なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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皆さん……私は帰ってきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!

やっと……やっと余裕が出来ました。

久方振りに投稿再開です。

キツかった……本当にキツかったよぉ~!






決戦 ~夏コミ~

 遂に来た……決戦の日が!

 この時が来るのを、一体どれだけの間、待ちわびてきたことか……。

 でも、それももう終わりだ。

 今日は……今日だけは! 絶対に一片の悔いも残さないようにしなくては!!

 

「……行くのじゃな?」

「うん……」

 

 玄関先でおじいちゃんが腕組みをしながら、靴を履いている私の事を見つめる。

 

「ここまでくれば、もう何も言う事は無い。思う存分に暴れてくるがよかろう」

「うん……!」

 

 今日の為に、色々と計画は立ててきてる。

 効率的な移動ルートや、緊急時の対処法等々。

 

「では……行ってくるがよい! 夏コミへと!!」

「いってきます……!」

 

 心の内に決意を秘めながら、私はゆっくりと玄関をくぐっていった。

 

「ちゃんと、ワシの分もお願いするぞ」

「了解」

 

 おじいちゃんは立場上、安易に外出が出来ない。

 だから、こんな時は私がおじいちゃんのリクエストを元に得物をゲットしてくる。

 

「それと、帰りにお土産のベルギーワッフルを頼んだぞい」

「お任…せ……」

 

 おじいちゃんは甘いものが大好きだからね~。

 ついでだし、私の分も買ってこようっと。

 

 

 

 

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・・・

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 私は今、弥生と一緒に夏コミに行く為に、レゾナンスの入り口付近にて待ち合わせをしている。

 弥生と二人っきりのお出かけ……。

 これって間違いなくデートだよね? 

 行く場所が夏コミで幕張メッセで女の子同士だけど、立派にデートだよね?

 

「ちょっとドキドキしてきた……」

 

 今にして思えば、こうして弥生と二人っきりになる機会って全く無かった。

 いつも、他の皆が一緒にいるから……。

 

 下を向いて俯いていると、近くから車的な物が止まる音が聞こえてきた。

 

「お待た…せ……」

「え?」

 

 弥生の声が聞こえてきたので、不意に頭を上げると、そこには……

 

「えぇっ!?」

 

 なんと、例の真っ黒なバイク『ラピッド・レイダー』に乗っている弥生がいた。

 

(か…カッコいい……♡)

 

 可愛い弥生も素敵だけど、ワイルドでカッコいい弥生もいいな……♡

 あと、その猫耳の黒いヘルメット……可愛い♡

 

「って……あれ? 今日はソレで行くつもりなの?」

「ん。その方……が電車賃…と…かが浮く……から……」

「で…でも、流石にバイクの二人乗りは……」

「それな…ら大丈…夫……」

「へ?」

 

 弥生がバイクの反対側を指差すので、なんなのかと思いながらも足を動かしてみる。

 すると、そこには前には無かった追加パーツがあった。

 

「サ…サイドカー?」

「今日……の為…に……おじいちゃん……が用意…し…てくれ…た……」

「うそ~ん……」

 

 板垣総理……なにやってるんですか……。

 

「これな…ら問題…無し……」

「まぁ……確かに……」

 

 一応、道路交通法には抵触してないけど……。

 

「じゃ…あ……乗って……」

「う…うん」

 

 あ、よく見たら私の分のヘルメットもちゃんと用意してある。

 デザインは何故か真っ白なウサ耳のヘルメットだったけど。

 

「ちゃん…とベルト……も締めて…ね……」

「うんしょ……っと。よし、締めたよ」

「じゃあ……出発……」

 

 弥生がエンジンを拭かすと、バイクはゆったりとしながら出発していった。

 女子高生二人がサイドカーのついたバイクで道路を疾走している姿はかなり目立つようで、道行く人たちの殆どが私達の事を見ていた。

 弥生と一緒にドライブが出来るのは凄く嬉しいけど、なんとも複雑な気分……。

 

 

 

 

 

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・・

 

 

 

 

 

「着いた……」

「着いた……ね……」

 

 目の前には大きなドームがあり、周囲にはリュックや鞄を持った人達が大勢ひしめきあっている。

 

「「運命の決戦の地! 幕張メッセ!!」」

 

 ラピッド・レイダーを密かにアーキテクトの拡張領域へと収納し、私と簪は眼前にあるドームをまじまじと見上げる。

 今年もここにやって来たんだな……。

 そう思うと、なんだか感慨深いよ。

 

「もう並んでいるみたいだね」

「割…と早め…に来たつもり……だった…のに……」

 

 矢張り、幾戦の修羅場を潜り抜けてきた猛者達は、必然的に己がやるべき事を本能で察しているようだ。

 だがしかし、私達だって負けてはいられない!

 

「行こう……弥生。私達も戦の準備をしなくちゃ」

「だね……」

 

 私達も急いで列に並び、逸れないように体を密着させる。

 なんだか簪の顔が赤い気がするけど、ここは敢えてスルーします。

 

「……で、ここ…のサークル…は人気が高い……けど……部数…が少ない…から……」

「最優先項目に追加だね」

「基本的…に……部数……を多め……にしてる……所……は後回し…にして…も支障…はない…と思う……」

「そうだね。こういったサークルは、多くの人達に本が渡る事を目的としている場合が多いから、午後から回っても問題無いだろうね。途中で追加で刷るだろうし」

 

 簪もちゃんと分かっているな。

 彼女も相当の猛者と見た。

 

「む……そろそろ始まるみたい」

「…………っ!」

 

 二人で中に入ってからの事を相談していると、係の人がメガホンを持って台の上に立った。

 

「それでは! これより今年度の夏コミを開催したいと思います!! 皆さん、慌てず騒がずにお入り下さるようお願いします!!」

 

 スローモーションのようにドームの扉が開かれ、中から光が差し込む。

 さぁ……私達の戦争(夏コミ)を始めましょう。

 

 

 

 

 

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・・

 

 

 

 

「これ……もしかしてジョナサン×ジョセフ本っ!? うわぁ……ちょっと欲しいかも……」

「よかったら手に取ってご覧になりますか?」

「いいんですか? ありがとうございます!」

 

 笑顔で本を受け取り、ペラペラとページを捲っていく簪。

 その隣で、私は隣のサークルの本を見つめていた。

 

「これは……クラウド……とセシル……のカップリング……」

「試しに読んでみます? こっちには別のもありますよ?」

「なっ……!? まさか……のウォーリアー・オブ・ライト……とライトニング……だと……っ!?」

 

 王道のようで王道じゃない、絶妙なカップリングを描くとはっ……!?

 今年の夏コミは、一味も二味も違うぜ……!

 

「はぅあっ!? や…弥生! こっち来て!!」

「ど…どうし…たの……?」

 

 さっき手に取った本を慌てて出して、お金を払った後に簪の所に急ぐ。

 

「この本……」

「なん…で…すと……!?」

 

 テイルズの全主人公のカップリング本だと……!?

 表紙は何故かユーリとヴェイグになってるし……。

 あっ!? その隣には表紙違いの同じ本があるっ!?

 こっちの表紙はベルベットとミラの百合ですとぉぉぉぉぉっ!?

 

(百合……か)

 

 ふと、この間の千冬さんと過ごした一時を思い出した。

 一緒に裸でベットに入って、キスを沢山して……。

 

(って! なんで自然と千冬さんの顔を思い浮かべてんだ私!!)

 

 最初の頃を恐怖心はどこへやら。

 今では完全に普通に接してるし……。

 

「弥生? どうしたの? ボ~ッとして」

「え? あ……なんで…もない…よ……」

 

 少し妄想が過ぎたか……。

 

 結局、私達はテイルズ本をお互いに購入することにした。

 簪はスタンとカイルの親子が表紙のヤツを、私はベルベットとミラが表紙の本を買った。

 私もう……普通の恋愛、出来ないかも。

 

 

 

 

 

 

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・・

 

 

 

 

 最優先で購入すべき対象を粗方買い漁り、私達は小休止をする為に、端の方に設置してある休憩スペースのベンチにて体を休めていた。

 

「「ふぅ~……」」

 

 人込みに塗れてかなり疲れたけど、それだけの戦果はあったなぁ~。

 予想外のいいものも沢山あって、お財布が軽くなっちゃうにゃ~。

 なんて、本当はまだまだ重いですよ?

 この日に備えて、お金はちゃんと降ろしてきたからね。

 

「ちゃん…と…おじいちゃん……の一押し……のサークル……も回れて…よかった……」

「板垣総理が夏コミで本を欲しがっている事にも驚いたけど、そのターゲットがかなり目敏かったのが凄かったよ……」

 

 おじいちゃんは、ちゃんとメモを書いて私に購入して欲しい本を売っているサークルのリストを作成していた。

 その全てが最近になって人気が出始めているサークルばかり。

 いつの間にこんな情報を仕入れたんだろう?

 

「こうやって、喉を潤さないと脱水症状になっちゃうよ」

「だね……」

 

 さっき自販機で買ったジュースを飲みながらまったりしていると、どこからか怒声が聞こえてきた。

 

「お客様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 申し訳ございません!! その商品は先程を持ちまして完売したしましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 このやかましい声は……。

 

「今年もメイトはお店を出してるんだ……」

「みたい…だね……」

 

 真っ赤なサンバイザーにツンツンヘアー、無駄に熱いテンションが目立ちまくるよね。

 実はしれっと過去に何回か会った事があったりして。

 

「なんか店員さんと揉めてるね」

「余って…る在庫……でお客さん……を満足させ…ろ…的…なこと…を言ってる…ね……」

 

 なんつー無茶振り。

 本当にそんな事が出来るのかな……?

 店員さんも言いくるめられて、やる気に火が着いちゃったみたいだし。

 

「おぉ~…探してる探してる」

「何…が出てく…るの…かな……?」

 

 あ、なんか後ろから持って来た。

 

「お客様っ!! こちらの銀さんやキョンやジョセフやブリットやラグナのブロマイドはいかがでしょうかっ!!」

「でしたら!! こちらのドモンやイザークや宗介やギルガメッシュやスタンや巽完二などはどうですかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 うわぁ~……どっちも男性客には殆ど売れないようなラインナップ。

 

「いやね? 神楽やハルヒや徐倫やクスハやノエルとかは即座に無くなったのに、こっちはかなり売れ残ってるんですよ?」

「こっちだってな!! アレンビーやルナマリアや大佐殿やセイバーやルーティーやりせちーは即日完売して、なんでか、こんなんばっかりが売れ残ってるんだよっ!!!」

 

 これもう……どうリアクションしたらいいの?

 

「あれ? 背広を着た人が来たよ?」

「社長タカハシ……」

「あの人が?」

 

 やって来た途端に二人をぶん殴って、説教始めちゃったよ。

 完全にお客さんが置いてきぼりくらってるし。

 

「……行こうか」

「ん……」

 

 これは……見てはいけないような気がする。

 店長……今度、予約した新作ゲームを受け取りに行くから、その時についでに何か一緒に買ってあげるよ……。

 

 

 

 

 

・・・・・

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・・

 

 

 

 

 

 一休みの後に再びサークルを見て回っていると、簪があるサークルを見て動きを止めてしまった。

 

「簪……?」

 

 なんか腕を振るわせながら指差してるんだけど、どこを指して……?

 

「サークル『MUGENDAI』……?」

 

 ムゲンダイとは、こりゃまた御大層なサークル名だこと。

 どんな人達が本を出してるのかな?

 

「あ…あの人達……」

「…………?」

 

 あのサークルの人達がどうかしたのか?

 

「あれって……IS学園の漫画研究会の人達だよ……」

「うぇあっ!?」

 

 ア…IS学園の人達ですとっ!? なんでまたそんな人達がっ!?

 

「噂で、今年の夏コミに出店するとは聞いてたけど、まさか本当だったなんて……」

 

 ムゲンダイ……つまりは『無限大』と『インフィニット』を掛けてるんだろうな……。

 なんて安直なネーミング……。

 

「あっ! そこにいるのは更識さんに板垣さん!」

「え? どこどこっ!?」

「ほらあそこ!」

「ホントだ! お~い!」

 

 バレた。

 こうなったら行くしかあるまい……。

 この状況で無視は出来ないしね……。

 

「「ど…どうも……」」

「いらっしゃ~い! ゆっくりしていってね!」

 

 あんたはどこのゆっくりだ。

 

「いやぁ~、まさか二人も来てるとはね~」

「お! 私服姿の弥生ちゃん! これは貴重なお姿ですなぁ~」

 

 あまり見ないでよ……。

 ジロジロと見られるのは、あまり好きじゃないんだからさ。

 

「ど…どんな本があるんですか?」

「ここにあるの全部よ」

「「どれどれ……?」」

 

 ブッ!!

 実際にはしてないけど、心の中で思い切り吹いた。

 

「な…なに……こ…れ……」

「何って、同人誌」

 

 いやいやいやいやいや! その同人誌の中身がどうして私メインなのかって聞いてるんですけどっ!?

 

「これって……いつも周りにいる皆と弥生とのカップリング本っ……!?」

「どう? 凄いでしょ~! IS学園の母とも言うべき弥生ちゃんと、その周りにいる皆との美しくも爛れた日々。最高じゃない?」

「最高です!!」

 

 最低ですよ!!

 って、そこ! 簪!!

 なにしれっと全種類買おうとしてるの!?

 

「因みに、一番の売れ筋は?」

「弥生ちゃん×織斑先生のカップリング。第二位は弥生ちゃん×ラウラちゃん」

 

 千冬さぁぁぁぁぁぁんっ!? ここでも貴女が出て来るんですかぁぁぁぁぁぁっ!?

 ラウラはまぁ……その……いいんじゃない?

 

「弥生ちゃんもいる?」

「う……うぅ……」

 

 不覚にも、ちょっとだけ欲しくなった自分がいる……。

 

「そ…れじゃあ……い…一位……と二位……をください……」

「はい! 毎度あり~! おまけに弥生ちゃん×ロランちゃんのカップリング本を入れてあげるね」

「それは結構です」

 

 あ、一息で言えた。ってこらぁぁぁっ!! 言ってる傍から入れようとするなっ!!

 はぁ……何が悲しくて、自分がネタにされている同人誌を買っちゃうんだよ私……。

 

 ……夜にこっそりと千冬さんとの本だけ見ようかな……。

 

 

 

 

 

 

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・・

 

 

 

 

 午前の部が終わり、ドーム全体が一時の休み時間に突入する。

 この時ばかりは幾多の猛者達も大人しくなり、午後に向けての補給に入っている。

 

「お腹空いたね~……」

「私達……もご飯…を食べ…に行こう…か?」

「それはいいけど、外に出ても大丈夫なの?」

「モーマンタイ……」

 

 簪の心配にサムズアップで答える。

 大手のサークルや部数が少ない所は全部回り尽したし、後はゆっくりとしながら掘り出し物でも探せればいいと考えている。

 その旨を伝えると、簪も納得してくれたようで、外食をする事に賛成してくれた。

 

「でも、この時期だとどこも混んでそうだよね。どこに行くつもりなの?」

「この辺……に知り合い…のファミレス……がある…から……そこに行く…つもり…だよ」

「ファミレスか~……。弥生がそう言うなら、行ってみようか?」

「ん」

 

 外に出てから、ちょっと隠れた場所でラピッド・レイダーを展開しながら説明する。

 ヘルメットを被ってから、一緒にお昼を食べにレッツらゴ~!

 

 

 

 

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・・

 

 

 

 

「ファミレス『HIROSUE』。ここがそうなの?」

「うん…。ちょ…っと馴染み…のお店……」

「千葉県に馴染みの店があるって……」

 

 そう思うよね? 私も気持ちは分かる。

 けどこれ、事実なのよね。

 

「本格的にお腹空いてきた……。早く入ろう?」

「だね……」

 

 さっき、ここから不良みたいな三人組が泣きながら出てきたような気がしたけど、気にせずに入りましょうか。

 さ~て、何を食べようかな~?

 

 

 

 

 

 

  

 

 




ひ…久し振りの執筆で鈍ってないかな……?

それだけは本気で心配です。

早ければ明日には次の話が更新出来るかも?

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