに切れる。

 そして、三度のキスになり、今度はより深くまで舌が侵入してくる。

 

「んん……んん……んぐっ……!?」

 

 千冬さんの唾……飲んじゃった……。

 

 いきなりの事に動揺していると、千冬さんの口が私の口から離れていき、首筋を舐め始めた。

 

「んあぁぁ……♡」

 

 舌は段々と下がっていき、鎖骨の辺りまできた。

 更に、千冬さんの手はしれっと私の胸に当てられていた。

 

「これが弥生の味か……。これも美味しいな……♡」

 

 まるで傷跡を一つ一つ舐めて癒すように、丁寧かつイヤらしい舌使いで私の体が侵略されていく。

 

「弥生……は…私……の……」

 

 と、ここまでしておきながら、千冬さんはまるで電池が切れてしまったかのようにバタンと倒れてしまった。

 

「ち…千冬…さん……?」

「グ~……グ~……」

 

 肩をポンポンと叩いても、一向に起きる気配が無い。

 相当に酔っていたし、完全に熟睡しているみたいだ。

 

「どうしよう……」

 

 取り敢えず、このままだと動けそうにないし……。

 

「う……ぐぐぐ……!」

 

 床に落ちた自分のスマホになんとか手を伸ばし、メールでおじいちゃんに今日はこっちに泊まる事になりそうな旨を伝えた。

 

「ふぅ……これ…で……」

 

 一応は安心……じゃないから!!

 泊まること自体は別にいいとして、このままの状態は拙すぎるでしょ!!

 

「弥生~…♡ むにゃむにゃ……」

 

 千冬さ~ん! その手を離してぇ~!

 このままじゃ服も碌に着れないんですけどぉ~!!

 

「う……」

 

 さっきのキスでアルコールが口移しの形で私の口にも入ってきちゃったのか……?

 なんかこっちも急に眠たくなってきて……。

 

(着替え……なくちゃ……)

 

 自分の意思とは裏腹に、瞼は重くなる一方。

 眠気が段々と私を支配していき、気が付いた時には私も眠りにつく体勢に入っていて、千冬さんの体に抱き着くようにして夢の中へと入っていた。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 結果的に何も起きなかったとはいえ、その直前までいった上に、二人で一緒に裸で一つのベッドに入って寝たのは紛れもない事実。

 これは明らかに教師と生徒の関係じゃない。

 まるでこれじゃあ……。

 

(恋人同士みたいじゃないか……)

 

 って! 私こそ何を考えてるんだよ!!

 仮にも担任教師と教え子の関係だぞ!?

 それがなんで一気に飛び越えて恋人とかに発展するんだよっ!?

 常識的に考えても有り得ないでしょうが!!

 

「はぁ~……」

 

 ダメだダメだ。

 こうしてジッとしてると、それだけで変な事ばかり考えてしまう。

 こんな時は体を動かすに限る!

 と言う訳で、さっさと朝ごはんを作ってしまおう!

 ここはスタンダードに、トーストに目玉焼きにモーニングコーヒーとかでいいかな?

 どうやら千冬さんは二日酔いっぽいし、あまり重いのは入らないだろう。

 

「早く……つく…ります…か……」

 

 時計を見たら、もう7時30分を回っていた。

 千冬さんもきっとお腹を空かせているだろうし、急がないとね!

 

 あれ……? なんかこれって、まるで新妻みたいな思考じゃね?

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 自分の部屋で暫く自己嫌悪に陥っていた私は、このままでいても仕方がないと判断し、適当に服を着てリビングに降りていった。

  

 すると、なにやらいい匂いと一緒に何かを焼くような音が聞こえてきた。

 

「弥生が朝食を作っているのか……?」

 

 邪魔をしないように、そっとキッチンを除くと、そこでは弥生がエプロンをつけてから鼻歌を口ずさみながら、軽やかな手つきで包丁を使って野菜を切っていた。

 

「あ………もう少し……で出来ま…すから……テーブル…で待って…てくれま…すか……?」

「あ…あぁ……」

 

 なんか……本当の夫婦みたいな会話だな。

 何かを言えるような雰囲気でも無かったので、大人しくテーブルで待つことに。

 

「ちゃんと新聞も持ってきてある……」

 

 弥生のしてくれる一つ一つが心にくるな……。

 心がピョンピョンするとはこういう事か。

 

 新聞を読みながら、のんびりと朝の時間を過ごしていると、キッチンの奥から弥生が朝食を持ってきた。

 

「お待た…せしまし…た……」

 

 朝のメニューはトーストにレタスが盛られたハムエッグ、それからコーヒーか。

 丁度、今はパンとコーヒーの気分だったので、私は朝からいい気分になれた。

 

「ちゃんと弥生の分もあるんだろう?」

「はい」

 

 なんだか申し訳ない事をしてしまったな。

 本来ならば弥生は昨日の内に帰る予定だっただろうに、ここに泊まらせることになってしまった。

 着替えとかもしていないだろうに、風呂にも入っていない筈だ。

 

「「いただきます」」

 

 二人分の朝食が並べられたテーブルにて、向かい合うようにして私達は食事を始める。

 ……なんて声を掛ければいいんだ……。

 いや、まずは昨夜のことを真っ先に謝罪するべきだろう。

 

「その……弥生」

「はい……?」

 

 トーストにバターを塗ろうとしていた弥生が、その手を止めてからこっちを見る。

 うぐ……その小首を傾げて呆けた顔も可愛い……。

 

「昨夜は本当に済まなかった! 幾ら酔っていたとは言え、私はお前にとんでもない事を……」

「さっき……も言いました……けど……別…に気に…してませ…んよ……?」

「しかし!」

「そ…れに……嫌……じゃ…なかった……で…すし……」

「なんだと……?」

 

 嫌じゃなかった……だって……?

 それはつまり、弥生が私の事を……?

 

(……もう限界だ。我慢はここまでにしよう)

 

 今までは大人や教師としての体面を考える余り、ずっとこの気持ちを抑え込んできた。

 しかし、もう止めにしよう。

 これからは、自分の気持ちに素直になろう。

 

(悪いな……お前達。これからはもう遠慮はしない事にする。だから……覚悟しておけよ)

 

 自分の気持ちを受け入れた途端、急に胸が軽くなった。

 そこからは、弥生と何気ない事を話しながら朝食を楽しんだ。

 簡単なメニューではあったが、本当に美味しかった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 朝食を食べ終えた後に、私は弥生と一緒に後片付けをした。

 流石の私も、皿洗いぐらいは出来るんだぞ?

 出来ないのは料理と掃除だけだ。

 

「これ…で最後……」

「分かった」

 

 弥生に手渡された皿を、私が布巾で乾拭きし籠に並べる。

 

「終わった……」

「弥生」

「はい…………っ!?」

 

 不意を突いて、そっと弥生の唇に自分の唇を重ねる。

 本当に一瞬の出来事だったが、今はそれで充分だった。

 

「ち…千冬…さん……?」

「昨夜は酔っていたが、これが今の私の偽らざる気持ちだ」

「え……っと……」

 

 また弥生の顔が真っ赤になる。

 どんな表情をしても、弥生は可愛いな。

 

「今はまだ返事をしなくてもいい。ただ、お前にそんな感情を抱いている女がいるって事を知っていてくれればな」

「は……いぃぃ……」

 

 まるで頭から湯気が出そうな程に赤くなって、俯いてしまった。

 

「どうせなら風呂にでも入ってきたらどうだ? 昨夜は入ってないんだろう?」

「そうで…すけど……」

「昨日の残り湯がまだある筈だ。それに継ぎ足して沸かせば問題無いだろう」

「分かりま…した……」

 

 小走りにキッチンを出て行く弥生を見ながら、これからの事に思いを馳せていた。

 今日から真剣に同性婚の出来る国とかについて調べてみるか……。

 出来れば弥生には大学とかも行って欲しいし、となると、婚約は矢張り二十歳辺りが妥当か……?

 

 この日、弥生は昼までいてくれて、昼食も作ってくれた。

 あの特製親子丼は実に美味かった……。

 

 その帰りに、案の定と言うか、弥生はとある中華料理店に立ち寄って、毎度のように超大盛りメニューで今までの飢えを満たし、店の店員に悲鳴を上げさせたとかなんとか。

 

 

 

 

 




最後まではしませんでしたが、それでも割と危ない所まではいってました。

そして、束の時と同様に、この時の弥生の気持ちがかなり重要だったりします。

千冬はとうとうマジモードになりました。

間違いなく、現時点ではラウラすらも超えて一番リードしているヒロインでしょう。

このまま大人の女性の魅力で独走していくのか、それとも他のヒロインが何らかの逆転をするのか、まさかのまさかで一夏のターンが来るのか……?

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